ここでは,マルチレンディション文書の管理方法について説明します。
バージョン付き文書をマルチレンディション文書として管理してレンディションを追加する例を次の図に示します。
図3-20 マルチレンディション文書のレンディションの追加例
図3-20の例では,文書の作成過程で,文書の作成者が更新用にコンテントをダウンロードできるように,コンテントを作成しているアプリケーションプログラム(この例の場合Word)の形式のレンディションを登録しています。このWord形式のレンディションがマスタレンディションとなります。そして,文書が完成して公開過程になったタイミングでバージョンを追加して,追加したバージョンをほかのユーザが参照しやすいように,PDF形式のレンディションを追加登録しています。この追加したPDF形式のレンディションがサブレンディションとなります。なお,マルチレンディション文書をチェックアウトすると,最新バージョンのマスタレンディションが仮のバージョンにコピーされます。サブレンディションはコピーされません。例えば,「報告書A」にさらに「V3」というバージョンを追加する場合,チェックアウトすると,Word形式のレンディションはコピーされますが,PDF形式のレンディションはコピーされません。マルチレンディション文書であるバージョン付き文書のバージョンを追加して,追加するバージョンにレンディションを追加する手順は次のようになります。
マルチレンディション文書は,レンディションタイプを指定して参照できます。例えば,図3-20の場合,「報告書A」のV2を参照するときには,レンディション一覧を取得して,Word形式かPDF形式かを指定して参照します。文書の作成者が文書をバージョンアップしたいときは,Wordで文書ファイルを編集するためにWord形式を指定してダウンロードしたり,Wordをインストールしていない環境のユーザはPDF形式を指定してダウンロードしたりするなど,目的やコンテントを参照するマシン環境に応じて参照できます。また,アクセス制御機能と組み合わせたユーザプログラムを作ることによって,対象の文書に対して基本コンテント更新権のあるユーザにはWord形式,基本コンテント参照権しかないユーザにはPDF形式を自動的に参照させるという運用も考えられます。
アクセス制御機能については,「3.15 アクセス制御」を参照してください。
マルチレンディション文書のコンテントを更新する場合,明示的にどのレンディションのコンテントを更新するか,指定する必要があります。例えば,600dpiのGIFファイルをマスタレンディション,300dpiのGIFファイルをサブレンディションとして管理している場合に,300dpiのGIFファイルを更新するときは,該当する文書のレンディションタイプを指定してください。
なお,レンディションタイプを指定しない場合は,マスタレンディションのコンテントが更新されます。
レンディションのコンテントを更新する場合は,レンディション間のファイル形式以外の内容が一致するようにご注意ください。
マルチレンディション文書の特定のレンディションを削除したい場合は,マルチレンディション文書に接続して,レンディションタイプを指定して削除できます。ただし,指定されたレンディションがマスタレンディションである場合はレンディションを削除できません。また,存在しないレンディションタイプのレンディションを削除しようとするとエラーになります。
なお,マルチレンディション文書自体を削除した場合は,すべてのレンディションが削除されます。
レンディションタイプを表すdbrProp_RenditionTypeプロパティは,属性検索の条件には指定できません。例えば,「マスタレンディションのレンディションタイプが"MIME::application/ms-word"である文書を検索する」のような指定はできません。また,検索結果として,レンディションタイプを取得することもできません。レンディションタイプを参照したいときは,ほかの検索条件によって参照したい文書を特定してから,GetRenditionListAndLockメソッドまたはGetRenditionListメソッドによって取得してください。
また,マルチレンディション文書であっても,作成できる全文検索インデクスは一つです。文書を更新した場合などに更新したコンテントから作成される全文検索インデクスは,マスタレンディションのコンテントから作成されます。