3.9.1 プロパティの管理例

ここでは,文書空間オブジェクトのプロパティとして,ユーザが設定できるプロパティの管理例を示します。

<この項の構成>
(1) バージョンなし文書およびバージョンなしフォルダのプロパティの管理例
(2) バージョン付きオブジェクトのプロパティの管理例
(3) VARRAY型のプロパティの管理例
(4) LDAP対応のディレクトリサービスとの連携を使用したプロパティの管理例

(1) バージョンなし文書およびバージョンなしフォルダのプロパティの管理例

バージョンなし文書およびバージョンなしフォルダのプロパティの管理例を次の図に示します。なお,バージョンを持たない独立データおよびパブリックACLも,同様にプロパティを管理できます。

図3-45 バージョンなし文書およびバージョンなしフォルダのプロパティの管理例

[図データ]

この例では,バージョンなし文書やバージョンなしフォルダには,文書空間オブジェクトの名前(userProp_Name),作成者(userProp_Creator),作成日時(userProp_CreateTime)およびコメント(userProp_Comment)などを表すプロパティをユーザ定義プロパティとして追加定義しています。OIIDを表すプロパティ(dmaProp_OIID)はDMAが規定したプロパティであり,文書空間オブジェクト登録時にJava クラスライブラリが設定します。このようにプロパティの値を設定しておくことによって,文書空間オブジェクトを名前で区別したり,設定されている値をキーに目的の文書空間オブジェクトを検索したりできます。例えば,「『作成日時』が『2001年7月以降』で,『作成者』は『日立太郎』の,『名前』に『論文』を含むバージョンなし文書」のような条件で検索できます。OIIDは,各文書空間オブジェクトにユニークに与えられるIDであるため,文書空間オブジェクトを特定してDocumentBrokerサーバに操作を要求する場合に使用します。

(2) バージョン付きオブジェクトのプロパティの管理例

バージョン付きオブジェクトのプロパティの管理例を,バージョン付き文書の例で次の図に示します。

図3-46 バージョン付き文書のプロパティの管理例

[図データ]

バージョン付きオブジェクトでは,複数バージョンの共通のプロパティをバージョニングオブジェクトのプロパティとして,各バージョン固有のプロパティをバージョンオブジェクトのプロパティとして設定できます。この例では,バージョン付き文書の共通の名称として「名前」(userProp_Name)に「製品X仕様書」という値を設定しています。各バージョンには,バージョン固有の名称として「名前」(userProp_Name)に「第1版」,「第2版」という値を設定し,「第2版」には「コメント」(userProp_Comment)として「第1版」からの変更内容を設定して管理しています。

(3) VARRAY型のプロパティの管理例

VARRAY型のプロパティの管理例を,バージョンなし文書の例で次の図に示します。

図3-47 VARRAY型のプロパティの管理例

[図データ]

この例では,VARRAY型のプロパティとして「執筆者」というプロパティを定義して管理しています。VARRAY型のプロパティでは,複数のプロパティを1組として,その組を複数個管理できます。要素となる複数のプロパティのデータ型は同一でなくてもかまいません。この例では,「所属」,「社員番号」および「氏名」という三つのプロパティを定義して,それらを1組にして「執筆者」プロパティの要素とし,複数人の「執筆者」の情報を管理しています。このとき,「所属」のデータ型がSTR型で,「社員番号」のデータ型がINT型でもかまいません。

「所属」,「社員番号」および「氏名」のようにVARRAY型のプロパティの要素となるプロパティのことをVARRAY型のプロパティの構成要素のプロパティといいます。

(4) LDAP対応のディレクトリサービスとの連携を使用したプロパティの管理例

ユーザアプリケーションプログラムを開発する際に,JNDIを使用してLDAP対応のディレクトリサービスと連携すれば,LDAP対応のディレクトリサービスで管理されている情報を直接取得できます。

例えば,GUIに文書一覧などを表示する際,文書の所有者の情報をユーザ識別子で表示しても,人物を特定するのが困難です。この場合,ユーザ識別子でなく漢字の氏名などを表示するとわかりやすくなります。また,属性検索でも,所有者を検索条件にして検索する場合,ユーザ識別子を検索条件に指定するよりも,漢字の氏名を検索条件に指定する方がわかりやすくなります。

このような場合に,JNDIを使用してLDAP対応のディレクトリサービスと連携していれば,ユーザ識別子やグループ識別子の値を検索条件にして,対応する漢字の氏名などのわかりやすい名前を,LDAP対応のディレクトリサービスから検索して取得できます。ユーザ識別子やグループ識別子が設定されるプロパティについては,LDAP対応のディレクトリサービスからユーザにわかりやすい名前を検索して,その名前を設定するプロパティを対応付けて定義および管理すると便利です。

LDAP対応のディレクトリサービスとの連携については,ご使用になるLDAP対応のディレクトリサービスのマニュアルを参照してください。