ここでは,レンディションによる文書管理について説明します。なお,マルチレンディション文書を管理するための操作の詳細については,「6.8.11 マルチレンディション文書のレンディションの操作」を参照してください。文書のコンテンツを管理するための操作の詳細については,「6.8.9 文書のコンテンツの操作」を参照してください。
バージョンなし文書に1個のレンディションを登録して管理している例を次の図に示します。
図3-8 バージョンなし文書のレンディションの管理例
この例では,バージョンなし文書「報告書」に,1個のレンディションを登録して管理しています。バージョンなし文書「報告書」には,コンテンツとしてWord形式のファイルと,レンディションタイプとしてコンテンツを作成したアプリケーションプログラムの名前を登録しています。
バージョン付き文書にレンディションを追加して,マルチレンディション文書として管理する例を次の図に示します。
図3-9 マルチレンディション文書のレンディションの追加例
この例では,文書の作成過程で,文書の作成者が更新用にコンテンツをダウンロードできるように,コンテンツを作成しているアプリケーションプログラム(この例の場合Word)の形式のレンディションを登録しています。このWord形式のレンディションがマスタレンディションとなります。そして,文書が完成して公開過程になったタイミングでバージョンを追加して,追加したバージョンをほかのユーザが参照しやすいように,PDF形式のレンディションを追加登録しています。この追加したPDF形式のレンディションがサブレンディションとなります。
なお,マルチレンディション文書をチェックアウトすると,最新バージョンのマスタレンディションが仮のバージョンにコピーされます。サブレンディションはコピーされません。例えば,図3-9の場合,「報告書A」にさらにバージョンを追加するときは,チェックアウトすると,Word形式のレンディションはコピーされますが,PDF形式のレンディションはコピーされません。このため,仮のバージョンにサブレンディションのコンテンツを登録してからチェックインするなど,必要に応じてサブレンディションのコンテンツを追加してください。
マルチレンディション文書は,レンディションタイプを指定して参照できます。例えば,図3-9の場合,「報告書A」のバージョン2を参照するときは,レンディション一覧を取得して,Word形式かPDF形式かを指定して参照します。文書の作成者が文書をバージョンアップしたいときには,Wordでファイルを編集するためにWord形式を指定してダウンロードしたり,Wordをインストールしていない環境のユーザはPDF形式を指定してダウンロードしたりするなど,目的や,コンテンツを参照するマシン環境に応じた参照ができます。
また,レンディション管理モデルとアクセス制御モデルを組み合わせて,マルチレンディション文書を管理することもできます。例えば,Word形式のコンテンツとPDF形式のコンテンツを登録した文書がある場合に,「基本コンテンツ更新権のあるユーザにはWord形式のコンテンツを参照させる」,「基本コンテンツ参照権しかないユーザにはPDF形式のコンテンツを参照させる」というように,ユーザの保持するアクセス権によって,ユーザが参照できるコンテンツを限定するという運用が考えられます。このとき,Java クラスライブラリでは文書ごとのアクセス制御しかできないため,さらにレンディションごとのアクセス制御をユーザアプリケーションプログラムで処理する必要があります。アクセス制御モデルについては,「3.10 アクセス制御モデル」を参照してください。
マルチレンディション文書のコンテンツを更新する場合,レンディションタイプを指定することによって,レンディションを指定して更新できます。例えば,600dpiのGIFファイルをマスタレンディション,300dpiのGIFファイルをサブレンディションとして管理している場合に,300dpiのGIFファイルを更新するときは,該当するレンディションのレンディションタイプを指定してください。
マスタレンディションのコンテンツを更新した場合には,サブレンディションのコンテンツも更新してください。
コンテンツの更新時には,レンディションタイプを変更できます。また,マスタレンディションのコンテンツの更新時には,全文検索インデクスを作成できます。
マルチレンディション文書のレンディションを削除する場合,削除対象のレンディションのレンディションタイプを指定することによって,複数のレンディションを一括して削除できます。
マスタレンディションは削除できません。なお,マルチレンディション文書自体を削除した場合は,すべてのレンディションが削除されます。
レンディションタイプを表すdbrProp_RenditionTypeプロパティは,検索条件には指定できません。例えば,「マスタレンディションのレンディションタイプが"application/ms-word"である文書を検索する」のような指定はできません。また,検索結果として,レンディションタイプを取得することもできません。レンディションタイプを参照したい場合は,ほかの検索条件によって参照したい文書を特定してから取得してください。