ここでは,バージョン付きフォルダによる文書管理について説明します。なお,バージョン付きフォルダを管理するための操作の詳細については,「6.8.10 バージョン付きオブジェクトのバージョン操作」を参照してください。バージョン付きフォルダのリンクを管理するための操作の詳細については,「6.8.13 リンクの操作」を参照してください。
ここでは,バージョン付きフォルダの構成管理機能について説明します。
各内容について説明します。
バージョン付きフォルダの構成要素がバージョンアップした場合,設定している構成管理モードによって,バージョン付きフォルダが管理する構成要素のバージョンが異なります。バージョン付きフォルダの構成要素のバージョンアップの例を次の図に示します。
図3-35 バージョン付きフォルダの構成要素のバージョンアップの例
この例では,バージョン付きフォルダ「出版原稿」はFIXモードとFLOATINGモードを使用して構成要素を管理しています。バージョン付きフォルダ「出版原稿」では,バージョン付き文書「序文」はFIXモードでリンク付けているため,「序文」のバージョンが追加されても,バージョン1の「序文」を管理しています。一方,バージョン付き文書「本文」およびバージョン付きフォルダ「資料」はFLOATINGモードでリンク付けているため,最新バージョンであるバージョン2の「本文」および「資料」にリンクをつなぎ替えて管理しています。
バージョン付きフォルダの構成要素の編集が終了した場合など,バージョン付きフォルダで管理する構成要素のバージョンを確定したいときは,構成管理モードをFLOATINGモードからFIXモードに変更します。バージョンを確定したあとで構成要素のバージョンが追加されても,バージョン付きフォルダは確定したバージョンの構成要素を管理します。バージョン付きフォルダの構成要素のバージョンを確定した例を次の図に示します。
図3-36 バージョン付きフォルダの構成要素のバージョンを確定した例
この例では,バージョン付きフォルダ「出版原稿」は,バージョン1で編集が終了したバージョン付き文書「序文」,「本文」およびバージョン付きフォルダ「資料」をFIXモードで管理しています。このため,各構成要素のバージョンが追加されても,バージョン付きフォルダ「出版原稿」が管理するのは最新バージョンであるバージョン2の構成要素ではなく,バージョン1の構成要素になります。
バージョン付きフォルダでは,バージョン付きフォルダのバージョンごとに構成要素のバージョンを管理できます。例えば,バージョン付きフォルダの構成要素を確定したあとでさらに構成要素を編集したい場合,バージョン付きフォルダをバージョンアップして,確定したバージョンを管理するバージョン付きフォルダとは別に,最新バージョンを管理するバージョン付きフォルダを新しく作成できます。バージョン付きフォルダのバージョンアップの例を次の図に示します。
図3-37 バージョン付きフォルダのバージョンアップの例
この例では,バージョン付きフォルダ「出版原稿」のバージョンごとに,構成要素のバージョンを管理しています。バージョン1のバージョン付きフォルダ「出版原稿」では,バージョン付き文書「序文」,「本文」およびバージョン付きフォルダ「資料」をFIXモードでリンク付けているため,各構成要素がバージョンアップしても,各構成要素のバージョン1を管理しています。一方,バージョン2のバージョン付きフォルダ「出版原稿」では,バージョン付き文書「序文」,「本文」およびバージョン付きフォルダ「資料」をFLOATINGモードでリンク付けているため,各構成要素の最新バージョン(「序文」のバージョン2,「本文」のバージョン3,「資料」のバージョン2)を管理しています。
バージョン付きフォルダをバージョンアップする場合,最新バージョンに対応する,バージョンなしフォルダがコピーされます。このとき,構成要素はコピーされません。また,バージョンアップするバージョン付きフォルダにリンクが設定されている場合,参照型リンクを表すリンクオブジェクトおよび構成管理型リンクを表すリンクオブジェクトもコピーされます。このため,参照型リンクおよび構成管理型リンクでリンク付けられる構成要素は,バージョンアップしたバージョン付きフォルダでも管理できます。ただし,直接型リンクを表すリンクオブジェクトはコピーされません。したがって,直接型リンクでリンク付けられる構成要素は,バージョンアップしたバージョン付きフォルダでは管理できません。
バージョン付きフォルダをバージョンアップするには,文書のバージョンアップと同様に,チェックアウトおよびチェックインを実行します。このとき,構成要素を管理している構成管理モードを適切に変更することによって,バージョン付きフォルダごとに構成要素のバージョンの履歴管理ができるようになります。バージョン付きフォルダのバージョンごとに構成要素の履歴を管理する場合,次の図に示す手順でバージョンアップしてください。
図3-38 バージョン付きフォルダのバージョンごとの構成要素の履歴管理の手順
バージョン付きフォルダのバージョンごとに構成要素の履歴を管理する場合の注意事項を次に示します。
バージョン付きフォルダの管理モデルでは,バージョン付きフォルダのバージョン管理機能と構成管理型リンクを使用して次のような二つの管理方法が考えられます。
各管理方法について説明します。また,バージョン付きフォルダの複合リンクによる管理例についても説明します。
文書収集型の管理方法とは,構成管理モードのFIXモードだけを使用する管理方法です。フォルダの管理者は,バージョン付き文書の収集期限を示しておき,収集期限がきたら,各バージョン付き文書の最新バージョンをFIXモードでリンク付けてバージョン付きフォルダを新規に作成またはバージョンを追加して管理します。
文書収集型の管理例を次の図に示します。
図3-39 文書収集型の管理例
この例では,バージョン付きフォルダ「原稿A」にリンク付けられているバージョン付き文書「構成文書A」および「構成文書B」の作成者は,文書収集日までにバージョン付き文書のバージョンを追加しながら更新していきます。バージョン付きフォルダ管理者は,最初の収集日(5月10日)に,その時点の最新バージョンの「構成文書A」および「構成文書B」をバージョン付きフォルダ「原稿A」の構成文書としてFIXモードでリンク付けて作成します。そして,次の収集日(7月10日)に,その時点で最新のバージョンの「構成文書A」および「構成文書B」をFIXモードでリンク付けてバージョン付きフォルダ「原稿A」のバージョンを追加しています。
文書提出型の管理方法とは,構成管理モードのFIXモードおよびFLOATINGモードを使用する管理方法です。まず,各バージョン付き文書をFLOATINGモードでリンク付けてバージョン付きフォルダを作成し,バージョン付き文書の編集を終えた時点で文書作成者がFIXモードに切り替えてバージョンを固定します。
文書提出型の管理例を次の図に示します。
図3-40 文書提出型の管理例
この例では,バージョン付きフォルダ管理者は,バージョン付き文書「構成文書A」および「構成文書B」をFLOATINGモードでリンク付けて,「原稿A」をまとめるバージョン付きフォルダを作成します。そして,各構成文書の作成者が第1版としてのバージョン付き文書の編集を終えた時点でFIXモードに切り替えています。バージョン付きフォルダの管理者は,提出状況を確認して(どちらもFIXモードに切り替えられているかどうかを確認),バージョン付きフォルダのバージョンを追加して各バージョン付き文書をFLOATINGモードでリンク付けています。
バージョン付きフォルダで,直接型リンク,参照型リンクおよび構成管理型リンクを組み合わせて使用する文書の管理例について説明します。
バージョン付きフォルダで使用できる3種類のリンクをすべて使用した,バージョン付きフォルダの複合リンクによる文書の管理例を次の図に示します。
図3-41 バージョン付きフォルダの複合リンクによる文書の管理例
この例では,バージョン付きフォルダにリンク付ける文書の性質を考慮して3種類のリンクを使い分けて管理しています。この例では,各文書が,次のような性質の文書であることを想定しています。
これらの文書の性質を考慮して,それぞれの文書をバージョン付きフォルダにリンク付ける場合のリンクの種類を次のように使い分けることができます。
リンクによって関連付けられた上位オブジェクトと下位オブジェクトは,双方向に参照できます。
上位オブジェクトまたは下位オブジェクトを参照する場合は,上位オブジェクトまたは下位オブジェクトとの関連付けを表すリンクオブジェクトの一覧を取得します。リンクオブジェクトをたどって上位オブジェクトまたは下位オブジェクトを参照します。また,リンクオブジェクト取得時には,次の情報も取得できます。
ここでは,リンクの解除と,上位オブジェクトおよび下位オブジェクトの削除の関係について説明します。
上位オブジェクトからリンクを解除するか,リンクオブジェクト自身のインターフェースでリンクオブジェクトを削除します。
上位オブジェクトを削除すると,設定されていたリンクオブジェクトも削除されます。
下位オブジェクトを削除すると,設定されていたリンクオブジェクトも削除されます。ただし,構成管理モードがFLOATINGモードでリンク付けられている下位オブジェクトのバージョンを削除する場合,構成管理型リンクを表すリンクオブジェクトは削除されません。バージョン削除後のカレントバージョンにリンクをつなぎ替えます。リンクの種類ごとに削除されるリンクオブジェクトについて次の図に示します。
図3-42 リンクの種類ごとに削除されるリンクオブジェクト
バージョン付きフォルダおよびバージョン付きフォルダのリンクには,ユーザ定義プロパティを設定して管理できます。リンクのプロパティとは,リンクオブジェクトに設定するプロパティです。フォルダのプロパティとして作成者などを設定しておくと,フォルダの検索で使用できます。また,リンクオブジェクトのプロパティは,検索に使用したり,重要度などの値に応じてソートして,バージョン付きフォルダの下位オブジェクトに順序性を持たせたりできるので便利です。リンクオブジェクトのプロパティは,上位オブジェクトまたはリンクオブジェクト自身のインターフェースを使用して設定します。
プロパティを設定したバージョン付きフォルダとリンクオブジェクトの例を次の図に示します。
図3-43 プロパティを設定したバージョン付きフォルダとリンクオブジェクトの例
この例では,バージョン付きフォルダにユーザ定義プロパティとして「ファイル名」と「作成者」を設定しています。また,リンクオブジェクトに,ユーザ定義プロパティとして「更新日」と「重要度」を設定しています。例えば,リンクオブジェクトのプロパティ「更新日」の値によって,リンク付けた日付を管理したり,プロパティ「重要度」の値によって,バージョン付きフォルダの下位オブジェクト一覧を取得する場合に,重要度の昇順または降順にソートして情報を取得したりできます。