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Cosminexus V11 アプリケーションサーバ 仮想化システム構築・運用ガイド


付録A.1 サイジングを始める前に

ここでは,サイジングを始める前に,確認,準備しておくことについて説明します。

〈この項の構成〉

(1) サイジング指標の選択

仮想化システムを構成する仮想サーバの構成の決定に必要なサイジング指標を決定します。サイジング指標は,サイジングで考慮するマシンリソースのことで,次のものがあります。

これらのサイジング指標のうち,必要なものだけを選択します。例えば,仮想化環境のディスク容量が十分ある場合は,ディスク使用量をサイジング指標から除外できます。

また,仮想化システムでは,1台の物理マシンに対して,複数の仮想マシン(仮想サーバ)が配置されます。CPUとメモリだけでなく,ディスクとネットワークも複数の仮想マシンから共有されます。このため,ディスクとネットワークがボトルネックになる可能性が高くなります。

(2) 要求リソースの考え方

要求リソースは,スケールアウトして分割可能なリソース(分割可能リソース)とスケールアウトしても分割できないリソース(分割不可能リソース)から構成されます。例えば,ディスク使用量から,アクセスログサイズと製品のインストールサイズを考えるとします。マシン数を増やすと,1台当たりの処理件数が減少します。アクセスログサイズは1台当たりの処理件数に応じて減少するので,分割可能リソースとなります。一方,製品のインストールサイズはすべてのマシンに同じだけ必要なので分割不可能リソースとなります。

ここでは,要求リソース(16)の内訳が,分割可能リソースのリソース量が12,分割不可能リソースのリソース量が4とします。マシン数の増加と,システム全体のマシンリソースの変化を次の図に示します。

図A‒1 マシン数の増加と,システム全体のマシンリソースの変化

[図データ]

図に示すように,マシン数を増やすと,1台当たりの分割可能リソースは減少しますが,1台当たりの分割不可能リソースは変わりません。このため,1台当たりのリソース量は減少しても,システム全体として必要なマシンリソースが増加します。要求リソースは,これらのトレードオフ関係(競合関係)を考慮してサイジングします。

また,1台のマシンでは,リソース量のうち,分割不可能リソースを超えた分を分割可能リソースとして負担できます。例えば,マシンのリソース量が「11」で,分割不可能リソースが「4」とすると,「7」の分割可能リソースを負担できます。

分割可能リソースと分割不可能リソースを考慮すると,マシン数の増加(スケールアウト)と,マシンリソースの増加(スケールアップ)を適切に組み合わせたマシン構成を実現できます。

(3) 仮想化環境のオーバーヘッドの把握

仮想化システムでは,物理マシン上で動作する複数のOSの切り替え処理などでオーバーヘッドが発生して,パフォーマンスが低下するという問題があります。このため,仮想化環境で必要なオーバーヘッドとして,ハイパーバイザのオーバーヘッドを考慮する必要があります。ハイパーバイザのオーバーヘッドは,使用するハイパーバイザの種類,使用するハードウェアの仮想化技術の実装状況など,仮想化システムの環境によって大きく変化します。

ハイパーバイザのオーバーヘッドと,仮想化システムの環境によるオーバーヘッドの差を考慮してサイジングを実施してください。

仮想化環境のオーバーヘッドの例を次の表に示します。

表A‒1 仮想化環境のオーバーヘッドの例

サイジング指標

オーバーヘッド(係数)の例

オーバーヘッド設定時の注意点

CPU性能

1.2

ハードウェアの仮想化技術(AMD-V,Intel VT)の実装の有無や,ハイパーバイザによって変動します。

メモリ使用量

1.2

ハイパーバイザによって変動します。

ディスクI/O性能

1.2

ハードウェアの仮想化技術(AMD-V,Intel VT)の実装の有無や,ハイパーバイザによって変動します。

ネットワークI/O性能

1.2

注 ディスク使用量には,基本的にオーバーヘッドは掛かりません。