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Cosminexus V11 アプリケーションサーバ 仮想化システム構築・運用ガイド


付録A.4 マシン構成の設計

マシン構成を設計する手順について説明します。ここでは,構築するシステムで使用する仮想化環境は用意されていることを前提とします。

マシン構成の設計作業の流れと設計作業のイメージを次の図に示します。ここでは,「付録A.3 リソースの見積もり」で見積もった結果,要求リソースが16(分割可能リソース=12,分割不可能リソース=4),仮想化環境のオーバーヘッドを1.2とします。次のA〜F(6台)のマシンを使用するとします。各マシンのリソース状況を次の表に示します。

表A‒2 各マシンのリソース状況

マシン

リソース合計

使用済みリソース

現在の空きリソース

実効リソース

A

10

6

4

4÷1.2=3.3

B

10

0

10

10÷1.2=8.3

C

20

0

20

20÷1.2=16.6

D

11

0

11

11÷1.2=9.1

E

15

3.5

11.5

11.5÷1.2=9.6

F

12

2.4

9.6

9.6÷1.2=8

図A‒3 マシン構成の設計作業の流れと設計作業のイメージ

[図データ]

[図データ]

各作業について次に説明します。

〈この項の構成〉

(1) 仮想化環境のオーバーヘッドを考慮した空きリソースの算出

マシンごとに,現在の空きリソースを仮想化環境のオーバーヘッド(係数)で割り,実効リソース(以降,空きリソースといいます)を求めます。オーバーヘッドについては,「付録A.1(3) 仮想化環境のオーバーヘッドの把握」を参照してください。これによって,マシンごとに利用可能な空きリソースが求められます。

(2) 利用不可能な空きリソースの除外

要求リソースの分割不可能リソースが,利用可能な空きリソースとして確保できないマシン(利用不可能な空きリソース)を除外します。

(3) マシンスペックを考慮した最小のマシン数の算出

構築するシステムで,マシン1台当たりに必要なマシンスペックの最大値を決定します。マシンスペックは,次に示すマシンを構成するサイジング指標ごとに決定します。ただし,用意されている仮想化環境でディスク容量が十分ある場合など,マシン数を算出する際に不要と判断したサイジング指標は除外してください。

これらのサイジング指標から算出したマシンスペックの最大値から,システムで必要なマシン数の最小値を求めます。

(4) 要求リソースを考慮した最小のマシン数の決定

最小のマシン数で要求リソースを満たせる構成を探して決定します。「(3) マシンスペックを考慮した最小のマシン数の算出」で算出した最小マシン数から順に増やしながら,そのマシン数で求められる1台当たりの要求リソースを計算します。要求リソースについては,「付録A.1(2) 要求リソースの考え方」を参照してください。

なお,要求リソースを満たせる空きリソースがマシン数分用意できない場合は,現在の仮想化環境ではサイジングしたシステムを構築できません。空きリソースのあるマシンの用意をリソース管理者に依頼してください。

(5) 信頼性要件を考慮したマシン数の決定

信頼性を考慮して,仮想化システムのマシン数を決定します。

「(3) マシンスペックを考慮した最小のマシン数の算出」で求めたマシンスペックは変更しないで,信頼性要件を満たせるようにマシン数を増やしていきます。

信頼性を考慮したマシン数の増加方式を次に示します。これらの方式から適切な方式を選択して,マシン数を増加します。ここでは,マシン数をNとして,各方式について説明します。

  1. αN方式

    すべてのマシンのうち,(α-1) ×100%停止しても性能を維持できるようにする方式です。

    α=1.4,N=6とすると,マシン数は9(≒8.4)台となります。

  2. N+m方式

    すべてのマシンのうち,m台停止しても性能を維持できるようにする方式です。

    m=1,N=6とすると,マシン数は7台となります。

  3. max(2,N)方式

    性能の維持は特に考えないで,1台でも動いていればよいとする方式です。

    N=1の場合だけ,マシン数は2台となります。

(6) 最適なマシン構成の決定

性能要件と信頼性要件を満たすマシン数が決まったら,1台当たりの要求リソースと空きリソースの差が最も少ないマシン数を,マシン構成として採用します。この構成が,空きリソースのむだが最も少なくなります。