2.2.2 構成ソフトウェアの機能概要
それぞれの構成ソフトウェアの機能概要について説明します。
- 〈この項の構成〉
-
(2) Component Container
アプリケーションの実行基盤の中核として,次のような機能を提供する構成ソフトウェアです。
-
J2EEアプリケーションの実行環境(J2EEサーバ)としての機能
-
バッチアプリケーションの実行環境(バッチサーバ)としての機能
-
Webサービスの実行・開発環境としての機能
-
アプリケーションサーバを運用管理する機能
それぞれの機能の概要を示します。
(a) J2EEアプリケーションの実行環境(J2EEサーバ)としての機能
サーバサイドの業務処理プログラム(ビジネスロジック)をコンポーネントとして実行するためのフレームワークである,J2EEサーバを実現するための機能です。Webコンテナ,EJBコンテナなどの機能を含みます。Java Platform, Enterprise Edition(Java EE)に含まれる仕様に準拠しています。対応している仕様の詳細については,「4.6.2 アプリケーションサーバが対応する標準仕様」を参照してください。
さらに,CTM機能によるEnterprise Beanに対する動的負荷分散,流量制御,優先制御およびサービス閉塞に対応するための基盤機能も提供します。
(b) バッチアプリケーションの実行環境(バッチサーバ)としての機能
バッチアプリケーションをサーバで実行するための機能です。バッチ処理の処理内容をJavaで実装したJavaアプリケーションを実行できます。サーバ上でアプリケーションを動作させることによって,JavaVMの起動コストを抑えられます。コネクションプールやステートメントプールを使用した効率の良いデータベースアクセスや,FullGCの制御なども実現できます。
(c) Webサービスの実行・開発環境としての機能
Webサービスの実行環境および開発環境としての機能です。次のエンジンやAPIなどを提供します。
-
JAX-WS仕様に準拠したSOAP Webサービスおよびクライアントの実行に必要なJAX-WSエンジンと,開発に必要なAPI・コマンド
-
JAX-RS仕様に準拠したRESTful Webサービス (Webリソース) のサーバおよびクライアントの実行に必要なJAX-RSエンジンと,開発に必要なAPI
- 参考
-
既存機能であるSOAPアプリケーション開発支援機能も使用できます。
(d) アプリケーションサーバを運用管理する機能
アプリケーションサーバを運用管理するための機能です。次のような運用管理を実現できます。
-
アプリケーションサーバの一括構築・一括運用
-
J2EEサーバ内のアプリケーションやリソースの設定
-
複数のJ2EEアプリケーションのユーザ管理機能をシームレスに連携した統合ユーザ管理
-
アプリケーションサーバの各機能が出力するログの収集
また,JP1などのほかの運用管理プログラム製品と連携して,アプリケーションサーバの運用管理をするためのコマンドも提供しています。
(3) Component Container - Client
EJBクライアントアプリケーションの実行環境を構築するための構成ソフトウェアです。Component Containerのサブセットです。
(4) Component Container - Redirector
アプリケーションサーバのV9互換モードを使用する際に,WebコンテナをWebサーバと連携させるための構成ソフトウェアです。この構成ソフトウェアで提供されるリダイレクタモジュールをWebサーバに登録することで,WebサーバあてのHTTPリクエストのうち,特定のリクエストを指定したWebコンテナに処理させたり,複数のWebコンテナにリクエストを振り分けて処理させたりできます。
(5) Component Transaction Monitor
Enterprise Beanに対するクライアントからのリクエストをスケジューリングして,負荷分散や流量制御を実現する構成ソフトウェアです。アプリケーションごとにキューを管理してJ2EEサーバの負荷状況に応じて処理を分散させたり,一度に処理するリクエストの数を制御したり,業務処理プログラムを入れ替える時に特定のJ2EEアプリケーションだけを閉塞させたりできます。これによって,システムが安定した状態で運転し続けることができるので,業務システムの可用性と信頼性が向上します。
また,バッチアプリケーションの実行もスケジューリングできます。
(6) Developer's Kit for Java
Java Platform, Standard Edition 11に準拠した構成ソフトウェアです。対応するOracle社製のJDKのバージョンはJDK 11です。JDK 11で使用できる機能,コマンドおよびAPIについては,Oracle社が提供しているJDK 11のドキュメントを参照してください。
(8) Performance Tracer
処理性能のボトルネックを解析するためのトレース情報を出力する構成ソフトウェアです。アプリケーションサーバで構築したシステムでは,リクエストが処理される時に,決められたポイントごとに性能解析用のトレース情報を出力します。この情報を収集して分析することで,システムのボトルネックが調査できます。また,障害が発生した場合には,障害の発生個所を特定することもできます。
(9) Reliable Messaging
業務コンポーネント間,社内システム間,および社内システムと社外システム間で,非同期に高信頼なメッセージ送受信を実現する高信頼メッセージング基盤としての機能を提供する構成ソフトウェアです。WS-Reliabilityの仕様に準拠しています。
(10) Service Coordinator
SOAを適用したシステムを構築・運用するための機能を提供する構成ソフトウェアです。次の機能が含まれます。
-
ビジネスプロセス実行機能(HCSC-Business Process)
-
データ変換機能(HCSC-Data Transform)
-
実行環境の運用管理機能(HCSC-Manager)
-
メッセージング制御・サービス連携機能(HCSC-Messaging)
-
受付・アダプタ
(11) Service Development Plug-in
Service Coordinatorの開発環境です。SOAを適用したシステムに必要な受付,アダプタ,ビジネスプロセス,データ変換などの定義作成を支援します。
(12) TPBroker
サーブレットまたはJSPとEnterprise Beanの間などの通信で使用される,Java EEでのRMI-IIOP通信基盤,および分散トランザクション基盤になる構成ソフトウェアです。また,Java EE環境でのCORBAクライアントアプリケーションの実行環境および開発環境を提供します。また,EJBクライアントアプリケーションの実行環境で使用する,RMI-IIOP通信基盤,およびCORBAクライアントアプリケーションの実行環境としての機能も提供します。
(13) Web Services - Security
SOAP Webサービスのセキュリティの標準規格WS-Securityに準拠した機能を提供する構成ソフトウェアです。SOAPメッセージに対して,XML署名を付けたり,SOAPメッセージを暗号化したりします。Web Services - Securityの利用によって,セキュアな状態でSOAPメッセージの送受信ができます。また,SOAPメッセージに付いている署名を検証したり,暗号化されたSOAPメッセージを復号化したりできます。
XML署名の生成・検証,またはXML暗号によるデータの暗号化・復号化を行うアプリケーションの開発を支援する機能も提供しています。