Cosminexus V9 アプリケーションサーバ Cosminexus XML Security - Core ユーザーズガイド

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4.2.7 鍵合意で作成した鍵を利用してデータを暗号化する

XMLデータの要素やコンテンツ,またはバイナリデータを暗号化する場合に使用する鍵や,鍵そのものを暗号化する場合に使用する鍵は,鍵合意で生成できます。鍵合意で鍵を生成するには,AgreementMethodクラスを使用します。この項では,Diffie-Hellman鍵合意アルゴリズムで生成した共通鍵を利用してデータを暗号化するアプリケーションの開発の流れを,コーディング例を示して説明します。

<この項の構成>
(1) Documentオブジェクトの生成
(2) 暗号アルゴリズムの指定
(3) 鍵合意による共通鍵の生成
(4) 暗号データの生成
(5) 暗号構文の構築
(6) 暗号データの出力

(1) Documentオブジェクトの生成

JAXPのDocumentBuilderを使用して暗号化したいXML文書を読み込み,Documentオブジェクトを取得します。Documentオブジェクトを取得するときに,名前空間が有効になるように設定してください。コーディングの例を次に示します。

        DocumentBuilderFactory dbf =
                DocumentBuilderFactory.newInstance();
        dbf.setNamespaceAware(true);
        Document doc = dbf.newDocumentBuilder().parse(input);

(2) 暗号アルゴリズムの指定

XMLEncryptionFactoryクラスを使用してXMLEncryptionオブジェクトを生成し,暗号化に必要な暗号アルゴリズムを指定します。ここでは,暗号アルゴリズムにTripleDESを指定する場合のコーディングの例を示します。

        XMLEncryptionFactory xef =
                XMLEncryptionFactory.newInstance();
        EncryptionMethod em = xef.newEncryptionMethod(
                EncryptionMethod.URI_TRIPLEDES, null);
        XMLEncryption xenc = xef.newXMLEncryption(em, null);

(3) 鍵合意による共通鍵の生成

XML Security - Coreでは,Diffie-Hellman鍵合意アルゴリズムを利用して暗号化に必要な共通鍵を生成します。ここでは,次の三つの処理について,コーディング例を示して説明します。

 

参考
ここでは,KA-Nonce要素,OriginatorKeyInfo要素,またはRecipientKeyInfo要素は指定しない場合の例を説明しますが,必要に応じてこれらの要素を指定することもできます。
(a) AgreementMethodオブジェクトの生成

Diffie-Hellman鍵合意アルゴリズムで鍵を生成するには,まずDHKeyAgreementParamsオブジェクトを生成し,生成したDHKeyAgreementParamsオブジェクトを引数にしてKeyInfoFactoryクラスでAgreementMethodオブジェクトを生成します。コーディングの例を次に示します。

        KeyInfoFactory kif = xef.getKeyInfoFactory();
        DHKeyAgreementParams kap = new DHKeyAgreementParams(null,
               xef.newDigestMethod(DigestMethod.URI_SHA1, null),
                        null, null);
        AgreementMethod am =
                kif.newAgreementMethod(AgreementMethod.URI_DH,kap);
(b) 鍵合意のコンテキストの設定

鍵合意に必要な情報をDHKeyAgreementContextに設定します。鍵合意によって作成される共通鍵を使用するアルゴリズム,送信者の秘密鍵,および受信者の公開鍵を鍵合意のコンテキストとして設定する必要があります。コーディングの例を次に示します。

          DHKeyAgreementContext kac = new DHKeyAgreementContext(em,
                  Utilities.getAliceDHPrivateKey(),
                  Utilities.getBobDHPublicKey());
(c) 共通鍵の作成

「(b) 鍵合意のコンテキストの設定」で設定した内容に従って,共通鍵を生成します。コーディングの例を次に示します。

        SecretKey key = am.generateSecretKey(kac);
        System.out.println("agreed key=" + Utilities.toHexString(
                key.getEncoded()));

(4) 暗号データの生成

暗号データを生成する前に,コンテキストおよび暗号化対象を指定します。ここでは,次の三つの処理について,コーディング例を示して説明します。

(a) コンテキストの設定

データの暗号化に必要なコンテキストを設定します。鍵リゾルバを使用して,鍵合意で生成した共通鍵をコンテキストに設定します。コンテキストの処理モードは,「暗号化」を指定してください。コーディングの例を次に示します。

        XMLSecurityContext context = new XMLSecurityContext(
                XMLSecurityContext.Mode.ENCRYPT, doc);
        context.setKeyResolver(new AdhocKeyResolver(key));
(b) 暗号化対象の指定

暗号化の対象とする個所を指定します。CreditCard要素を指定して暗号化する場合のコーディングの例を次に示します。

        Element elem = Utilities.getElement(
                doc, "http://example.org/payment","CreditCard");
        if (elem == null) {
            throw new Exception("missing p:CreditCard");
        }
        DOMFragment toBeEncrypted = new DOMFragment(elem);
(c) 暗号データの生成

「(b) 暗号化対象の指定」で指定した個所の暗号値を計算します。コーディングの例を次に示します。

        DataContainer encrypted =
                xenc.encryptXML(context, toBeEncrypted);

(5) 暗号構文の構築

XMLEncryptionFactoryクラスを使用して,EncryptedData要素以下の構文に対応するオブジェクトを生成します。この場合,KeyInfo要素にはAgreementMethodクラスを指定します。また,CipherValue要素を使用して「(4)(c) 暗号データの生成」で計算した暗号値を設定します。最後に,EncryptedDataクラスのreplaceメソッドを使用して,「(4)(b) 暗号化対象の指定」で指定した部分をEncryptedData要素に置き換えます。コーディングの例を次に示します。

        CipherData cd = xef.newCipherData(xef.newCipherValue(
                encrypted.getAsByteArray()));
        KeyInfo ki = kif.newKeyInfo(Collections.singletonList(am));
        EncryptedData ed = xef.newEncryptedData(em, ki, cd, null);
        ed.setType(EncryptedData.URI_TYPE_ELEMENT);
        ed.replace(context, toBeEncrypted);

(6) 暗号データの出力

XMLSerializerクラスを使用して,暗号化したい部分をEncryptedData要素に置き換えたDocumentオブジェクトをXML形式で出力します。冗長な名前空間を省略し,Shift_JISで出力する場合のコーディングの例を次に示します。

        XMLOutputFormat format = new XMLOutputFormat();
        format.setOmitRedundantNamespaceDecls(true);
        format.setEncoding("Shift_JIS");
        OutputStream os = new BufferedOutputStream(
                new FileOutputStream(output));
        XMLSerializer xsr = new XMLSerializer(os, format);
        xsr.serialize(doc);
        os.close();