2.5.4 EADsセッションフェイルオーバ機能でトラブルが発生した場合

ここでは,EADsセッションフェイルオーバ機能にトラブルが発生した場合の対処方法として,次の2種類のトラブルへの対処について説明します。

<この項の構成>
(1) J2EEサーバでトラブルが発生した場合
(2) EADsサーバでトラブルが発生した場合
(3) EADsサーバ上のデータ更新に失敗した場合

(1) J2EEサーバでトラブルが発生した場合

J2EEサーバでトラブルが発生してプロセスがダウンした場合,EADsクライアントの実行途中のときでもEADsサーバ上のデータが不整合になることはありません。このため,「2.2.1 トラブルへの対処の手順」に示した手順に従って対処してから,J2EEサーバを起動してください。J2EEサーバの起動方法については,マニュアル「アプリケーションサーバ システム構築・運用ガイド」の「4.1.24 システムを起動する(CUI利用時)」を参照してください。

(2) EADsサーバでトラブルが発生した場合

EADsサーバでトラブルが発生した場合の対処として,次の2種類について説明します。

(a) クラスタ内の一部のEADsサーバでトラブルが発生した場合

クラスタ内の一部のEADsサーバでトラブルが発生した場合,EADsのクラスタ内に使用できるEADsサーバが一つ以上あれば業務を継続できます。ただし,トラブルが発生したEADsサーバを復旧させないで業務を継続すると,EADsサーバの数が減るため可用性は低下します。

トラブルが発生したEADsサーバを復旧させる手順について,業務を継続したまま復旧作業を実施する場合と,業務を停止して復旧作業を実施する場合とに分けて次の表に示します。

表2-10 クラスタ内の一部のEADsサーバでトラブルが発生した場合の復旧手順

EADsサーバ復旧時の業務状況復旧手順注意点
業務を継続EADsサーバの障害要因を取り除いたあと,EADsが提供している閉塞中復旧機能およびデータ整合性確保機能を使用してグローバルセッション情報を復旧します。※1障害の復旧作業中に実行されたHTTPセッションの操作はEADsサーバに反映されません。※2
業務を停止
  1. J2EEアプリケーションまたはJ2EEサーバを停止する。
  2. EADsサーバの障害要因を取り除いたあと,EADsが提供している閉塞中復旧機能およびデータ整合性確保機能を使用してグローバルセッション情報を復旧する。※1
  3. J2EEアプリケーションまたはJ2EEサーバを開始する。
なし

注※1 EADsが提供している機能については,マニュアル「Elastic Application Data store ユーザーズガイド」を参照してください。

注※2 EADsサーバに反映されない場合の動作については,「(3) EADsサーバ上のデータ更新に失敗した場合」を参照してください。


(b) すべてのEADsサーバでトラブルが発生した場合

すべてのEADsサーバでトラブルが発生した場合,EADsセッションフェイルオーバ機能のHTTPセッションの縮退によって業務を継続できます。ただし,EADsサーバを復旧させないで業務を継続した場合,J2EEサーバにトラブルが発生したときに,冗長化されたほかのJ2EEサーバにセッションが引き継がれません。

トラブルが発生したEADsサーバを復旧させる手順について,業務を継続したまま復旧作業を実施する場合と,業務を停止して復旧作業を実施する場合とに分けて次の表に示します。

表2-11 すべてのEADsサーバでトラブルが発生した場合の復旧手順

EADsサーバ復旧時の業務状況復旧手順注意点
業務を継続EADsサーバの障害要因を取り除いたあと,EADsサーバの環境を再度構築します。
EADsサーバの環境の構築については,マニュアル「アプリケーションサーバ 機能解説 拡張編」の「7.6 EADsサーバの準備」を参照してください。
障害発生前に生成したセッションの操作がEADsサーバに反映されません。※1
障害の復旧作業中に実行されたHTTPセッションの操作がEADsサーバに反映されません。※2
業務を停止
  1. J2EEアプリケーションまたはJ2EEサーバを停止する。
  2. EADsサーバの障害要因を取り除いたあと,EADsサーバの環境を再度構築する。EADsサーバの環境の構築については,マニュアル「アプリケーションサーバ 機能解説 拡張編」の「7.6 EADsサーバの準備」を参照してください。
  3. J2EEアプリケーションまたはJ2EEサーバを開始する。
EADsサーバに格納されていたグローバルセッション情報がすべてなくなるため,J2EEサーバ上にセッションを再作成できません。

注※1 EADsサーバ上にセッション情報が存在しない状態になるため,J2EEサーバ上のHTTPセッションだけで動作します。縮退したHTTPセッションとは異なり,次回リクエスト受信時のグローバルセッション情報の作成または更新処理でEADsサーバ上のセッション情報キャッシュに反映されません。

注※2 EADsサーバに反映されない場合の動作については,「(3) EADsサーバ上のデータ更新に失敗した場合」を参照してください。


(3) EADsサーバ上のデータ更新に失敗した場合

EADsサーバ上のデータ更新に失敗した場合の対処を次の表に示します。

表2-12 EADsサーバ上のデータ更新に失敗した場合の対処

障害の内容データ更新の内容障害発生後の状態障害発生後の対応
すべてのEADsサーバ上のデータ更新に失敗グローバルセッション情報の作成すべてのEADsサーバ上(セッション情報の格納先サーバおよびコピー先サーバ)にグローバルセッション情報が作成されません。
EADsセッションフェイルオーバ機能では,縮退して業務を継続します。※1
なし
グローバルセッション情報の更新すべてのEADsサーバ上(セッション情報の格納先サーバおよびコピー先サーバ)のグローバルセッション情報が更新されません。EADsセッションフェイルオーバ機能では縮退して業務を継続します。※1なし
グローバルセッション情報の削除すべてのEADsサーバ上(セッション情報の格納先サーバおよびコピー先サーバ)のグローバルセッション情報が削除されないで,残り続けます。
なお,同じセッションIDのリクエストを受信した場合,グローバルセッション情報がJ2EEサーバに引き継がれます。
コマンドを使用してグローバルセッション情報を削除します。
削除手順については,マニュアル「アプリケーションサーバ 機能解説 拡張編」の「7.8.1 EADsサーバ上のグローバルセッション情報の削除(セッション情報の格納先サーバ)」を参照してください。
EADsサーバ上(セッション情報のコピー先サーバ)のデータ更新に失敗グローバルセッション情報の作成セッション情報のコピー先サーバ上にグローバルセッション情報が作成されません。EADsセッションフェイルオーバ機能では縮退して業務を継続します。※1なし
グローバルセッション情報の更新セッション情報のコピー先サーバ上のグローバルセッション情報が更新されません。EADsセッションフェイルオーバ機能では縮退して業務を継続します。なし
グローバルセッション情報の削除セッション情報のコピー先サーバ上のグローバルセッション情報が削除されないで,残り続けます。
なお,セッション情報の格納先サーバに障害が発生して,グローバルセッション情報が残っているコピー先サーバが格納先サーバに切り替わった場合,同じセッションIDのリクエスト受信時にグローバルセッション情報がJ2EEサーバに引き継がれてしまうことがあります。
コマンドを使用してグローバルセッション情報を削除します。※2
削除手順については,マニュアル「アプリケーションサーバ 機能解説 拡張編」の「7.8.2 EADsサーバ上に残ったグローバルセッション情報の削除(セッション情報のコピー先サーバ)」

注※1 HTTPセッションの縮退については,マニュアル「アプリケーションサーバ 機能解説 拡張編」の「5.7.3 HTTPセッションの縮退」を参照してください。

注※2 障害が発生し,EADsのクラスタから除外されたEADsサーバ(セッション情報の格納先サーバおよびコピー先サーバ)は,グローバルセッション情報の削除対処になりません。