この節では,クラスタソフトウェアと連携するための設定の概要について説明します。
クラスタソフトウェアとは,システムの信頼性および稼働率の向上を目的とした,サーバプログラムを含めたシステムの切り替えを実現するプログラムです。アプリケーションサーバでは,次に示すクラスタソフトウェアと連携できます。
- Windows Server Failover Cluster
Windows Server 2012およびWindows Server 2008の場合に使用するクラスタソフトウェアです。使用できるOSは次のとおりです。
- Microsoft Windows Server 2012 Standard 日本語版
- Microsoft Windows Server 2012 Datacenter 日本語版
- Microsoft Windows Server 2008 Enterprise 32-bit 日本語版
- Microsoft Windows Server 2008 Enterprise 日本語版
- Microsoft Windows Server 2008 R2 Enterprise 日本語版
- HAモニタ
AIX・HP-UX・Linuxの場合に使用するクラスタソフトウェアです。
クラスタソフトウェアと連携してシステムを運用することで,アプリケーションサーバに障害が発生した場合に,直ちに自動でアプリケーションサーバを切り替えたり,待機しているリカバリサーバで,障害が発生したアプリケーションサーバのリカバリ処理をしたりできます。また,運用管理サーバに障害が発生した場合にも,待機させておいた運用管理サーバに切り替えることができます。これによって,システムの不稼働時間を短縮でき,信頼性や稼働率を高めることができます。
- 注意
- 運用管理エージェントとManagement Serverの障害を監視して,クラスタソフトウェアと連携してシステムを切り替える場合は,運用管理エージェントとManagement Serverに自動再起動を設定しないでください。
アプリケーションサーバのシステムでは,クラスタソフトウェアと連携して運用することで,障害によるシステムの不稼働時間を短縮したり,障害発生時でも業務の継続を可能にしたりできます。アプリケーションサーバでは,次に示すクラスタソフトウェアとの連携による系切り替え機能を使用します。
- 1:1系切り替えシステム
- アプリケーションサーバの1:1系切り替え
実行系のアプリケーションサーバと待機系のアプリケーションサーバを1:1にした構成とすることで,実行系のアプリケーションサーバに障害が発生したときに系を切り替えて,業務を続行できます。
- 運用管理サーバの1:1系切り替え
実行系の運用管理サーバと待機系の運用管理サーバを1:1にした構成とすることで,実行系の運用管理サーバに障害が発生したときに系を切り替えて,業務を続行できます。
- 相互系切り替え
実行系のアプリケーションサーバと待機系のアプリケーションサーバを1:1にして,それぞれのアプリケーションサーバが実行系として動作しながらお互いの待機系として機能するシステムです。少ない台数のアプリケーションサーバマシンで,むだの少ない運用ができるようになります。
- N:1リカバリシステム
N台の実行系のアプリケーションサーバに対して,1台のリカバリ専用の待機系のアプリケーションサーバを配置するシステムです。J2EEサーバを冗長化した構成でグローバルトランザクションを使用する場合に,特定のJ2EEサーバにトラブルが発生したとき,リカバリ専用サーバでトランザクションを決着できるようになります。
- ホスト単位管理モデルを対象にした系切り替えシステム
アプリケーションサーバマシン(ホスト)の実行系複数(1~N台)と待機系1台を配置し,それぞれにManagement Serverおよび運用管理エージェントを配置するシステムです。実行系のアプリケーションサーバマシンに障害が発生したときに待機系のアプリケーションサーバマシンに系を切り替えて,業務を続行できます。
- 参考
- アプリケーションサーバで1:1系切り替えシステム,N:1リカバリシステムおよびホスト単位管理モデルを対象にした系切り替えシステムを構築,および運用するためには,次のクラスタソフトウェアを使用します。
- Windows Server Failover Cluster(Windowsの場合)
- HAモニタ(AIX,HP-UXまたはLinuxの場合)
- なお,クラスタソフトウェアと連携する場合には,次の用語を理解しておいてください。
- クラスタソフトウェアでは,業務処理に必要なハードウェアのほか,実行するプログラムや通信機器を含めたシステム全体の総称を系といいます。システムで動作中の系を区別する呼び方に,実行系・待機系があります。
- 実行系
現在実行中のサーバがある系のことです。系切り替えが発生すると,待機系になります。
- 待機系
現在待機中のサーバがある系のことです。系切り替えが発生すると,実行系になります。
- また,システムの設定などで,システムが動作していないときの系を区別する呼び方に,現用系・予備系があります。
- 現用系
起動したときに,最初に実行系として起動される系のことです。
- 予備系
起動したときに,最初に待機系として起動される系のことです。
アプリケーションサーバではクラスタソフトウェアと連携することによって,J2EEアプリケーションの実行環境の系切り替え構成でシステムを運用できます。
クラスタソフトウェアとの連携による系切り替え機能の参照先を次に示します。
表16-2 クラスタソフトウェアとの連携による系切り替え機能
機能 | 参照先 |
---|
1:1系切り替えシステム | アプリケーションサーバの1:1系切り替え※ | 17.2 |
運用管理サーバの1:1系切り替え | 17.2 |
相互系切り替え | 18.2 |
N:1リカバリシステム※ | 19.2 |
ホスト単位管理モデルを対象とした系切り替えシステム | 20.2 |
注※ これらのシステムは,Smart Composer機能では構築できません。運用管理ポータルを使用して,システムを構築してください。
- <この節の構成>
- 16.2.1 実行系と待機系を1:1で運用するシステムとは(1:1系切り替えシステム)
- 16.2.2 相互スタンバイで運用するシステムとは(相互系切り替えシステム)
- 16.2.3 待機系をリカバリ専用サーバとして運用するシステムとは(N:1リカバリシステム)
- 16.2.4 実行系と待機系のアプリケーションサーバマシン(ホスト)をN:1で運用するシステムとは(ホスト単位管理モデルを対象にした系切り替えシステム)