5.5.3 セッションフェイルオーバ機能の差異

データベースセッションフェイルオーバ機能とEADsセッションフェイルオーバ機能の機能差異を説明します。なお,データベースセッションフェイルオーバ機能の完全性保障モード有効時と無効時で機能差異がある場合は,それぞれを分けて示します。

<この項の構成>
(1) セッションフェイルオーバ機能の優位性の比較
(2) 使用できるセッションフェイルオーバの機能
(3) 障害発生時の動作

(1) セッションフェイルオーバ機能の優位性の比較

データベースセッションフェイルオーバ機能(完全性保障モード有効時と無効時)とEADsセッションフェイルオーバ機能の優位性の比較を次の表に示します。ここでは,データベースセッションフェイルオーバ機能の完全性保障モード無効時を基準にした場合の優位性の比較を示します。

表5-8 セッションフェイルオーバの優位性の比較

項番比較項目データベースセッションフェイルオーバ機能(完全性保障モードの設定別)EADsセッションフェイルオーバ機能理由
有効無効
1リクエスト処理性能EADsセッションフェイルオーバ機能の場合,グローバルセッション情報の格納先がメモリであり,ディスクよりもアクセスが高速のため。
2システムの可用性EADsセッションフェイルオーバ機能の可用性はEADsサーバの数(多重度)に依存するため,同じサーバ数で比較すると,EADサーバ上のメモリでグローバルセッション情報を管理するEADsセッションフェイルオーバ機能よりも,データベースでグローバルセッション情報を管理するデータベースセッションフェイルオーバ機能の方が,グローバルセッション情報を消失する可能性が低い。
3グローバルセッション情報の完全性データベースセッションフェイルオーバ機能の完全性保障モードが有効な場合だけ,グローバルセッション情報の完全性が保障される。
(凡例)
◎:機能要件に対し,基準値より優れている。
△:機能要件に対し,基準値より劣る。
-:基準値

(2) 使用できるセッションフェイルオーバの機能

使用できるセッションフェイルオーバの機能を次の表に示します。

表5-9 使用できるセッションフェイルオーバの機能

項番機能名概要データベースセッションフェイルオーバ機能(完全性保障モードの設定別)での使用可否EADsセッションフェイルオーバ機能での使用可否参照先
有効無効
1セッションフェイルオーバ抑止機能HTTPセッションを使用しないリクエストの場合に,セッションフェイルオーバ機能を抑止することで,リクエスト処理性能の低下を防止する機能5.6.1
2HTTPセッションの参照専用リクエスト定義HTTPセッションを更新しない参照専用のリクエストの場合に,グローバルセッション情報を更新しないようにすることで,データベースまたはEADsサーバへのアクセスによるリクエスト処理性能の低下を防止する機能×5.6.2
3同一セッションIDの同時実行同じセッションIDを持つリクエストの同時実行を実現して,リクエスト処理性能への影響を軽減する機能×5.7.1
4Webアプリケーション開始時のグローバルセッション情報の引き継ぎWebアプリケーションの開始時にグローバルセッション情報を自動的に引き継ぐ機能×5.7.2
5HTTPセッションの縮退グローバルセッション情報を保存するデータベースまたはEADsサーバで障害が発生した場合に,J2EEサーバ上のHTTPセッションだけでリクエスト処理を継続する機能×5.7.3
6HTTPセッションの属性情報のサイズ見積もりHTTPセッションに登録した属性をデータベースまたはEADsサーバに格納する場合のサイズを見積もる機能5.8.2
7グローバルセッション情報の削除SQLファイルまたはコマンドを使用して,データベース上またはEADsサーバ上のグローバルセッション情報を削除する機能×6.10.37.8.1
(凡例)
○:使用できる。 ×:使用できない。

データベースセッションフェイルオーバ機能の完全性保障モードを無効にした場合の動作の詳細,使用できる機能および注意事項については,「6.3 性能を重視したモードの選択(完全性保障モードの無効化)」を参照してください。

完全性保障モードの設定については,「6.6 J2EEサーバの設定」を参照してください。

(3) 障害発生時の動作

データベースセッションフェイルオーバ機能とEADsセッションフェイルオーバ機能では,セッション情報の格納先が異なるため,障害発生時の動作が異なります。各機能の障害発生時の動作を次の表に示します。

表5-10 障害発生時の動作

項番障害の発生個所データベースセッションフェイルオーバ機能(完全性保障モードの設定別)の動作EADsセッションフェイルオーバ機能の動作
有効無効
1J2EEサーバ障害が発生していないJ2EEサーバで,障害発生直前の状態から業務を再開できる。
2セッション情報の格納先(データベース,またはEADsサーバ)業務の継続業務を継続できない。縮退して業務を継続できる。業務を継続できる
セッション情報が格納されているEADsサーバ(セッション情報のコピー先のEADsサーバを含む)がすべてダウンした場合でも,縮退して業務を継続できる。
障害回復後の業務再開業務を中断して障害回復をした場合,障害発生直前の状態から業務を再開できる。業務を中断して障害回復をした場合,障害発生直前の状態から業務を再開できる。システム内のすべてのEADsサーバで障害が発生した場合,業務を中断して障害回復をしても,セッション情報がなくなるため障害発生前の状態に回復できない。
注※
セッション情報が格納されているEADsサーバに障害が発生しても,EADsで設定している多重度-1の数のEADsサーバがダウンするまでは,データが保障されます。多重度については,マニュアル「Elastic Application Data store ユーザーズガイド」を参照してください。