6.2.1 運用設計

システムの運用設計として,システムの起動や停止などの日常運用操作,運用スケジュール,運用スケジュールの自動化,監視,稼働性能統計などを設計します。

ここでは,次に示すSmart Composer機能を使用した運用作業について説明します。

これらの運用方法については,「11. バッチアプリケーションを実行するシステムの運用」を参照してください。

なお,ここでは,バッチサーバを配置するパターン(j2ee-tier)で構築したシステムを例に説明しています。ここで説明している運用のうち,システムのスケールアウトおよびシステムのスケールイン以外は,CTMを使用するパターン(ctm-tier)で構築したシステムでも操作できます。

ここで説明している以外の運用については,「11.1.2 アプリケーションサーバで実行できる運用作業」を参照してください。なお,運用作業には,運用を開始する前に設定が必要なものもあります。システムで実施する運用作業を検討し,必要に応じて構築時に設定をしてください。

<この項の構成>
(1) 日常運用
(2) システムの設定変更
(3) システムの構成変更
(4) 構築済みのシステムの移行
(5) システムの削除

(1) 日常運用

Smart Composer機能で構築したシステムでは,日常運用の操作としてサービスユニットの一括起動と一括停止ができます。一括起動および一括停止は,システム内のすべてのサービスユニットに対して実施したり,特定のサービスユニットに対して実施したりできます。

一括起動および一括停止の範囲を次の図に示します。

図6-10 一括起動および一括停止の範囲

[図データ]

特定のサービスユニットに対して起動または停止できるので,例えば,サービスユニット1だけを停止させるという操作もできます。

次に,一括起動と一括停止の処理について説明します。

(a) サービスユニットの一括起動処理

サービスユニットを一括起動すると,サービスユニットを構成する論理サーバは,論理サーバごとに設定した起動順序の昇順に従って起動されます。

一括起動時に-strictオプションを指定すると,論理サーバの起動に失敗した場合に,サービスユニットの一括起動処理を中断できます。

(b) サービスユニットの一括停止処理

サービスユニットを一括停止すると,サービスユニットを構成する論理サーバは,論理サーバごとに設定した起動順序の降順に従って停止されます。

(2) システムの設定変更

Smart Composer機能で構築したシステムでは,システム全体の設定を一括で変更できます。システム全体の設定の一括変更について次の図に示します。

図6-11 システム全体の設定の一括変更

[図データ]

システム全体の設定の一括変更の流れは次のとおりです。

  1. システムを停止します。
  2. 変更後の設定をシステムに反映させます。
    システム内のすべての設定を一度に変更できます。
  3. システムを起動します。

これらの操作はすべてSmart Composer機能のコマンドを使用して実施します。なお,それぞれの操作は,システム内のすべてのサービスユニットに対して一括で実施できます。

(3) システムの構成変更

Smart Composer機能で構築したシステムで実施できる,システムの構成変更について説明します。

注意
CTMを使用するパターン(ctm-tier)で構築したシステムの場合,システムのスケールアウトおよびスケールインによるシステムの構成変更は実施できません。
(a) システムのスケールアウトおよびスケールイン

システムのスケールアウトおよびスケールインができます。スケールアウトとは,システム全体の処理性能を向上させることを目的として,サーバの台数を増やすことをいいます。また,スケールインとは,システムの規模を縮小する場合などに,サーバの台数を減らすことをいいます。

スケールアウトおよびスケールインは,サービスユニット単位またはWebシステム単位で実施できます。なお,スケールアウトおよびスケールインは,業務全体を停止することなく実施できます。

スケールアウトおよびスケールインについて次の図に示します。

図6-12 スケールアウトおよびスケールイン

[図データ]

この図では,サービスユニット3をシステムに追加(スケールアウト),またはシステムから削除(スケールイン)しています。サービスユニット3のスケールアウトおよびスケールインに際しては,稼働中のサービスユニット1およびサービスユニット2には影響はないため,業務全体を停止することなく,スケールアウトおよびスケールインができます。

(b) JP1/SC/DPMと連携したスケールアウト

Smart Composer機能でシステムをスケールアウトする際に,JP1/SC/DPMと連携できます。

JP1/SC/DPMでは,システムのディスクイメージを複製し,複製したデータを基にして,OSやアプリケーションを一括でサーバにインストールできます(ディスク複製OSインストール機能)。Smart Composer機能でシステムをスケールアウトするときにJP1/SC/DPMと連携すると,構築済みのシステムの複製した情報を使用して,追加するアプリケーションサーバにOSやアプリケーションを一括インストールできます。

JP1/SC/DPMと連携してスケールアウトをするときの流れを次の図に示します。ここでは,サービスユニット1が構築済みの場合に,JP1/SC/DPMを使用して,サービスユニット2をシステムに追加(スケールアウト)することを例にしています。

図6-13 JP1/SC/DPMと連携したスケールアウト

[図データ]

JP1/SC/DPMと連携したスケールアウトの流れは次のとおりです。

  1. Smart Composer機能で構築済みのサービスユニット1のディスクイメージを,JP1/SC/DPMを使用して複製します。
  2. 手順1.で複製したディスクイメージに従って,追加するサービスユニット2にOSやアプリケーションをインストールします。
  3. Smart Composer機能のコマンドを使用して,サービスユニット2をシステムに追加(スケールアウト)します。
    参考
    JP1/SC/DPMと連携すると,マシン(運用管理ドメイン)単位にスケールアウトしてサーバの台数を増やしたり,またはスケールインしてサーバの台数を減らしたりできます。JP1/SC/DPMでのスケールアウトおよびスケールインについては,「11.5 JP1/SC/DPMを利用したシステムのスケールアウトとスケールイン」を参照してください。

(4) 構築済みのシステムの移行

テスト環境で構築したシステムを本番環境に移行する場合などに,構築済みのシステムを移行できます。

構築済みのシステムの移行について次の図に示します。

図6-14 構築済みのシステムの移行

[図データ]

構築済みのシステムの移行の流れは次のとおりです。

  1. 移行元の環境で,システムの設定内容を簡易構築定義ファイルの形式で出力します。
  2. 移行先の環境で,出力した簡易構築定義ファイルを使用して,システムを構築します。移行先の環境では,移行元の環境のシステムと同じ設定内容のシステムが構築されます。

これらの操作はSmart Composer機能のコマンドを使用して実施します。なお,構築済みのシステムを移行するためには,移行先のシステムで,Management Serverが動作している必要があります。構築済みのシステムを移行する前に,移行先のシステムでインストールと初期設定を済ませておいてください。

(5) システムの削除

不要になったシステムは,Smart Composer機能で提供するコマンドで削除できます。システムを削除する手順については,「11.8 システムの削除」を参照してください。