同一のデプロイメント(プロセスの配置,J2EEアプリケーションやリソースアダプタのデプロイ,定義設定)を適用するサーバマシンの集合を物理ティアといいます。J2EEアプリケーションを実行するシステムで使用できる物理ティアには,combined-tier,http-tier,j2ee-tier,sfo-tier,ctm-tier,およびfree-tierの6種類があります。物理ティアの種類によって,サービスユニットに配置する論理サーバの構成が異なり,システムの構成定義が決まります。
Smart Composer機能で構築する場合,決定したシステム構成に合わせて,物理ティア(構成定義パターン)を選択する必要があります。システム構成と指定できる物理ティアの関係については,「5. システム構成に合わせた構成定義パターンの選定」を参照してください。
combined-tierは,WebサーバとJ2EEサーバを同じサーバマシンに配置するパターンのことです。業務サービス用の物理ティアで,アプリケーションサーバマシンの中に,Webサーバ,J2EEサーバ,およびパフォーマンストレーサ(PRFデーモン)の三つの論理サーバを配置します。
combined-tierの概要を次の図に示します。
図4-3 combined-tierの概要
この図に示すように,combined-tierでは,WebサーバとJ2EEサーバを同じアプリケーションサーバマシンに配置します。シンプルな構成のため,日常のメンテナンスやシステムの拡張が容易です。
http-tierは,WebサーバとJ2EEサーバを別のサーバマシンに配置するパターンのことです。業務サービス用の物理ティアで,Webサーバ側のマシンの集合です。Webサーバマシンの中に,Webサーバ,およびパフォーマンストレーサ(PRFデーモン)の二つの論理サーバを配置します。http-tierは,WebサーバとJ2EEサーバを配置するマシンを分けたい場合に,j2ee-tierと組み合わせて利用します。
http-tierの概要を次の図に示します。
図4-4 http-tierの概要
この図に示すように,http-tierに属するWebサーバマシンにWebサーバを配置し,j2ee-tierに属するアプリケーションサーバマシンにJ2EEサーバを配置します。この場合,サービスユニットは,http-tierとj2ee-tierに属するサーバマシンに配置する論理サーバの組み合わせで構成されます。
j2ee-tierは,WebサーバとJ2EEサーバを別のサーバマシンに配置するパターン,およびインプロセスHTTPサーバを使用するパターンのことです。業務サービス用の物理ティアで,J2EEサーバ側のマシンの集合です。アプリケーションサーバマシンの中に,J2EEサーバ,およびパフォーマンストレーサ(PRFデーモン)の二つの論理サーバを配置します。
j2ee-tierは,http-tierと組み合わせて利用する場合と,j2ee-tierだけで利用する場合があります。
図4-5 j2ee-tierの概要(http-tierと組み合わせて利用する場合)
図4-6 j2ee-tierの概要(j2ee-tierだけで利用する場合)
sfo-tierは,SFOサーバを使用するパターンのことです。メモリセッションフェイルオーバ用の物理ティアで,セッションフェイルオーバサーバマシンの中に,セッションフェイルオーバサーバ(SFOサーバ),およびパフォーマンストレーサ(PRFデーモン)の二つの論理サーバを配置します。sfo-tierは,メモリセッションフェイルオーバ機能を利用する場合に使用します。
sfo-tierの概要を次の図に示します。
図4-7 sfo-tierの概要
この図に示すように,sfo-tierには,セッション情報を管理するセッションフェイルオーバサーバ(SFOサーバ)が必要です。sfo-tierは,J2EEサーバなどを配置したほかの物理ティアと組み合わせて使用します。
メモリセッションフェイルオーバ機能については,マニュアル「Cosminexus アプリケーションサーバ 機能解説 拡張編」の「7. メモリセッションフェイルオーバ機能」を参照してください。
ctm-tierは,CTMを使用するパターンのことです。CTM用の物理ティアで,次に示すマシンの中に,CTM関連の論理サーバや,J2EEサーバなどを配置します。
Smart Composer機能の場合,CTMを使用したシステムは,統合ネーミングスケジューラサーバを使用した統合ネーミングスケジューラサーバモデルで構築することを前提としています。ctm-tierは,CTMによるスケジューリングを利用する場合に使用します。CTMによるスケジューリングについては,マニュアル「Cosminexus アプリケーションサーバ 機能解説 拡張編」の「3. CTMによるリクエストのスケジューリングと負荷分散」を参照してください。
ctm-tierの概要を次の図に示します。
図4-8 ctm-tierの概要
この図に示すように,ctm-tierでは,CTM関連のプロセスおよびJ2EEサーバを配置するアプリケーションサーバと,グローバルCORBAネーミングサービスを独立したマシンに配置する統合ネーミングスケジューラサーバが必要になります。それぞれのサーバは,別のWebシステムに属します。アプリケーションサーバには,一つのCTMに対して,J2EEアプリケーションや環境設定などの構成が同じJ2EEサーバを複数配置できます。ctm-tierは,ほかの物理ティアとは別のWebシステムに属しているため,バックシステムとして単独で利用できます。
また,CTMにリクエストを送信できるクライアントは,EJBクライアントおよびWebクライアントです。WebクライアントのリクエストをCTMに送信するWebフロントシステムには,Smart Composer機能以外で構築したユーザ独自のシステムも使用できます。
ほかのどの物理ティアの構成にも当てはまらない構成です。ほかの物理ティアとは異なり,システムを構築する場合には使用しないで,運用管理ポータルなどで構築したシステムをほかの環境に移行する場合に使用します。運用管理ポータルなどを使用して構築したシステムの内容を簡易構築定義ファイルに出力する場合,ほかのどの物理ティアの構成にも当てはまらない構成が含まれていると,その構成がfree-tier構成として出力されます。
free-tier構成には,Webシステム名,およびサービスユニット名がありません。そのため,free-tier構成を含むシステムに対して,Smart Composer機能のコマンドでできる操作は,システムの構築,起動および停止です。そのほかの操作は,Smart Composer機能のコマンドでは実施できません。