2.5.2 使用するプロセスの検討と必要なソフトウェアの準備

アプリケーションサーバのシステムでは,使用するプロセスの種類とその配置によってシステム構成が決まります。

アプリケーションサーバのシステムはWebフロントシステムとバックシステムで構成されます。Webフロントシステムは,クライアントとしてWebブラウザを使用するシステムです。バックシステムは,クライアントとしてEJBクライアントを使用するシステムです。システムの分類については,「3.1.1 システムの目的と構成」で詳しく説明します。

ここでは,まず,システムの分類に応じて必要なプロセスとソフトウェアについて説明します。次に,使用する機能に応じて必要なプロセス,モジュールおよびソフトウェアについて説明します。なお,これらのプロセス,モジュール,ソフトウェアをどのようにシステムに配置するかについては,「3. システム構成の検討(J2EEアプリケーション実行基盤)」で説明します。

<この項の構成>
(1) システムの分類に応じて必要なプロセス
(2) 使用する機能に応じて必要なプロセスおよびモジュール

(1) システムの分類に応じて必要なプロセス

システムの分類に応じて必要なプロセスを次に示します。これらは,使用する機能に関係なく共通して必要なプロセスです。アプリケーションサーバによって提供されます。

Webフロントシステムの場合に必要なプロセス
Webフロントシステムの場合に必要なプロセスは次のとおりです。
  • Webサーバ
  • J2EEサーバ
  • PRFデーモン
なお,アプリケーションサーバに含まれるWebサーバは,Hitachi Web Serverです。クライアントには,Webブラウザを使用します。
注※
インプロセスHTTPサーバを利用する場合は,Webサーバのプロセスは不要です。
ポイント
Webサーバ選択の指針
Webクライアントシステムでは,Webクライアントからのリクエストを,次のどちらかのWebサーバを利用して処理できます。
  • リダイレクタと連携したWebサーバ(Webサーバ連携
    アプリケーションサーバまたはWeb Redirectorが提供するリダイレクタモジュールを組み込んだWebサーバと連携してリクエストを処理します。Webサーバが受信したリクエストは,リダイレクタモジュールを経由して,J2EEサーバに送信されます。
    Hitachi Web ServerまたはMicrosoft IISが利用できます。
  • インプロセスHTTPサーバ
    Webコンテナ機能の一部として提供される,J2EEサーバのプロセス内で機能するHTTPサーバでリクエストを処理します。WebクライアントからのリクエストをJ2EEサーバで直接受信できます。
なお,アプリケーションサーバでは,リダイレクタと連携したWebサーバを利用することを推奨しています。また,デフォルトの設定で使用する場合は,リダイレクタと連携したWebサーバが利用されます。特に性能を重視したシステムを構築したい場合に,インプロセスHTTPサーバの利用を検討してください。
それぞれのWebサーバの特徴を次の表に示します。Webサーバを選択する場合の指針にしてください。

表2-5 Webサーバ選択の指針

比較項目リダイレクタと連携したWebサーバインプロセスHTTPサーバ
Webサーバとして利用できる機能
Hitachi Web Server(Apacheの機能をベースにしたWebサーバ)またはMicrosoft IISが提供する多様な機能を利用できます。

サーブレット,JSPまたはHTMLから構成されるWebアプリケーションへのアクセスを目的にした最小限の機能だけが提供されています。※1
構築,運用の容易性
構築時には,Webサーバの環境設定が必要です。運用時には,Webサーバの起動,停止が必要です。ただし,Smart Composer機能のコマンドで構築・運用できるため,煩雑な操作は不要です。

構築時のWebサーバの環境設定,および運用時のWebサーバの起動,停止の操作が不要です。
HTML,JPEGなどの静的コンテンツに対するアクセス性能
静的コンテンツをWebサーバ上に配置することによって,最適な性能を確保できます。
なお,Webコンテナ上に配置する場合は,リダイレクタ経由のアクセスになるため,アクセス処理に時間が掛かります。

リダイレクタを経由しないでアクセスできるため,最適な性能を確保できます。
サーブレット,JSPなどの動的コンテンツに対するアクセス性能
リダイレクタを経由するためのアクセス処理に時間が掛かります。

リダイレクタを経由しないでアクセスできるため,最適な性能を確保できます。
注意事項インターネットに接続する場合には,セキュリティ上の観点から,DMZを確保する構成にして,リバースプロキシをフロントに配置することを推奨します。
また,リバースプロキシを配置しない場合は,リダイレクタを組み込んだWebサーバをDMZに配置することで,同様の効果を得ることもできます。※2
インターネットに接続する場合には,セキュリティ上の観点からDMZを確保する構成にして,必ずリバースプロキシをフロントに配置してください。※2

(凡例)○:優れている。 △:優れていない。

注※1 インプロセスHTTPサーバで使用できる機能の詳細については,マニュアル「Cosminexus アプリケーションサーバ 機能解説 基本・開発編(Webコンテナ)」の「4.2.2 インプロセスHTTPサーバで使用できる機能」を参照してください。

注※2 DMZへのWebサーバの配置については,「3.13 DMZへのリバースプロキシの配置を検討する」を参照してください。


バックシステムの場合に必要なプロセス
バックシステムの場合に必要なプロセスは次のとおりです。
  • J2EEサーバ
  • PRFデーモン
バックシステムのクライアントには,EJBクライアントを使用します。EJBクライアントとは,Enterprise Beanを呼び出す,Servlet,JSP,ほかのEnterprise Bean,EJBクライアントアプリケーション,またはほかの業務システムのことです。
EJBクライアントとしてEJBクライアントアプリケーションを使用するとき,Windowsの場合はクライアントマシンをuCosminexus Clientを使用して構築することもできます。アプリケーションサーバまたはuCosminexus Clientのどちらのソフトウェアを使用した場合も,必要に応じてPRFデーモンを起動できます。
参考
CTMを使用したシステムの場合,クライアントとしてTPBrokerやTPBroker Object Transaction Monitorのクライアントなど,EJBクライアント以外のクライアントも使用できます。

(2) 使用する機能に応じて必要なプロセスおよびモジュール

使用する機能に応じて必要なプロセスおよびモジュールについて説明します。アプリケーションサーバによって提供されるものと,アプリケーションサーバ以外のソフトウェアによって提供されるものがあります。

使用する機能ごとに必要なプロセスのうち,アプリケーションサーバによって提供されるものを次の表に示します。これらのプロセスは,アプリケーションサーバをインストールしたマシンで起動できます。

表2-6 機能ごとに必要なプロセスまたはモジュール(アプリケーションサーバによって提供されるもの)

機能必要なプロセス
サーバ間連携でCTMを利用する/CTMを利用して負荷を分散するCTMデーモン
CTMレギュレータ
CTMドメインマネジャ
グローバルCORBAネーミングサービス
スマートエージェント
Management Serverを利用して運用管理するManagement Server
運用管理エージェント
メモリセッションフェイルオーバ機能を使用して可用性を向上させるSFOサーバ
CORBAネーミングサービスをアウトプロセスで起動するCORBAネーミングサービス

使用する機能ごとに必要なプロセスおよびモジュールのうち,アプリケーションサーバ以外の製品が提供するプロセスおよびモジュールを,表2-7および表2-8に示します。

表2-7 機能ごとに必要なモジュール(アプリケーションサーバ以外によって提供されるもの)と提供するソフトウェア

機能モジュール提供するソフトウェア備考
データベース(HiRDB)と接続するHiRDB Type4 JDBC Driver
  • HiRDB Server Version 9
  • HiRDB Server with Additional Function Version 9
  • HiRDB/Run Time Version 9
  • HiRDB/Developer's Kit Version 9
  • HiRDB Developer's Suite Version 9
  • HiRDB/Parallel Server Version 8
  • HiRDB/Single Server Version 8
  • HiRDB/Run Time Version 8
  • HiRDB/Developer's Kit Version 8
JDBCドライバとしてHiRDB Type4 JDBC Driverを使用する場合に必要になります。
データベース(Oracle)と接続するOracle JDBC Thin Driver
  • Oracle JDBC Thin Driver
JDBCドライバとしてOracle JDBC Thin Driverを使用する場合に必要になります。
データベース(SQL Server)と接続するSQL Server 2000 Driver for JDBC
  • SQL Server 2000 Driver for JDBC
SQL Server 2000に接続する場合に必要になります。
SQL Server 2005 JDBC Driver
  • SQL Server 2005 JDBC Driver
SQL Server 2005に接続する場合に必要になります。
SQL Server JDBC Driver
  • SQL Server JDBC Driver
SQL Server 2008に接続する場合に必要になります。
データベース(XDM/RD E2)と接続するHiRDB Type4 JDBC Driver
  • HiRDB/Parallel Server Version 8
  • HiRDB/Single Server Version 8
  • HiRDB/Run Time Version 8
  • HiRDB/Developer's Kit Version 8
JDBCドライバとしてHiRDB Type4 JDBC Driverを使用する場合に必要になります。
Message Queueサーバと接続するTP1/Message Queue - Access
  • TP1/Message Queue - Access
OpenTP1のSPPと接続するuCosminexus TP1 Connector
  • uCosminexus TP1 Connector
TP1/Client/J
  • TP1/Client/J

(凡例) -:該当しません。

注 モジュールは,J2EEサーバのプロセスに含まれて動作します。


表2-8 機能ごとに必要なプロセス(アプリケーションサーバ以外によって提供されるもの)と提供するソフトウェア

機能必要なプロセス提供するソフトウェア
クラスタソフトウェアを使用して障害時に系を切り替えるMicrosoft Cluster ServiceMicrosoft Cluster Service
HAモニタHAモニタ