業務システムの運用管理は,規模が大きくなるほど複雑になります。できるだけ効率良く,運用コストを抑え,かつシステムの性能を最大限に生かせる運用方法が求められます。そのためには,操作性に優れたインタフェースや,自動運用の仕組みが必要です。
アプリケーションサーバでは,これらの要件を満たすために,次の運用管理機能を提供しています。
- 業務システムの一括運用
Smart Composer機能またはセットアップウィザードで構築した環境は,運用管理ドメインという概念で管理します。運用管理ドメインは,Management Serverというプロセスで管理される範囲です。複数のJ2EEサーバやWebサーバなどの各種サーバに対する,起動停止処理などを一括管理できます。
また,JP1と連携すると,アプリケーションサーバ以外で構築されたシステムも含めた業務システム全体に対して,監視,運用の自動化,稼働状況の分析などの一括運用ができるようになります。
- システムの稼働情報やリソースの使用状況の出力
システムの稼働状態やリソースの使用状況を出力できます。出力内容を監視することで,トラブル発生を未然に防止したり,発生したトラブルに対処したりできます。また,出力された情報は,システムのチューニングにも利用できます。これらの情報は,ファイルに出力することもできます。
- 運用作業の自動化
障害発生時のサーバ再起動や,運用監視機能と連携したイベント発行・アクション実行などの機能を利用することで,障害発生時の回復作業の自動化や,障害予防作業の自動化を図れます。
また,JP1と連携することで,アプリケーションサーバ以外のシステムも含めた業務システム全体の運用作業を自動化できます。
- ログの運用
アプリケーションサーバのシステムが出力したログを一括して収集できます。また,ユーザが開発したJ2EEアプリケーションのログをアプリケーションサーバのシステムが出力したログと同じように扱うことができます。システム全体のログを一括管理することで,信頼性の高いログ運用を実現できます。
また,アプリケーションサーバで使用する日立のJavaVMでは,障害発生時の要因分析やシステムの状態確認に利用できるよう,ログの出力内容が拡張されています。このログを利用して適切なチューニングを実施することで,システムの可用性向上が図れます。
- トレース情報による性能解析
リクエストの実行時に,Webサーバからデータベース接続までの各ポイントでトレース情報を出力します。この情報を収集して分析することで,処理のボトルネックを明確にしたり,障害発生の原因になった個所を特定したりできます。
- クライアント性能の測定と分析
Webアプリケーションの処理時間をクライアントの視点で測定,分析できます。サーブレットフィルタによってクライアントへのレスポンスにスクリプトを埋め込むことで,Webアプリケーションとの通信に掛かる時間,ブラウザでの描画時間,ユーザの操作時間などを測定できます。これによって,システム性能に問題がないか,性能上の問題がサーバ側またはクライアント側のどちらにあるのか,などを分析できます。
- 統合ユーザ管理
アプリケーションサーバで構築したシステムにログインするユーザを統合管理できます。それぞれのJ2EEアプリケーションが管理しているユーザの情報が関連づけられて管理されるため,一度のログイン処理でさまざまなJ2EEアプリケーションにログインできるようになります。なお,ユーザ情報を管理するリポジトリとしては,LDAPディレクトリサービスやデータベースが利用できます。
- メンテナンス時のアプリケーション入れ替えの効率化
アプリケーションをアーカイブ形式と展開ディレクトリ形式の2種類で管理できます。展開ディレクトリ形式のアプリケーションの場合,アプリケーションを入れ替えるときにアーカイブし直す必要がなく,変更したクラスファイルをリロードするだけで入れ替えができます。また,アーカイブ形式のアプリケーションの場合も,局所的な変更の場合にはアプリケーションの停止や再設定が不要な入れ替え(リデプロイ)ができます。これらによって,メンテナンス時の入れ替え効率を高め,システム運用コストを抑えられます。