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付録H.2 iSCSIホスト

iSCSIホストをストレージシステムに接続するときの参考情報です。

〈この項の構成〉

(1) iSCSIの概要

iSCSIインターフェース(以下、iSCSI I/F)は、ホストとの通信にiSCSIを利用できます。特徴は次のとおりです。

(2) iSCSI I/Fの仕様

表H‒2 iSCSI I/F仕様

プロトコル層

項目

仕様

全般

iSCSIターゲット機能

サポート

iSCSIイニシエータ機能

サポート

パス切替

Windows:HDLM、Microsoft DSM/MPIOを使用可能。

Linux:Device Mapperを使用可能。

接続ホスト(コネクション)数

127コネクション/Port

接続数が多くなるとiSCSI Portへの負荷が増大するため、127コネクション/Port以下での接続を推奨します。

物理層、MAC層

リンク

10Gbps(Optic):10Gbps SFP+

10Gbps(Copper):10Gbps/1Gbps

転送速度

10Gbps(Optic):10Gbps

10Gbps(Copper):10Gbps/1Gbps

コネクタ形状

10Gbps(Optic):LC

10Gbps(Copper):RJ-45

ケーブル

10Gbps(Optic):マルチモードファイバケーブル(OM2/OM3/OM4)

10Gbps(Copper):

  • 転送速度が10Gbpsの場合は、カテゴリ6a LANケーブル

  • 転送速度が1Gbpsの場合は、カテゴリ5e/6a LANケーブル

ネットワークスイッチ

L2スイッチ、L3スイッチ

10Gbps(Optic):IEEE 802.3ae(10Gbps SFP+)準拠

10Gbps(Copper):

  • IEEE 802.3an (10GBASE-T)準拠

  • IEEE 802.3ab (1000BASE-T)準拠

スイッチのカスケード

最大5段

カスケード段数が増加すると、ホストI/Oの遅延が多くなるため、必要最小限の段数での利用を推奨します。

MACアドレス

ポートごと(固定値)

出荷時にWorld Wide Uniqueな値を設定しています。変更できません。

最大通信データ長(MTU)

1500/4500/9000 Byte

(イーサネットフレーム)

ジャンボフレーム

サポート

リンクアグリゲーション

未サポート

VLAN

サポート

1~4094の範囲で設定可能(スイッチのポートVLANも利用可能)

TCP/IP

IPv4

サポート

IPv6

サポート

サブネットマスク

サポート

ゲートウェイ

サポート

DHCP

未サポート

DNS

未サポート

Ping送受信

サポート

IPsec※1

未サポート

TCPポート番号

3260(デフォルト)

1~65535の範囲で変更可能ですが、次の内容に注意してください。

(1) アクセスするホストの設定も変更してください。

(2) 変更後の番号が、経路上のスイッチなどでフィルタリングにより無効化されていないか確認してください。

Fragment

未サポート

Window Scale

サポート

Window Size 64KB(デフォルト)/128KB/256KB/512KB/1MB

iSCSI

iSCSI Name

iqn※2、eui※3の両形式をサポート

ターゲット設定時にWorld Wide Uniqueなiqn値が自動的に設定されますが、変更もできます。

Error Recovery Level

レベル0

ホストのリトライによって障害回復します。レベル1、2は未サポート。

Header digest, Data digest

サポート

iSCSI通信のヘッダ、データ情報をエラーから保護します。iSCSIポートはホスト側の設定にあわせてこの機能を使用しますが、使用時は性能が低下します(ホストの能力や通信内容によって低下率は変わります)。

CHAP

サポート

ストレージにとって、CHAPに登録したホストからのログインであることを認証します※4

Mutual CHAP

サポート

(Linuxホストとの接続では未サポート)

ホストにとって、CHAPに登録したストレージへのログインであることを認証します。双方向認証またはtwo-way authenticationと呼ばれることがあります。

CHAP User登録数

最大256ユーザ/iSCSIポート

iSNS

サポート

iSNS(ネームサービス)を利用すれば各ターゲットのIPアドレスを直接知らずともディスカバリできます。

注※1

IP Security。IPパケットの認証と暗号化技術です。

注※2

iqn: iSCSI Qualified Nameの意。IPドメインを使用し、タイプ識別子「iqn.」、ドメイン取得日、ドメイン名、ドメイン取得者が付けた文字列から構成されます。

(例) iqn.1994-04.jp.co.hitachi:rsd.d7m.t.10020.1b000.Tar

注※3

eui: 64ビットExtended Unique Identifierの意。IEEE EUI-64 Formatは、タイプ識別子「eui.」とアスキーコード化された16進数のEUI-64識別子から構成されます。

(例) eui.0123456789ABCDEF

注※4

iSCSIの規格ではCHAP動作は、実際にイニシエータからターゲットにログインするログインセッションと、接続可能なイニシエータを検索するディスカバリセッションで実施可能とされています。どちらもサポートしています。

(3) iSCSI規格

ストレージシステムを構成するためには、次の規格に準拠したスイッチを使用してください。

  • IEEE 802.1D STP

  • IEEE 802.1w RSTP

  • IEEE 802.3 CSMA/CD

  • IEEE 802.3u Fast Ethernet

  • IEEE 802.3z 1000BASE-X

  • IEEE 802.1Q Virtual LANs

  • IEEE 802.3ad Dynamic LACP

  • IEEE 802.3ae 10 Gigabit Ethernet

  • RFC 768 UDP

  • RFC 783 TFTP

  • RFC 791 IP

  • RFC 793 TCP

  • RFC 1157 SNMP v1

  • RFC 1213 MIB II

  • RFC 1757 RMON

  • RFC 1901 SNMP v2

(4) 注意事項

iSCSIでは安価に多数のホストとストレージシステムを接続してIP-SANを構成することができますが、それによりネットワークやストレージシステムの負荷も増大します。IP-SANは、ネットワーク/iSCSIポート/ストレージシステムのコントローラ/ドライブの特定箇所に負荷が集中しないようにシステム構成を設計する必要があります。IP-SANを設計する場合の注意事項は次のとおりです。

(5) OSに依存する注意事項

各ホスト共通の注意事項

  • iSCSI software initiatorとNICでiSCSIプロトコルの通信をする場合は、iSCSI HBA/CNAを用いる場合と比べ、ホストのCPU負荷が増大するため、他のアプリケーションの動作が遅くなる可能性があります。

  • ホストのiSCSI Digest設定を有効にすることで、iSCSI Data DigestおよびiSCSI Header Digest(CRC/Checksum)を使用できます。これらを使用時は通信路上のデータの信頼性が向上しますが、性能が低下します(低下の割合はホストやネットワークなどの環境に依存します。一般的には転送性能が10%程度低下します。ネットワーク上でのデータ保証強化のため、すべてのiSCSI構成においてiSCSI Header DigestおよびiSCSI Data Digestの使用を推奨します)。

  • ホストのNICは、必ずしもギガビットイーサネットをサポートしていなくてもiSCSIプロトコルで通信できますが、性能が低下する場合があります(IP-SANの構成に依存します)。

  • iSCSI接続構成でホスト側の遅延Ackが有効設定の場合、ホストI/O遅延が発生し、性能に大きな影響を与える可能性があります。このホストI/O遅延を回避するためには、遅延Ackを無効設定に変更する必要があります。

Windowsホスト

  • Windows OSがストレス無く動作する処理能力のサーバを利用してください。Windows Server 2003の場合、CPUはIntel Pentium 4の2GHz以上、メインメモリは512MB以上を推奨します。

  • designed for Windowsロゴを取得しているiSCSI HBA/CNAまたはNICの使用を推奨します。NICでiSCSI通信をする場合、iSCSI software initiatorはバージョン2.00以降をサポートしています。2.00未満のバージョンでは動作保証外です。

  • 利用していないアプリケーションやOSのサービスは停止することを推奨します。これにより不要な通信や負荷を軽減します。

  • Windows Server 2003接続時の注意点

    NICおよびマイクロソフトイニシエータを使用している環境で、ダイナミックディスクの共有設定を行うと、リブート時にドライブが非アクティブの状態となり、共有設定が解除されます。アクティブ化することで状態は回復しますが、再び共有設定を実施する必要があります。詳細は、マイクロソフト社のホームページを参照してください。

Linuxホスト

  • Linuxの場合、ホストおよびiSCSIポートの設定共に双方向CHAPをONにしないでください。

  • 1つのiSCSIポートで同時に最大255コネクションの通信ができます。そのため最大255ホストとの通信ができます。ただし、Linux software initiator(RHEL5.0未満)では、1ホストからの接続に2つのコネクションを確立するため通信相手に含まれる場合は、その特性により接続できるホスト数の上限が減少します。例えばすべてのホストがLinux software initiator(RHEL5.0未満)を用いる場合は、1つのiSCSIポートは最大127ホストと通信できます。

Solarisホスト

  • 利用していないアプリケーションやOSのサービスは停止することを推奨します。これによりホストの不要な通信や負荷を軽減します。

(6) iSCSIに関するトラブルシューティング

次に示す1つ、もしくは複数の項目が、ホストとストレージシステムが通信できない原因と考えられます。各項目の妥当性を確認し、問題がある場合は対処してください。

表H‒3 確認項目一覧表

項番

確認項目

1

ホストのLANポートのリンク状態は正常ですか?

2

ストレージシステムとホスト間のネットワーク周辺機器(スイッチ、ルータやNICなど)の電源状態。機器の電源がOFFだった場合、その電源をONにしてください。

3

ホストとストレージシステム間のすべてのLANケーブルが両端共コネクタに接続してありますか?

LANケーブルが緩んで接続されていた場合、しっかりと接続し直してください。

4

ストレージシステムに接続しているHBA、スイッチまたはNICのポート転送速度がストレージシステムの転送速度と一致していますか?

ストレージシステムとお客様が準備した機器で一致させてください。

5

VLANの設定を確認してください。

6

ファイアウォールの設定を確認してください。

7

L3 スイッチやルータの設定を確認してください。

8

ホストのiSCSIドライバの設定を確認してください。

9

ストレージシステムのポートに対して、ホストのIPsecがOFFですか?

ホストのIPsecの設定は、ストレージシステムのポートに対してOFFである必要があります。

10

ストレージシステムとホストそれぞれのIPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイやMTU値の設定がネットワークに適合していますか?

MTU値は、LANネットワーク環境のすべての機器(ホスト、スイッチやストレージシステムなど)で同一の値に設定する必要があります。

IPv6アドレスで接続している場合、IPv6アドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイやMTU値の設定がネットワークに適合していますか?

IPv6アドレスのアドレスステータス(下記の表を参照)でアドレスの状態を確認してください。

11

ホストがiSCSIドライバを認識できていますか?

12

ホストからTargetに誤ったIPアドレスとiSCSI Nameでログインしていませんか?

13

ホストにストレージシステムのTCPポート番号が正しく設定してありますか?

14

ホストから「ディスカバリ」と「ログイン」を実施していますか?

15

iSNSサーバを使用している場合、ホストやストレージシステムにiSNSサーバのIPアドレスが正しく設定できていますか?

16

iSNSサーバを使用している場合、iSNSサーバが新規にiSCSI機器の情報(IPアドレスやiSCSI Nameなど)を登録できる状態にありますか?

17

CHAP認証のInitiator認証を使用している場合、ストレージシステムのポートにInitiatorのCHAP Userが登録してありますか?

登録されていない場合、InitiatorのCHAP Userを新規登録してください。

18

CHAP認証のInitiator認証を使用している場合、ストレージシステム側のInitiatorのCHAP UserにTargetのTarget名(例:[000:T000])が登録してありますか?

登録されていない場合、InitiatorのCHAP UserにTargetのTarget名を割り当ててください。

19

CHAP認証の双方向認証を使用している場合、TargetのUser NameとSecretをホストに正しく設定できていますか?

20

LUN Manager機能を解除して、Targetセキュリティを使用している場合、ストレージシステムのTargetに割り当てているInitiatorのiSCSI NameのリストにHBAのiSCSI Nameがありますか?

リストにない場合、HBAのiSCSI NameをTargetに割り当ててください。

次の確認項目について対策を実施し、障害が回復することを確認してください。

表H‒4 iSCSI IPv6接続障害対策表

確認項目

対策

接続するiSCSI PortのIPv6アドレス、デフォルトゲートウェイアドレスは正しい値が設定されていますか?

iSCSI Port のIPv6アドレス、デフォルトゲートウェイは、自動生成されます。手動で設定する場合は、お客様の環境に合わせた適切な値を設定してください。

iSCSI Port IPv6アドレスのアドレスステータス表示

確認中

IPv6アドレスが、接続ネットワーク内の他のホストとアドレスが重複していないか確認中の状態です。有効に遷移されることを確認してください。

有効

iSCSI PortのIPv6アドレスが、重複せず正しく設定されており、アドレスが正常な状態です。

無効

iSCSI Portがリンクダウンしている状態です。

iSCSI PortのIPv6アドレスを使用する場合は、正しくケーブルが接続されていることを確認してください。

重複

iSCSI PortのIPv6アドレスが、接続ネットワーク内の他のホストとアドレスが重複している状態です。重複しない任意のIPv6アドレスを手動で設定してください。

未確定

iSCSI PortのIPv6アドレスが、同一iSCSI Port内でアドレス重複している状態です。

iSCSI PortのIPv6アドレスには、iSCSI Port内で重複しない任意のIPv6アドレスを手動で設定してください。

MTUサイズは正しい値が設定されていますか?

IPv6 Link MTUサイズは、ネットワーク上のMTUサイズカレント値を示します。

ストレージシステムiSCSI Portに設定したMTUサイズとLink MTUサイズが異なる場合、ホストまたはルータ/SwitchのMTUサイズ値がストレージシステムと異なっています。

MTUサイズが同一の値になるように設定してください。

IPv6アドレスでのリモートパス設定では、正しくIPv6アドレスが設定されていますか?

IPv6アドレスを有効にする必要があります。

リモートパス設定するローカル、およびリモート両方のiSCSI PortにおいてIPv6アドレスを有効に設定してください。

サーバ内のIPv6グローバルアドレスは、正しいプレフィックスが設定されていますか?

サーバ内の複数のインターフェースにIPv6グローバルアドレスを設定する場合、それぞれのインターフェースには異なるプレフィックスを持つIPv6アドレスを設定する必要があります。