1.17.2 往復応答時間とは
往復応答時間とは、プライマリボリュームからセカンダリボリュームへデータをコピーするときの制限時間です。この値は、形成コピーを実行するとき、形成コピーのコピー速度を自動調整し、更新I/Oに対するリモートI/Oの応答時間に影響を与えにくくするための基準値です。
往復応答時間のデフォルトは1ミリ秒です。正サイトと副サイトのストレージシステム間の距離が長かったり、回線機器による遅延があったりする場合は、往復応答時間に適切な値を設定してください。往復応答時間に適切な値を設定しないでデフォルトのままの形成コピーを実行した場合、形成コピーの完了に不当に時間が掛かることがあります。
例えばリモートI/Oの応答時間と[往復応答時間]の値の差が大きい場合(例:リモートI/Oの応答時間が500ミリ秒、[往復応答時間]の値が1ミリ秒)、回線の帯域すべてを形成コピーで独占しないように、コピー速度を落としたり一時的に形成コピーを停止したりします。
逆に、リモートI/Oの応答時間と[往復応答時間]の値との差が小さい場合(例:リモートI/Oの応答時間が5ミリ秒、[往復応答時間]の値が1ミリ秒)、設定されたコピー速度で形成コピーを実施します。
[往復応答時間]には1ミリ秒から500ミリ秒まで設定できます。[往復応答時間]の値は下記の式で求められます。
[往復応答時間]の値(ミリ秒) = 正サイトと副サイトのストレージシステム間の往復遅延時間(Round Trip Time) ×[応答回数]※+ 形成コピー応答時間(ミリ秒)
- 注※
-
正サイトと副サイトのストレージシステム間の物理パスをファイバチャネルで接続している場合、ホストモードオプション51(Round Trip Set Up Option)の設定によって応答回数が異なります。
ホストモードオプション51の設定
応答回数
OFF
2
ON
1
データ転送時には1コマンド当たり2回の応答シーケンスとなるため、応答回数は2です。ただし、ホストモードオプション51が有効の場合は、1コマンド当たり1回の応答シーケンスとなるため、応答回数は1です。
正サイトと副サイトのストレージシステム間の物理パスをiSCSIで接続している場合、データ転送時に64KB単位で分割して転送するため、形成コピー速度に比例して応答回数が決まります。
形成コピー速度
応答回数
1
6
2
10
3
14
4
18
正サイトと副サイトのストレージシステム間の往復遅延時間(Round Trip Time)については、回線業者にお問い合わせいただくか、pingコマンドを使用して測定するなどの方法で、決定してください。なお、正サイトと副サイトのストレージシステム間で回線を使用せずに接続する場合は、1としてください。
- 〈この項の構成〉
(1) 形成コピー応答時間とは
形成コピー応答時間は形成コピーの多重動作に伴う応答時間のことです。形成コピー応答時間については、形成コピー速度、最大形成コピーボリューム数、正サイトと副サイトのストレージシステム間の回線速度、および回線数を次の計算式に適用して、算出できます。
形成コピー応答時間(ミリ秒) = (1[MB]/“正サイトと副サイトのストレージシステム間の回線速度[MB/ミリ秒]※1”) × (“形成コピー速度”※2/4) × (“最大形成コピー数※3”/“正サイトと副サイトのストレージシステム間の回線数”※4)
- 注※1
-
正サイトと副サイトのストレージシステム間でチャネルエクステンダを使用しないで接続する場合、リンクスピードによって“正サイトと副サイトのストレージシステム間の回線速度”を次のように設定してください。
-
リンクスピードが2Gbpsのケーブルの場合:0.17MB/ミリ秒
-
リンクスピードが4Gbpsのケーブルの場合:0.34MB/ミリ秒
-
リンクスピードが8Gbpsのケーブルの場合:0.68MB/ミリ秒
-
リンクスピードが16Gbpsのケーブルの場合:1.36MB/ミリ秒
-
リンクスピードが32Gbpsのケーブルの場合:2.72MB/ミリ秒
-
- 注※2
-
計算式のコピー速度には、次の値を代入してください。なお、Storage Navigatorを使用するときも、RAID Managerを使用するときも、代入する値は同じです。
形成コピーだけを実施する場合
-
ペア作成時に指定するコピー速度が1~4の場合:ペア作成時に指定するコピー速度
-
ペア作成時に指定するコピー速度が5~15の場合:4
形成コピーと更新コピーを同時に実施する場合
-
ペア作成時に指定するコピー速度が1または2の場合:ペア作成時に指定するコピー速度
-
ペア作成時に指定するコピー速度が3~15の場合:2
-
- 注※3
-
最大形成コピー数は、ストレージシステム単位の設定を使用します。デフォルトは、64です。
- 注※4
-
“最大形成コピー数”/“正サイトと副サイトのストレージシステム間の回線数”が16以上になる場合でも、“最大形成コピーボリューム数”/“正サイトと副サイトのストレージシステム間の回線数”は、16としてください。
設定例を次の表に示します。
往復遅延時間(Round Trip Time) [ミリ秒] |
正サイトと副サイトのストレージシステム間の回線速度 [MB/ミリ秒] |
正サイトと副サイトのストレージシステム間の回線本数 |
形成コピー 速度 |
最大形成コピーボリューム数 |
[往復応答時間]の値 [ミリ秒] |
---|---|---|---|---|---|
0 |
0.1 |
4 |
4 |
64 |
160 |
30 |
0.1 |
4 |
4 |
64 |
220 |
100 |
0.1 |
4 |
4 |
64 |
360 |