2.4.4 Universal Replicatorのデータ転送帯域の決定
データ転送帯域は、一定の時間内に正サイトのストレージシステムから副サイトのストレージシステムへ転送されるデータ量に従って決定します。データ転送路がデータの送信に対応できない場合、データ転送帯域に余裕が出るまでの間、ジャーナルデータはマスタジャーナルボリュームに保存されます。マスタジャーナルボリュームにジャーナルデータを保持しきれなくなると、Universal Replicatorペアの整合性は失われます。この場合は、別途、新たに形成コピーを実施する必要があります。
通常、データ転送帯域を確保するには高い導入コストが掛かります。一方で、ジャーナルボリュームは、比較的に安いコストで容量を拡張できます。ただし、ジャーナルボリュームに蓄積されるジャーナルデータが増えれば増えるほど、Universal Replicatorペアの同期にかかる時間が長くなります。どの程度のデータ転送帯域を用意するかは、正サイトと副サイトの同期にかかる時間と、導入コストとの交換条件となります。
データ転送帯域のサイズを決定するための基準を次に示します。決定に際して考慮しなければならない内容はこれらに限りませんので、ご注意ください。
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ピーク時の作業負荷に基づいて、データ転送帯域のサイズを決定
プライマリボリュームのデータが更新された時間とセカンダリボリュームでデータが更新される時間の差を小さくします。プライマリボリュームの物理ディスクのピーク時での書き込み作業負荷を特定し、パケットロスやプロトコルオーバーヘッドも考慮してデータ転送路の容量を拡張してください。ピーク時の作業負荷に合わせてデータ転送帯域のサイズを決定すると、リカバリポイント目標は0または0に近くなります。
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ピーク時の作業負荷のローリングアベレージ値に基づいて、データ転送帯域のサイズを決定
ローリングアベレージ値は、ピーク値より小さいが、平均値を上回る値です。ジャーナルボリュームにジャーナルデータが蓄積されることがありますが、たいていの時間はデータが蓄積されません。リカバリポイントとして計画した時間内にUniversal Replicatorシステムで発生するジャーナルデータの量を精査するとともに、必要に応じてリカバリポイント目標も見直す必要があります。
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通常の作業負荷に基づいて、データ転送帯域のサイズを決定
データ転送帯域のサイズが通常の書き込み作業の負荷に合わせて決定されている場合、ピーク時の作業負荷に耐えるために、送信しきれないジャーナルデータがマスタジャーナルボリュームに書き込まれます。この超過データは、データ転送帯域に余裕が出るまで、ジャーナルデータの転送遅延の原因になります。超過データの量は、作業負荷の上昇に対して大きくなり、持続時間に比例します。
- ヒント
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作業負荷を決定できない場合、データ転送帯域のサイズはローリングアベレージ値またはピーク時の作業負荷に基づいて決定し、ネットワークのオーバーヘッドを相殺することを検討してください。この場合、マスタジャーナルボリュームに蓄積されるデータは、セカンダリボリュームに対してまれに完全に空になります。データ転送帯域のサイズを平均の書き込み作業負荷を下回って決定すると、マスタジャーナルボリュームは空にならず、最終的にあふれることになります。
- メモ
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リアルタイムで副サイトのデータを更新する必要がない場合は、データ転送帯域のサイズとジャーナルボリュームのサイズを小さくできます。この場合、特定の時点で一括してプライマリボリュームのデータをセカンダリボリュームにコピーします。ペアを同期させたまま運用するのではなく、分割状態のままで運用します。いったんペアが分割されると、プライマリボリュームのジャーナルデータは、マスタジャーナルボリュームの書き込み待ち行列に追加されません。その代わり、差分ビットマップが、どの物理ディスクのどのシリンダが変更されたのかを追跡するために使用されます。この方法は、特定のディスクの限られた範囲に複数回書き込みするアクセスパターンで、データを効率的に転送できます。1つの領域に対する複数回の更新が毎回送られないで、再同期する直前の最後の更新だけが副サイトに送られます。この方法の不利な点は、正サイトと副サイトのデータの一致が再同期が完了するまで保証されないという点です。
Universal Replicatorへのデータ転送帯域を決定するには、書き込み作業負荷を測定する必要があります。業務システムの作業負荷データは性能監視ソフトウェアを使って集めることができます。