4.2.9 iSCSIを使用するときの注意事項
iSCSIを使用してシステムを構築するときには、次に示す注意が必要です。
iSCSIに関する説明は、システム構築ガイドを参照してください。
- 〈この項の構成〉
(1) 外部パスに関する注意事項(iSCSIを使用するとき)
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1つのパスグループには、同一のプロトコルの外部パスだけを追加してください。ファイバチャネルとiSCSIの外部パスが、1つのパスグループ内に混在しないようにしてください。
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外部パスにiSCSIを使用する場合、[パス閉塞監視]は40(秒)以上に設定してください。[パス閉塞監視]を40(秒)より短く設定した場合、スイッチのスパニングツリーなどネットワーク上の遅延要因によって、外部パスが閉塞するおそれがあります。
ホストから外部ボリュームを使用する場合、ホストのコマンドタイムアウト時間は、パス閉塞監視時間よりも長く設定してください。パス閉塞監視時間がホストのコマンドタイムアウト時間よりも長い場合、 外部ストレージシステムの電源オフ時や障害時に、ホストからのコマンドがタイムアウトになるおそれがあります。
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iSCSIパスを追加したあとで、iSCSIターゲットへのログインテストを実行して、ログインできるかを確認してください。ログインできないiSCSIパスがあると、これらに対しても接続しようとするのでストレージシステムやネットワークに負荷がかかり、外部ボリュームを認識できないおそれがあります。
iSCSIターゲットへログインできないiSCSIパスは、iSCSIターゲットの編集や外部ストレージシステムの設定を確認して、ログインできるかを確認してください。またはiSCSIパスを削除してください。
(2) 物理パスに関する注意事項(iSCSIを使用するとき)
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ファイバチャネルまたはiSCSIの物理パスを交換するときには、交換する物理パスを使用している外部パスを事前に削除してください。
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ホストとストレージシステム間の物理パス、およびストレージシステム間の物理パスでは、同一プロトコルを使用することを推奨します。
次の例のように、使用するプロトコルが混在する場合、ホストとストレージシステム間のコマンドのタイムアウト時間には、ストレージシステム間のコマンドのタイムアウト時間以上の値を設定してください。
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ホストとストレージシステム間の物理パス:ファイバチャネル
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ストレージシステム間の物理パス:iSCSI
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(3) ポートに関する注意事項(iSCSIを使用するとき)
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iSCSIポートのパラメータの設定を変更するときは、一時的にiSCSIの接続が切断され、その後再接続されます。システムへ影響がないように、I/O負荷の低い時間帯にパラメータの設定を変更してください。
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ホストと接続しているiSCSIポートの設定を変更すると、ホストでログが出力されることがありますが、問題ありません。システムログを監視しているシステムでは、アラートが出力されるおそれがあります。アラートが出力された場合は、iSCSIポートの設定を変更したあと、ホストが再接続されているかどうかを確認してください。
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ストレージシステム間の接続にiSCSIを使用している場合、同一のポートを使用してホストと接続しているときでも、[ポート編集]画面で[遅延ACK]を[無効]にしてください。
ポートの[遅延ACK]が[有効]の場合、ホストから外部ボリュームの認識に時間が掛かることがあります。ボリュームが2,048個のときは、8分掛かります。なお、[遅延ACK]のデフォルトは[有効]です。
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ポートの[選択型ACK]は[有効](デフォルト)のままにしてください。
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長距離での接続など、ストレージシステム間の回線で遅延が発生する環境では、ローカルストレージシステムと外部ストレージシステムの両方で、iSCSIポートのウィンドウサイズを1,024KBまで変更できます。なお、iSCSIポートのウィンドウサイズのデフォルトは64KBです。
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Universal Volume Managerでは、外部ストレージシステムのiSCSIターゲットごとに、外部パスの接続が確立されます。1個のポート当たりのiSCSIの外部パス数は最大512です。ただし、1個のポート当たりの外部パス数は、127以下にすることを推奨します。
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iSCSIポートはフラグメント処理(パケットの分割処理)をサポートしていません。スイッチの最大送信単位(MTU)の値が、iSCSIポートのMTUの値より小さい場合、パケットが消失し、正常に通信できないおそれがあります。スイッチのMTUの値はiSCSIポートのMTU値以上の値を設定してください。MTUの設定および値に関しては、スイッチのマニュアルを参照してください。
なお、iSCSIポートのMTUの値は1500以下に設定できません。MTUの値が1500未満のWAN環境では、フラグメント処理によって分割されたデータを送受信できません。この場合、WAN環境に合わせてWANルータの最大セグメントサイズ(MSS)を小さくしてから、iSCSIポートに接続してください。または、MTUの値が1500以上のWAN環境で使用してください。
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Universal Volume Managerで、仮想ポートモードを有効にしたiSCSIポートを使用するには、RAID Managerによるコマンド操作が必要です。詳細は4.9.1 RAID Managerコマンドとアクションの対応表を参照してください。
また、仮想ポートモードの有効化も、RAID Managerで設定する必要があります。
ローカルストレージシステムのiSCSIポート内に設定した複数の仮想ポートから同一の外部ストレージのiSCSIポートに対して、外部パスを設定しないでください。
物理的なiSCSIポートで障害が発生した場合、対象となるiSCSIポート内に設定されたすべての仮想ポートも障害の影響を受けるため、交替パスとして機能しません。
したがって、外部ストレージ接続するパスおよび交替パスは、物理的に異なるiSCSIポート間で使用することを推奨します。
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1つのポートを、ホストとの接続(Target属性)とストレージシステムとの接続(Initiator属性)の両方に使用できます。ただし、ホストとストレージシステムのどちらかで障害が発生したときに、システムへの影響の範囲を軽減するには、ホストと接続するポートとストレージシステムと接続するポートを、別々のCHBに接続することを推奨します。
(4) ネットワークの設定に関する注意事項(iSCSIを使用するとき)
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iSCSIポートに接続しているスイッチのポートでは、スパニングツリーの設定を無効にしてください。スイッチでスパニングツリー機能を有効にすると、リンクがアップまたはダウンするときに、ネットワーク上でパケットがループしなくなります。このときに、パケットが約30秒間遮断されるおそれがあります。スパニングツリーの設定を有効にする必要がある場合は、スイッチのPort Fast機能を有効にしてください。
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ストレージシステム間のネットワーク経路で、iSCSIポートの転送速度よりも転送速度が低い回線を使用した場合、パケットが消失し、回線品質が低下します。iSCSIポートの転送速度と回線が、同一の転送速度となるシステム環境を構築してください。
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ストレージシステム間の回線の遅延はシステム環境によって異なるため、事前にシステムを検証して、最適なiSCSIポートのウィンドウサイズの設定を確認してください。回線の遅延の影響が大きいと判断した場合は、WAN最適化・高速化の装置の適用を検討してください。
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iSCSIを使用する場合、TCP/IPでパケットを送受信します。このため、パケットの量が通信回線の許容量を超えてしまったり、パケットの再送が発生することがあり、性能に大きく影響を与えるおそれがあります。性能を重視する重要なシステムの場合は、ファイバチャネルを使用してください。
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外部ストレージシステムとしてHUS100シリーズに接続する場合、検索できるiSCSIターゲットの数が制限されます。iSCSIターゲット名がデフォルト(47文字)の場合、検索できるiSCSIターゲットの数は170です。