3.10.10 注意事項
iSCSIでは安価に多数のホストとストレージシステムを接続してIP-SANを構成することができますが、それによりネットワークやストレージシステムの負荷も増大します。IP-SANは、ネットワーク/iSCSIポート/ストレージシステムのコントローラ/ドライブの特定箇所に負荷が集中しないようにシステム構成を設計する必要があります。IP-SANを設計する場合の注意事項は次のとおりです。
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通常、LANはイーサネットの帯域の数分の一を消費して通信するよう設計・構築されるのに対し、iSCSIによる通信は利用可能なイーサネットの帯域のほとんどすべてを消費します。IP-SANと業務用ネットワーク(LAN)を混在すると、構築コストは低く済みますが、次についての注意が必要です。
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業務用ネットワークの通信をiSCSIが阻害します。
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iSCSIの通信と業務用ネットワークの通信が衝突してパケットロスが発生し、iSCSIの転送性能が低下すると、互いに悪影響を与える場合があります。IP-SANと業務用ネットワークは、別々のネットワークとして構築する必要があるか、帯域設計を確認してください。
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IP-SANでは、ネットワークのパケットロスが発生すると、TCPの輻輳制御のためiSCSIの転送性能が大きく低下します。パケットロスや輻輳制御は、ネットワークの性質上不可避ですが、IP-SAN構築ではパケットロスによる影響を少なくできるように、セグメントを分けるなど、ネットワークの構築を確認してください。
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iSCSIの性能(単位時間あたりの実効データ転送量、応答時間など)は、ホストからのアクセスの条件に大きく影響を受けます。また、多数のイニシエータを限られたリソース(ストレージシステムの単一のiSCSIポートや単一のコントローラなど)へ接続した場合、各ホストからみた性能は低下します。
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ネットワーク機器はFibre Channelの機器と比べ低価格のため、IP-SANも安価に構築できますが、個々の機器の性質/品質にシステムの信頼性が依存することになります。機器の選定には注意してください。
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CHAP認証でiSCSI User Name やSecretを設定するときは、指定に誤りがないか確認してください。誤った設定をすると、次の理由でシステムの正常な運用ができなくなります。
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ログイン許可されているはずのイニシエータ(ユーザ)がログインできない
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ログイン許可されていないはずのイニシエータ(ユーザ)がログインできる
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CHAP認証を使用している環境で、接続しているホストのHBAを交換した場合は、CHAP認証の設定を変更する必要があります。HBAを交換したあとは、必ずCHAP認証の設定を変更してください。
NICを使用する場合は、NICを交換してもiSCSIソフトウェアイニシエータの設定が変わらないので、CHAP認証の設定の変更は不要です。
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MTUサイズをDefaultから変更する場合には、ストレージシステムのポートの設定/スイッチ/ホストのすべての機器の変更が必要です。
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CNAを使用する場合は、設定モードでiSCSI Function とNIC Functionが存在しますが、NIC Functionのみサポートしています。
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Ping送受信
iSCSIポートからunreachableなアドレス※へのPing送信テストを行うと、I/O処理に遅延やタイムアウトを起こします。PingテストはホストI/O処理を行なっていない状態での実施を強く推奨します。また、複数iSCSI Portから同時にPingテストは実施しないでください。
注※
Unreachableなアドレスとは、Ping送信元のポートから物理的・論理的に到達不能な(接続されていない)アドレスを示します。応答が得られないためPingテストの結果はタイムアウトします。
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スイッチ
ネットワークスイッチの物理ポートのうち、ホストおよびストレージシステムのiSCSIポートと直接接続するポートに関して、Spanning Treeが有効の場合、通信が阻害される可能性があります。Spanning Treeプロトコル機能をOFFにしてください(確認・設定方法は使用するスイッチのマニュアルを参照してください)。
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iSCSI Port設定
ホスト接続の状態でiSCSI Portの設定変更を実施する際、一時的に接続が切れホストから再接続が行われます。iSCSI Port設定変更後1分以上時間をあけて、ホストから再接続されたことを確認してください。
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iSCSI Port のIPv6が有効設定のときは、IPv6 グローバルアドレスを自動に設定すると、IPv6 ルータからプレフィックスを取得してアドレスを決定する動作を行います。
IPv6 ルータがネットワークに存在しないと、アドレスの決定ができないので、iSCSI 接続に遅延が生じる場合があります。
iSCSI PortのIPv6が有効設定のときは、IPv6ルータが同一ネットワーク上に接続されていることを確認して、IPv6 グローバルアドレスを自動に設定してください。