1.14.2 iSCSI用ネットワークの構築
iSCSIでは安価に多数のホストとストレージシステムを接続してIP-SANを構成できますが、それによってネットワークやストレージシステムの負荷も増大します。IP-SANは、ネットワーク、iSCSIポート、ストレージシステムのコントローラ、ドライブの特定個所に負荷が集中しないようシステム構成を設計する必要があります。
IP-SANを設計する場合の留意事項を次に示します。通常のLAN(Local Area Network)と使用するスイッチやNIC(Network Interface Card)が共通ですが、考え方は(特にオフィスなど)業務用のLANと大きく異なります。
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通常、LANはイーサネット帯域の数分の1を消費して通信するよう設計され構築されるのに対し、iSCSIによる通信は利用可能なイーサネットの帯域のほとんどすべてを消費します。したがってIP-SANと業務用LANは別個のネットワークとして構築することを強く推奨します。IP-SANと業務用LANを共有した場合の悪影響の例を次に示します。
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業務用LANの通信をiSCSIが阻害する
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iSCSIの通信と業務用ネットワークの通信が衝突してパケットロスが発生し、iSCSIの転送性能が低下する
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iSCSIの性能(単位時間当たりの実効データ転送量、応答時間など)は、ホストからのアクセスの条件に大きく影響を受けます。また、多数のイニシエータを限られたリソース(ストレージシステムの単一のポートや単一のコントローラなど)へ接続した場合、各ホストからみたストレージシステムの性能は低下します。
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ホストとストレージシステム間のアクセス経路として交替パスを用意しておくことで、システム稼働中にストレージシステムのファームウェア交換を実施できます。交替パスがない場合は、ファームウェア交換時に対象のコントローラの業務を停止する必要があります。
次の図は、LUN Managerの画面でiSCSIターゲット00を3つの論理ボリューム(00:00:00、00:00:01、および00:00:02)に結び付けた例を示しています。この例では、iSCSIターゲット00に属する2台のホストと3つの論理ボリュームの間にLUパスが設定されています。
LUN Managerでは、1台のサーバホストから複数のLUへパスを設定できます。例えば前の図の場合、iSCSIターゲット00の2つのホストは、どれも3つのLUにアクセスできるようになっています。
LUN Managerでは、複数のサーバホストから特定の1つのLUへパスを設定できます。例えば前の図の場合、LDKC:CU:LDEV番号が00:00:00のLUは、iSCSIターゲット00に属する2台のホストからアクセスできます。