付録H 使用上の注意事項
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デフォルトの場合,ファイル伝送中には,該当ファイルに対して排他処理をしません。このため,伝送中のファイルを変更,削除した場合,伝送結果は不正となります。同じファイルを同時に送受信した場合も同様です。環境変数JP1FTS_FILE_EXCLUSIONを使用することで,該当ファイルに対して排他処理をします。
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デフォルトの場合,ファイルのサイズが2ギガバイト以上のファイル伝送はできません。環境変数JP1FTS_LARGEFILE2を使用することで,ファイルのサイズ制限がなくなります。ただし,実際に伝送可能なファイルサイズはシステムに依存します。環境変数については,「3.1.3 JP1/FTPの環境を環境変数で定義する」を参照してください。
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ファイル受信中の強制終了や伝送エラーなどで伝送が中断した場合,不完全なファイルが作成される場合があります。上書きで受信中に中断しても,ファイルは元に戻りません。
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JP1/FTPでは,NFSのファイルも単なるUNIXの1ファイルとして扱いますので,UNIXファイルとして正常に扱える環境または操作の範囲内で使用してください。
なお,伝送処理が正常に終了しても,NFS固有の問題,また,その設定や環境構築上の問題によって,伝送ファイルの内容が正常に書き込まれない場合があります。
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クライアント側でのセカンダリグループを使用する(環境変数JP1FTS_CSUPPLEGROUPをONに設定する)場合,セカンダリグループの最大数は63です(システムによる制約を受けます)。この値を超えると伝送実行時にエラーとなります。
サーバ側でのセカンダリグループの最大数は,システムによる制限値です。
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IPアドレスの変換(NAT変換やIPマスカレードなど)を行うネットワーク中継機器(ルータやファイアウォールなど)を使用している場合は,FTPプロトコル上,それらを経由したファイル伝送ができないときがあります。使用している機器がFTPプロトコルに対応しているか確認してください。
- 注
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09-00でPORTコマンド,10-00でPASVコマンドのチェック仕様が改善されました。このためIPアドレスの変換が正しく行われてない場合,問題が顕在化する事があります。その場合,IPアドレスの変換を正しく見直すか,表3-2を参照してPORTコマンドまたはPASVコマンドのチェック仕様を変更して下さい。
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/etc/hosts,/etc/services,/etc/passwdには一般ユーザの参照権限が必要です。
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ワイルドカード伝送時,展開されるファイルの数および展開されるパス名の長さの合計値には,クライアント側では上限がありませんが,サーバ側では上限があります。展開された個々のファイルのパス名の長さには,終端文字(NULL文字)を含みます。
表H‒1 展開されるファイルの数および展開されるパス名の長さの合計値の上限(サーバ側) プラットフォーム
JP1/FTPのバージョン
ファイルの数の上限
パス名の長さの合計値の上限
AIX
−
4,095
24,571
Linux
−
21,844
131,067
- (凡例)
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−:バージョンの制限はありません。
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イベントログのタイムスタンプが昇順に並ばないことがあります。
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複数IPアドレス環境用定義を使用しない場合,JP1/FTPで使用するIPアドレスは次のとおりになります。
表H‒2 使用するIPアドレス 項番
用途
使用するIPアドレス
1
クライアント
制御コネクションのIPアドレス
OSが自動的に割り当てるIPアドレス
2
データコネクションのIPアドレス
制御コネクションのIPアドレス
3
サーバ
制御コネクションのIPアドレス
接続を受け付けたIPアドレス
4
データコネクションのIPアドレス
制御コネクションのIPアドレス
5
運用管理エージェントのIPアドレス
物理IPアドレス(OSのコマンドhostnameなどで返されるホスト名に対応するIPアドレス)
6
運用管理コンソールのIPアドレス
OSが自動的に割り当てるIPアドレス
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伝送終了後の自動起動プログラムとして起動するプログラムは,標準入出力およびエラー出力をクローズして起動しています。これは,着信側,発信側とも同じです。オープンする場合は標準入出力およびエラー出力にファイルなどを割り当てるように設定してください。設定方法については,「3.1.3 JP1/FTPの環境を環境変数で定義する」を参照してください。
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自動起動プログラムを登録する場合,登録するファイルまたはディレクトリの実パス上の構成ディレクトリすべてに対して,登録するユーザでの読み取り権限と実行(検索)権限が必要です。
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JP1/FTPをクラスタシステム(HA構成の系切り替え)構成で使用する場合の注意事項を次に示します。論理アドレスを使用する環境でのJP1/FTPの定義については,「3.15 複数IPアドレス環境での使用」を参照してください。なお,クラスタシステムとは,これまでJP1のマニュアルで「系切り替えシステム」と呼ばれていたものと同じです。
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フェールオーバには対応していません。
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物理IPアドレス(OSのコマンドhostnameなどで返されるホスト名に対応するIPアドレス)は有効にしてください。
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クラスタソフトから,JP1/FTPのデーモンを起動および停止することは可能です。
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JP1/FTPがFTPサーバ(着信)として動作する場合,FTPクライアント(発信)が接続先に論理IPアドレスを指定しても,物理IPアドレスを指定してもファイル伝送は可能です。
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JP1/FTPがFTPクライアント(発信側)として動作する場合,障害時にはファイル伝送の自動リトライなどによる再伝送は行いません。
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FTPカスタムジョブによるファイル伝送は可能です。
また,複数IPアドレス用環境定義を使用しないときの注意事項を次に示します。
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JP1/FTPがFTPクライアント(発信)として動作する場合,コネクションのIPアドレスはOSが自動的に割り当てるため,通常は物理IPアドレスとなります。
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JP1イベントは,物理IPアドレス(OSのコマンドhostnameなどで返されるホスト名に対応するIPアドレス)に送ります。
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JP1/FTPがFTPサーバ(着信)として動作する場合,制御コネクションの接続時に返す220メッセージ内のホスト名は物理ホスト名(OSのコマンドhostnameなどで返されるホスト名)となります。
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システム時刻を変更する場合は,JP1/FTPのデーモン,コマンドなどをすべて停止してから変更してください。また,システム時刻を戻す場合は,伝送履歴を初期化する必要があります。
システム時刻を戻す方法を次に示します。
1. JP1/FTPのデーモン,コマンドなどをすべて停止する。
2. 履歴情報ファイルおよびイベントログファイルを任意のディレクトリにバックアップする。
3. システムの時刻を変更する。
4. 履歴情報を初期化する。初期化の方法については,「付録G 履歴情報削除ツール」を参照してください。
5. イベントログファイルを削除する。
6. JP1/FTPのデーモン,コマンドなどを起動する。
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受信伝送(get)を行なうとき,FTPサーバがファイルを正常に伝送したあとに,FTPクライアントで異常があった場合,FTPサーバとFTPクライアントで伝送結果の相違が発生します。
これは,サイズ確認オプションで行なった場合も同様です。
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JP1/FTPクライアントで,ワイルドカード指定でファイル受信する場合,ローカルファイル名は,NLSTコマンドで応答されるファイルパス名リストから生成します。
このため,相手FTPサーバから受信するファイルパス名リストの形式によっては,正常に伝送できない場合があります。
JP1/FTPがサポートしているファイルパス名リストは,RFC959(FILE TRANSFER PROTOCOL)に準拠したものです。
ファイルパス名リスト内で,JP1/FTPがサポートしているファイルパス名は,次の条件がすべて重なっているファイルパス名です。
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ファイルパス名の先頭からの部分が,リモートファイル名に指定したファイルパス名と同じ形式となっている。
または,リモートファイル名に相対パスで"./"から指定した場合は,ファイルパス名の先頭からの部分が,リモートファイル名から先頭の"./"または".\"を除いた部分と同じ形式となっている。
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ファイルパス名リスト内に空行がある場合は,ファイルパス名は,最初の空行の前までにある。
次に例を示します。
FTPサーバ側で,ディレクトリの構成が次のようになっているものとします。
(例1)
JP1/FTPクライアント側で,リモートファイル名に指定したファイルパス名が「/dir1/*」であり,ファイルパス名リストが次となっているものとします。
/dir1/file11 file12 /dir1/dir11/file111 /dir1/dir12: file121 /dir1/dir13: file131
この場合,サポートしているのは,「/dir1/file11」と「/dir1/dir11/file111」だけになります。
(例2)
JP1/FTPクライアント側で,リモートファイル名に指定したファイルパス名が「./dir1/*」または「.\dir1\*」である場合,ファイルパス名リスト内のファイルパス名として次のどちらもサポートしています。
./dir1/file11 .\dir1\file11 dir1/file11 dir1\file11 ./dir1/dir11/file111 .\dir1\dir11\file111
- 注意事項
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FTPサーバによっては,ファイルパス名リスト内にディレクトリのパス名を含めることがあります。
その場合,JP1/FTPクライアントでは,上記の条件に合っていれば,そのパス名を引数としてRETRコマンドを送信します。
そのため,通常,FTPサーバはエラー応答しますので,ファイル伝送は異常終了となります。
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IPv6アドレスでファイル伝送する場合,IPv4射影アドレスには対応していません。
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JP1/FTPでは,環境構築時に伝送情報を作成し,業務の運用中に伝送を実行する,というのが一般的な運用です。
そのため,ftsregcコマンドは,一般的には,環境構築時に実行し,業務の運用中には実行しません。
従って,次の事項に注意してください。
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ファイル伝送と,伝送情報の削除を同時に実行しないでください。
(運用管理コンソールでの操作も含みます。)
伝送対象の伝送カードとは別の伝送カードを削除しても,同時に実行すると,伝送が失敗することがあります。
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ftsregcコマンドは,性能上の配慮がなされておりません。
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業務の運用時に伝送情報が決定するような場合は,業務の運用時にftsregcコマンドを実行するのではなく,ftstranコマンドの引数にて,決定した伝送情報を指定する方法を推奨します。
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禁則文字定義ファイル(/var/opt/jp1_fts/sys/ftsmetachars)に定義されている文字がLIST,NLST,STATコマンドの引数に指定されている場合,コマンドを拒否します。
このため,LIST,NLST,STATコマンドの引数に指定したファイル名に,禁則文字定義ファイルに定義した文字が含まれていると,コマンドが失敗します。
また,次のような場合,ファイル伝送ができなくなります。
<ファイル伝送ができなくなる例>
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FTPクライアントのファイル伝送コマンド(get/putなど)の延長でLIST,NLST,STATコマンドが実行され,かつ,ファイル名に禁則文字を含んでいる場合。
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JP1/FTPクライアント側で,伝送情報内のFTPコマンドに,STATコマンドを指定しており,かつ,引数(ファイル名)に禁則文字を含んでいる場合。
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JP1/FTPクライアント側で,伝送情報が次の場合で,リモートファイル名に禁則文字を含んでいる場合。
・送受信種別に受信を指定している。
・単/複伝送に複数を指定している。
なお,定義ファイルから文字を削除することは可能ですが,これらの文字はシェルのメタ文字であるため,禁則文字としています。また,文字を追加することも可能です。定義できるのは半角(1バイト)文字1行だけで,255文字まで定義可能です。
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禁則文字定義ファイル(/var/opt/jp1_fts/sys/ftsmetachars)の内容
&();`|
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ファイルを受信時にディスク容量不足になると,送信側がタイムアウトになることがあります。
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FTPサーバの自動起動プログラムでLCFNやRMFNなどファイル名が格納されるキーを指定している場合,伝送ファイル名にOSのシェルの特殊文字が含まれると,自動起動プログラムの実行が失敗する場合があるため,特殊文字を含む伝送ファイル名を使用しないでください。
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AIXでは,IPv6を使用していない場合でも接続先の名前解決の際にIPv6アドレスの検索が行われるため,JP1/FTPの伝送処理が遅延したり,タイムアウトでエラーが発生したりする場合があります。
AIXでIPv6を使用しない場合は,/etc/netsvc.confファイルに,IPv6の検索を行わないようhostsの値を設定してください。
(例)
hosts=local4, bind4
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ワイルドカードはマルチバイト文字に対応していません。