Hitachi

JP1 Version 13 JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド


13.5.3 JP1/AJS3 - Manager 13-00以降へバージョンアップする場合の設定

JP1/AJS3 - Managerをバージョン12-60以前の環境からバージョンアップする場合,スケジューラーサービスのデータベースをバージョン13-00以降の形式に移行する必要があります。移行が完了していない場合は,スケジューラーサービスを起動できません。

なお,JP1/AJS3 - Managerのバージョンアップインストール,および組み込みDBを使用する場合は組み込みDBのバージョンアップインストールが終了したあとに,作業を実施してください。

スケジューラーサービスのデータベースを移行するときの作業を次に示します。

表13‒21 スケジューラーサービスのデータベースを移行するときの作業

項番

作業内容

参照先

1

組み込みDBを使用する場合の事前準備

  • 組み込みDBのバージョン確認と組み込みDB領域のメンテナンス

  • テーブル領域の容量確保

  • インデクス領域の容量確保

(1)

2

物理ホストでの移行

(2)

3

クラスタ運用時の移行

  • 実行系での作業

  • 待機系での作業

(3)

〈この項の構成〉

(1) 組み込みDBを使用する場合の事前準備

スケジューラーサービスのデータベースに組み込みDBを使用する場合の事前準備を,次に示します。

(a) 組み込みDBのバージョン確認と組み込みDB領域のメンテナンス

  1. JP1/AJS3サービスを停止する。

    物理ホストおよびすべての論理ホストのJP1/AJS3サービスを停止してください。クラスタ運用の場合は,JP1/AJS3をクラスタ運用から一時的に外しておいてください。

  2. 組み込みDBを開始する。

    次のコマンドを実行して,物理ホストおよびすべての論理ホストにセットアップされている組み込みDBを開始します。

    ajsembdbstart -id 組み込みDBセットアップ識別子
  3. 組み込みDB領域のメンテナンスを実施する。

    次のコマンドを実行して,物理ホストおよびすべての論理ホストで組み込みDB領域のメンテナンスを実施します。

    ajsembdbreclaim -m manager [-mh 論理ホスト名]

(b) テーブル領域の容量確保

物理ホストおよびすべての論理ホストにセットアップされているすべての組み込みDBについて,次の作業を実施してください。クラスタ運用の場合は,実行系で共有ディスクをマウントした状態で実施してください。

  1. 組み込みDBのデータベース領域の状態を確認する。

    次のコマンドを実行して,組み込みDBのデータベース領域の状態を確認します。

    ajsembdbstatus -db -id 組み込みDBセットアップ識別子
  2. テーブル領域の空きセグメント数を確認する。

    手順1の実行結果から,「RD Area Name : AJS2DATA」の「Unused Segment」の値を記録します。

    以降,この値を(A)とします。

    (例)次の内容が出力された場合,(A)は210です。

    RD Area Name   : AJS2DATA
      Server        : ajs2
      Total Segment :        300   Segment Size :         10 Pages
      Unused Segment:        210   Page Size    :      30720 Bytes
  3. リリース定義テーブルの使用セグメント数を確認する。

    手順1の実行結果から,「Table Name」が「XXXXRELSの「Segment」の「Sum」の値を記録します。

    一つの組み込みDBに複数のスケジューラーサービスがセットアップされている場合,「XXXXRELSは複数ありますので,それらを加算した合計値および最大値を記録します。

    注※

    XXXX」の部分には,「AJS1」などが入ります。

    以降,合計値を(B),最大値を(C)とします。

    スケジューラーサービスが一つの場合は,(B)と(C)は同じ値です。

    (例)次の内容が出力された場合,(B)は8 + 1 = 9,(C)は8です。

    Table Name : AJS1RELS
     Auth Id    : root
     Status     :
     Reference Pending Status :  
     Check     Pending Status :  
     Segment Reuse :         18 segments
      <Base row segment>
      Search Mode : INS
      Reuse Search Failure :          0/         0
              Used(Full)       Used(      Full)        Sum
      Segment 100%( 88%)          8(         7)          8
      Page    100%( 99%)         80(        79)         80
      Collect On Segment :          0
     
    Table Name : AJS2RELS
     Auth Id    : root
     Status     :
     Reference Pending Status :  
     Check     Pending Status :  
     Segment Reuse :         18 segments
      <Base row segment>
      Search Mode : INS
      Reuse Search Failure :          0/         0
              Used(Full)       Used(      Full)        Sum
      Segment 100%(  0%)          1(         0)          1
      Page     10%(  0%)          1(         0)         10
      Collect On Segment :          0
  4. 移行に必要な空き容量があるかを確認する。

    次の条件を満たしていれば,移行に必要な空き容量があります。以降の手順の実施は不要です。

    (A) >= (B) + (((C) + 1) * 2)

    以降,(B) + (((C) + 1) * 2)の値を(D)とします。

    組み込みDBの自動増分を行う設定になっている場合は,空き容量が不足していても,次の条件を満たしていれば移行できます。以降の手順の実施は不要です。自動増分を行う設定になっているかどうかは,ajsembdbstatusコマンドの-cオプションで確認できます。

    (組み込みDBのデータ領域ディレクトリのajssys041のファイルサイズ) + (((D) - (A)) * 0.3メガバイト) <= 64ギガバイト

    ただし,組み込みDBのデータ領域ディレクトリがあるディスクに,((D) - (A)) * 0.3メガバイト以上の空き容量を確保しておいてください。

  5. 組み込みDBのデータベース領域を拡張する。

    ((D) - (A)) * 0.3メガバイト以上の組み込みDBファイルシステム領域サイズを指定して,ajsembdbaddareaコマンドでテーブル領域「AJS2DATA」を拡張してください。

    ajsembdbaddarea -r table
     -s 組み込みDBファイルシステム領域サイズ 
     -d データベース拡張領域格納ディレクトリ名称 
     -id 組み込みDBセットアップ識別子

(c) インデクス領域の容量確保

物理ホストおよびすべての論理ホストにセットアップされているすべての組み込みDBについて,次の作業を実施してください。クラスタ運用の場合は,実行系で共有ディスクをマウントした状態で実施してください。

  1. インデクス領域の空きセグメント数を確認する。

    (b) テーブル領域の容量確保」の手順1の実行結果から,「RD Area Name : AJS2INDX」の「Unused Segment」の値を記録します。

    以降,この値を(A)とします。

    (例)次の内容が出力された場合,(A)は781です。

    RD Area Name   : AJS2INDX
      Server        : ajs2
      Total Segment :        880   Segment Size :         10 Pages
      Unused Segment:        781   Page Size    :       4096 Bytes
  2. リリース定義インデクスの使用セグメント数を確認する。

    (b) テーブル領域の容量確保」の手順1の実行結果から,「Index Name」が「XXXXRELSINDEX1」〜「XXXXRELSINDEX3の「Segment」の「Sum」の値の合計値を記録します。

    一つの組み込みDBに複数のスケジューラーサービスがセットアップされている場合,「XXXXRELSINDEX1」〜「XXXXRELSINDEX3は複数ありますので,それらを加算した合計値および最大値を記録します。

    注※

    XXXX」の部分には,「AJS1」などが入ります。

    以降,合計値を(B),最大値を(C)とします。

    スケジューラーサービスが一つの場合は,(B)と(C)は同じ値です。

    (例)次の内容が出力された場合,(B)は(5 + 3 + 2) + (1 + 1 + 1) = 13,(C)は(5 + 3 + 2) = 10です。

    Index Name : AJS1RELSINDEX1
     Auth Id    : root
     Status     : 
              Used(Full)       Used(      Full)        Sum
      Segment 100%(  0%)          5(         0)          5
      Page     82%(  0%)         41(         0)         50
      Collect On Segment :          0
     
     Index Name : AJS1RELSINDEX2
     Auth Id    : root
     Status     : 
              Used(Full)       Used(      Full)        Sum
      Segment 100%(  0%)          3(         0)          3
      Page     67%(  0%)         20(         0)         30
      Collect On Segment :          0
     
     Index Name : AJS1RELSINDEX3
     Auth Id    : root
     Status     : 
              Used(Full)       Used(      Full)        Sum
      Segment 100%(  0%)          2(         0)          2
      Page     80%(  0%)         16(         0)         20
    Collect On Segment :          0
     
    Index Name : AJS2RELSINDEX1
     Auth Id    : root
     Status     : 
              Used(Full)       Used(      Full)        Sum
      Segment 100%(  0%)          1(         0)          1
      Page     10%(  0%)          1(         0)         10
      Collect On Segment :          0
     
     Index Name : AJS2RELSINDEX2
     Auth Id    : root
     Status     : 
              Used(Full)       Used(      Full)        Sum
      Segment 100%(  0%)          1(         0)          1
      Page     10%(  0%)          1(         0)         10
      Collect On Segment :          0
     
     Index Name : AJS2RELSINDEX3
     Auth Id    : root
     Status     : 
              Used(Full)       Used(      Full)        Sum
      Segment 100%(  0%)          1(         0)          1
      Page     10%(  0%)          1(         0)         10
      Collect On Segment :          0
  3. 移行に必要な空き容量があるかを確認する。

    次の条件を満たしていれば,移行に必要な空き容量があります。以降の手順の実施は不要です。

    (A) >= (B) + (((C) + 1) * 2)

    以降,(B) + (((C) + 1) * 2)の値を(D)とします。

    組み込みDBの自動増分を行う設定になっている場合は,空き容量が不足していても,次の条件を満たしていれば移行できます。以降の手順の実施は不要です。

    (組み込みDBのデータ領域ディレクトリのajssys042のファイルサイズ) + (((D) - (A)) * 0.04メガバイト) <= 64ギガバイト

    ただし,組み込みDBのデータ領域ディレクトリがあるディスクに,((D) - (A)) * 0.04メガバイト以上の空き容量を確保しておいてください。

  4. 組み込みDBのデータベース領域を拡張する。

    ((D) - (A)) * 0.04メガバイト以上の組み込みDBファイルシステム領域サイズを指定して,ajsembdbaddareaコマンドでテーブル領域「AJS2INDX」を拡張してください。

    ajsembdbaddarea -r index
     -s 組み込みDBファイルシステム領域サイズ
     -d データベース拡張領域格納ディレクトリ名称
     -id 組み込みDBセットアップ識別子

(2) 物理ホストでの移行

物理ホストでの移行手順を次に示します。

  1. 物理ホストのJP1/AJS3サービスが停止していることを確認する。

    次のコマンドを実行して,JP1/AJS3サービスが停止していることを確認します。

    jajs_spmd_status

    起動していた場合は,次のコマンドを実行して停止してください。

    jajs_spmd_stop
  2. データベースを起動する。

    組み込みDBの場合

    次のコマンドを実行して,セットアップされているすべての組み込みDBを開始します。

    ajsembdbstart -id 組み込みDBセットアップ識別子

    (1) 組み込みDBを使用する場合の事前準備」で実施済みの場合は,この操作は不要です。

    外部DBの場合

    接続先のデータベースが稼働していることを確認します。

  3. スケジューラーサービスのデータベースを移行する。

    次のコマンドを実行して,スケジューラーサービスのデータベースを移行します。

    jajs_cnvdb -c V13

    成功すると,メッセージKAVS8470-Iが出力されます。

    失敗した場合は,メッセージKAVS8471-Eが出力されます。「(4)(h) jajs_cnvdbコマンドが失敗した場合の対処方法」の対処を実施してください。

  4. 組み込みDBの場合,データベース領域のメンテナンスを実施する。

    組み込みDBの場合は,次のコマンドを実行してデータベース領域のメンテナンスを実施します。

    ajsembdbreclaim -m manager

(3) クラスタ運用時の移行

クラスタ運用時の移行手順を次に示します。

(a) 実行系での作業

すべての作業は,共有ディスクをマウントした状態で実施してください。

  1. JP1/AJS3をクラスタ運用から一時的に外す。

    (1) 組み込みDBを使用する場合の事前準備」で実施済みの場合は,この操作は不要です。

  2. 論理ホストのJP1/AJS3サービスを停止する。

    (1) 組み込みDBを使用する場合の事前準備」で実施済みの場合は,この操作は不要です。

  3. データベースを起動する。

    次のコマンドを実行して,対象の論理ホストにセットアップされているすべての組み込みDBを開始します。

    ajsembdbstart -id 組み込みDBセットアップ識別子

    (1) 組み込みDBを使用する場合の事前準備」で実施済みの場合は,この操作は不要です。

  4. スケジューラーサービスのデータベースを移行する。

    次のコマンドを実行して,スケジューラーサービスのデータベースを移行します。

    jajs_cnvdb -h 論理ホスト名 -c V13

    成功すると,メッセージKAVS8470-Iが出力されます。

    失敗した場合は,メッセージKAVS8471-Eが出力されます。「(4)(h) jajs_cnvdbコマンドが失敗した場合の対処方法」の対処を実施してください。

  5. データベース領域のメンテナンスを実施する。

    次のコマンドを実行して,データベース領域のメンテナンスを実施します。

    ajsembdbreclaim -m manager -mh 論理ホスト名
  6. JP1/AJS3をクラスタ運用に加える。

(b) 待機系での作業

  1. スケジューラーサービスのデータベースを移行する。

    jajs_cnvdbコマンドに-sオプションを付けて実行し,スケジューラーサービスのデータベースを移行します。

    jajs_cnvdb -h 論理ホスト名 -c V13 -s

(4) スケジューラーサービスのデータベースを移行するときに使用するコマンド(jajs_cnvdb)

(a) 形式

jajs_cnvdb
   [-h 論理ホスト名]
   [-all]
   {-c V13|-v}
   [-s]

(b) 機能

スケジューラーデータベースを,バージョン12-60以前の形式からバージョン13-00以降の形式に移行します。格納されているデータも移行されます。

(c) 実行権限

スーパーユーザー権限またはAJS管理者

(d) 引数

-h 論理ホスト名

指定した論理ホストの移行を行います。

省略した場合,環境変数JP1_HOSTNAMEに指定した論理ホスト名が仮定されます。環境変数JP1_HOSTNAMEを指定していないときは,物理ホスト名(JP1_DEFAULT)が仮定されます。

環境変数JP1_HOSTNAMEに「JP1_DEFAULT」を指定して,このオプションを省略した場合は,メッセージKAVS0187-Eが出力され,コマンドが失敗します。

指定したホストが存在しない場合は,メッセージKAVS0291-Eが出力され,コマンドが失敗します。

-all

物理ホストおよびすべての論理ホストの,すべてのスケジューラーサービスの移行を行います。

-allオプションを指定しなかった場合,-allが仮定されます。

-c V13

スケジューラーデータベースをバージョン13-00以降の形式に移行します。

-v

移行は実行しないで,現在のスケジューラーデータベースが移行済みかどうかを表示します。

-c V13-vのどちらも指定しない場合,-vが指定されていると仮定されます。

スケジューラーサービスが存在しない環境で実行した場合は,メッセージKAVS1516-Eが出力され,コマンドが失敗します。

-s

クラスタ構成の待機系で実行する場合,必ず指定してください。

(e) 使用例

物理ホストのすべてのスケジューラーサービスの移行を行います。

jajs_cnvdb -c V13

(f) 出力例

-vオプションを指定した場合の出力例を次に示します。

(1)                            (2)
AJSROOT1                      V13
AJSROOT2                      -
AJSROOT3                      V13

出力項目の説明

(1) スケジューラーサービス名

スケジューラーサービス名は,固定で30バイト分出力されます。

例えば,スケジューラーサービス名が「AJSROOT1」(8バイト)の場合は,スケジューラーサービス名の後ろに22バイト分の半角スペースが出力されます。

(2) データベースの形式
V13

スケジューラーサービスのデータベースが,バージョン13の形式でセットアップされています。

-

スケジューラーサービスのデータベースが,バージョン12-60以前の形式でセットアップされています。

(g) 注意事項

  • バージョン12-60以前の環境からバージョンアップした場合は,すべてのスケジューラーサービスを-c V13オプションを指定して移行を実施してください。

  • クラスタ運用の場合は,実行系および待機系の両方で実行してください。

  • クラスタ運用の場合,実行系でサービスを停止した状態で実行する必要があるため,ジョブ運用を継続しながらの移行はできません。

  • このコマンドは,バージョン12-60以前の環境からバージョンアップした場合だけ実行します。

  • すべてのJP1/AJS3サービスを停止した状態で実行してください。

  • 移行時は,対象ホストに構築されているすべての組み込みDBを稼働状態にする必要があります。組み込みDBが停止中に移行を実施した場合は,組み込みDBを稼働後にこのコマンドを再度実行してください。

  • このコマンドは,複数同時に実行できません。

(h) jajs_cnvdbコマンドが失敗した場合の対処方法

エラーメッセージで示された要因を取り除き,再度jajs_cnvdbコマンドを実行してください。

なお,移行ができているかどうかは,jajs_cnvdbコマンドに-vオプションを指定して実行することで確認できます。

コマンドの実行例を次に示します。

物理ホストの場合
jajs_cnvdb -v
論理ホストの場合
jajs_cnvdb -h 論理ホスト名 -v

スケジューラーサービス名 V13」と表示されている場合,移行は完了しています。

スケジューラーサービス名 -」と表示されている場合は,移行は完了していません。

出力例
AJSROOT1 V13
AJSROOT2 -
AJSROOT3 V13

(i) 戻り値

0

正常終了。

0以外の値

異常終了。

(5) JP1/AJS3 - Manager 13-00以降へバージョンアップする場合の注意事項

JP1/AJS3 - Managerのバージョン12-60以前の環境で取得したデータベースのバックアップは,バージョン13-00以降では使用できません。データベースをバージョン13-00以降の形式に移行したあと,データベースのバックアップを取得し直してください。