5.1.1 クラスタシステムの概要
クラスタシステムとは,複数のサーバシステムを連携して一つのシステムとして運用するシステムで,一つのサーバで障害が発生しても,別のサーバで業務を継続できるようにすることを目的としています。
クラスタシステムは,処理を実行するホストと,障害が発生した時に処理を引き継げるように待機しているホストで構成されています。業務を実行中のサーバを実行系サーバ,実行系の障害時に業務を引き継げるよう待機しているサーバを待機系サーバと呼びます。障害発生時は,実行系サーバから待機系サーバに処理を引き継いで業務の停止を防ぎます。この障害時に処理を引き継ぐことをフェールオーバーといいます。
フェールオーバーする単位となる論理的なサーバのことを論理ホストといいます。クラスタシステムで実行されるアプリケーションは,フェールオーバーして業務を継続するために,論理ホスト環境で動作させる必要があります。論理ホストで動作するアプリケーションは,物理的なサーバに依存しないで,任意のサーバで動作できます。
論理ホストは,サービスとして動作するアプリケーション,共有ディスク,および論理IPアドレスの三つの要素で構成されています。サービスとして動作するJP1などのアプリケーションは,共有ディスクにデータを格納し,論理IPアドレスで通信を行います。
論理ホストを構成する各要素について次の表で説明します。
論理ホストの構成要素 |
説明 |
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サービス |
クラスタシステムで実行するJP1などのアプリケーションです。実行系の論理ホストで障害が発生すると,待機系の論理ホストで同じ名称のサービスを起動し,処理を引き継ぎます。 |
共有ディスク |
実行系と待機系の両方に接続されたディスク装置です。フェールオーバー時に引き継ぐ情報(定義情報,実行状況など)を保存すると,実行系の論理ホストで障害が発生した場合,待機系のサーバが共有ディスクへの接続を引き継ぎます。 |
論理IPアドレス |
論理ホストの動作中に割り当てられるIPアドレスです。実行系のサーバで障害が発生したときは,同じ論理IPアドレスの割り当てを待機系のサーバが引き継ぎます。そのため,クライアントからは同じIPアドレスでアクセスでき,一つのサーバが常に動作しているように見えます。 |
正常時,およびフェールオーバー後のアクセスを次の図に示します。
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実行系サーバが稼働している場合は,実行系サーバで共有ディスクや論理IPアドレスが割り当てられ,サービスが動作します。実行系サーバで障害が発生すると,待機系サーバが共有ディスクと論理IPアドレスを引き継ぎ,実行系サーバと同じサービスを起動します。フェールオーバーによって物理的なサーバが変わっても,待機系サーバが共有ディスクと論理IPアドレスを引き継ぐため,クライアントには同じIPアドレスのサーバが動作しているように見えます。