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JP1 Version 12 インフラストラクチャ管理 基本ガイド 


5.2 性能値の相関による問題分析をする

IT基盤システムの状態に変化がない状況で問題が認識できないなどの場合に,性能値を相関的にみることで問題の要因を特定します。このマニュアルでは,各リソースの性能情報を基に分析対象を明確にし,問題の要因が何かを分析する流れで説明します。

前提条件

お客様からの「特定のアプリケーションが遅い」との連絡をきっかけに,[E2Eビュー]画面,および[イベント分析ビュー]画面を確認したが,警告またはエラーである状態を示すリソースがないため,問題が認識できない状況にいるケースを例に説明します。

操作手順

  1. アプリケーションが動作している仮想マシンに基点を変更して,[E2Eビュー]画面を開きます。

  2. 仮想マシンに関連する機器の構成情報を確認します。

    ここでも各リソースに警告またはエラーがないため, 問題が認識できません。

  3. 性能値の相関による問題分析をするため,[性能分析ビュー]ボタンをクリックします。

    [図データ]

    [性能分析ビュー]画面の[リソース選択]エリアには,基点にした仮想マシンと関連する機器の構成情報が,[分析対象グラフのプレビュー]エリアには,仮想マシンの主なメトリックの性能グラフが表示されます。

    [図データ]
  4. [分析対象グラフのプレビュー]エリアに表示されている仮想マシンの性能グラフの波形をみて,問題の要因になりそうなグラフがないか探します。

    [図データ]
  5. グラフの詳細を確認するため,矢印をクリックして,[詳細分析エリア]に拡大します。

    拡大したグラフをみると,仮想マシン「vm100」の[仮想ディスク書き込み待ち時間]が過去のある時間帯に性能が劣化していることがわかります。

    [詳細分析エリア]に拡大したグラフは,分析のための操作(グラフの重ね合わせや類似グラフの探索)ができるようになります。

    メモ

    JP1/PFMのレポートなど,他のソフトウェアで管理している性能情報とJP1/OAの性能グラフと相関的に比較したい場合には,他のソフトウェアから出力した情報をインポートして,そのインポートした情報で,JP1/OAが持っている性能情報と同じようにグラフを重ねたり,類似グラフを探したりできます。

    インポートできる外部データの詳細については,マニュアルJP1/Operations Analytics 構築・運用ガイドを参照してください。

  6. 分析を進めるため,仮想マシン「vm100」が動作しているハイパーバイザー「ESX001」を,[リソース選択]エリアから選択します。

    [図データ]

    [分析対象グラフのプレビュー]エリアにハイパーバイザー「ESX001」の主なメトリックの性能グラフが追加で表示されます。

  7. 表示されたハイパーバイザーの性能グラフに,比較元のメトリックと関連がありそうなメトリックがないか確認します。

    ハイパーバイザーの[ディスク平均書き込み要求]は,仮想マシンの[仮想ディスク書き込み待ち時間]と同種のメトリックなので,[詳細分析エリア]に拡大して分析を進めます。

  8. [詳細分析エリア]に拡大した2つのグラフの波形を重ね合わせて比較します。

    1. ハイパーバイザー「ESX001」のグラフから変化があるグラフを選択し,[グラフを重ねる]ボタンをクリックします。

      [図データ]

      仮想マシンのグラフにハイパーバイザーのグラフが重なって表示されます。

    2. 重なったグラフを確認します。

      重なったグラフの波形は類似している期間も一部ありますが,これだけでは,ハイパーバイザー「ESX001」の[ディスク平均書き込み要求]が,問題の要因であるとは判断できません。

  9. ほかの関連のありそうなメトリックについても手順7~手順8を繰り返し,問題を分析します

    関連のありそうなメトリックをひととおり調査しても問題の要因を発見できなかったため,調査の対象をハイパーバイザー「ESX001」上で動作しているすべての仮想マシンへと拡大します。

    しかし,[リソース選択]エリアには,基点とした仮想マシンに関連するリソースしか表示されていないこともあり,すべての仮想マシンを対象に,1つ1つグラフを重ねる方法では時間がかかることが想定されます。そこで,性能グラフを性能値の相関によって探索します。

  10. 仮想マシン「vm100」のグラフに類似するグラフを探します。

    1. ハイパーバイザー上のすべての仮想マシンを探索対象とするために,[リソース選択]エリアに該当する仮想マシンを追加します。

      [任意のリソースを追加する]ボタンをクリックして,探索に必要な仮想マシンを追加してください。

    2. 仮想マシン「vm100」のグラフを選択して,[類似グラフを探す]ボタンをクリックします。

      [図データ]

      探索条件を設定する項目が表示されます。

    3. 探索条件を設定して,[探索する]ボタンをクリックします。

      ヒント

      相関係数は,1に近ければ近いほど,同じ傾向の波形を持つ正の相関が強いグラフであることを示し,-1に近ければ近いほど,逆の波形を持つ負の相関が強いグラフであることを示す指標です。この項目には,相関係数がいくつ以上の値となるメトリックを探索結果として表示させたいのか,を絶対値で設定します。

      デフォルトの設定値は,0.7です。この場合,相関係数の絶対値が0.7以上の結果,つまり,相関係数が-1.0-0.7および0.71.0の範囲の値となるメトリックが探索結果として表示されます。

    4. 探索された結果,相関係数の絶対値が高い順に一覧でリソースのメトリックが表示されます。

      一覧には,仮想マシン「vm102」のメトリックである[CPU使用率]が表示されました。

    5. 相関係数の絶対値が高い順に選択し,仮想マシン「vm100」のグラフに波形が類似しているか確認していきます。

      [図データ]

      仮想マシン「vm102」のメトリックである[CPU使用率]を一覧で選択すると,選択したメトリックのグラフが比較元のグラフに重なって表示されます。

      重なったグラフをみると,2つのグラフが非常に類似していることが分かります。この結果から,問題の要因の候補であると想定します。

      メモ

      相関係数が高いにも関わらず,比較元と比較先のグラフに相関がないようにみえることがあります。これは,メトリックの単位によって,グラフの表示が異なるためです。

    6. 一覧から他のメトリックも選択して類似しているグラフを探すため,[分析エリアにグラフを移動する]ボタンをクリックして,ひとまず[詳細分析エリア]に拡大しておきます。

  11. 相関係数の絶対値が高い順にグラフが類似しているかどうかの確認を繰り返すことで,問題の要因の候補を絞ります。

    結果,仮想マシン「vm102」の[CPU使用率]のグラフが最も類似していたことがわかりました。このことから,仮想マシン「vm102」が,問題の要因であると判断できます。

  12. 仮想マシン「vm102」の問題分析を続けます。

    [詳細分析エリア]に拡大したグラフから,仮想マシン「vm102」の[CPU使用率]のグラフを選択して,[基点を変更して新しいE2Eビューを開く]ボタンをクリックします。

    [図データ]

    仮想マシン「vm102」を基点とした[E2Eビュー]画面が開きます。

    ヒント

    業務システムの構成が小規模の場合,[性能分析ビュー]画面で分析を続けることで,原因まで分析できます。この場合は,[基点を変更して新しい性能分析ビューを開く]ボタンをクリックして引き続き分析してください。

次の作業

仮想マシン「vm102」を基点とした[E2Eビュー]画面で構成情報を確認したのち,問題の影響範囲と問題の重大度の分析を進めます。