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JP1 Version 12 JP1/Automatic Job Management System 3 運用ガイド


7.3.8 ジョブネットリリース機能の運用方法

ここでは,ジョブネットリリース機能を使用する際の基本的な運用サイクルおよび推奨する運用方法について説明します。

〈この項の構成〉

(1) 基本的な運用サイクル

ジョブネットリリース機能を使用する際の基本的な運用サイクルを次の図に示します。

図7‒14 ジョブネットリリース機能を使用する際の基本的な運用サイクル

[図データ]

開発用のジョブネット「A-00」と本番用のジョブネット「A」は同一の定義内容を持っています。ジョブネットリリース機能を使用してジョブネット「A」の定義を切り替える場合,まず,ジョブネット「A-00」をコピーしてジョブネット「A-01」として編集し,テストします(1)。そのあと,リリース登録します(2)。リリース元ジョブネット「A-01」の定義は,リリース登録時にコピーされてリリース先ジョブネット「A」の定義の一つとして管理されます。このため,リリース登録後にリリース元ジョブネットの定義を編集しても,リリース先ジョブネットには影響しません。

運用に当たっては,次の点を考慮する必要があります。

なお,リリース登録後でも,JP1/AJS3 - Viewやコマンドでリリース先ジョブネットの定義を編集できます。編集したジョブネット定義は,「適用中」状態のジョブネット定義に反映されます。ただし,リリース先ジョブネットの定義に従って生成された世代にも反映されるため,実行結果詳細などの情報が保持できません。このため,緊急時以外は,基本的な運用サイクルに従った運用を検討してください。

(2) リリース登録のやり直し

リリース登録したあとでさらにジョブネット定義の編集が必要になった場合,いったんリリース中止してからジョブネット定義を編集し,再度リリース登録することでやり直しができます。リリース登録をやり直す場合の運用を次の図に示します。

図7‒15 リリース登録をやり直す場合の運用

[図データ]

リリース登録したあとでさらにジョブネット定義の編集が必要になったため,リリースID「A-01」をいったんリリース中止します(1)。次に,開発用のジョブネット「A-01」を再度編集し,テストします(2)。そのあと,再度リリース登録します(3)。

(3) 推奨する運用方法

推奨するジョブネットリリース機能の運用方法を説明します。

(a) 一般的な運用方法

「リリース待ち」状態のジョブネット定義があるジョブネットにリリース登録はできません。このため,8月分,9月分といった複数のジョブネット定義を一度にリリース登録しておくことはできません。したがって,1回リリース登録したあとは,リリース登録したジョブネット定義での運用に切り替わった(「適用中」状態になった)あとで次のリリース登録をしてください。その際,次の図のように,確認作業の余裕を確保するために,最低でもリリース日時の1日前までにリリース登録するよう運用を検討してください。

図7‒16 推奨するジョブネットリリース機能の運用方法

[図データ]

(b) ルートジョブネットの実行順序制御機能使用時の運用方法

ルートジョブネットの実行順序制御機能では,ジョブネットコネクタと接続先のジョブネットは,同一実行日であれば接続します。しかし,両者の実行時に接続するため,そのときにリリース登録またはリリース中止の操作をすると,操作する前の世代と接続したり,操作の処理中であるため接続する世代が見つからないで接続しなかったりするおそれがあります。このため,ルートジョブネットの実行順序制御機能を使用する場合は,ジョブネットコネクタと接続先のジョブネットの世代が実行される4日前までにリリース登録またはリリース中止の操作を終えてください。

注※

基準時刻やタイムゾーンの設定によって同一実行日となる可能性がある日数です。

ルートジョブネットの実行順序制御機能使用時の運用例を次の図に示します。

図7‒17 ルートジョブネットの実行順序制御機能使用時の運用例

[図データ]

(c) 実行予定を計画一時変更している場合の運用方法

■ リリース登録するとき

計画実行登録または未来世代数指定による確定実行登録で実行登録したジョブネットにリリース登録すると,指定したリリース日時以降の世代が,リリース登録したジョブネット定義で作成し直されます。作成し直される世代には,リリース登録する前に操作した計画一時変更の情報は引き継がれません。

リリース登録する前に操作した計画一時変更の情報を,リリース登録後のジョブネット定義に引き継がせたい場合は,一時変更の再操作機能を使用します。一時変更の再操作機能では,実行登録後のジョブネットに行った一時変更の操作を,一時変更の情報として一覧で表示し,その一覧から選択した操作を再操作できます。

一時変更の再操作機能については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 導入ガイド 4.5.16 ジョブネットやジョブの一時変更の操作情報を確認・再操作する」を参照してください。また,一時変更情報の確認および再操作の手順については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 操作ガイド 9.17 一時変更情報を確認・再操作する」を参照してください。

注※

このとき,メッセージ「KAVS4751-W ジョブネットの世代(ユニット名:実行ID)の定義を切り替えて,新たな世代(実行ID)を作成するため,定義を切り替える前の世代に計画一時変更した情報が失われます」が出力されます。

■ リリース中止するとき

計画実行登録または未来世代数指定による確定実行登録で実行登録したジョブネットをリリース中止すると,リリース中止するジョブネット定義から作成された世代が,リリース中止後に「適用中」状態になるジョブネット定義で作成し直されます。作成し直される世代には,リリース中止する前に操作した計画一時変更の情報は引き継がれません。

このため,リリース中止する前に,スケジューラーログなどを基に,リリース中止するジョブネット定義の世代に対して操作した計画一時変更の情報を確認してください。また,リリース中止したあとは,作成し直された世代に対して,必要に応じて再度計画一時変更の操作をしてください。

注※

このとき,メッセージ「KAVS4751-W ジョブネットの世代(ユニット名:実行ID)の定義を切り替えて,新たな世代(実行ID)を作成するため,定義を切り替える前の世代に計画一時変更した情報が失われます」が出力されます。

■ スケジュール再計算を伴う操作をするとき

リリース登録やリリース中止以外のスケジュール再計算を伴う操作をしたときにも,世代が作成し直されます※1。作成し直される世代には,スケジュール再計算を伴う操作をする前に操作した計画一時変更の情報は引き継がれません。

このため,スケジュール再計算を伴う操作をする前に,スケジューラーログなどを基に,操作した計画一時変更の情報を確認してください。また,作成し直された世代に対して,必要に応じて再度計画一時変更の操作をしてください。

スケジュール再計算を伴う操作は次のとおりです。

  • 計画一時変更の実行中止※2

  • リリース先ジョブネットが参照するカレンダー定義の変更

  • 排他ジョブネットが参照するカレンダー定義の変更

  • 上位ジョブグループの基準時刻および基準日の変更

  • リリース先ジョブネットのスケジュール定義の変更

  • 排他ジョブネットのスケジュール定義の変更

  • スケジューラーサービスのウォームスタートまたはディザスターリカバリースタート

  • サスペンド解除

  • 排他ジョブネットへのリリース登録およびリリース中止

注※1

このとき,メッセージ「KAVS4751-W ジョブネットの世代(ユニット名:実行ID)の定義を切り替えて,新たな世代(実行ID)を作成するため,定義を切り替える前の世代に計画一時変更した情報が失われます」が出力されます。

注※2

実行登録種別が計画実行登録の場合にだけ,メッセージ「KAVS4751-W ジョブネットの世代(ユニット名:実行ID)の定義を切り替えて,新たな世代(実行ID)を作成するため,定義を切り替える前の世代に計画一時変更した情報が失われます」が出力されます。

(4) その他の運用方法

ジョブネットリリース機能では,リリースしたいジョブネットがあればリリース登録できるため,開発環境に合わせた運用ができます。ここでは,本番機だけで運用する場合およびマスターの管理が不要な場合の運用方法を説明します。

(a) 本番機だけで運用する場合の運用方法

開発機がなく,本番機だけで運用している場合でも,基本的な運用サイクルと同じ手順でジョブネット定義を切り替えられます。また,リリース登録後は,基本的な運用サイクルでの運用と同様,リリース元ジョブネットをマスターとして管理します。本番機だけで運用している場合の例を次の図に示します。

図7‒18 本番機だけで運用する場合の運用例

[図データ]

なお,リリース元ジョブネットとリリース先ジョブネットが同じジョブグループ配下にある場合でも,同様の運用ができます。

(b) マスターの管理が不要な場合の運用方法

マスターの管理が不要な場合,リリース情報からジョブネット定義をコピーおよび編集して運用できます。ただし,コピーできるのは「適用中」状態のジョブネット定義だけです。このため,リリース登録のやり直しに備えて,リリース登録したジョブネット定義が「適用中」状態になるまで,リリース元ジョブネットをajsprintコマンドでファイルに出力するなどして保存しておいてください。

マスターの管理が不要な場合の運用例を次の図に示します。

図7‒19 マスターの管理が不要な場合の運用例

[図データ]

リリースID「A-00」をリリース登録したあと,リリース元ジョブネット「A-01」を削除します(1)。次に,ジョブネット「A」のリリース情報からジョブネット定義をコピーして,ジョブネット「A-01」として編集し,テストします(2)。そのあと,リリース登録します(3)。

(5) リリース日時から1日以内にリリース登録またはリリース中止する場合

ジョブネットリリース機能を使用する際は,最低でもリリース日時の1日前までにリリース登録することを推奨しています。しかし,急を要する場合には,1日以内をリリース日時に指定してリリース登録したり,1日以内にリリース登録された「リリース待ち」状態のジョブネット定義をリリース中止したりできます。

ただし,リリース日時から1日以内にリリース登録またはリリース中止するときは,次の点に注意してください。また,1日以内にリリース登録やリリース中止をしないよう運用を再検討してください。

(6) リリース日時から1日以内に実行登録する場合

リリース登録したあとに実行登録する場合で,リリース日時から1日以内に実行登録するときは,リリース先ジョブネットのスケジュールルールに注意する必要があります。次に示す実行登録方法で実行登録すると,実行登録した日の基準時刻以降で世代を作成するため,リリース日時以降に実行登録しても,その日の実行予定世代は「適用終了」状態のジョブネット定義で実行されます。

リリース日時から1日以内に実行登録した場合の動作を次の図に示します。

図7‒20 リリース日時から1日以内に実行登録した場合(1)

[図データ]

この図は,8/1 15:00をリリース日時に指定してリリース登録したあと,リリース日時から1日以内(8/1 15:00から8/1 23:59までの間)に実行登録した場合の動作を示しています。8/1 15:00以降はリリースID「001」のジョブネット定義が「適用中」状態になりますが,リリース日時から1日以内に実行登録したため,「適用終了」状態のリリースID「AJS_AUTO」のジョブネット定義で8/1 00:00の実行予定世代が作成されています。8/1 00:00の実行予定世代は,実行登録した時点で実行されます。

また,リリースID「001」が「適用中」状態になったあとで新しくリリースID「002」のジョブネット定義をリリース登録したとします。このとき,リリースID「AJS_AUTO」のジョブネット定義に実行結果世代がなければ,リリースID「AJS_AUTO」のジョブネット定義は削除されます。このあと,8/1に実行登録すると,8/1 00:00時点で「適用中」状態となるジョブネット定義(リリースID「AJS_AUTO」のジョブネット定義)がないため,次の図のように,8/1 00:00の実行予定世代は作成されません。

図7‒21 リリース日時から1日以内に実行登録した場合(2)

[図データ]