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JP1 Version 12 JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(業務設計編)


7.2 保存世代数と性能との関係

保存世代数とは,ジョブネットの実行結果として保存される世代数のことです。保存世代数は,ルートジョブネットに設定できます。保存世代数を設定すると,設定した世代分(回数分)の実行結果を[デイリースケジュール]ウィンドウおよび[マンスリースケジュール]ウィンドウ,またはajsshowコマンドで確認できます。保存世代数は,1から99まで設定できますが,JP1/AJS3 - Managerのスケジューラーサービスの環境設定で,999世代まで保存世代数を持つようにすることができます。

しかし,保存世代数の増加は,そのジョブネットの規模と関連して「保存世代数登録ユニット数」で求められるレコード数が増加するため,データベースにアクセスする操作に多大な影響を及ぼします。したがって,保存世代数に設定する値は,システム性能への影響を十分配慮した上で決定してください。影響を受ける主な機能(処理)を次に示します。

これらの処理が実行される上で,レコード数の増加とその処理時間は比例傾向にあります。システム性能によって異なりますが,負荷のない状態で,例えば100万レコードを実行登録解除する場合,その処理時間は1〜2分程度,[マンスリースケジュール]ウィンドウを表示する場合には,8〜10分程度掛かってしまいます。システム負荷が高い(CPU使用率が高い,ディスクアクセス頻度が高いなど)場合には,さらに時間が掛かります。これに対し,10万レコードを実行登録解除する場合,その処理時間は数秒程度,[マンスリースケジュール]ウィンドウを表示する場合には,1〜2分程度になります。

この場合,ジョブネットの規模を2〜3階層にし,50〜80程度のユニット構成(推奨構成)にすると,最大保存世代数を999に設定したとしても運用に耐えられる計算になります。

このことから,保存世代数を大きくして運用したい場合には,ジョブネットの規模が小さくなるように設計し,規模の大きなジョブネットで運用したい場合には,その保存世代数を小さくするというように,保存世代数とユニット数のバランスを考えて設定することを検討してください。

さらに,登録解除処理中に別のジョブが実行されているのと同時に,[マンスリースケジュール]ウィンドウで状態監視している場合など,処理が並行して行われる運用を考慮し,保存世代数,ジョブネット規模は少なめに見積もるように設計してください。

上記の実行登録解除の処理時間については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド 6.1.7 登録解除や保存世代数管理による世代削除処理方式の変更」(Windowsの場合)またはマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド 15.1.7 登録解除や保存世代数管理による世代削除処理方式の変更」(UNIXの場合)で説明している,登録解除処理の非同期型の設定をした場合の時間です。同期型の設定のままで登録解除した場合には,何十分という処理時間が掛かってしまいます。

新規インストールした場合は,世代削除の方式がデフォルトで「非同期型(yes)」に設定されますが,バージョンアップインストールの場合,それまでの運用によっては「同期型(no)」が設定されていることがあります。環境設定パラメーターBACKGROUNDLEAVEの設定値を確認し,同期型が設定されている,またはBACKGROUNDLEAVEが設定されていない場合は,非同期型に変更することを推奨します。

また,バージョン8以前からバージョンアップしている場合,デフォルトでは,起動条件を有効にしたジョブネットは,監視世代(「監視中」状態になる世代)と実行世代(起動条件の成立によって生成される世代)で別々に保存世代が管理されます。そのため,保存世代数に大きい値を設定した場合の影響が顕著に現れます。そのレコード数は,「登録ユニット数保存世代数1スケジュール当たりの起動条件成立数」となります。起動条件付きジョブネットの場合は,10より小さい値を設定し,ajsshowコマンドで随時実行結果を保存することを推奨します。ajsshowコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド ajsshow」を参照してください。バージョン8以前からのバージョンアップの場合に起動条件が設定されているジョブネットの保存世代数を増やす場合の注意事項については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 導入ガイド 4.2.3(4) バージョン8以前のJP1/AJS2からバージョンアップインストールした場合の注意事項」を参照してください。