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JP1 Version 12 JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(業務設計編)


3.5.1 2日にまたがる業務のスケジュールを立てる

深夜に実行する業務など,2日にまたがってジョブネットを実行する場合,日付が変わるとスケジュールに支障が出る場合があります。例えば,月曜日から金曜日までの毎日の売り上げ集計を翌日の午前1:00に実行し,さらに土曜日を休業日としている場合を考えます。集計の開始時刻を翌日の午前1:00とすると,金曜日の分の集計は土曜日の午前1:00にスケジュールされますが,土曜日は休業日であるため集計を実行できません。

集計の開始時刻を当日の25:00とすることで,土曜日を休業日としている場合にも集計を実行できます。しかし,ネストジョブネットにスケジュールを定義している場合,ルートジョブネットとネストジョブネットで実行開始日が異なることになり,ネストジョブネットが実行されないことがあります。

このような場合には,JP1/AJS3上での「1日」の範囲を変更し,2日にまたがっていた処理が「1日」の範囲内に収まるようにします。「1日」の範囲を変更するには,次の2とおりの方法があります。

スケジュール構築が容易になるため,ルートジョブネットのスケジュールを48時間制にする方法を推奨します。次に,それぞれの方法について説明します。

〈この項の構成〉

(1) 48時間制スケジュールによる日またがり業務の定義

ルートジョブネットのスケジュールを48時間制にすると,暦日での翌日0:00〜23:59は,当日の24:00〜47:59として扱われます。例えば,土曜日の午前1時は,金曜日の25:00と指定できます。先ほどの例のように土曜日が休業日の場合も,48時間制にして実行開始時刻を金曜日の25:00と指定すれば,ジョブは実行されます。

24時間制スケジュールと48時間制スケジュールの違いを次の図に示します。

図3‒2 24時間制スケジュールと48時間制スケジュールの違い

[図データ]

48時間制(基準時刻0:00)で実行開始時刻を絶対時刻で指定する場合,午前3時に実行を開始するジョブは,「8/1 27:00」「8/2 3:00」の2とおりに表せます。どちらも実際の時刻は同じですが,実行予定日が異なるため,休業日/運用日,実行予定の振り替えなどが関係する場合,実行されない場合があります。

なお,24時間制のままでも,24:00〜47:59の時刻を指定することはできます。しかし,24時間制の場合,例えば「8/1 27:00」と指定すると,「8/2 3:00」と解釈されてスケジュールが設定されます。

(a) 24時間制から48時間制へ変更する

48時間制スケジュールを使ってジョブネットのスケジュールを設定するには,スケジューラーサービスの環境設定が必要になります。

24時間制から48時間制スケジュールに変更する場合の手順を次に示します。

  1. スケジューラーサービスの環境設定パラメーターROOTJOBNETSCHEDULERANGEの値を「00000030」に変更する。

  2. ジョブグループの詳細定義で,基準時刻に「0:00」を指定する。

    基準時刻をデフォルトから変更していない場合は,指定不要です。

  3. ジョブネットの実行開始時刻に24:00以降の値を指定する。

環境設定パラメーターの設定方法については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド 4.2 環境設定パラメーターの設定」(Windowsの場合)またはマニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 構築ガイド 14.2 環境設定パラメーターの設定」(UNIXの場合)を参照してください。

(b) 48時間制に変更した場合のスケジュール見直し

ルートジョブネットのスケジュールを24時間制から48時間制に変更すると,ルートジョブネットのスケジュールの実行動作が変わります。そのため,48時間制スケジュールに変更した場合は,既存のスケジュールを見直してください。次に示す条件に該当する場合は,ジョブネットのスケジュールルールを再設定してください。

  1. ルートジョブネットの実行開始時刻に24:00以降の時刻を定義している場合

    ルートジョブネットとネストジョブネットの実行開始日がずれるため,スケジュール定義内容を見直してください。

  2. 1.に当てはまるジョブネットと同階層のジョブネット,またはプランニンググループに排他スケジュールを定義している場合

    排他スケジュールの対象となる実行開始日がずれるため,スケジュール定義内容を見直してください。

  3. 1.および2.のジョブネットの下に,上位ジョブネットに依存しないスケジュールが定義されたネストジョブネットがある場合

    ネストジョブネットの実行対象となる実行開始日がずれるため,ネストジョブネットのスケジュール定義内容を見直してください。

  4. 基準時刻に0:00以外の時刻を設定している場合

    スケジュールルールの次の項目の時間の扱いが変わるため,ルートジョブネットとネストジョブネットのスケジュール定義内容を見直してください。

    • 実行開始日時

    • 開始遅延監視の時刻

    • 終了遅延監視の時刻

    • 起動条件の有効範囲の時間

    なお,基準時刻に0:00以外の時刻を設定した場合の時間の扱い方については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 導入ガイド 3.3.2 スケジュール情報の定義」を参照してください。

(2) 基準時刻による日またがり業務の定義

通常,JP1/AJS3上での「1日」は,0:00から翌日の0:00までの24時間となっています。「1日」の始まりの時刻をずらすことで,日付をまたぐ処理を1日に収めることができます。例えば,基準時刻を8:00とすると,JP1/AJS3の運用上の「1日」は,8:00から翌日の8:00までとなります。当日の0:00から7:59までは前日扱いとなります。

基準時刻を変更すると,実行開始時刻や遅延時刻の設定などのスケジュール定義が複雑になります。例えば,実行開始日時の種別によって,時刻の指定方法が異なります。

基準時刻が8:00で,暦日の8月5日1:00を指定する場合の実行開始の指定時刻を次の表に示します。

表3‒3 実行開始時刻の指定

実行開始時刻の種別

実行開始日の種別

指定時刻

絶対時刻

登録日,絶対日,相対日

8/5 1:00(または8/4 25:00)

絶対時刻

運用日,休業日

8/4 1:00

相対時刻

すべて

8/4 17:00

(a) 起動条件を設定した場合

24時間制のスケジュールで基準時刻を「0:00」以外に設定している場合,ジョブネットに起動条件を設定し,起動条件の終了時刻として24:00以降で基準時刻より前の時刻を指定すると,起動条件の終了時刻は翌々日扱いとなります。起動条件の終了時刻が翌々日になる例を次の図に示します。

図3‒3 起動条件の終了時刻が翌々日になる場合

[図データ]

この例で示すように,基準時刻を「0:00」以外に設定している場合は,0:00(24:00)から基準時刻までの時刻の指定が複雑になるため,48時間制スケジュールの使用を推奨します。