Hitachi

JP1 Version 12 JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(システム構築編)


8.3.1 バージョンアップ時にホストを変更する場合の定義情報の移行方法

JP1/AJS2のホストからJP1/AJS3を新規インストールしたホストに移行する場合は,JP1/AJS2の設定情報をバックアップし,新規インストールしたJP1/AJS3にリカバリーします。

設定情報の移行は,移行先のホスト上でJP1/AJS3をセットアップしたあとに実施してください。また,同一プラットフォーム上,かつ同一言語環境に移行してください。異なるプラットフォームに移行する場合は,移行先のホストのセットアップ後にジョブ実行環境とジョブネットやカレンダーの定義情報だけをリカバリーしてください。

なお,ホスト名が変わる場合は,移行後にホスト名の変更作業を実施する必要があります。

〈この項の構成〉

(1) JP1/AJS2ホストでのバックアップ

JP1/AJS2ホストでの設定情報のバックアップ手順については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 2 設計・運用ガイド」の,JP1/AJS2を使用するシステムの設定情報のバックアップについての説明を参照してください。

(2) JP1/AJS3ホストでのリカバリー

JP1/AJS3ホストでの設定情報のリカバリー手順については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 運用ガイド 2.3 JP1/AJS3を使用するシステムの設定情報のリカバリー」を参照してください。

また,JP1/AJS2 - ManagerからJP1/AJS3 - Managerへの移行の際は,必要に応じて次に示す「(3) 実行エージェント情報の移行(JP1/AJS3 - Managerだけ)」についても実施してください。

(3) 実行エージェント情報の移行(JP1/AJS3 - Managerだけ)

移行先のJP1/AJS3で,データベースを標準構成で運用する場合は,次の手順でQUEUEジョブ,サブミットジョブ実行環境定義を実行エージェント情報として移行できます。これによって,同時に移行したユニット定義の実行エージェント名を変更しないで運用できます。

  1. 環境変数JP1_HOSTNAMEを確認する。

    論理ホストのQUEUEジョブ,サブミットジョブ実行環境定義を移行する場合は,環境変数JP1_HOSTNAMEに論理ホスト名を設定してください。

    物理ホストのQUEUEジョブ,サブミットジョブ実行環境定義を移行する場合は,環境変数JP1_HOSTNAMEを変更しないでください。

  2. QUEUEジョブ,サブミットジョブ実行環境定義をエクスポートする。

    次のコマンドを実行して,QUEUEジョブ,サブミットジョブ実行環境定義をファイルにエクスポートします。

    jpqexport -dt isam -co 出力先ファイル名 -agmfmt
    (例)出力先ファイル名がAgentBack.csvの場合

    jpqexport -dt isam -co AgentBack.csv -agmfmt

    コマンドの実行後,コマンドの戻り値を確認してください。

    注意事項

    • 出力先ファイルには,存在しないファイルを指定してください。存在するファイルを指定して実行した場合はエクスポートされません。

    • jpqexportコマンドでは標準出力および標準エラー出力は出力されません。コマンドが正常終了したか,異常終了したかについては,コマンドの戻り値を確認してください。戻り値が0であれば正常終了しています。

    • jpqexportコマンドの-mhオプションに出力元の論理ホスト名を指定できますが,この手順では-mhオプションではなく,手順1に示すとおり環境変数JP1_HOSTNAMEで指定してください。

    • jpqexportコマンドの-agmfmtオプションは,この手順でだけ使用できます。QUEUEジョブ,サブミットジョブ実行環境定義のバックアップ・リカバリーでは使用しないでください。

    • 標準構成(ISAMレス構成)の場合でも,jpqimportコマンドおよびjpqexportコマンドを使用できます。ただし,jpqexportコマンドでエクスポートした結果ファイル,またはjpqexportコマンドの-agmfmtオプションでエクスポートした結果ファイルを,移行先のJP1/AJS3にインポートしても,Queueジョブおよびサブミットジョブは実行できません。

  3. 移行する定義数を確認する。

    実行エージェント情報には,上限値を超える実行エージェントおよび実行エージェントグループを移行できません。

    手順2でエクスポートした結果ファイルに上限値を超えるエージェント情報がある場合は,結果ファイルから不要な定義行を削除し,定義数を上限値以内にしてください。

    エージェント情報の最大定義数は次のとおりです。

    QUEUEジョブ,サブミットジョブ実行環境定義の最大定義数

    エージェント:1,024個

    キュー:8,192個

    JP1/AJS3 バージョン9のエージェント情報の最大定義数

    実行エージェント:1,023個

    実行エージェントグループ:1,024個

    エージェント情報の定義数の確認方法は次のとおりです。

    (1) 手順2の出力結果をテキストエディターなどで開く。

    手順2で-coオプションに指定したファイルをテキストエディターなどで開きます。

    (2) 実行エージェントとして移行する定義数を確認する。

    実行エージェントを定義する行であることを意味する「"A"」で始まる行数を数えます。ただし,デフォルト実行エージェントを定義する行であることを意味する「"A","@SYSTEM"」で始まる行がある場合,その行は除いてください。

    この結果,対象となる行数が1,024行以上あるときは,すべてのエージェント定義を実行エージェントとして移行できませんので,不要なエージェント定義を削除してください。

    (3) 実行エージェントグループとして移行する定義数を確認する。

    実行エージェントグループを定義する行であることを意味する「"G"」で始まる行を数えます。対象となる行数が1,025行以上ある場合は,すべてのキュー定義を実行エージェントグループとして移行できませんので,不要なキュー定義を削除してください。

    例えば,手順2の出力結果が次のような場合,実行エージェントとして移行されるエージェント定義数は2個,実行エージェントグループとして移行されるキュー定義は2個と数えます。

     "A","@SYSTEM","Agent1","00:00-00:00=5","Ef",""
     "A","Agent1","Agent1","00:00-00:00=5","Ef",""
     "A","Agent2","Agent2","00:00-00:00=0","In",""
     "G","Agent2","Agent1:16,Agent2:16","In",""
     "G","que1",,"Ef",""
  4. JP1/AJS3サービスを起動する。

    すでにJP1/AJS3サービスが起動している場合,再起動は不要です。

  5. 手順2でエクスポートしたQUEUEジョブ,サブミットジョブ用データベースの情報をエージェント管理用データベースにインポートする。

    ajsagtaddコマンドを実行して,QUEUEジョブ,サブミットジョブ実行環境定義をエージェント管理用データベースにインポートします。

    ajsagtaddコマンドについては,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド ajsagtadd」を参照してください。

    (例)インポート元のファイル名がAgentBack.csvの場合

    ajsagtadd -f AgentBack.csv

(4) ユニット定義だけを移行する場合の注意事項

バージョン8以前のJP1/AJS2環境からユニット定義だけを別ホストのJP1/AJS3環境に移行する場合,ユニット定義の実行ホストに指定しているエージェント名を実行エージェントとして定義※1する必要があります。

また,移行するユニット定義の中に自ホストで実行するジョブが含まれている場合は,次のどちらかの操作を実施してください。

注※1

実行エージェントは,ajsagtaddコマンドで定義します。ajsagtaddコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド ajsagtadd」を参照してください。

注※2

デフォルト実行エージェントの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 導入ガイド 5.1.4 デフォルト実行エージェント」を参照してください。

(5) ジョブ実行多重度に関する注意事項

(3) 実行エージェント情報の移行(JP1/AJS3 - Managerだけ)」の手順を実行してバージョン9のJP1/AJS3に移行すると,自ホストのエージェント定義にデフォルト実行エージェントと,自ホスト名と同じ名称の実行エージェントの二つが作成されます

注※

バージョン8以前の時点で自ホスト名と同じ名称のエージェント定義がない場合は,デフォルト実行エージェントだけが作成されます。自ホスト名と同じ名称の実行エージェントは作成されません。

ユニット定義の実行エージェントの指定方法によって,選択される実行エージェントが次のように異なるため注意が必要です。

また,実行エージェントに設定しているジョブ実行多重度は,実行エージェント単位に適用されます。デフォルト実行エージェントと,自ホスト名と同じ名称の実行エージェントを定義している場合は,それぞれの実行エージェントに設定されているジョブ実行多重度の総和が自ホストで実行されることになります。

例えば,バージョン8以前で自ホスト名「host1」をエージェントとして定義していた場合,バージョン9のJP1/AJS3に移行すると「@SYSTEM」,「host1」という二つの実行エージェントが定義されます。「host1」のジョブ実行多重度を「00:00-00:00=10」(終日,ジョブ実行多重度は10)としている場合,デフォルト実行エージェントのジョブ実行多重度が「00:00-00:00=5」(終日,ジョブ実行多重度は5)であるため,最大で15のジョブが多重に実行されることがあります。

(6) ジョブネットの実行登録状態の移行(JP1/AJS3 - Managerだけ)

移行元ホストのJP1/AJS2 - Managerが08-50以降の場合,エクスポート・インポート機能を使うと,ジョブネットの実行登録情報を移行先ホストのJP1/AJS3 - Managerに移行できます。ただし,ジョブネットやジョブの実行結果については移行できません。

ジョブネットの実行登録情報をエクスポートおよびインポートする手順については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 運用ガイド 3.4 ajsrgexport,ajsrgimportコマンドによるジョブネットの実行登録状態のバックアップ・リカバリー」を参照してください。

なお,移行元ホストのJP1/AJS2 - Managerが08-10以前の場合は,ジョブネットの実行登録情報をエクスポートできないため,移行先ホストのJP1/AJS3 - Managerでジョブネットを再登録する必要があります。

(7) 移行元と移行先のホスト名が異なる場合

移行元と移行先のホスト名が異なる場合の手順については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 運用ガイド 7.9 JP1/AJS3が動作しているホストの設定を変更する」を参照してください。