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JP1 Version 12 JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(システム構築編)


2.3.3 複数LAN接続

JP1/AJS3では,複数のNICを持つホストにJP1/AJS3 - Manager,JP1/AJS3 - Agent,またはJP1/AJS3 - Viewをインストールし,そのホストから複数のLANに接続してJP1/AJS3を運用するシステム構成に対応しています。

複数のLANに接続できる環境でJP1/AJS3を使用するためには,接続先ホストのホスト名からIPアドレスが取得できるように,次のどれかを定義しておく必要があります。

複数のLANに接続しているホストと通信する場合のシステム構成例を次に示します。

図2‒17 複数のLANに接続したシステム構成例

[図データ]

この例の構成の場合,HostAからHostBのIPアドレスを取得しようとしたときはLANA_BというIPアドレス,HostCからHostBのIPアドレスを取得しようとしたときはLANB_BというIPアドレスが取得されるようにしておく必要があります。

この構成例の前提を満たしていると仮定して,複数のLANに接続されているホストでJP1/AJS3を運用する際のポイントを次に示します。

JP1/Baseの「複数LAN接続」の詳細については,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」のネットワークを分離した環境でJP1/Baseを運用する際の考え方を参照してください。

〈この項の構成〉

(1) 送信時と受信時の通信方式について

JP1/AJS3のセットアップ後の通信方式を次に示します。事前にJP1/Baseの提供する「複数LAN接続」の設定をしているかどうかで,通信方式が異なります。現在の設定を確認する方法については,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」のJP1/Baseの通信方式の設定に関する記述を参照してください。

JP1/AJS3セットアップ後の通信方式を,次の表に示します。

表2‒8  JP1/AJS3セットアップ後の通信方式

物理ホストの通信方式

論理ホストの通信方式

送信時

受信時

送信時

受信時

「複数LAN接続」の設定を未実施※1

インストール直後

ANYバインド方式

ANYバインド方式

クラスタセットアップ直後

IPバインド方式

IPバインド方式※2

IPバインド方式

IPバインド方式※2

「複数LAN接続」の設定を実施済み※1

インストール直後

JP1/Baseと同じ

JP1/Baseと同じ※2

クラスタセットアップ直後

JP1/Baseと同じ

JP1/Baseと同じ※2

JP1/Baseと同じ

JP1/Baseと同じ※2

(凡例)

−:該当なし

注※1

イベント・アクション制御機能およびジョブ実行制御機能では,一つのホスト名から複数のIPアドレスが取得できるOSのとき,次のように動作が異なるため注意してください。

JP1/Baseの設定で「複数LAN接続」の通信方式を設定しない場合

取得されたIPアドレスを,接続が成功するまで順次接続を試みます。

JP1/Baseの設定で「複数LAN接続」の通信方式を設定する場合

取得されたIPアドレスのうち,jp1hostsファイルまたはjp1hosts2ファイルの先頭のIPアドレスにだけ接続を試みます。

注※2

JP1/AJS3 Queueless AgentサービスおよびJP1/AJS3 Check AgentサービスではANYバインド方式です。

送信設定をIPバインド方式にすると,送信データが一つのLANにしか流れません。図2-17の構成を例にすると,HostBの送信設定をIPバインド方式にした場合,HostBからの通信はLANAだけ,またはLANBだけにしかできません。そのため,複数のLANに接続されているホストでは,クラスタ運用をするかどうかに関係なく,送信設定はANYバインド方式にする必要があります。物理ホストだけで運用する場合は,インストール直後はANYバインド方式のため,設定は必要ありません。クラスタ運用する場合は,クラスタの設定直後はIPバインド方式のため,JP1/Baseの「複数LAN接続」の通信方式を設定する必要があります。

クラスタ運用する場合,受信設定をANYバインド方式にすると,物理ホストあてのデータを論理ホストが受け取ったり,論理ホストあてのデータを物理ホストが受け取ったりするようになり,ジョブが正常に実行できない問題が発生します。このため受信設定は,複数のLANに接続されているかどうかに関係なく,IPバインド方式にする必要があります。ANYバインド方式には変更できません。

受信設定をIPバインド方式にすると,どちらか一方からのデータしか受信しません。図2-17の構成を例にすると,HostBで受信設定をIPバインド方式にすると,HostA,またはHostCどちらか一方からのデータしか受信しません。JP1/Baseの「複数LAN接続」の通信方式を設定すると,受信設定がIPバインド方式のままLANA,LANB両方からデータを受信できるようになります。そのため,HostBで受信設定をIPバインド方式にする場合は,HostBでJP1/Baseの「複数LAN接続」の通信方式を設定する必要があります。

上記をまとめると,次の表のようになります。

表2‒9 JP1/AJS3の通信方式の変更要否

複数のLANへの接続

なし

あり

物理ホストだけで運用

インストール直後の設定で問題なし

インストール直後の設定で問題なし

クラスタ運用

クラスタセットアップ直後の設定で問題なし

JP1/Baseの「複数LAN接続」の通信方式の検討の必要あり

上記の表で「問題なし」となっているケースでも,JP1/AJS3で使用するLANを固定したい場合などは,必要に応じてJP1/Baseの「複数LAN接続」の通信方式を設定してください。

複数のLANに接続した環境でJP1/AJS3 - Manager,JP1/AJS3 - Agent,およびJP1/AJS3 - Viewを運用する場合,製品がどのLAN上のホストで使用されているかによって設定内容が変わります。設定内容の詳細は「付録D 複数LAN環境での通信設定」を参照してください。

(2) ホスト名解決の方式について

複数のLANに接続されているホストでは,一つのホスト名から複数のIPアドレスが取得できることが前提です。図2-17の構成を例にすると,HostBでは,HostBのIPアドレスとして,LANA_BのIPアドレスとLANB_BのIPアドレスが取得できることが必要です。

しかし,OSによっては,一つのホスト名から複数のIPアドレスを取得できない場合があります。また,各ホストで共通のhostsファイルを使用したり,DNSを利用したりしている場合,HostCからHostBのIPアドレスを取得する際に,LANA_BのIPアドレスが取得され,LANB_BのIPアドレスが取得できないことがあります。

このような環境でも,JP1/Baseの提供しているjp1hosts情報またはjp1hosts2情報を定義すれば,JP1/AJS3の通信で,一つのホスト名から複数のIPアドレスの取得ができるようになります。そのため,HostCからHostBのIPアドレスを取得する際に,LANB_BのIPアドレスが取得できるようになります。

jp1hostsまたはjp1hosts2の詳細については,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」を参照してください。