12.2.6 クラスタ構成のバージョンアップインストール
クラスタ構成のUNIXホストにJP1/AJS3シリーズプログラムをバージョンアップでインストールする手順を次に示します。
JP1/AJS3 - Managerをバージョンアップインストールする場合,JP1/AJS3 - Managerからバージョンアップするときと,JP1/AJS2 - Managerからバージョンアップするときでは手順が異なります。
なお,この手順では,論理ホストが通常動作している系を実行系,論理ホストが通常動作していないで待機している系を待機系と呼びます。
- 〈この項の構成〉
(1) バージョンアップ手順(JP1/AJS2 - Managerからのバージョンアップ以外)
JP1/AJS3 - Manager,JP1/AJS3 - Agent,およびJP1/AJS2 - Agentをバージョンアップする手順を次に示します。
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待機系で,物理ホストおよびすべての論理ホストが動作していないことを確認する。
待機系で,JP1/AJS3またはJP1/AJS2の,プログラムおよびサービスが動作していないことを確認してください。
なお,実行系で論理ホストのJP1/AJS3またはJP1/AJS2が動作していても問題ありません。
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待機系でバージョンアップインストールを実施する。
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実行系で,物理ホストおよびすべての論理ホストが動作していないことを確認する。
実行系で論理ホストを停止したあと,JP1/AJS3またはJP1/AJS2の,プログラムおよびサービスが動作していないことを確認してください。
なお,論理ホストの停止の代わりに,手順2でバージョンアップした待機系に論理ホストをフェールオーバーしても問題ありません。
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実行系でバージョンアップインストールを実施する。
- 重要
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待機系をバージョンアップしたあと,待機系で論理ホストを稼働させている場合,実行系のバージョンアップが完了するまでは実行系にフェールオーバーさせないでください。
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標準構成のJP1/AJS3 - Managerをバージョンアップインストールした場合,組み込みDBのバージョンが,リリースノートの「システム作成上の注意事項」に記載されている組み込みDBのバージョンと同じであるか確認してください。バージョンが異なる場合は,組み込みDBをバージョンアップインストールしてください。
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(2) バージョンアップ手順(JP1/AJS2 - Managerから標準構成へのバージョンアップ)
- 重要
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クラスタ構成で使用しているJP1/AJS2 - Managerをバージョンアップする場合,共有ディスクに格納したデータの移行などのセットアップを実施するために,クラスタ運用を一時的に停止する必要があります。セットアップが完了するまで,JP1/AJS3 - Managerでの運用はできません。セットアップには,データ量などに応じた時間が必要なため,計画的にバージョンアップインストールおよびセットアップ作業を実施してください。
JP1/AJS2 - Managerをバージョンアップする手順を次に示します。
複数の論理ホストがある場合は,次に示す手順6から手順16と,手順20から手順23までをすべての論理ホストに対して実施してください。非クラスタ環境で論理ホストを運用している場合は,実行系の手順だけ実施してください。物理ホストおよび論理ホストですべてのセットアップが完了するまで,JP1/AJS3の運用は開始できません。
また,次に示す手順は,一つの組み込みDBに一つのスケジューラーサービスを格納することを前提としています。複数のスケジューラーサービスを構築している場合は,手順8,手順11,手順12をすべてのスケジューラーサービスに対して実行してください。組み込みDBを追加したい場合は,手順9,手順10,手順20,手順21を実施してください。
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実行系および待機系のJP1を終了させる。
クラスタソフトからの操作で,実行系ノードと待機系ノードで起動しているJP1のプログラムおよびサービスを停止してください。停止する方法については,クラスタソフトのマニュアルを参照してください。
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実行系のJP1/Baseをバージョンアップインストールする。
JP1/Baseのインストールについては,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」を参照してください。
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実行系のJP1/AJS3 - Managerをバージョンアップインストールする。
実行系のJP1/AJS2 - Managerに,JP1/AJS3 - Managerをバージョンアップインストールします。
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バージョンアップ前に実行系物理ホストで使用していた組み込みDBまたはHiRDBを起動する。
移行前のデータベースにアクセスするため,バージョンアップ前に実行系物理ホストのスケジューラーサービスのデータベースとして使用していた組み込みDBまたはHiRDBを起動します。
組み込みDBまたはHiRDBの起動方法については,使用しているJP1/AJS2のマニュアルまたはHiRDBのマニュアルを参照してください。
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実行系物理ホストでセットアップを実施する。
実行系物理ホストでjajs_migrateコマンドを実行します。
実行例を次に示します。
jajs_migrate -convert
jajs_migrateコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 2. セットアップコマンド jajs_migrate」を参照してください。
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実行系で共有ディスクおよび論理IPアドレスが使用できることを確認する。
共有ディスク上のデータを移行するため,共有ディスクおよび論理IPアドレスが有効になっていることを確認します。共有ディスクがマウントされていない,または論理IPアドレスが有効になっていない場合は,クラスタソフトからの操作やボリュームマネージャーの操作などで,共有ディスクをマウントし,論理IPアドレスを有効にしてください。操作方法については,クラスタソフトのマニュアルを参照してください。
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バージョンアップ前に実行系論理ホストで使用していた組み込みDBまたはHiRDBを起動する。
移行前のデータベースにアクセスするため,バージョンアップ前に実行系論理ホストのスケジューラーサービスのデータベースとして使用していた組み込みDBまたはHiRDBを起動します。
組み込みDBまたはHiRDBの起動方法については,使用しているJP1/AJS2のマニュアルまたはHiRDBのマニュアルを参照してください。
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実行系でajscnvdbexportコマンドを実行し,データベース情報を退避する。
実行例を次に示します。
ajscnvdbexport -mh LHOST -F AJSROOT2 -b /tmp/work
移行前の組み込みDBに対して操作するため,移行前のスケジューラーデータベースに組み込みDBを使用している場合は,次の環境変数に設定を追加してからコマンドを実行してください。設定を追加していない場合,メッセージKAVS0990-Eが出力され,コマンドが異常終了します。
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HP-UXの場合
SHLIB_PATH=移行前の組み込みDBのインストール先ディレクトリ/client/lib
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SolarisまたはLinuxの場合
LD_LIBRARY_PATH=移行前の組み込みDBのインストール先ディレクトリ/client/lib
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AIXの場合
LIBPATH=移行前の組み込みDBのインストール先ディレクトリ/client/lib
ajscnvdbexportコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 2. セットアップコマンド ajscnvdbexport」を参照してください。
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実行系でajsembdbinstlコマンドを実行し,JP1/AJS3のデータベースをインストールする。
実行例を次に示します。
ajsembdbinstl -s /opt/jp1ajs2/tools/AJS3DB -id _JF1 -mh LHOST
ajsembdbinstlコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 2. セットアップコマンド ajsembdbinstl」を参照してください。
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実行系でajsembdbbuildコマンドを実行し,データベース環境を構築する。
実行例を次に示します。
ajsembdbbuild -s -r -d /shdsk/node0/jp1ajs2/embdb/_JF1 -ld /var/opt/jp1ajs2/embdb/_JF1/dbarea -mh LHOST -eh hostA -p 22221 -i /opt/jp1ajs2/embdb/_JF1 -id _JF1
ajsembdbbuildコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 2. セットアップコマンド ajsembdbbuild」を参照してください。
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実行系でajsembdbsetupコマンドを実行し,データベース環境をセットアップする。
実行例を次に示します。
ajsembdbsetup -mh LHOST -F AJSROOT2 -p 22221 -id _JF1 -ru s -convert
ajsembdbsetupコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 2. セットアップコマンド ajsembdbsetup」を参照してください。
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実行系でajscnvdbimportコマンドを実行し,データベース情報を移行する。
実行例を次に示します。
ajscnvdbimport -mh LHOST -F AJSROOT2 -b /tmp/work
ajscnvdbimportコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 2. セットアップコマンド ajscnvdbimport」を参照してください。
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実行系でセットアップを実施する。
実行系でjajs_migrateコマンドを実行し,JP1/AJS3の運用ができる環境にセットアップします。
実行例を次に示します。
jajs_migrate -convert -h LHOST -r -S
jajs_migrateコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 2. セットアップコマンド jajs_migrate」を参照してください。
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セットアップ時に自動的に起動した組み込みDBを停止する。
実行例を次に示します。
ajsembdbstop -id _JF1
ajsembdbstopコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 3. 通常の運用で使用するコマンド ajsembdbstop」を参照してください。
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実行系でjbsgetcnfコマンドを実行して共通定義情報をファイルに退避する。
実行するコマンドを次に示します。
jbsgetcnf -h 論理ホスト名 > 退避ファイル名
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手順15で作成したファイルを待機系にコピーする。
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待機系のJP1/Baseをバージョンアップインストールする。
JP1/Baseのインストールについては,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」を参照してください。
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待機系のJP1/AJS3 - Managerをバージョンアップインストールする。
待機系のJP1/AJS2 - Managerに,JP1/AJS3 - Managerをバージョンアップインストールします。
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待機系物理ホストでセットアップを実施する。
待機系物理ホストでjajs_migrateコマンドを実行します。
実行例を次に示します。
jajs_migrate -convert
jajs_migrateコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 2. セットアップコマンド jajs_migrate」を参照してください。
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待機系でajsembdbinstlコマンドを実行し,JP1/AJS3のデータベースをインストールする。
実行例を次に示します。
ajsembdbinstl -s /opt/jp1ajs2/tools/AJS3DB -id _JF1 -mh LHOST
-idオプションに指定する値は,実行系で指定した値と同じ値を指定してください。
ajsembdbinstlコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 2. セットアップコマンド ajsembdbinstl」を参照してください。
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待機系でajsembdbbuildコマンドを実行し,データベース環境を構築する。
実行例を次に示します。
ajsembdbbuild -s -f -d /shdsk/node0/jp1ajs2/embdb/_JF1 -ld /var/opt/jp1ajs2/embdb/_JF1/dbarea -mh LHOST -eh hostA -p 22221 -i /opt/jp1ajs2/embdb/_JF1 -id _JF1
-id,-d,および-pオプションに指定する値は,実行系で指定した値と同じ値を指定してください。
ajsembdbbuildコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 2. セットアップコマンド ajsembdbbuild」を参照してください。
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待機系でjbssetcnfコマンドを実行して共通定義情報を設定する。
実行するコマンドを次に示します。
jbssetcnf 手順16でコピーした退避ファイル名
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待機系でセットアップを実施する。
待機系でjajs_migrateコマンドを実行し,JP1/AJS3の運用ができる環境にセットアップします。
実行例を次に示します。
jajs_migrate -convert -h LHOST -f -S
jajs_migrateコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 コマンドリファレンス 2. セットアップコマンド jajs_migrate」を参照してください。
-
移行前のJP1/AJS2で使用していた組み込みDBおよびHiRDBについて,クラスタソフトへの登録を解除する。
クラスタソフトからの登録解除方法については,クラスタソフトのマニュアルを参照してください。
-
実行系でJP1を起動する。
クラスタソフトから操作して,実行系ノードでJP1のプログラムおよびサービスを起動し,JP1/AJS3のクラスタ環境での運用を開始します。
(3) バージョンアップ手順(JP1/AJS2 - Managerから互換用ISAM構成へのバージョンアップ)
JP1/AJS2 - Managerをバージョンアップする手順を次に示します。
複数の論理ホストがある場合は,次に示す手順5をすべての論理ホストに対して実施してください。
-
実行系および待機系のJP1を終了させる。
クラスタソフトからの操作で,実行系ノードと待機系ノードで起動しているJP1のプログラムおよびサービスを停止してください。停止する方法については,クラスタソフトのマニュアルを参照してください。
-
実行系のJP1/Baseをバージョンアップインストールする。
JP1/Baseのインストールについては,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」を参照してください。
-
実行系のJP1/AJS3 - Managerをバージョンアップインストールする。
実行系のJP1/AJS2 - Managerに,JP1/AJS3 - Managerをバージョンアップインストールします。
JP1/AJS3シリーズプログラムのバージョンアップインストールについては,「12.2.1(2)(b) JP1/AJS3 - ManagerおよびJP1/AJS3 - Agentをバージョンアップインストールする場合」を参照してください。
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実行系で共有ディスクおよび論理IPアドレスが使用できることを確認する。
共有ディスク上のデータを移行するため,共有ディスクが有効になっていることを確認します。共有ディスクがマウントされていない場合は,クラスタソフトからの操作やボリュームマネージャーの操作などで,共有ディスクをマウントしてください。操作方法については,クラスタソフトのマニュアルを参照してください。
また,pingコマンドまたはjp1pingコマンドで,論理IPアドレスが有効になっていることを確認してください。jp1pingコマンドについては,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」を参照してください。
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実行系でjajs_convert_to_spmdコマンドを実行し,システム管理の起動プロセス定義ファイルを変換する。
実行例を次に示します。
/opt/jp1ajs2/tools/jajs_convert_to_spmd -h LHOST -c ISAM
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待機系のJP1/Baseをバージョンアップインストールする。
JP1/Baseのインストールについては,マニュアル「JP1/Base 運用ガイド」を参照してください。
-
待機系のJP1/AJS3 - Managerをバージョンアップインストールする。
待機系のJP1/AJS2 - Managerに,JP1/AJS3 - Managerをバージョンアップインストールします。
JP1/AJS3シリーズプログラムのバージョンアップインストールについては,「12.2.1(2)(b) JP1/AJS3 - ManagerおよびJP1/AJS3 - Agentをバージョンアップインストールする場合」を参照してください。
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実行系でJP1を起動する。
クラスタソフトから操作して,実行系ノードでJP1のプログラムおよびサービスを起動し,JP1/AJS3のクラスタ環境での運用を開始します。