12.10.1 メンテナンス実施前の検討項目
ここでは,メンテナンス実施前の計画段階での検討,注意が必要な項目について説明します。
(1) システム全体での検討項目
-
システム全体で,メンテナンスの実施順序を決定する。
メンテナンスの順序は,システムの階層構成(IM構成)の定義に従って,必ず上位ホストから下位ホストの順序で実施してください。
また,実施順序の計画では,次の点も考慮する必要があります。
-
エージェント群のグルーピングでは,互いの業務処理に影響しないよう考慮する。
-
常時稼働システムをメンテナンスする場合は,処理を代替できるサーバを準備する。
-
JP1/IMおよびエージェントのメンテナンスに要する時間を,個々に見積もる。
- 重要
-
システム全体をメンテナンスする場合,jcoimdefコマンドでのイベント取得開始位置の設定,およびイベント取得フィルターを複数設定しての切り替えを利用します。
イベント取得開始位置とイベント取得フィルターには,相関関係があります。つまり,片方の設定がもう一方に影響します。相関関係を簡単に説明すると,次のようになります。
-
イベント取得開始位置
JP1/IM - Managerの起動時にイベント取得開始位置の設定に従って,JP1/BaseのイベントDBからイベントを取得し,JP1/IM - Managerのイベントバッファーに格納します。
-
イベント取得フィルター
JP1/IM - ManagerがJP1/Baseからイベントを取得する際に,JP1/IM - Managerのイベントバッファーに格納するイベントを条件に従ってフィルタリングします。
つまり,JP1/IM - Managerの停止前と起動後でイベント取得フィルターの条件が異なり,かつ,イベント取得開始位置をJP1/IM - Managerの起動前からさかのぼって取得する設定にしている場合,JP1/IM - Managerの停止前と起動後とで,イベントバッファーに格納されるイベントが異なる(JP1/IM - Viewで参照できるイベントが異なる)場合があります。これを防止するために,実施順序は必ず上位ホストから下位ホストの順序で行うようにしてください。
-
-
(2) マネージャー(JP1/IM - Manager)側での検討項目
マネージャーのJP1/IM - Managerのメンテナンスでは,次のようなことを検討しておく必要があります。
-
バックアップの検討
-
データベースのメンテナンスの検討
-
ディスク容量の確認
-
障害レポートの利用
なお,上記検討項目の詳細については,「12.9 JP1/IMのメンテナンスの検討」を参照してください。また,監視業務の観点から,次に示す項目についても検討が必要です。
-
マネージャー(JP1/IM - Manager)の停止中に発生したイベントを取得する。
JP1/IM - Managerのメンテナンス中に発生したJP1イベントを管理する場合には,JP1/IM - Managerの起動前にさかのぼってJP1イベントを取得するよう設定する必要があります。
システム全体のメンテナンスの一環では,マネージャーのJP1/IM - Managerも停止します。発生事象の管理のため,JP1/IM - Manager停止中のイベントを取得するように設定を検討してください。
JP1/IM - Managerの起動前からイベントを取得する設定は,jcoimdefコマンドで行います。設定する内容については,以降で実施例を用いて説明します。
なお,マネージャーのJP1/Baseが停止している間に発生したイベントは取得できません。これは,JP1/Baseの停止中はイベントDBにJP1イベントを登録できないためです。詳細については,「12.10.1(3) エージェント(JP1/Base)側での検討項目」を参照してください。
-
エージェントのメンテナンス中に発生する障害イベント(障害発生のJP1イベント)を監視の対象から外す。
メンテナンス中には,サーバの再起動などを伴うことがあり,不要な障害イベントが大量に発行されるおそれがあります。本来の監視業務に支障をきたす場合があるため,不要なイベントをフィルタリングするよう設定をしてください。
不要なイベントのフィルタリングでは,イベント取得フィルターに,メンテナンス対象ホストの発行するJP1イベントを取得対象外とする共通除外条件を定義しておき,メンテナンス時に有効にします。設定する内容については,以降で実施例を用いて説明します。
エージェントのJP1/Baseが終始停止した状態でメンテナンスをする場合は,イベントDBにイベントが登録されないため,フィルタリングの必要はありません。
-
エージェントのメンテナンス中に発生する障害イベントをアクションの実行対象から外す。
障害発生イベントの受信を契機としてメール送信などの自動アクションを設定している場合,メンテナンスが原因で発生した障害イベントによって自動アクションも実行されてしまいます。メンテナンス中に発生する障害イベントを取得対象としたまま,自動アクションだけを実行対象外にしたい場合は,JP1イベントを自動アクションの実行対象外とする共通除外条件の設定を検討してください。
共通除外条件の除外対象に自動アクションを設定することで,メンテナンス時に既存の自動アクションの定義を変えることなく,メンテナンス対象で発生した障害イベントだけを自動アクションの実行対象外にできます。