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JP1 Version 11 JP1/Base 運用ガイド


2.6.3 コマンドによるシステム階層構成の管理

JP1/BaseおよびJP1/IMで構成されたシステムの階層構成を管理する方法には,IM構成管理を使用する方法とJP1/Baseが提供する構成管理機能(構成定義に関するコマンド)を使用する方法があります。ここでは,JP1/Baseが提供する構成管理機能を使用する場合のシステム階層構成の管理について説明します。

JP1/Baseが提供する構成管理機能では,システムの階層構成を定義した構成定義情報を,構成定義に関するコマンドを使用してマネージャーとエージェントに設定します。

構成定義に関するコマンドには次に示すコマンドがあります。

これらのコマンドを使用して,構成定義情報をマネージャーからエージェントへ配布したり,エージェントから構成定義情報を収集してマネージャーの構成定義情報を更新したりします。

コマンドの詳細については,「15. コマンド」の「jbsrt_distrib」,「jbsrt_sync」,「jbsrt_del」,および「jbsrt_get」を参照してください。

構成定義情報を設定する際は,マネージャーでJP1/IMの構成定義ファイル(jbs_route.conf)に階層構成を定義した上で,jbsrt_distribコマンドを実行して下位ホストに定義情報を配布します。構成定義情報の設定の詳細については,マニュアル「JP1/Integrated Management - Manager 構築ガイド」のIM構成管理を使用しない場合のシステムの階層構成の設定について説明している個所を参照してください。

〈この項の構成〉

(1) 構成定義情報の配布

管理対象のホストが追加されたり,削除されたりした場合,エージェントの構成定義情報を更新(jbsrt_distribコマンドを実行して新しい構成定義情報を配布)する必要があります。構成定義情報の配布には,次に示す二つの配布方式があります。

一括配布方式

構成定義上のすべてのホストに構成定義情報の削除または配布を実施します。

差分配布方式

構成定義上で変更が生じたホストだけに構成定義情報の削除または配布を実施します。JP1/Base 11-10から追加された方式です。

ここでは,差分配布方式について説明します。

(2) 差分配布方式を使用する場合の前提条件

差分配布方式を使用する場合は,マネージャーホストおよびサブマネージャーホストに次に示す条件があります。

(3) 配布方式の選択

jbsrt_distribコマンド実行時にどちらの配布方式で動作するかは,共通定義情報(JBSRT_DISTRIB_VERSION)で指定します。

JBSRT_DISTRIB_VERSIONの設定値が1の場合

差分配布方式

JBSRT_DISTRIB_VERSIONの設定値が0の場合

一括配布方式

また,共通定義情報(JBSRT_DISTRIB_VERSION)の設定に関係なく,jbsrt_distribコマンドのオプションで明示的に配布方式を指定することもできます。

jbsrt_distribコマンドで-Dオプションを指定した場合

差分配布方式

jbsrt_distribコマンドで-Lオプションを指定した場合

一括配布方式

-Dオプションと-Lオプションのどちらのオプションも省略した場合は,共通定義情報(JBSRT_DISTRIB_VERSION)の設定値に従います。

なお,JP1/Baseを新規インストールした場合,JBSRT_DISTRIB_VERSIONは1(差分配布方式)で設定されます。JP1/Base 11-10より前のバージョンから上書きインストールした場合,JBSRT_DISTRIB_VERSIONは未定義(一括配布方式)で設定されます。

共通定義情報(JBSRT_DISTRIB_VERSION)で配布方式を指定する場合の設定方法については,「12.2.1 構成定義情報の配布方式を指定する」を参照してください。

jbsrt_distribコマンドの詳細については,「15. コマンド」の「jbsrt_distrib」を参照してください。

(4) 差分配布方式を使用して運用する場合の注意事項

次に示すようなケースで個別にエージェントやサブマネージャーの構成定義情報を削除した場合,マネージャーからは削除したホストを差分として抽出できないため,一括配布方式で配布を実施してください。

(5) 通信タイムアウト時間の見直し

3階層以上のシステム階層構成で運用する場合,サブマネージャー以下の構成定義の配布や同期に時間が掛かり統合マネージャーに一定時間応答が返らないことで,構成管理機能のコマンド(jbsrt_distribjbsrt_sync)やIM構成管理を使用したシステム階層構成の反映や同期がタイムアウトする場合があります。

タイムアウトは主に,サブマネージャー以下のエージェントの台数が多い場合や,サブマネージャーとエージェントの間のネットワーク回線が低速である場合などに発生します。

下位ホストに異常がないにも関わらずタイムアウトが発生する場合には,上記のケースが要因と考えられるため,統合マネージャーの通信タイムアウト時間を長く調整してください。通信タイムアウト時間の設定方法については,「16. 定義ファイル」の「共通定義設定用ファイル(構成管理機能)」を参照してください。

なお,システム階層構成内のマネージャーホスト上で構成定義の配布や同期の処理に掛かった時間は,メッセージKAVB3185-Iで確認できます。設定値を調整する際の目安にしてください。