COBOL2002 使用の手引 手引編


20.1.1 ソフトウェア開発の現状

ソフトウェア開発の技術は,今日まで目覚ましい発展を遂げてきました。次々に新しい技術が生まれ,ソフトウェアの規模は拡張されてきました。しかし,ソフトウェアの拡張に伴い,さまざまな問題が出てきました。

〈この項の構成〉

(1) 生産面での問題点

従来のプログラムは,ある特定の業務を処理するために開発される,機能中心のものでした。このようにして設計されるプログラムは,適用される業務が限定され,それ以外の業務には対応できない柔軟性に欠けたものでした。そのため,プログラマは業務ごとに新しいプログラムを設計しなければならず,作業に多くの時間を必要としていました。

(2) 信頼面での問題点

従来のプログラミング言語によるプログラムでは,処理形式などの標準化が徹底されていないため,既存のプログラムを再利用するのが難しく,新しいプログラムのほとんどは最初から設計されていました。また,従来のプログラム設計では最後まで設計が終了し,実際に実行させないと期待どおりの動きをするかどうかがわかりませんでした。そのため,設計に必要な時間の割に信頼性の低いプログラムしか作成できませんでした。

(3) 保守面での問題点

従来のプログラミング言語によるプログラムを変更または修正するのには,大変な手間と時間が掛かりました。変更,修正がうまくできずに性能が劣化したり,使えなくなる場合もありました。これは,データ間またはプログラム間の依存度が高いため,一つの変更が,予想外の結果まで引き起こすことが頻発したからです。

これらの問題点に対応するための手段として,オブジェクト指向によるシステム開発技法があります。オブジェクト指向とは,どのようなものかを次に示します。