6.1.2 業務グループごとのITリソースの使用状況を分析して,中長期的な予約リソース量(割り当て性能)の適切量を判断する

業務グループごとに収集したITリソースの予約リソース量と実際の使用量を比較分析して,現状,その業務グループに割り当てられている性能が適切かどうかを判断します。さらに,今後その業務グループで実行する処理や利用者の増減などの予定が判明している場合は,その予定に合わせて予約リソース量の過不足を調整します。

ここでは,ITリソースの適切な使用量を,予約リソース量に対する50パーセントから80パーセントの範囲と仮定します。また,ここでは,業務グループ内のメモリの予約リソース量の適正について検討する例を説明します。

<この項の構成>
(1) 分析方法
(2) 各種レポートの利用方法

(1) 分析方法

  1. 過去1年分の業務グループ内のメモリの予約リソース量と使用量を比較します。
    この結果をグラフにすると,次のようになります。

    [図データ]

    このグラフから,メモリの予約リソース量に対して使用量が適切かどうかを判断して,メモリの予約リソース量の適正について検討していきます。ここでは,次の4つの場合に分けて,メモリの予約リソース量の適正について検討するポイントを説明します。
    • 予約リソース量に対して使用量が適切な場合
    • 予約リソース量に対して使用量が高い場合
    • 予約リソース量に対して使用量が低い場合
    • 使用率が増加・減少傾向にある場合
    予約リソース量に対して使用量が適切な場合
    [図データ]
    このグラフのように,予約リソース量に対して,メモリ使用量が50パーセントから80パーセントの範囲を推移している場合,業務グループ内の予約リソース量に対して使用量が適切と判断できます。引き続き現在の予約リソース量を維持して問題ありません。
    予約リソース量に対して使用量が高い場合
    [図データ]
    このグラフのように,メモリ使用量が予約リソース量に対して80%のラインをまたいで推移している場合,業務グループ内の一部の仮想ホストのレスポンスが低下しているおそれがあると判断できます。早急に仮想ホストごとのメモリの使用状況を確認して対象を特定してから,予約リソース量を増やすことを検討してください。
    予約リソース量に対して使用量が低い場合
    [図データ]
    このグラフのように,メモリ使用量が予約リソース量に対して50%未満で推移している場合,リソースが余剰していると判断できます。仮想ホストごとのメモリの使用状況を確認して,予約リソース量の削減を検討してください。
    使用量が増加傾向にある場合
    [図データ]
    このグラフのように,メモリ使用量が増加傾向にある場合,将来的に予約リソース量を使い切ってしまうおそれがあります。その場合,次のグラフのようにメモリ使用量の近似線を使用して,予約リソース量を使い切ってしまう時期を予想してください。
    [図データ]
    このグラフから,来年の10月にメモリ使用量が予約リソース量に達することが予想されます。
    その後,例えば過去1年間の次の項目の変化を調査して,来年10月までに追加導入が必要になるITリソースのスペックを見積もってください。
    ・業務の利用者数(ユーザー数)
    ・処理データ量
    ・業務ジョブ数
    ・仮想ホストごとのリソース使用量
    ・仮想ホストOSの設定や業務外プログラム(ウィルススキャンなど)の設定
  2. 手順1で検討したポイントに加えて,今後,実行する処理や利用者の増減によって使用量が変化する場合を想定する必要があります。その場合,その予定に合わせて,予約リソース量の最適化を検討してください。
    予約リソース量の最適化を検討する場合は,業務グループ全体ではなく,業務グループ内に複数ある仮想ホストごとにリソースの使用状況を分析することが有効です。予約リソース量の最適化が必要な仮想ホストが特定できるため,より精度の高い,効率的な計画を立てられます。

(2) 各種レポートの利用方法

●手順1で使用する,業務グループ内のメモリの予約リソース量と実際の使用量を比較するグラフを作成する

jirmreportコマンドを実行して出力される,仮想化ソフトウェア割り当て実績レポートを利用します。ここでは,現在(2011年5月10日)から過去1年間を対象にした業務グループAのメモリの予約状況を出力することとします。

<実行例>

jirmreport -alloc hvhis -bg 業務グループA -metric memory -date 20100510​ -range year -f 出力先ファイル名

<出力例(仮想化ソフトウェア割り当て実績レポート)>

DATE,TOTALPERF,ALLOCATEDPERF,UTIL(%)
2010/05/10,300,100,60
2010/05/11,300,100,60
2010/05/12,300,100,65
2010/05/13,300,100,65
2010/05/14,300,100,65
2010/05/15,300,100,65
2010/05/16,300,100,70
2010/05/17,300,100,79
2010/05/18,300,100,70
2010/05/19,300,100,70
     ・
     ・
     ・

ここでは,次のデータを使用します。
  • 1項目目:DATE(日付)
  • 3項目目:ALLOCATEDPERF(メモリの予約リソース量(割り当て性能))
  • 4項目目:UTIL(%)(メモリの予約リソース量に対する使用率)
<グラフの作成方法>
次の式で算出した値を日付ごとにプロットして,表計算ソフトなどでグラフにしてください。
  • メモリ使用量=3項目目のALLOCATEDPERF×4項目目のUTIL(%)×0.01
  • メモリの予約リソース量=3項目目のALLOCATEDPERF
なお,ここでは,ITリソースの適切な使用量を,予約リソース量に対する50パーセントから80パーセントの範囲と仮定しています。実際は,環境に合わせた任意の範囲を設定してください。
●手順2で使用する,業務グループ内に複数ある仮想ホストごとにリソースの使用状況を確認する

jirmreportコマンドを実行して出力される,リソース使用量レポートを利用します。ここでは,現在(2011年5月10日)から過去2か月を対象にした業務グループAのリソース使用状況を出力することとします。

<実行例>

jirmreport -perf -bg 業務グループA -range 2month -f 出力先ファイル名

<出力例(リソース使用量レポート)>

DEVICE,TYPE,RESOURCENAME,...,COLLECTEDDATE,METRIC,INSTANCE,INSTANCESTATUS,PERFVALUE
サーバ,仮想,WEBSERVER,...,2011/03/09 00:00,CPU使用率(%),CPU,正常,50
サーバ,仮想,WEBSERVER,...,2011/03/10 00:00,CPU使用率(%),CPU,正常,40
サーバ,仮想,WEBSERVER,...,2011/03/11 00:00,CPU使用率(%),CPU,正常,43
                         ・
                         ・
                         ・
サーバ,仮想,WEBSERVER,...,2011/05/08 00:00,CPU使用率(%),CPU,正常,27
サーバ,仮想,WEBSERVER,...,2011/05/09 00:00,CPU使用率(%),CPU,正常,30
サーバ,仮想,WEBSERVER,...,2011/05/10 00:00,CPU使用率(%),CPU,正常,47
サーバ,仮想,WEBSERVER,...,2011/03/09 00:00,メモリ使用率(%),メモリ:2.00 GB,正常,58
サーバ,仮想,WEBSERVER,...,2011/03/10 00:00,メモリ使用率(%),メモリ:2.00 GB,正常,59
                         ・
                         ・
                         ・
サーバ,仮想,WEBSERVER,...,2011/05/09 00:00,メモリ使用率(%),メモリ:2.00 GB,正常,59
サーバ,仮想,WEBSERVER,...,2011/05/10 00:00,メモリ使用率(%),メモリ:2.00 GB,正常,60
サーバ,仮想,APPSERVER,...,2011/03/09 00:00,CPU使用率(%),CPU,正常,60
サーバ,仮想,APPSERVER,...,2011/03/10 00:00,CPU使用率(%),CPU,正常,60
                         ・
                         ・
                         ・
サーバ,仮想,APPSERVER,...,2011/05/09 00:00,CPU使用率(%),CPU,正常,60
サーバ,仮想,APPSERVER,...,2011/05/10 00:00,CPU使用率(%),CPU,正常,68
                         ・
                         ・
                         ・

ここでは,次のデータを使用します。
  • 1項目目:DEVICE(デバイス種別)
  • 2項目目:TYPE(物理または仮想の種別)
  • 3項目目:RESOURCENAME(リソース名)
  • 11項目目:COLLECTEDDATE(収集日時)
  • 12項目目:METRIC(CPU使用率やメモリ使用率などの測定項目)
  • 13項目目:INSTANCE(CPUやメモリなどの測定対象)
  • 15項目目:PERFVALUE(性能値)
<リソース使用状況の算出方法>
ここで出力したリソース使用量レポートには,業務グループA内のすべてのデバイスの使用状況が出力されています。ここから,業務グループA内の全仮想ホストのメモリ使用状況,個々の仮想ホストごとのリソース使用状況を確認します。
業務グループA内の全仮想ホストのリソース使用状況
1項目目のDEVICE(デバイス種別)を「サーバ」で,2項目目のTYPE(物理または仮想の種別)を「仮想」でフィルタリングして,仮想ホストを対象にしたリソース使用状況を特定します。
個々の仮想ホストごとのリソース使用状況
仮想ホストを対象にしてフィルタリングしたデータをから,3項目目のRESOURCENAME(リソース名)を確認したい仮想ホストのリソース名でフィルタリングして,調査したい仮想ホストだけを対象にしたデータを特定します。例えば,「WEBSERVER」というホスト名の仮想ホストのリソース使用状況を確認したい場合は,3項目目を「WEBSERVER」でフィルタリングします。
さらに,この仮想ホストのメモリ使用状況を把握したい場合には,12項目目のMETRIC(CPU使用率やメモリ使用率などの測定項目)が「メモリ使用率(%)」でフィルタリングして,15項目目のPERFVALUE(性能値)をグラフに表示するなどしてリソース使用状況を確認してください。
参考
複数のCPUを搭載した仮想ホストの場合は,リソース使用量レポートの13項目目:INSTANCE(CPUやメモリなどの測定対象)が「CPU1」,「CPU2」のように,区別されて表示されます。これによって,複数のCPUを搭載した仮想ホストに対してCPUごとの使用状況も把握できます。