2.7.4 仮想ホストの退避・復元
JP1/ITRMでは,リソース管理画面の[アクション]メニューから仮想化ソフトウェア上にある運用中の仮想ホストを一時的に退避イメージとして退避したり,退避イメージを任意の仮想化ソフトウェア上に復元したりできます。なお,リソースプールを構成する仮想化ソフトウェアの種別は,退避・復元の前後で切り替えられません。
- <この項の構成>
- (1) 仮想ホストの退避
- (2) 仮想ホストの復元
(1) 仮想ホストの退避
CPU,メモリ,IPアドレスなど,仮想ホストの構成情報を仮想化ソフトウェア上から退避して,退避イメージとして一時的にライブラリに保存できます。退避した仮想ホストは,削除待ち状態になります。削除待ち状態になった仮想ホストは,設定された割り当て予約や性能の情報を保持しています。これらの情報は,削除待ちリソース一覧から削除した時点で削除されます。また,仮想ディスクイメージなどの関連ファイルも削除されます。仮想ホストを削除待ち状態から管理対象に戻した場合は,仮想ホストが退避されているため仮想ホストの状態が異常となりますが,同一のホスト名と管理IPアドレスで仮想ホストを復元した場合は情報を引き継ぎます。
仮想ホストは,[退避設定]画面で退避できます。
図2-30 仮想ホストの退避
![[図データ]](figure/sk020290.gif)
- 注意事項
- 操作の対象がHyper-Vの場合,ゲストクラスタのノードはJP1/ITRMから退避・復元・マイグレーションをした場合,その仮想ホストおよびゲストクラスタの他ノードのクラスタとしての動作は保障されません。
- 操作の対象がVMware ESX 4.1以降の仮想ホストの場合,USBデバイスを構成していると,退避が失敗します。退避の前にUSBデバイスの設定を解除してください。
- 操作の対象がHyper-Vの仮想ホストの場合,仮想ホストの退避,またはコールドマイグレーションの操作によって仮想ホストにチェックポイントが作成されます。このチェックポイントは復元先,または移動先の仮想ホストに引き継がれます。
また,チェックポイントが作成されるため,仮想ホストのサイズが退避,またはコールドマイグレーション実行前よりも大きくなります。どの程度大きくなるかは,仮想ホストの使用状況によって変わります。
チェックポイントが不要な場合,SCVMM上から手動で削除する必要があります。
退避,またはコールドマイグレーション実行前に作成されたチェックポイントを用いて仮想ホストを以前の状態に戻すと,ネットワークアダプタが接続されていない状態になります。この場合,SCVMMの管理コンソールを用いて,仮想ホストのネットワークアダプタを設定し,ゲストOS上でネットワークの設定をする必要があります。
- ISOイメージをマウントした仮想ホストを退避した場合,復元時に仮想ホストは復元されますがISOイメージは復元されません。
このため,移動先でISOイメージを使用する場合は,SCVMMの画面でライブラリ共有にあるISOイメージを復元後の仮想ホストにマウントする必要があります。なお,退避元と復元先のSCVMMが異なる場合は,マウント前に退避元のSCVMMのライブラリ共有から退避先のSCVMMのライブラリ共有にISOイメージを複製して登録しておく必要があります。
また,バーチャルフロッピーディスクを使用したまま退避しようとすると,エラーとなり操作が失敗します。この場合,SCVMMの管理コンソールを使用して,対象の仮想ホストのフロッピーディスクドライブを「メディアなし」にしてから退避してください。
- パススルーディスクを持つ仮想ホストをマイグレーションした場合,エラーとなり操作が失敗します。
- 次に示す状態の仮想ホストを退避をした場合,SCVMMがダイナミックメモリに対応していないと,退避に失敗します。
・Hyper-Vのダイナミックメモリが有効になっている仮想ホスト。
・ダイナミックメモリが有効になった状態で作成したチェックポイントを持つ仮想ホスト。
- 対象がVMwareの仮想ホストを退避した場合,退避前の仮想ホストのポートグループ種別(通常のポートグループまたはプライベートVLANポートグループ)の情報は保持しません。そのため,復元時に退避前の仮想ホストとは異なるポートグループ種別に接続されるおそれがあります。
- 分散仮想スイッチに接続されているVMwareの仮想ホストを退避した場合,退避前に接続していた分散仮想スイッチと同名の標準仮想スイッチがあると,復元後の仮想ホストは退避前の分散仮想スイッチには接続されません。同名の標準仮想スイッチに接続されます。
- Raw Device Mappingのデバイスを構成している場合,退避が失敗します。退避する前に,Raw Device Mappingのデバイスを必ず解除してください。
(2) 仮想ホストの復元
あらかじめ退避しておいた退避イメージを互換性のある仮想化ソフトウェア上に復元します。
デプロイと異なり,退避イメージに含まれるCPU,メモリ,IPアドレスなど,仮想ホストの構成情報も含めて復元します。なお,仮想ホストの復元直後は,電源が入っている状態になっています。
仮想ホストは,[退避イメージ選択]画面から復元できます。
図2-31 仮想ホストの復元
![[図データ]](figure/sk020300.gif)
- 注意事項
- タスクの状態が完了となっても構成情報が正しく取得できていない場合は,トポロジ表示が不完全だったり,後続のタスクが失敗したりすることがあります。
- タスク完了後,リソース管理画面のテーブルビューでタイプが仮想となっていることを確認してください。仮想以外の場合には,構成情報が正しく取得できていないため,次の対処をしてください。
- リソース管理画面のテーブルビューでタイプが空白になっている場合
- 対象の仮想ホストに対して探索し,タイプが仮想となることを確認してください。
- リソース管理画面のテーブルビューでタイプが物理になっている場合
- 対象の仮想ホスト,仮想化ソフトウェアおよび仮想化環境管理ソフトウェアに対して再収集し,タイプが仮想となることを確認してください。
- 復元する退避イメージの仮想化ソフトウェアがHyper-Vの場合,次に示す状態の退避イメージを復元するには,復元先のSCVMMとHyper-Vがダイナミックメモリに対応している必要があります。ダイナミックメモリに対応していないと,復元に失敗します。
- 退避時に仮想ホストのダイナミックメモリが有効になっていた退避イメージ。
- 仮想ホストのダイナミックメモリが有効な状態で作成したチェックポイントを持つ退避イメージ。
- 復元後の仮想スイッチの接続先について
- 復元先の仮想スイッチの状態によって,復元後の仮想スイッチの接続先が変わります。
表2-21 復元先の仮想スイッチの状態ごとの復元後の接続先
項番 | 復元先の仮想スイッチの状態 | 復元後の接続先 |
---|
仮想スイッチの種別 | ポートグループ |
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1 | 標準仮想スイッチまたは分散仮想スイッチ | 復元元のVLANID(0~4094)と同じ通常ポートグループが存在する。 | 既存の通常ポートグループに接続します。 |
2 | 標準仮想スイッチ | VLANIDが4095の通常ポートグループが存在する。 |
3 | 復元元のVLANID(0~4094)と同じ通常ポートグループが存在しない。 | 新規に通常ポートグループを作成して,そのポートグループに接続します。 |
4 | VLANIDが4095の通常ポートグループが存在しない。 |
5 | 分散仮想スイッチ | 復元元のVLANID(0~4094)と同じ通常ポートグループが存在しない。かつ,復元元のVLANID(0~4094)と同じポートグループが,プライベートVLAN設定のセカンダリにも存在しない。 |
6 | 復元元のVLANID(0~4094)をセカンダリとするプライベートVLAN設定が存在する。かつ,そのセカンダリを持つポートグループが存在しない。 | エラーとなり,復元が失敗します。退避イメージは復元前の状態と変わりません。 復元先仮想スイッチの変更,または指定した仮想スイッチの設定の変更が必要です。 |
7 | 復元元のVLANID(0~4094)をセカンダリとするプライベートVLAN設定が存在する。かつ,そのセカンダリを持つポートグループが存在する。 | 既存のプライベートVLANポートに接続します。 |
- 注
- 復元元のVLANIDが4095で,復元先の仮想スイッチに分散仮想スイッチを指定した場合,復元に失敗します。分散仮想スイッチには,VLANIDに4095は指定できないため,標準仮想スイッチを指定してください。