3.7.1 処理性能を見積もる
(1) Definerの応答時間を見積もる
Definer使用時のServerからの応答時間は,次の式で近似値を算出できます。
応答時間=
Serverでの処理時間
+ データ転送時間
+ 接続先(JP1/AJS3 - ManagerまたはLDAPサーバ)での処理時間
+ 描画時間
それぞれの項目について次に説明します。
- Serverでの処理時間
- Serverでの処理には,Definerからの接続の受け付け,公開ジョブネット定義情報の作成・更新,Definerが発行するルートジョブネット一覧の取得要求の処理,LDAP部署やユーザー情報の取得要求の処理などがあります。
- Definerが発行するルートジョブネット一覧の取得要求は,Clientが発行する操作要求とともに,キューで管理されます。キューは一つのスケジューラーサービスに対して256の操作要求を管理できますが,それ以上の操作要求が発行された場合は,操作要求の受け付けが拒否されます。そのため,1台のServerに対して多数の操作要求が同時に発行されると,操作要求が拒否されたり,処理に時間が掛かったりします。
- ルートジョブネット一覧の取得処理を効率的に処理するためには,公開ジョブネットを登録するスケジューラーサービスを複数用意して,公開するルートジョブネットを分散してください。
- なお,スケジューラーサービスは,既存の業務に影響を与えないようにJP1/AJS3 - User Job Operation用として新しく作成することを推奨します。
- データ転送時間
- データ転送時間は,DefinerとJP1/AJS3 - ManagerおよびLDAPサーバ間のネットワーク性能の影響を受けます。
- また,取得するユニットやLDAPエントリの数が増えるに従い,データ転送時間が長くなります。
- 接続先(JP1/AJS3 - ManagerまたはLDAPサーバ)での処理時間
- Serverは,要求された処理に応じてJP1/AJS3 - ManagerまたはLDAPサーバに接続し,情報を取得します。
- JP1/AJS3 - Manager側では,Definerで指定したスケジューラーサービスに登録されているルートジョブネット一覧の取得要求を処理します。取得するルートジョブネットおよびジョブグループ数が多いと,処理に時間が掛かるおそれがあります。
- LDAPサーバ側では,Definerで指定したLDAP部署やユーザー情報の一覧取得要求を処理します。取得する部署やユーザーの数が多いと,処理に時間が掛かるおそれがあります。
- 描画時間
- Definerの表示性能は,基本的にはDefinerホストの性能の影響を受けます。Definerホストの処理速度が遅く描画時間が長い場合は,表示されるルートジョブネット数を少なくするなどの運用を検討してください。
(2) Clientの応答時間を見積もる
Client使用時のServerおよびJP1/AJS3 - Managerからの応答時間は,次の式で近似値を算出できます。
応答時間=
Serverでの処理時間
+ ServerとJP1/AJS3 - Managerの通信時間
+ JP1/AJS3 - Managerでの処理時間
+ 描画時間
それぞれの項目について次に説明します。
- Serverでの処理時間
- Serverでの処理には,Clientからの接続(ユーザー認証),公開ジョブネット定義情報の読み込み,Clientが発行する操作要求の処理などがあります。
- Clientが発行するルートジョブネットの操作要求は,Definerが発行するルートジョブネット一覧の取得要求とともに,キューで管理されます。キューは一つのスケジューラーサービスに対して256の操作要求を管理できますが,それ以上の操作要求が発行された場合は,操作要求の受け付けが拒否されます。そのため,1台のServerに対して多数の操作要求が同時に発行されると,操作要求が拒否されたり,処理に時間が掛かったりします。
- Clientが発行する操作要求を効率的に処理するためには,公開ジョブネットを登録するスケジューラーサービスを複数用意して,公開するルートジョブネットを分散してください。
- なお,スケジューラーサービスは,既存の業務に影響を与えないようにJP1/AJS3 - User Job Operation用として新しく作成することを推奨します。
- ServerとJP1/AJS3 - Managerの通信時間
- Clientが発行する操作要求を処理するために,ServerはJP1/AJS3 - Managerに対して通信し,コマンドをリモート実行します。通信には,次の三つがあります。
- Clientが発行する操作要求をコマンドでリモート実行するための通信
- Serverのキューに登録された操作要求を処理するために,ServerがJP1/AJS3 - Managerに対してコマンドをリモート実行します。この通信では,同時に3件の操作要求を処理できます。
- 業務の終了状態を確認するための通信
- Clientユーザーが実行した公開ジョブネットの終了状態を取得するために,ServerとJP1/AJS3 - Managerが一定の間隔で通信します。終了状態の確認間隔はDefinerで設定できます。
- 業務の実行状態を監視するための通信
- Clientユーザーが監視する公開ジョブネットの実行状態を取得するために,ServerとJP1/AJS3 - Managerが一定の間隔で通信します。監視間隔は,環境設定ファイルで変更できます。
-
- 使用しているネットワークが低速である場合,またはネットワークに負荷が掛かる場合は,次のような運用を検討してください。
- 終了状態の確認間隔を公開ジョブネットごとに見直して,できるだけ長くする。
- 監視対象の公開ジョブネット数を少なくする。
- Serverの環境設定ファイルに設定されている,公開ジョブネットの監視間隔を長くする。
- JP1/AJS3 - Managerでの処理時間
- JP1/AJS3 - Manager側の処理は,Clientが発行する操作要求の種類によって異なりますが,接続先のマネージャーホストの処理性能が低い場合は,JP1/AJS3 - Managerの処理時間が長くなります。また,JP1/AJS3 - Managerでの処理時間は,JP1/AJS3 - Managerで運用されているルートジョブネットの実行状況にも影響されます。
- JP1/AJS3 - Managerでの処理時間の見積もりについては,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(システム構築編)」を参照してください。
- 描画時間
- Clientの表示性能は,基本的にはClientホストの性能の影響を受けます。Clientホストの処理速度が遅く描画時間が長い場合は,一つの画面で表示される公開ジョブネット数やデスクトップにはり付けた監視アイコンの数を少なくするなどの運用を検討してください。