Clientユーザーに公開ジョブネットを操作させる場合に,JP1/AJS3 - Managerでのルートジョブネットの設定がClientでの操作に影響することがあります。
また,JP1/AJS3 - User Job Operationの運用でマネージャーホストに掛かる負荷を分散するために,JP1/AJS3 - Managerの設定をあらかじめ変更しておくことも必要です。
ここでは,JP1/AJS3 - User Job Operationの動作に影響するJP1/AJS3 - Managerの設定について説明します。
Serverは,次に挙げる処理のために定期的にJP1/AJS3 - Managerのスケジューラーサービスと通信しています。
Serverとスケジューラーサービス間の通信量が増加すると,JP1/AJS3環境で運用している業務に影響を及ぼすおそれがあります。そのため,運用中の業務に影響を及ぼさないように,JP1/AJS3 - User Job Operation用のスケジューラーサービスを新しく作成して,JP1/AJS3 - User Job Operationで運用するルートジョブネットをまとめておくことを推奨します。
ルートジョブネットの実行エージェントにジョブ実行多重度を設定している場合,Clientで実行してもジョブ実行多重度は有効になります。
複数のジョブが同時に実行するようなルートジョブネットでは,同時に実行するジョブの数がジョブ実行多重度を超えるとジョブが「キューイング」状態になり,予想以上にジョブの実行時間が長く掛かってしまいます。ジョブの実行時間,単位時間当たりのジョブ実行数を考慮してジョブ実行多重度を設定するようにしてください。
Clientには基準時刻は設定できません。そのため,JP1/AJS3 - Managerで基準時刻を設定している場合,Clientに表示される時刻(絶対時刻)とJP1/AJS3 - Viewに表示される時刻(基準時刻を考慮した時刻)は異なります。JP1/AJS3 - Managerで基準時刻を設定している場合は,表示される日時に注意してください。
多重起動を設定しているルートジョブネットは,公開ジョブネットとして実行しても多重起動が有効になります。
多重起動を設定しているルートジョブネットが複数のClientユーザーに同時に実行されると,実行したClientユーザーの数だけ多重起動します。
一方,多重起動を設定していないルートジョブネットの場合は,複数のClientユーザーに同時に実行されると,最初に実行された世代だけが「実行中」状態になり,あとから実行された世代は,ルートジョブネットの設定によって「開始時刻待ち」または「繰り越し未実行」状態になります。「開始時刻待ち」となった場合,前の世代の実行が終了するまで滞留します。そのため,あとから実行された世代は実行されるまで予想以上に時間が掛かってしまいます。
多重起動の設定は,多重起動の必要性や公開ジョブネットに対して同時に実行する最大のClientユーザーの数を考慮して検討してください。
スケジュールルールを設定しているルートジョブネットを公開ジョブネットとして実行しても,スケジュールルールは有効になりません。
例えば,JP1/AJS3 - Managerで休業日の振り替えを設定しているルートジョブネットを公開ジョブネットとして登録した場合,Clientで休業日に実行予定を予約すると,実行予定は営業日に振り替えられないで予約した日時(休業日)に実行されます。
起動条件付きルートジョブネットを公開ジョブネットとして実行しても,起動条件は有効になりません。起動条件付きジョブネットをClientで実行すると,起動条件は無視されてルートジョブネットだけが実行されます。
公開ジョブネットとして登録したルートジョブネットの,JP1/AJS3での実行登録方法によって,公開ジョブネットに対してClientでできる操作が異なります。
JP1/AJS3での実行登録方法とClientでできる操作との関係を次に示します。
表3-2 JP1/AJS3での実行登録方法とClientでできる操作
項番 | JP1/AJS3での実行登録方法 | Clientの操作 | |
---|---|---|---|
実行(すぐに実行またはあとで実行) | 監視 | ||
1 | 未登録 | ○ | ○ |
2 | 確定実行登録 | ○ | ○ |
3 | 計画実行登録 | × | ○ |
4 | 即時実行登録 | ○ | ○ |
Serverは,Clientで実行した公開ジョブネットの実行状態や終了状態を確認するために,定期的にJP1/AJS3 - Managerと通信して状態を取得します。このとき取得する状態は,JP1/AJS3 - Managerの保存世代の実行状態です。そのため,一つの公開ジョブネットを複数のClientユーザーに実行させるような運用の場合,Clientユーザーが公開ジョブネットを実行するたびにJP1/AJS3側で保存世代数管理が行われて,古い世代が削除されます。なお,保存世代数を1に設定している場合,監視画面(詳細情報)に表示される[保存世代情報]は「なし」と表示されます。
一つの公開ジョブネットを複数のClientユーザーに実行させる例を,次の図に示します。
図3-4 一つの公開ジョブネットを複数のClientユーザーに実行させる例
図3-5 終了状態を正しく取得できない場合の例
公開ジョブネットとして登録するルートジョブネットの実行結果としてファイルが生成される場合,そのファイルをClientでダウンロードできるように設定できます。ダウンロードする場合,結果ファイルはClientをインストールしたホストとルートジョブネットの実行ホストの共有フォルダなど,両ホストがアクセスできる場所に出力される必要があります。
結果ファイルをダウンロードする場合のシステム構成の検討については,「3.4.2 共有フォルダについて検討する」を参照してください。
なお,結果ファイルが生成されてからClientユーザーがダウンロードするまでの間に結果ファイルが上書きされると,古い結果ファイルの内容はダウンロードできなくなります。複数のClientユーザーによって結果ファイルが生成されるような場合は,変数を使用してファイル名にClientユーザー名を付けて結果ファイルが生成されるようにするなどして,ルートジョブネットの実行ごとに結果ファイル名が重複しないようにしてください。
変数を使用して結果ファイルを生成する例については,「2.2.1(5)(e) 結果ファイル」の補足事項を参照してください。
Serverが異なる認証圏のJP1/AJS3 - Managerに接続する必要がある場合,Serverを各認証圏に対して一つずつ設置することを推奨します。1台のServerで異なる認証圏のJP1/AJS3 - Managerに接続するには,Serverの前提であるJP1/Baseに設定してある認証サーバ名を,異なる認証圏に接続するたびに変更する必要があります。
複数のServerで運用する場合のシステム構成については,「3.4.1(4) 複数のServerで運用する場合の構成」を参照してください。
公開ジョブネットに登録するルートジョブネットをJP1権限レベルによる操作権限で管理したい場合は,ルートジョブネットにJP1資源グループを設定しておいてください。JP1資源グループの検討項目および設定方法は,JP1/AJS3と同様です。
JP1資源グループは,JP1/AJS3接続用JP1ユーザーおよびDefinerユーザーに設定するJP1権限レベルとあわせて検討してください。JP1権限レベルについての検討は,「3.3ユーザーの検討」を参照してください。