2.2.1 公開ジョブネットの定義

公開ジョブネットの定義機能について,次に説明します。

<この項の構成>
(1) 公開ジョブネットの選定
(2) 表示する業務名の設定
(3) アクセスできるClientユーザーの定義
(4) Clientユーザーに許可する操作の設定
(5) Clientユーザーに業務実行を許可した公開ジョブネットの設定
(6) コメントの表示設定
(7) 公開ジョブネットの階層化
(8) 公開設定のデフォルト値の設定

(1) 公開ジョブネットの選定

Definerに接続先のマネージャーホストとスケジューラーサービスを登録することで,登録したスケジューラーサービスに属するルートジョブネットの一覧を取得できます。取得したルートジョブネットの中から,業務の担当者に操作を許可するルートジョブネットを選定します。

取得できるルートジョブネットには,次の条件があります。

なお,取得できるルートジョブネットの中にも,JP1/AJS3の設定によってはClientで操作できないルートジョブネットがあります。公開ジョブネットを操作する上での制限事項については,「3.2.2 JP1/AJS3 - Managerでのルートジョブネットの設定を検討する」を参照してください。

(2) 表示する業務名の設定

ルートジョブネットを公開ジョブネットとして登録する際に,公開ジョブネットの名称をルートジョブネット名とは別の,業務の担当者にとってわかりやすい名称を設定できます。そのため,業務の担当者はJP1/AJS3を意識することなく業務を運用できます。

表示する業務名の考え方を,次の図に示します。

図2-1 表示する業務名の考え方

[図データ]

(3) アクセスできるClientユーザーの定義

公開ジョブネットとして登録したルートジョブネットにアクセスできるClientユーザーを定義します。これによって,特定のClientユーザーだけに公開ジョブネットを操作させることができます。

公開ジョブネットとアクセスできるClientユーザーの関係を次の図に示します。

図2-2 公開ジョブネットとアクセスできるClientユーザーの関係

[図データ]

例えば,この図のようにアクセスできるClientユーザーとして月次処理にClientユーザーAを,日次処理にClientユーザーAとClientユーザーBを定義した場合,ClientユーザーAの画面には月次処理と日次処理が,ClientユーザーBの画面には日次処理が表示されます。

(4) Clientユーザーに許可する操作の設定

Clientユーザーに許可する操作を設定します。

設定できる操作は次の二つです。

業務実行と業務監視の両方を設定することもできます。

公開ジョブネットと許可する操作の設定との関係を次の図に示します。

図2-3 公開ジョブネットと許可する操作の設定との関係

[図データ]

例えば,この図のように許可する操作として月次処理には業務実行と業務監視を,日次処理には業務実行を設定した場合,Clientユーザーには,実行できる業務として月次処理と日次処理が,監視できる業務として月次処理が表示されます。

補足事項
プランニンググループ配下のルートジョブネットの場合,業務実行はできません。

(5) Clientユーザーに業務実行を許可した公開ジョブネットの設定

Clientユーザーに業務実行を許可した公開ジョブネットには,必要に応じて次の項目を設定します。

(a) 終了確認間隔

終了確認間隔とは,公開ジョブネットの終了状態を確認するための,JP1/AJS3 - ManagerとServer,およびServerとClientの間の通信間隔です。

Serverは,Clientで実行した公開ジョブネットの実行状態および終了状態を確認するために,設定した間隔でJP1/AJS3 - Managerと通信して,公開ジョブネットとして登録したルートジョブネットの実行が終了するまで実行状態を取得します。Clientも同様に,設定した間隔でServerと通信して,実行した公開ジョブネットの実行状態を取得します。

(b) 中止方法

Clientで実行した公開ジョブネットを,Clientユーザーに中止させるかさせないかを設定します。

(c) ガイド

公開ジョブネットに,Clientユーザーに知らせたい情報をガイドとして設定できます。設定した内容は,Clientの詳細情報を確認する画面,および実行結果を通知するダイアログボックスから参照できます。

(d) マクロ変数

配下にマクロ変数を使用しているジョブを持つルートジョブネットを公開ジョブネットとして登録する場合,Definerでマクロ変数と入力値を設定する必要があります。マクロ変数には固定値を指定したり,Clientでの実行時にClientユーザーにマクロ変数値を入力させるように設定したりできます。

Clientユーザーにマクロ変数を入力させる場合は,Clientでのマクロ変数の表示名や入力候補値を設定しておくことで,Clientユーザーにわかりやすい表示でマクロ変数を入力させることができます。そのため,Clientユーザーはマクロ変数の形式を知らなくても,マクロ変数を設定して公開ジョブネットを実行できます。

マクロ変数の設定例を次の図に示します。

図2-4 マクロ変数の設定例

[図データ]

この図のように,配下にマクロ変数を使用しているジョブを含むルートジョブネット「集計」を公開ジョブネットとする場合は,Definerでマクロ変数の変数名,条件項目名,および入力候補値の表示値と指定値を定義する必要があります。定義した条件項目名と入力候補値の表示値は,Clientで公開ジョブネット「集計」を実行する際に実行条件名および選択項目として表示されます。表示値の中から「2010年6月」を選択して実行すると,選択した表示値に対応する指定値「201006」がルートジョブネット「集計」の配下のジョブのマクロ変数に設定され,ルートジョブネット「集計」が実行されます。

補足事項
マクロ変数には,次の表に示す変数を定義できます。

表2-2 JP1/AJS3 - User Job Operationで使用できる変数

変数名説明
USER公開ジョブネットを実行したClientユーザー名が設定されます。
設定されるアルファベットはすべて小文字として扱われます。
文字数制限がある場合は31バイトとして扱われます。
変数は必ず半角大文字で,「$変数名$」の形式で指定してください。また,変数前後の「$」を2回繰り返すことで,「$変数名$」を変数ではなく文字列として扱えるようになります。
(例1)
Definerでの指定値:ABC_$USER$
ジョブネットの実行時に処理される値:ABC_client_user_01
(例2)
Definerでの指定値:ABC_$$USER$$
ジョブネットの実行時に処理される値:ABC_$USER$
なお,この変数はDefinerでマクロ変数を定義する場合にだけ使用できます。Clientユーザーにマクロ変数を直接指定させるような場合,この変数は使用できません。
(e) 結果ファイル

結果ファイルの完全パスを設定しておくことで,公開ジョブネットが結果ファイルを生成した場合に,結果ファイルをClientでダウンロードできます。

結果ファイルをClientでダウンロードする例を,次の図に示します。

図2-5 結果ファイルをClientでダウンロードする例

[図データ]

この図のように,結果ファイル「帳票.txt」を生成してファイルサーバTESTのcyouhyouフォルダに格納するようなルートジョブネットを公開ジョブネットとして実行させる場合,結果ファイルとして「帳票.txt」の完全パス「¥¥TEST¥cyouhyou¥帳票.txt」を指定しておくと,実行したClientユーザーは「帳票.txt」をダウンロードできます。

結果ファイルは,Webサーバにも格納できます。Webサーバに格納した結果ファイルをClientでダウンロードする例を次の図に示します。

図2-6 結果ファイルをClientでダウンロードする例(Webサーバの場合)

[図データ]

結果ファイル「kekka.txt」を生成して,Webサーバhitachi.co.jpのcyouhyouフォルダに格納するようなルートジョブネットを公開ジョブネットとして実行させる場合,「kekka.txt」のURL「http://www.hitachi.co.jp/cyouhyou/kekka.txt」を指定しておくと,公開ジョブネットを実行したClientユーザーはインターネット経由で「kekka.txt」をダウンロードできます。

また,結果ファイルをダウンロードできるように設定した公開ジョブネットを,一人のClientユーザーが複数回実行すると,実行するたびに結果ファイルは上書きされます。したがって,Clientユーザーがダウンロードできるのは最新の結果ファイルだけです。結果ファイルの上書きについて,次の図に示します。

図2-7 結果ファイルの上書き

[図データ]

ClientユーザーAが1回目に「帳票作成」を実行すると,1回目の実行結果が結果ファイルとしてファイルサーバに格納されます。この時点でClientユーザーAが実行結果画面からダウンロードできるのは,1回目の実行結果の結果ファイルです。

ClientユーザーAが2回目に「帳票作成」を実行すると,サーバに格納されている1回目の結果ファイルは2回目の実行結果で上書きされます。そのため,1回目の実行結果を選択しても,ダウンロードできる結果ファイルはその時点で最新の2回目のものとなります。

補足事項
一つの公開ジョブネットを異なるユーザーが複数回実行した場合も,実行するたびに結果ファイルは上書きされます。
しかし,変数およびマクロ変数を使用することで,結果ファイルとして出力されるファイルの名称や格納先のフォルダ名を,Clientユーザーごとに分けられます。
結果ファイルの名前にClientユーザー名を設定してダウンロードする例を,次の図に示します。

図2-8 変数の使用例

[図データ]
JP1/AJS3で,帳票を生成するジョブに,ファイル名にユーザー名を設定するマクロ変数「?AJS2USER?」を定義しておきます。
一方Definerでは,結果ファイルとして「¥¥TEST¥cyouhyou¥帳票_$USER$.txt」を,マクロ変数「?AJS2USER?」の入力値として変数「$USER$」を指定します。Clientユーザーのuser01が公開ジョブネットを実行すると,マクロ変数「?AJS2USER?」にClientユーザー名「user01」が設定され,「帳票_user01.txt」が生成されます。Clientユーザーuser01は,この「帳票_user01.txt」を結果ファイルとしてダウンロードできます。同様に,Clientユーザーのuser02が公開ジョブネットを実行した場合,結果ファイルとして「帳票_user02.txt」をダウンロードできます。
注意事項
ユーザー名に,ファイル名やフォルダ名に使用できない文字が含まれる場合,$USER$で置き換わったパスが正しく認識できないため,結果ファイルを取得できません。

(6) コメントの表示設定

公開ジョブネットにコメントを設定します。設定したコメントは,Clientの画面で公開ジョブネットのアイコンにマウスカーソルを合わせたときに表示されます。

(7) 公開ジョブネットの階層化

JP1/AJS3 - User Job Operationでは,公開ジョブネットを階層で管理できます。公開ジョブネットをまとめて管理するためのグループのことを業務グループと呼びます。業務グループを定義して公開ジョブネットを階層化することで,公開ジョブネットを分類したり整理したりできます。

また,業務グループは公開ジョブネットをまとめるグループとして,Clientにも表示されます。Clientユーザーにとってわかりやすい階層構造を定義することで,Clientユーザーにも簡単に公開ジョブネットの階層構造が理解できるようになります。

業務グループの作成例を次の図に示します。

図2-9 業務グループの作成例

[図データ]

この図のように,業務グループの「総務部」に総務部が担当する業務をまとめたり,「日次処理」に毎日実行する業務をまとめたりすることで,総務部が担当する公開ジョブネットを実行頻度ごとに管理できます。これらの公開ジョブネットを操作するClientユーザーにも,業務を担当する部署と業務の実行頻度が容易に理解できるようになります。

(8) 公開設定のデフォルト値の設定

Clientでの表示業務名や許可する操作など,公開ジョブネットに設定する公開設定は,業務グループにも設定できます。

公開ジョブネットの公開設定のデフォルト値には,上位の業務グループに設定されている公開設定が反映されます。つまり,業務グループに公開設定を設定することで,配下にある公開ジョブネットの公開設定のデフォルト値を一括して設定できます。ただし,配下に公開ジョブネットを登録している状態で業務グループの公開設定を変更しても,すでに配下に登録されている公開ジョブネットの公開設定は変更されません。

業務グループと公開ジョブネットの公開設定との関係を,公開設定である「アクセス可能メンバー」を例に,次の図に示します。

図2-10 業務グループの公開設定

[図データ]

この図に示したように,「アクセス可能メンバー」としてユーザーAを指定した業務グループの配下に新しく公開ジョブネットを追加する場合は,配下の公開ジョブネットの「アクセス可能メンバー」にデフォルト値としてユーザーAが設定されます。一方,配下に公開ジョブネットが登録されている業務グループの「アクセス可能メンバー」をユーザーAからユーザーBに変更する場合は,配下の公開ジョブネットの「アクセス可能メンバー」は変更されません。