2.3.22 AIX環境でsarコマンドの出力結果からプロセッサのパフォーマンスを監視する運用

AIX環境でSimultaneous multithreading(SMT)またはMicro-Partitioningを使用している場合,sarコマンドで表示されるCPU使用率の計算には物理CPUの割り当て量が含まれますが,PFM - Agent for Platformで表示されるCPU使用率の計算には物理CPUの割り当て量が含まれません。そのため,PFM - Agent for Platformで表示されるCPU使用率が,sarコマンドの出力結果より低く表示されることがあります。

PFM - Agent for Platformでは,AIXのsarコマンドの出力結果からプロセッサのパフォーマンスデータを収集するように設定を変更できます。

ここでは,PFM - Agent for Platformで,AIXのsarコマンドの出力結果からプロセッサのパフォーマンスデータを収集し,監視する運用について説明します。

<この項の構成>
(1) 設定方法
(2) sarコマンドの出力結果とPFM - Agent for Platformのレコードとの対応
(3) グローバル環境およびWPAR環境でサポートするレコード
(4) 注意事項

(1) 設定方法

AIXのsarコマンドの出力結果からプロセッサのパフォーマンスデータを収集するための設定方法を次に示します。

  1. 監視コンソールのWebブラウザからPFM - Web Consoleにログインする。
    [メイン]画面が表示されます。
  2. [メイン]画面のナビゲーションフレームで[サービス階層]タブを選択する。
    [サービス階層]画面が表示されます。
  3. ナビゲーションフレームから[Machines]フォルダの下位の階層を展開する。
    Performance Managementのサービスがインストールされているホストの名前が付いたフォルダが表示されます。また,ホスト名が付いたフォルダを展開すると,そのホストにインストールされているサービスが表示されます。
    各サービスの名前は,サービスIDで表示されます。サービスIDの詳細については「付録C 識別子一覧」,およびマニュアル「JP1/Performance Management 設計・構築ガイド」の付録の,サービスの命名規則について説明している個所を参照してください。
    サービスIDの形式は,プロダクト名表示機能が有効か無効かによって異なります。プロダクト名表示機能の詳細については,マニュアル「JP1/Performance Management 設計・構築ガイド」の,Performance Managementの機能について説明している章を参照してください。
  4. 監視エージェントホストのフォルダの下位にある階層を展開し,ホスト名<UNIX>(Agent Collectorサービス)を選択する。
    選択したAgent Collectorサービスにチェックマークが表示されます。
  5. メソッドフレームの[プロパティ]メソッドを選択する。
    [サービスのプロパティ]画面が表示されます。
  6. [Agent Configuration]を選択する。
  7. インフォメーションフレームの下部の[sar Command Monitoring]で,sarコマンドの出力結果からプロセッサのパフォーマンスデータを収集するかどうかを指定する。
    次のどちらかを指定します。
    • Y:sarコマンドの出力結果から収集する
    • N:sarコマンドの出力結果から収集しない(デフォルト)
  8. インフォメーションフレームの下部の[sar Command Interval]で,sarコマンドの引数に指定するインターバル(秒単位)を指定する。
    次のAIXのsarコマンドの引数INTERVALに当たる数値を指定します。

    /usr/sbin/sar -P ALL INTERVAL 1

    1~50の範囲で指定してください(デフォルトは5)。

(2) sarコマンドの出力結果とPFM - Agent for Platformのレコードとの対応

PFM - Agent for Platformでは,AIX環境でSimultaneous multithreading(SMT)またはMicro-Partitioningを使用している場合に,下記のとおり実行したAIXのsarコマンドの出力結果を収集できます。

/usr/sbin/sar -P ALL INTERVAL 1

AIXのsarコマンドの出力結果の例を次に示します。

図2-16 AIXのsarコマンドの出力結果の例

[図データ]

PFM - Agent for Platformでは,sarコマンドの出力結果を,System Summary Overview(PI)レコードおよびCPU - Per Processor Detail(PI_CPUP)レコードのプロセッサのパフォーマンスデータを監視するフィールドに格納します。

System Summary Overview(PI)レコードのフィールドとsarコマンドの出力結果の対応を,次の表に示します。

表2-35 System Summary Overview(PI)レコードのフィールドとsarコマンドの出力結果の対応

レコードフィールドフィールドの説明対応するsarコマンドの出力結果
System Summary Overview(PI)Active CPUs(NUMBER_OF_ACTIVE_CPUS)プロセッサ数。cpu列が番号で表示される行数
CPU %(KERNELMODE_USERMODE_PERCENT)CPU使用率(%)。
プロセッサごとの割合の平均値でもある。
%sys列+%usr列
Idle %(IDLE_TIME_PERCENT)アイドル状態だった時間の割合(%)。
プロセッサごとの割合の平均値でもある。
%idle列
Kernel CPU %(KERNELMODE_PERCENT)カーネルモードで動作した時間の割合(%)。
プロセッサごとの割合の平均値でもある。
%sys列
User CPU %(USERMODE_PERCENT)ユーザーモードで動作した時間の割合(%)。
プロセッサごとの割合の平均値でもある。
%usr列
Wait %(WAIT_TIME_PERCENT)I/O待ちの状態だった時間の割合(%)。
プロセッサごとの割合の平均値でもある。
%wio列

CPU - Per Processor Detail(PI_CPUP)レコードのフィールドとsarコマンドの出力結果の対応を,次の表に示します。

表2-36 CPU - Per Processor Detail(PI_CPUP)レコードのフィールドとsarコマンドの出力結果の対応

レコードフィールドフィールドの説明対応するsarコマンドの出力結果
CPU - Per Processor Detail(PI_CPUP)CPU %(KERNELMODE_USERMODE_PERCENT)プロセッサごとのCPU使用率(%)。%sys列+%usr列
Idle %(PROCESSOR_IDLE_PERCENT)アイドル状態だった時間の割合(%)。%idle
Processor ID(LOGICAL_PROCESSOR_ID)プロセッサの識別子。cpu列
System %(PROCESSOR_SYSTEM_PERCENT)カーネルモードで動作した時間の割合(%)。%sys列
User %(PROCESSOR_USER_PERCENT)ユーザーモードで動作した時間の割合(%)。%usr列
Wait %(PROCESSOR_WAIT_PERCENT)I/O待ちの状態だった時間の割合(%)。%wio列

AIXのsarコマンドの出力結果からプロセッサのパフォーマンスデータを収集するように設定した場合,System Summary Overview(PI)レコードの次のフィールドは,値が0となります。

表2-37 AIXのsarコマンドの出力結果からプロセッサのパフォーマンスデータを収集するように設定した場合に値が0 となるSystem Summary Overview(PI)レコードのフィールド

レコードフィールドフィールドの説明使用するアラーム使用するレポート
System Summary Overview(PI)Total Idle Time(TOTAL_IDLE_TIME)すべてのプロセッサでのアイドル状態だった時間の合計値(秒単位)。なしなし
Total Kernel-Mode Time(TOTAL_KERNELMODE_TIME)すべてのプロセッサでのカーネルモードで動作した時間の合計値(秒単位)。なしなし
Total User-Mode Time(TOTAL_USERMODE_TIME)すべてのプロセッサでのユーザーモードで動作した時間の合計値(秒単位)。なしなし
Total Wait Time(TOTAL_WAIT_TIME)すべてのプロセッサでのI/O待ちの状態だった時間の合計値(秒単位)。なしなし

AIXのsarコマンドの出力結果からプロセッサのパフォーマンスデータを収集するように設定した場合,CPU - Per Processor Detail(PI_CPUP)レコードの次のフィールドは,値が空白となります。

表2-38 AIXのsarコマンドの出力結果からプロセッサのパフォーマンスデータを収集するように設定した場合に値が空白となるCPU - Per Processor Detail(PI_CPUP)レコードのフィールド

レコードフィールドフィールドの説明使用するアラーム使用するレポート
CPU - Per Processor Detail(PI_CPUP)Context Switches(PROCESSOR_CONTEXT_SWITCHES)コンテキストスイッチが実行された回数。なしなし
Context Switches/sec(PROCESSOR_CONTEXT_SWITCHES_PER_SECOND)コンテキストスイッチが実行された頻度(1秒当たりの回数)。なしなし
Idle Time(PROCESSOR_IDLE_TIME)アイドル状態だった時間(秒単位)。なしなし
Sys Calls/sec(PROCESSOR_SYSTEM_CALLS_PER_SECOND)システムコールが発行された頻度(1秒当たりの回数)。なしなし
System Calls(PROCESSOR_SYSTEM_CALLS)システムコールが発行された回数。なしなし
System Time(PROCESSOR_SYSTEM_TIME)カーネルモードで動作した時間(秒単位)。なしなし
Type(PROCESSOR_TYPE)プロセッサの説明。なしなし
User Time(PROCESSOR_USER_TIME)ユーザーモードで動作した時間(秒単位)。なしなし
Wait Time(PROCESSOR_WAIT_TIME)I/O待ちの状態だった時間(秒単位)。なしなし

(3) グローバル環境およびWPAR環境でサポートするレコード

sarコマンドの出力結果からプロセッサのパフォーマンスデータを収集する場合,PFM - Agent for Platformがグローバル環境またはSystem WPAR環境のどちらで動作しているかによって,サポートするレコード,および各レコードで収集するデータの範囲が異なります。

グローバル環境またはSystem WPAR環境でサポートするSystem Summary Overview(PI)レコードのフィールドを次の表に示します。

表2-39 グローバル環境またはSystem WPAR環境でサポートするSystem Summary Overview(PI)レコードのフィールド

レコードフィールドグローバル環境System WPAR環境
収集収集範囲収集収集範囲
System Summary Overview(PI)15-Minute Run Queue Avg(FIFTEEN_MINUTE_RUN_QUEUE_AVG)グローバル環境およびすべてのWPAR環境グローバル環境およびすべてのWPAR環境
1-Minute Run Queue Avg(ONE_MINUTE_RUN_QUEUE_AVG)グローバル環境およびすべてのWPAR環境グローバル環境およびすべてのWPAR環境
5-Minute Run Queue Avg(FIVE_MINUTE_RUN_QUEUE_AVG)グローバル環境およびすべてのWPAR環境グローバル環境およびすべてのWPAR環境
Active CPUs(NUMBER_OF_ACTIVE_CPUS)グローバル環境およびすべてのWPAR環境××
Block Ops(BLOCKIO_IO_OPS)グローバル環境およびすべてのWPAR環境グローバル環境およびすべてのWPAR環境
Block Reads(BLOCKIO_READ_OPS)グローバル環境およびすべてのWPAR環境グローバル環境およびすべてのWPAR環境
Block Reads/sec(BLOCKIO_READ_OPS_PER_SECOND)グローバル環境およびすべてのWPAR環境××
Block Writes(BLOCKIO_WRITE_OPS)グローバル環境およびすべてのWPAR環境グローバル環境およびすべてのWPAR環境
Block Writes/sec(BLOCKIO_WRITE_OPS_PER_SECOND)グローバル環境およびすべてのWPAR環境××
Cache Read %(CACHE_READ_PERCENT)グローバル環境およびすべてのWPAR環境グローバル環境およびすべてのWPAR環境
Cache Write %(CACHE_WRITE_PERCENT)グローバル環境およびすべてのWPAR環境グローバル環境およびすべてのWPAR環境
Context Switches(CONTEXT_SWITCHES)グローバル環境およびすべてのWPAR環境グローバル環境およびすべてのWPAR環境
Context Switches/sec(CONTEXT_SWITCHES_PER_SECOND)グローバル環境およびすべてのWPAR環境××
CPU %(KERNELMODE_USERMODE_PERCENT)グローバル環境およびすべてのWPAR環境××
Idle %(IDLE_TIME_PERCENT)グローバル環境およびすべてのWPAR環境××
Kernel CPU %(KERNELMODE_PERCENT)グローバル環境およびすべてのWPAR環境××
Logical I/O Ops(LOGICAL_IO_OPS)グローバル環境およびすべてのWPAR環境グローバル環境およびすべてのWPAR環境
Logical Read Mbytes(LOGICAL_READ_MBYTES)グローバル環境およびすべてのWPAR環境グローバル環境およびすべてのWPAR環境
Logical Reads(LOGICAL_READ_OPS)グローバル環境およびすべてのWPAR環境グローバル環境およびすべてのWPAR環境
Logical Reads/sec(LOGICAL_READ_MBYTES_PER_SECOND)グローバル環境およびすべてのWPAR環境××
Logical Write Mbytes(LOGICAL_WRITE_MBYTES)グローバル環境およびすべてのWPAR環境グローバル環境およびすべてのWPAR環境
Logical Writes(LOGICAL_WRITE_OPS)グローバル環境およびすべてのWPAR環境グローバル環境およびすべてのWPAR環境
Logical Writes/sec(LOGICAL_WRITE_MBYTES_PER_SECOND)グローバル環境およびすべてのWPAR環境××
Physical I/O Ops(PHYSICAL_IO_OPS)グローバル環境およびすべてのWPAR環境グローバル環境およびすべてのWPAR環境
Physical Reads(PHYSICAL_READ_OPS)グローバル環境およびすべてのWPAR環境グローバル環境およびすべてのWPAR環境
Physical Writes(PHYSICAL_WRITE_OPS)グローバル環境およびすべてのWPAR環境グローバル環境およびすべてのWPAR環境
System Calls(SYSTEM_CALLS)グローバル環境およびすべてのWPAR環境グローバル環境およびすべてのWPAR環境
User CPU %(USERMODE_PERCENT)グローバル環境およびすべてのWPAR環境××
Wait %(WAIT_TIME_PERCENT)グローバル環境およびすべてのWPAR環境××
(凡例)
○:サポートする。
×:サポートしない。
記載していないレコードおよびフィールドについては,sarコマンドの出力結果からプロセッサのパフォーマンスデータを収集しない場合は,WPAR環境と同じです。

グローバル環境またはSystem WPAR環境でサポートするCPU - Per Processor Detail(PI_CPUP)レコードのフィールドを次の表に示します。

表2-40 グローバル環境またはSystem WPAR環境でサポートするCPU - Per Processor Detail(PI_CPUP)レコードのフィールド

レコードフィールドグローバル環境System WPAR環境
収集収集範囲収集収集範囲
CPU - Per Processor Detail(PI_CPUP)Boot Time(SYSTEM_BOOT_TIME)グローバル環境××
CPU %(KERNELMODE_USERMODE_PERCENT)グローバル環境およびすべてのWPAR環境××
Idle %(PROCESSOR_IDLE_PERCENT)グローバル環境およびすべてのWPAR環境××
Interval(INTERVAL)グローバル環境××
Processor ID(LOGICAL_PROCESSOR_ID)グローバル環境××
Record Time(RECORD_TIME)グローバル環境××
Record Type(INPUT_RECORD_TYPE)固定値××
Status(PROCESSOR_STATUS)グローバル環境××
System %(PROCESSOR_SYSTEM_PERCENT)グローバル環境およびすべてのWPAR環境××
Up Time(SYSTEM_UP_TIME)グローバル環境××
User %(PROCESSOR_USER_PERCENT)グローバル環境およびすべてのWPAR環境××
Wait %(PROCESSOR_WAIT_PERCENT)グローバル環境およびすべてのWPAR環境××
(凡例)
○:サポートする。
×:サポートしない。
記載していないレコードおよびフィールドについては,sarコマンドの出力結果からプロセッサのパフォーマンスデータを収集しない場合は,WPAR環境と同じです。

(4) 注意事項

ここでは,PFM - Agent for Platformで,AIXのsarコマンドの出力結果からプロセッサのパフォーマンスデータを収集し,監視する運用での注意事項について説明します。