3.2.6 フィルターの条件定義
イベント取得フィルター,ユーザーフィルター,重要イベントフィルター,表示フィルター,およびイベント検索で定義できるフィルター条件には,除外条件と通過条件の2種類があります。除外条件は,表示(取得)したくないJP1イベントの条件の集まりで,通過条件は,表示(取得)したいJP1イベントの条件の集まりです。また,除外条件と通過条件とは別に,イベント取得フィルターには,条件群の有効・無効を切り替えられる共通除外条件があります。フィルター条件の優先度は,優先される順に,共通除外条件,除外条件,通過条件となります。
除外条件,通過条件,および共通除外条件には,複数の条件を組み合わせた条件群を複数定義できます。条件群は一つ以上の条件の集まりで,定義した条件すべてが成立したときにその条件群は成立します(条件群内の条件同士の関係はAND条件)。
フィルターに除外条件または通過条件の条件群を複数定義した場合,除外条件の条件群のどれかに一致するJP1イベントは除外され,通過条件の条件群のどれかに一致するJP1イベントはフィルターを通過して,上位制御(「図3-10 JP1/IM,JP1/Baseで提供するフィルター(統合監視DBを使用しない場合)」,「図3-11 JP1/IM,JP1/Baseで提供するフィルター(統合監視DBを使用する場合)」を参照)に渡されます(除外条件または通過条件内の条件群同士の関係はOR条件)。
図にすると次のようになります。
フィルターの条件定義は,JP1/Baseの転送フィルターを除き,JP1/IM - Viewを使って設定します。
- 〈この項の構成〉
(1) 共通除外条件(イベント取得フィルター限定)
共通除外条件は,イベント取得フィルターの一部であり,取得したくないJP1イベントの条件の集まりです。有効と無効を切り替えられるため,メンテナンス実施時に,イベント取得フィルターの通過条件および除外条件を変更することなく,メンテナンス対象ホストで発生するJP1イベントを一時的に除外できます。また,複数のイベント取得フィルターを切り替えて運用する場合でも,どのイベント取得フィルターに対しても有効となります。
共通除外条件は,イベント取得フィルター内で定義されている除外条件よりも優先され,除外条件は通過条件よりも優先されます。
共通除外条件の動作モードには,基本モードと拡張モードの2種類があります。基本モードと拡張モードは,jcochcefmodeコマンドで切り替えて運用できます。拡張モードに切り替えると,登録時刻,到着時刻,開始時刻,終了時刻,発生元ホスト名などでフィルタリングできるようになります。また,日時を指定してイベント条件をフィルタリングしたり,jcochfilterコマンドで条件群を1件ごとにを有効・無効に切り替えたりできるようになります。ただし,使用できる正規表現の種類は,拡張正規表現だけに限定されます。拡張モードに切り替えて運用したあとでも,基本モードに戻すことができます。基本モードと拡張モードの詳細については,「3.2.6(1)(a) 共通除外条件の基本モードと拡張モードの差異」を参照してください。なお,このマニュアルでは,特に断り書きがない場合は,基本モードと拡張モードの共通情報として説明しています。
共通除外条件を定義する方法や動作モードを切り替える方法については,マニュアル「JP1/Integrated Management - Manager 構築ガイド」の「4.2.4(3) 共通除外条件を設定する」を参照してください。
イベント取得フィルターの共通除外条件,除外条件,および通過条件の関係を次の図に示します。
また,追加共通除外条件を使用できます。追加共通除外条件とは,システム運用中に,監視中のJP1イベントを使って定義する除外条件です。 追加共通除外条件は,共通除外条件が拡張モードのときだけ使用できます。追加共通除外条件については,「3.2.6(1)(c) 追加共通除外条件」を参照してください。
共通除外条件と追加共通除外条件の違いを次に示します。
-
共通除外条件
システム構築時に,あらかじめ設定した特定のJP1イベントの取り込みを除外する。
-
追加共通除外条件
システム運用中に,監視中に不要となったJP1イベントを除外する。追加共通除外条件がシステム運用後にも必要な除外条件だった場合,システム管理者は,追加共通除外条件を共通除外条件に変更できる。
共通除外条件と追加共通除外条件を次のように使い分けると,システム運用がスムーズになります。
-
システム構築時
システムで監視しないJP1イベントをあらかじめ「共通除外条件」として[共通除外条件設定]画面またはjcochfilterコマンドの-efオプションで定義する。
-
システム運用中
[イベントコンソール]画面のイベント一覧でJP1イベントを選択して,監視中に不要となったJP1イベントを「追加共通除外条件」として定義する。
-
システム再構築
システム運用中に蓄積した「追加共通除外条件」を[イベント取得条件一覧]画面で編集したり削除したりする。また,システムで監視しないと決めたJP1イベントを,「追加共通除外条件」から「共通除外条件」に変更する。
共通除外条件と追加共通除外条件は,合計で1,024件以内としてください。また,サイズの合計は,10MB以内としてください。
(a) 共通除外条件の基本モードと拡張モードの差異
共通除外条件を拡張モードに切り替えた場合にできることを基本モードと比較して,次の表に示します。なお,共通除外条件のデフォルトは基本モードです。また,JP1/IM - Managerをインストールしたあとは,基本モードで動作します。
共通除外条件でできること |
基本モード |
拡張モード |
---|---|---|
登録時刻,到着時刻でフィルタリングできる |
× |
○ |
開始時刻,終了時刻でフィルタリングできる |
× |
○ |
発生元ホスト名でフィルタリングできる |
× |
○ |
固有の拡張属性でフィルタリングできる |
× |
○ |
JP1独自正規表現,基本正規表現で比較できる |
○ |
× |
拡張正規表現で比較できる |
○ |
○ |
エージェントホストごとに条件群を定義できる |
× |
○ |
共通除外条件の有効・無効の切り替えを,共通除外条件群ごとに設定できる |
○ |
○ |
有効・無効に切り替えたい共通除外条件群を追加指定できる |
× |
○ |
条件群を適用する期間を指定できる |
× |
○ |
コメントを記述できる |
× |
○ |
運用中に発生したJP1イベントを基に追加共通除外条件を設定できる |
× |
○ |
また,共通除外条件の基本モードと拡張モードの差異について,次の表に示します。
項目名 |
基本モード |
拡張モード |
---|---|---|
イベント条件の属性 |
基本属性:
|
基本属性:
|
共通の拡張属性:
|
共通の拡張属性:
|
|
|
|
|
イベント条件の比較の種類※ |
|
|
正規表現 |
|
拡張正規表現 |
定義できる共通除外条件群の最大件数 |
30件(フィルター長:64キロバイトまで) |
1,024件(フィルター長:10メガバイトまで) |
定義内容 |
|
|
共通除外条件の有効・無効の切り替え方法 |
|
|
適用期間 |
− |
[共通除外条件設定(拡張)]画面の[適用期間]ページで設定できる |
設定方法 |
[共通除外条件設定]画面 |
|
(b) 適用期間(共通除外条件が拡張モードの場合)
イベント取得フィルターの共通除外条件を拡張モードにするとJP1イベントを除外する条件の適用期間を指定できます。適用期間では,期間,曜日,および時間帯を指定できます。この適用期間を指定すると,適用期間内に発生したJP1イベントだけが,拡張モードの共通除外条件によって除外されます。
例えば,監視対象ホストのメンテナンス時間があらかじめ決まっている場合に毎回決まった日時や曜日に実施するメンテナンスの間だけそのホストから発生するJP1イベントを除外りたり,期間を限定して条件群を無効にしたりするときに指定します。
監視対象ホストのメンテナンススケジュールに合わせて,2011年7月8日から2011年9月10日の間の毎週日曜09:00〜翌月曜日の09:00に拡張モードの共通除外条件を適用する例を次の図に示します。
時刻には,JP1/IM - Managerが動作しているマシンで設定されているタイムゾーンに従った時刻が設定されます。
このように適用期間を指定すると,条件群の変更や有効・無効の切り替えをしないで,JP1イベントのフィルタリングができる場合があります。適用期間内のJP1イベントかどうかの判定は,JP1イベントの到着時刻(B.ARRIVEDTIME)を比較して判定しています。なお,適用期間は,条件群ごとに指定できます。また,適用期間を使用する場合は,共通除外条件群が有効になっている必要があります。
適用期間は,[共通除外条件設定(拡張)]画面の[適用期間]タブで指定できます。[共通除外条件設定(拡張)]画面については,マニュアル「JP1/Integrated Management - Manager 画面リファレンス」の「2.16 [共通除外条件設定(拡張)]画面」を参照してください。
(c) 追加共通除外条件
追加共通除外条件とは,システム運用中に,監視中のJP1イベントを使って定義する除外条件です。[イベントコンソール]画面または[関連イベント一覧]画面で任意のJP1イベントを選択することで追加共通除外条件が設定されます。
追加共通除外条件を使用するには,JP1_Console_Admin権限が必要です。また,共通除外条件を拡張モードに切り替えてください。追加共通除外条件を定義できるJP1イベントを次に示します。
-
JP1/IM - ViewがログインしているマネージャーホストのイベントDBまたは統合監視DBに登録されているJP1イベント
-
エージェントホストのイベントDBに登録されているJP1イベント
追加共通除外条件は,次の手順で表示される[共通除外条件設定(拡張)]画面で設定できます。
-
[イベントコンソール]画面でJP1イベントを選択後,[表示]−[共通除外条件で除外]を選択する。
-
[イベントコンソール]画面でJP1イベントを選択後,右クリックして表示されるポップアップメニューから[共通除外条件で除外]を選択する。
-
[関連イベント一覧]画面でJP1イベントを選択後,右クリックして表示されるポップアップメニューから[共通除外条件で除外]を選択する。
このとき,選択したJP1イベントの属性名および属性値が,イベント条件として自動的に入力された状態で表示されます。また,共通除外条件群名およびコメントも自動的に入力された状態で表示されます。画面の詳細については,マニュアル「JP1/Integrated Management - Manager 画面リファレンス」の「2.16 [共通除外条件設定(拡張)]画面」を参照してください。なお,WWWページ版のJP1/IM - View を使用している場合は,表示できません。また,イベント条件に指定できるイベント属性名については,マニュアル「JP1/Integrated Management - Manager コマンド・定義ファイルリファレンス」の「共通除外条件表示項目定義ファイル(common_exclude_filter_attr_list.conf)」(2. 定義ファイル)を参照してください。
定義した追加共通除外条件は,[イベント取得条件一覧]画面で編集・削除・共通除外条件に変更できます。
画面の詳細については,マニュアル「JP1/Integrated Management - Manager 画面リファレンス」の「2.14 [イベント取得条件一覧]画面」を参照してください。
追加共通除外条件の設定方法については,マニュアル「JP1/Integrated Management - Manager 運用ガイド」の「5.1.14 追加共通除外条件を設定して監視しないJP1イベントを除外する」を参照してください。
- 注意事項
-
共通除外条件に設定されたJP1イベントは,イベント監視対象から除外されます。除外されると,[イベントコンソール]画面のイベント一覧に表示されなくなります。共通除外条件を設定する場合は,イベント条件の設定内容を十分に確認してください。また,jcochfilterコマンドの-efオプションで共通除外条件拡張定義を適用する場合,定義済みの共通除外条件がすべて入れ替わります。イベント監視中に追加した追加共通除外条件の定義もすべてなくなってしまうので,注意してください。