JP1/Baseは,JP1/IMを使用した統合管理システムやJP1/AJSを使用したジョブ管理システムの基盤となる製品です。システム内のイベントやJP1ユーザーを管理したり,サービスの起動を制御したりできます。
次に,JP1/Baseが提供する機能を示します。
- ユーザー管理
JP1/IM - ManagerやJP1/AJS - Managerなど,JP1のマネージャー製品がインストールされた各ホストにユーザーがアクセスする権限,および各ホスト上にあるJP1資源(ジョブ,ジョブネット,イベントなど)に対して操作する権限を管理します。OSのアカウントとは別に,独立して管理され,ユーザーごとに他ホストに対する操作権限を詳細に管理できるため,セキュリティを強化できます。
- サービスの起動管理(Windows限定)
サービスの起動順序や終了順序を制御します。なお,終了順序を制御する場合,JP1/Power Monitorが必要です。
- イベントサービス
システムで何らかの事象が発生したときにJP1/Baseに通知されるJP1イベントを管理したり,ほかのホストとJP1イベントを送受信したりします。イベントフィルターを使って,重要なイベントだけをマネージャーへ転送することもできます。
- イベント変換
ログメッセージやイベントログをJP1イベントに変換します。変換されたJP1イベントは,イベントサービスが提供しているイベントDBに格納され,JP1シリーズのプログラムが発行するJP1イベントと同様に管理できます。イベント変換機能には,次に示す三つの機能があります。
- ログファイルトラップ
- アプリケーションプログラムのログをJP1イベントに変換します。
- イベントログトラップ(Windows限定)
- WindowsのイベントログをJP1イベントに変換します。
- SNMPトラップ変換
- SNMPトラップをJP1イベントに変換します。SNMPトラップ変換機能がサポートするNNMのバージョンについては,「付録I SNMPトラップを変換する」を参照してください。
- 定義の収集・配布(JP1/IM用)
JP1/BaseやJP1製品で定義した情報を,JP1/IMで収集・配布できます。この機能を利用すると次のことが行えます。
- IM構成管理による定義情報の管理
- IM構成管理を使用している場合は,IM構成管理・ビューアーを操作して,JP1/Baseの定義情報を管理できます。IM構成管理はJP1/IM - Manager 09-00で追加された機能です。
- IM構成管理によるサービスの稼働情報の確認
- IM構成管理を使用している場合は,IM構成管理・ビューアーを操作して,JP1/Baseのサービスの稼働情報を確認できます。
- コマンドによるイベントサービスの定義情報の収集と配布
- IM構成管理を使用していない場合は,JP1/Baseが提供するコマンドを実行して,転送設定ファイル(forward)およびイベント変換で使用する定義ファイルの定義情報を収集・配布できます。
- JP1製品の定義情報の収集
- JP1/AJSのジョブネット定義やJP1/Cm2/SSO定義など,JP1製品が管理する定義情報を収集できます。収集された定義情報はJP1/IMの監視対象としてJP1/IMで管理されます。詳細については,マニュアル「JP1/Integrated Management - Manager 運用ガイド」を参照してください。
- プロセス管理
JP1/Baseの起動,停止などの動作を制御します。以下の機能を制御します。
- ユーザー管理
- 定義情報収集・配布
- ヘルスチェック
- ローカルアクション
- 構成管理
JP1/IMのシステム構成を管理します。
- コマンド実行
JP1/IMから要求されたコマンドを実行します。
- サービス管理制御
JP1/IMの構成管理のエージェント機能を制御します。
- プロセス間通信
JP1/IMの構成管理とサービス管理制御との通信などで使用する通信基盤です。
- ヘルスチェック
JP1/Baseの各プロセスを監視し,プロセスにハングアップなどの異常が生じた場合にメッセージやJP1イベントで通知します。この機能を使用すると,プロセスの異常を早期に検知できます。また,異常が発生したプロセスを容易に特定できるため,異常時の影響を最小限に抑えた対処ができます。
- ローカルアクション
特定のJP1イベントを契機に,自動的にコマンドを実行します。障害発生時などに,メール送信や電話連絡などのコマンドを実行してシステム管理者に通知したり,再起動などの処置を実行できます。
- ISAMファイル関連のユーティリティコマンド
JP1/Baseでは,ISAMを利用する場合に役立つユーティリティコマンドを提供しています。このコマンドの詳細については,「13. コマンド」を参照してください。
- 統合トレース機能(HNTRLib2)
JP1/Baseを前提とする製品(JP1/IMやJP1/AJS)を含めた動作処理の流れをトレースします。トレースした結果は,ログ情報として保管され,障害が発生した場合などの原因究明に役立ちます。
JP1/Baseが提供する各機能は,OSによってはサポートされていない機能もあります。OSごとのサポート状況を次の表に示します。
表1-1 OSによるJP1/Baseの各機能サポート状況一覧(Windowsの場合)
| 機能一覧 |
OS(Windows) |
| XP,2003 |
2003(x64) |
Vista,2008,7 |
2008 R2 |
| ユーザー管理 |
ユーザー認証 |
○ |
○ |
○ |
○ |
| ディレクトリサーバによるユーザー認証※1 |
○ |
○ |
○ |
○ |
| ユーザーマッピング |
○ |
○ |
○ |
○ |
| 起動管理 |
起動順序の制御 |
○ |
○ |
○ |
○ |
| 終了順序の制御※2 |
○ |
○ |
○ |
○ |
| イベントサービス |
○ |
○ |
△※3 |
△※3 |
| イベント変換 |
ログファイルトラップ |
○ |
○ |
○ |
○ |
| イベントログトラップ |
○ |
○ |
○ |
○ |
| SNMPトラップ変換 |
○ |
− |
− |
− |
| 定義収集・配布 |
IM構成管理による定義情報の管理・サービスの稼働情報の確認 |
○ |
○ |
○ |
○ |
| コマンドによるイベントサービスの定義情報の収集と配布 |
○ |
○ |
○ |
○ |
| JP1製品の定義情報の収集 |
○ |
○ |
○ |
○ |
| プロセス管理機能 |
○ |
○ |
○ |
○ |
| ヘルスチェック |
○ |
○ |
○ |
○ |
| ローカルアクション |
○ |
○ |
○ |
○ |
| ISAMファイル関連のユーティリティコマンド |
○ |
○ |
○ |
○ |
| 統合トレース(HNTRLib2) |
○ |
○ |
○ |
○ |
| IPv4アドレスでの通信機能 |
○ |
○ |
○ |
○ |
| IPv6アドレスでの通信機能 |
− |
− |
− |
○ |
- (凡例)
- XP,2003:Windows XP ProfessionalおよびWindows Server 2003
- 2003(x64):Windows Server 2003 (x64)
- Vista,2008,7:Windows Vista,Windows Server 2008 Datacenter,Windows Server 2008 Enterprise,Windows Server 2008 Standard,およびWindows 7
- 2008 R2:Windows Server 2008 R2 Datacenter,Windows Server 2008 R2 Enterprise,およびWindows Server 2008 Standard
- ○:サポートしている。
- △:一部サポートしていない。
- −:サポートしていない。
注※1 連携するディレクトリサーバはActive Directoryです。
注※2 終了順序を制御したい場合,JP1/Power Monitorが必要です。
注※3 バージョン5互換用イベントの受信はサポートしていますが,送信はサポートしていません。
表1-2 OSによるJP1/Baseの各機能サポート状況一覧(UNIXの場合)
| 機能一覧 |
OS(UNIX) |
| HP(IPF) |
Sol(G) |
Sol(N) |
AIX |
Linux |
| ユーザー管理 |
ユーザー認証 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
| ディレクトリサーバによるユーザー認証※1 |
− |
− |
− |
− |
− |
| ユーザーマッピング |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
| 起動管理※1 |
起動順序の制御 |
− |
− |
− |
− |
− |
| 終了順序の制御 |
− |
− |
− |
− |
− |
| イベントサービス |
△※2 |
○ |
△※3 |
○ |
○ |
| イベント変換 |
ログファイルトラップ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
| イベントログトラップ※1 |
− |
− |
− |
− |
− |
| SNMPトラップ変換 |
○ |
○ |
− |
− |
− |
| 定義収集・配布 |
IM構成管理による定義情報の管理・サービスの稼働情報の確認 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
| コマンドによるイベントサービスの定義情報の収集と配布 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
| JP1製品の定義情報の収集 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
| プロセス管理機能 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
| ヘルスチェック |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
| ローカルアクション |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
| ISAMファイル関連のユーティリティコマンド |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
| 統合トレース(HNTRLib2) |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
| IPv4アドレスでの通信機能 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
| IPv6アドレスでの通信機能 |
− |
− |
− |
− |
○ |
- (凡例)
- HP(IPF):HP-UX(IPF)
- Sol(G):Solaris(SPARC)大域ゾーン
- Sol(N):Solaris(SPARC)非大域ゾーン
- AIX:AIX
- Linux:Linux 6(AMD/Intel 64)およびLinux 6(x86)
- ○:サポートしている。
- △:一部サポートしていない。
- −:サポートしていない。
注※1 UNIXではサポートしていません。
注※2 IPF版JP1/Baseでは,バージョン5のJP1/SESから環境設定やコマンドを移行するためのツール(jevmkcompatコマンド,jevconfcopyコマンド)は提供していません。
注※3 ユーザーアプリケーションの再コンパイルが必要です。バージョン5互換用イベントは使用できません。
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