4.1.2 暗号化して出力する
(1) 使用するファイル
PDF形式ファイルを暗号化出力するには,帳票出力時に暗号化設定ファイルの指定が必要です。暗号化設定ファイルには,PDF形式ファイルを暗号化するセキュリティ属性を指定します。暗号化設定ファイルで指定できる項目を次に示します。
- ユーザパスワード(PDF形式ファイルを閲覧するためのパスワード)
- オーナパスワード(セキュリティ属性を変更するパスワード)
- 印刷
- 文書の変更
- 内容のコピー,または抽出
- 注釈とフォームフィールドの作成
なお,ユーザパスワードとオーナパスワードには,暗号化したパスワードも指定できます。パスワードの暗号化については,「(3) パスワードの暗号化」を参照してください。
- ■PDF形式ファイルを暗号化出力する場合の指定例
- 出力先ファイル「OUTPUT.pdf」に,次の設定をするときの指定例です。
- PDF形式ファイルを閲覧するとき,パスワードの入力を求めます。
- PDF形式ファイルの印刷を禁止します。
- 暗号化設定ファイル(cipher.txt)の定義内容
- OwnerPassword=OWNER
- DisablePrint=Yes
- UserPassword=HITACHI
- マッピングデータファイル(shikyuu.csv)の内容
- 所属,氏名,支給額
- 勤労課,日立太郎,250000
- 勤労課,日立花子,200000
|
- 「OUTPUT.pdf」には,「勤労課 日立太郎 250,000円」と「勤労課 日立花子 200,000円」が出力されます。
- 「OUTPUT.pdf」を開こうとすると,パスワードの入力を求められます。
- 「OUTPUT.pdf」を開くと,[文書のセキュリティ]ダイアログには次のように表示されます。
- ユーザパスワード:はい
- マスタパスワード:はい
- 印刷 :許可しない
- なお,お使いのAdobe Readerのバージョンによっては,表示内容が異なる場合があります。
暗号化設定ファイルの指定内容の詳細については,マニュアル「EUR 帳票出力 リファレンス EUR Server編」を参照してください。
(2) 暗号化出力したPDF形式ファイルの動作
暗号化出力したPDF形式ファイルを開いたときの動作を,次の表に示します。
表4-2 暗号化出力したPDF形式ファイルを開いたときの動作
項番 | PDF仕分け定義ファイル | 暗号化設定ファイル | 動作 |
---|
ユーザパスワード | オーナパスワード | ユーザパスワード |
---|
1 | - | ○ | - | パスワードの入力を求められません。 自由にファイルを開けますが,暗号化設定ファイルに設定されているセキュリティ属性は有効です。 |
2 | ○ | - | - | パスワードの入力を求められます。 ユーザパスワードが通知されている閲覧者だけファイルを開けます。また,暗号化設定ファイルに設定されているセキュリティ属性も有効です。 |
3 | - | - | ○ |
4 | ○ | ○ | - | パスワードの入力を求められます。入力するパスワードは,オーナパスワードとユーザパスワードのどちらでもかまいません。ただし,どちらのパスワードを入力するかによって,セキュリティ属性は次のように異なります。
- オーナパスワードを入力したとき
暗号化設定ファイルに設定されているセキュリティ属性は,すべて解除した状態で表示されます。
- ユーザパスワードを入力したとき
暗号化設定ファイルに設定されているセキュリティ属性は有効です。
|
5 | - | ○ | ○ |
- (凡例)
- ○:指定あり。
- -:指定なし。
- ■PDF形式ファイルを暗号化仕分け出力する場合の注意
- ユーザパスワードは,PDF仕分け定義ファイルのuserpasswordで指定します。暗号化設定ファイルのキーワードUserPasswordの指定はいりません。指定されていても無視されます。
- パスワードは,暗号化設定ファイルのキーワードOwnerPassword,またはPDF仕分け定義ファイルのuserpasswordのどちらかを指定してください。どちらも指定していない場合は,エラー(KEEU033-E)になります。
- 暗号化設定ファイルで指定するOwnerPasswordと,PDF仕分け定義ファイルで指定するuserpasswordは,異なるパスワードを指定してください。同じパスワードが指定されている場合は,エラー(KEEU034-E)になります。
(3) パスワードの暗号化
セキュリティを強化するために,暗号化設定ファイル,およびPDF仕分け定義ファイルに指定するユーザパスワードとオーナパスワードを暗号化できます。
パスワードの暗号化は,PDFパスワード暗号化ツール(eurecpdfコマンド)で行います。PDFパスワード暗号化ツールは,EUR Server - Cipher optionに同梱されています。
(a) ファイル名
PDFパスワード暗号化ツールのファイル名と格納先を次に示します。
- Windows環境の場合
ファイル名:eurecpdf.exe
格納先:EUR Server - Cipher optionのインストール先フォルダ¥Cipher¥x64
- UNIX/Linux環境の場合
ファイル名:eurecpdf
格納先:/opt/eur/print/bin
(b) コマンドの構文
PDFパスワード暗号化ツールのコマンドの構文を次に示します。なお,オプションのセパレータは「/」で示しています。UNIX/Linux環境の場合の場合は,「/」を「-」に置き換えてお読みください。
eurecpdf
/t 暗号化対象ファイル種別
/if 暗号化対象ファイルパス
/of 出力先ファイルパス
/es 暗号化鍵
- /tオプション
暗号化するファイルの種別を指定します。指定できるファイル種別を次に示します。
cr:暗号化設定ファイル
pd:PDF仕分け定義ファイル
大文字と小文字の区別はしません。「cr」,「pd」以外の文字を指定すると,エラーになります。
- /ifオプション
パスワードを暗号化する暗号化設定ファイル名,またはPDF仕分け定義ファイル名のフルパスを,259文字以内で指定します。
- /ofオプション
パスワードを暗号化したデータを出力するファイルのフルパスを,259文字以内で指定します。
- /esオプション
暗号化したパスワードから元のパスワードを読み出すための,暗号化鍵を指定します。パスワード暗号化鍵に指定できる文字は,次のとおりです。
指定できるパスワード暗号化鍵の長さは,Shift JISコードで32バイトまでです。32バイトを超えた場合は,エラー(KEEU806-E)になります。また,パスワード暗号化鍵に指定できない文字を指定した場合も,エラー(KEEU806-E)になります。
(c) 出力されるファイル
パスワード暗号化ツールのコマンドを実行すると,暗号化設定ファイルまたはPDF仕分け定義ファイルの中のパスワードだけが暗号化され,指定したファイルに出力されます。暗号化前のファイルへの上書きはできません。
(4) 注意事項
- PDF形式ファイルの暗号化出力は,日本語ロケールでだけ正しく動作します。PDF形式ファイルを暗号化出力するときは,ロケールを日本語環境に設定してください。
- PDF形式ファイルのセキュリティ属性を変更する場合は,暗号化設定ファイルから行ってください。Adobe AcrobatでPDF形式ファイルを開き,オーナパスワードを入力することで文書のセキュリティを変更できますが,この場合EURでは動作を保証しません。