26.20.1 システム構築例の説明
ここでは,クラスタソフトウェアにMSFCを用いて,HiRDB/シングルサーバの1:1系切り替え構成の構築例を説明します。また,IPアドレスを引き継ぐ構成とします。
なお,ここでの説明はHiRDBの環境設定を理解していることを前提としています。HiRDBの環境設定については,マニュアル「HiRDB システム導入・設計ガイド」を参照してください。
- ●システム構成例
- 〈この項の構成〉
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(1) MSFCがインストールされているかを確認します
システムを構築する前にMSFCがインストールされているかを確認してください。MSFCがインストールされていない状態でシステムを構築しても,系切り替え機能を使用できません。この場合,システムを再構築する必要があります。
(2) hostsファイルにホスト名を指定します
DNSサーバを使用しない場合は,hostsファイルにホスト名とIPアドレスを指定してください。hostsファイルを保存した後,Windowsを再起動してください。
(例)
host01 172.17.8.236 1 host02 172.17.8.237 2 HIRDB01 172.17.8.239 3
- 〔説明〕
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サーバマシンA(現用系)の標準ホスト名及びIPアドレスを指定します。
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サーバマシンB(予備系)の標準ホスト名及びIPアドレスを指定します。
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HiRDBが系切り替え機能で使用する仮想ネットワーク名及びIPアドレスを指定します。
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(3) HiRDBの役割を作成します
サーバマシンA(現用系)でフェールオーバークラスターマネージャーを起動して,次に示す手順でHiRDBの役割を作成してください。
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[スタート]−[フェールオーバークラスターマネージャー]でフェールオーバークラスターマネージャーを起動します。
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フェールオーバークラスターマネージャーのツリーの[役割]を右クリックして,[空の役割の作成]を選択し,[新しい役割]を作成します。
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作成した役割を選択して右クリックします。[プロパティ]を選択して[プロパティ]画面を表示し,名前欄にHiRDBの役割名を指定します。この例では次のように指定します。
名前:HiRDB
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[優先所有者]欄に表示されている優先所有者を選択します。優先順(現用系,予備系の順)に順番を変更して,現用系のノード(vm008236),予備系のノード(vm008237)のチェックボックスをチェックします。
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[OK]をクリックします。
(4) 共有ディスクをHiRDBの役割に登録します
フェールオーバークラスターマネージャーを起動して共有ディスク(物理ディスク)をHiRDBの役割に登録します。この例ではLドライブを共有ディスクとしています。
[記憶域]−[ディスク]内にあるリソース[Disk L:]をHiRDBの役割に割り当ててください。
(5) クライアントアクセスポイントをMSFCに登録します
HiRDBが系切り替え機能で使用する仮想ネットワーク名及びIPアドレスを次に示す手順で登録します。
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フェールオーバークラスターマネージャーを起動します。
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(3)で作成したMSFCの役割を選択して右クリックします。[リソースの追加]−[クライアントアクセスポイント]を選択して,[新しいリソース ウィザード]画面を表示します。この例では次のように指定します。
名前:HiRDB_IP_Address
ネットワーク:172.17.0.0/17のチェックボックスだけチェック
アドレス:172.17.8.239
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[次へ]をクリックして[確認]画面を表示します。この画面では何も設定する内容はありません。
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[次へ]をクリックして,[完了]をクリックします。
(6) リソースを現用系でオンラインにします
次に示すリソースを現用系でオンラインにします。
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物理ディスク(共有ディスク)
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IPアドレス
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ネットワーク名
次に示す手順でこれらのリソースをオンラインにしてください。
- 〈手順〉
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フェールオーバークラスターマネージャーを起動します。
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該当するリソースを選択して右クリックします。
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[オンラインにする]を選択します。
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(7) サーバマシンA(現用系)にHiRDBをインストールします
サーバマシンAにHiRDBをインストールしてください。HiRDBはローカルディスクにインストールしてください。1:1系切り替え構成のため,標準セットアップ(識別子なし)を選択してください。
(8) HiRDBシステム定義を作成します
現用系でHiRDBシステム定義を作成してください。系切り替え機能に関連するオペランドの指定値を次に示します。
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pd_mode_conf = MANUAL1
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pd_ha = use
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pd_ha_ipaddr_inherit = Y
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pdunit -x HIRDB01 -u unt1
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pdstart -t SDS -s sds01 -u unt1
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pd_hostname = host01
- 〔説明〕
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pdunitオペランドの-xオプションには,HiRDBが系切り替え機能で使用する仮想ネットワーク名を指定します。
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pd_hostnameオペランドには現用系の標準ホスト名を指定します。
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(9) HiRDBファイルシステム領域を作成します
pdfmkfsコマンドで,次に示す目的のHiRDBファイルシステム領域を共有ディスク(この例ではLドライブ)に作成してください。
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システムファイル用のHiRDBファイルシステム領域
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RDエリア用のHiRDBファイルシステム領域
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作業表用ファイル用のHiRDBファイルシステム領域
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ユティリティ用(アンロードログファイル作成用)のHiRDBファイルシステム領域
(10) システムファイルを作成します
システムファイル用のHiRDBファイルシステム領域にシステムファイルを作成してください。
(11) 現用系のHiRDBが開始するかを確認します
次に示す手順で現用系のHiRDBを開始してください。
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pdstartコマンドで現用系のHiRDBを開始してください。
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KFPS05201-Qメッセージが出力されたら,データベース初期設定ユティリティ(pdinitコマンド)を実行してシステム用RDエリアを作成します。
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KFPS05210-Iメッセージが出力されたら,HiRDBの開始完了です。
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pdstopコマンドで現用系のHiRDBを終了してください。
(12) 共有ディスクの系を切り替えます
共有ディスクを現用系から予備系に切り替えます。次に示す手順で共有ディスクを切り替えてください。
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フェールオーバークラスターマネージャーを起動します。
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HiRDBの役割を選択して右クリックします。
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[移動]−[ノードの選択]を選択します。
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移動させるクラスターノードで予備系のノードを選択して,[OK]をクリックします。
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所有者ノードに表示されているノード名が予備系のノードであることを確認します。
(13) サーバマシンB(予備系)にHiRDBをインストールします
サーバマシンBにHiRDBをインストールしてください。HiRDBはローカルディスクにインストールしてください。1:1系切り替え構成のため,標準セットアップ(識別子なし)を選択してください。
(14) HiRDBシステム定義を作成します
現用系で作成したHiRDBシステム定義を予備系にコピーしてください。
(15) 予備系のHiRDBが開始するかを確認します
既に,HiRDBファイルシステム領域,システムファイル,及びシステム用RDエリアが共有ディスクに作成されているため,HiRDBを開始できます。次に示す手順で予備系のHiRDBを開始してください。
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pdstartコマンドで予備系のHiRDBを開始してください。
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pdlsコマンドで予備系のHiRDBが開始したか確認してください。
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pdstopコマンドで予備系のHiRDBを終了してください。
(16) 共有ディスクの系を切り替えます
共有ディスクを予備系から現用系に切り替えます。次に示す手順で共有ディスクを切り替えてください。
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フェールオーバークラスターマネージャーを起動します。
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HiRDBの役割を選択して右クリックします。
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[移動]−[ノードの選択]を選択します。
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移動させるクラスターノードで現用系のノードを選択して,[OK]をクリックします。
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所有者ノードに表示されているノード名が予備系のノードであることを確認します。
(17) 汎用サービスにHiRDBのクラスタサービスを登録します
汎用サービスにHiRDBのクラスタサービスを次に示す手順で登録してください。
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フェールオーバークラスターマネージャーを起動します。
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(3)で作成したMSFCの役割を選択して右クリックします。[リソースの追加]−[汎用サービス]を選択して,[新しいリソース ウィザード]画面を表示します。
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サービスの一覧から,HiRDB/ClusterServiceを選択します。
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[次へ]をクリックして,[確認]画面を表示します。この画面では何も設定する内容はありません。
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[次へ]をクリックして,[完了]をクリックします。
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作成したHiRDB/ClusterServiceリソースを選択して右クリックします。[プロパティ]ダイアログを表示して,[依存関係]画面を選択します。
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[リソース]欄から物理ディスクとネットワーク名を選択して,[OK]をクリックします。
(18) HiRDBのクラスタサービスを現用系でオンラインにします
HiRDBのクラスタサービスを現用系でオンラインにします。次に示す手順でオンラインにしてください。
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フェールオーバークラスターマネージャーを起動します。
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役割「HiRDB」を選択して右クリックします。
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[役割の開始]を選択します。
この時点で,現用系のHiRDBが開始します。
(19) 汎用サービスにHiRDBのサービスを登録します
汎用サービスにHiRDBのHiRDBSingleServerサービス(HiRDB/パラレルサーバの場合はHiRDBParallelServer)を登録してください。HiRDBのサービスをMSFCに登録すると,HiRDBの異常終了時にも系切り替え機能を適用できます。
登録手順は(17)と同じです。
- ポイント
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[依存関係]画面の[リソースの依存関係]欄に物理ディスクとネットワーク名を指定してください。
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ここで登録した汎用サービス(HiRDBSingleServer又はHiRDBParallelServer)をHiRDBのクラスタサービス(HiRDBClusterService)の汎用サービスの依存関係に追加してください。
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フェールオーバークラスターマネージャーを起動して,ここで登録したHiRDBのサービスのプロパティ画面を開き,次の設定をしてください。
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HiRDB/シングルサーバの場合は[HiRDBSingleServerのプロパティ]画面,HiRDB/パラレルサーバの場合は[HiRDBParallelServerのプロパティ]画面の[ポリシー]タブで,指定期間内での再起動の試行回数に0を指定してください。0を指定しないとHiRDBが異常終了したときに系が切り替わりません。
- 参考
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HiRDBの異常終了が30分間に3回発生すると,系が切り替わります。
(20) HiRDBクライアントのhostsファイルに仮想ネットワーク名とIPアドレスを指定します
DNSサーバを使用しない場合は,HiRDBクライアントのhostsファイルに仮想ネットワーク名とIPアドレスを指定してください。hostsファイルを保存した後,OSを再起動してください。
(例)
HIRDB01 172.17.8.239
(21) クライアント環境定義のPDHOSTオペランドを指定します
クライアント環境定義のPDHOSTオペランドに仮想ネットワーク名を指定してください。
(例)
PDHOST = HIRDB01
(22) HiRDBクライアントとHiRDBサーバの接続を確認します
HiRDB SQL Executerなどで,HiRDBクライアントとHiRDBサーバが接続しているか確認してください。また,(23)で系を切り替えても,HiRDBクライアントとHiRDBサーバが接続しているか確認してください。
(23) 系の切り替えを確認します
フェールオーバークラスターマネージャーを起動して,HiRDBの役割を予備系のノードへ移動(系切り替え)します。このとき,所有者ノードに表示されているノード名が予備系のノードであることを確認してください。
その後,予備系側のノードでpdls -d ustコマンドを実行し,待機系HiRDBが稼働中(リターンコードが0)であることを確認してください。また,現用系側のノードでpdls -d ustコマンドを実行し,実行系だったHiRDBが停止状態(リターンコードが12又は16)であることを確認してください。
- 備考
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汎用サービス名HiRDBClusterServiceは系切り替えが発生したときに,待機系HiRDBを開始して,実行系HiRDBを終了するバッチを実行します。
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HiRDBが正常に開始,終了できない場合は,フェールオーバークラスターマネージャー上で「×失敗」と表示されます。この場合,HiRDBが正常に開始,終了できない原因(HiRDBシステム定義の誤り,システムファイル未作成,HiRDB開始済みなど)を取り除いてください。
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