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ノンストップデータベース HiRDB Version 10 システム運用ガイド(UNIX(R)用)


15.8.1 RDエリアの自動増分とは

RDエリアの容量不足が近付いたときに,RDエリアを構成するHiRDBファイルに未使用セグメントを追加して,RDエリアの容量を自動的に拡張します。これをRDエリアの自動増分といいます。RDエリアの自動増分には,次の二つの方式があります。

  1. HiRDBファイルシステム領域を自動的に拡張する方式

  2. HiRDBファイルシステム領域内でHiRDBファイルを増分する方式

RDエリアの自動増分を次の図に示します。

図15‒1 RDエリアの自動増分

[図データ]

〔説明〕

方式1では,セグメントの追加によってHiRDBファイルシステム領域サイズの上限を超える場合,HiRDBファイルシステム領域を必要な分だけ自動的に拡張します。この方式では,一つのHiRDBファイルシステム領域に,HiRDBファイルを一つだけ作成できます。

方式2では,HiRDBファイルシステム領域サイズ内でHiRDBファイルを拡張又は追加し,HiRDBファイルシステム領域の上限まで自動増分します。

RDエリア構成ファイルが複数ある場合,自動増分の対象となるファイルをシステム共通定義pd_rdarea_extension_fileで選択できます。pd_rdarea_extension_fileオペランドについては,マニュアル「HiRDB システム定義」を参照してください。

  1. pd_rdarea_extension_file=lastの場合

    自動増分の対象ファイルは,RDエリアを構成するHiRDBファイルのうち,最終ファイルが対象となります。

    図15‒2 pd_rdarea_extension_file=lastの方式

    [図データ]

  2. pd_rdarea_extension_file=allの場合

    自動増分の対象ファイルは,RDエリアを構成するHiRDBファイルすべてが対象となります。

    図15‒3 pd_rdarea_extension_file=allの方式

    [図データ]

〈この項の構成〉

(1) 自動増分を適用できるRDエリア

RDエリアの自動増分を適用できるRDエリアを次の表に示します。

表15‒5 自動増分機能を使用できるRDエリア種別と自動増分の対象HiRDBファイル

#

RDエリア種別

自動増分

適用可否

自動増分の対象HiRDBファイル

all

last

1

ユーザ用RDエリア

一時表用RDエリア以外

構成ファイルすべて

最終ファイル

2

一時表用RDエリア

最終ファイル

3

データディクショナリ用RDエリア

4

レジストリ用RDエリア

5

ユーザLOB用RDエリア

6

データディクショナリLOB用RDエリア

7

レジストリLOB用RDエリア

8

マスタディレクトリ用RDエリア

×

9

データディレクトリ用RDエリア

10

リスト用RDエリア

(凡例)

○:自動増分を指定できる

×:自動増分を指定できない

−:自動増分の対象ファイルなし

注※

システム共通定義pd_rdarea_extension_fileオペランドの指定値です。

なお,プラグインが提供する抽象データ型を格納している場合,そのRDエリアに対しては自動増分が適用されません。ただし,HiRDB Text Search Plug-inのSGMLTEXT型の場合は,インデクス管理用領域の一部だけが自動増分の対象となります。

(2) 自動増分の契機

HiRDBは,次に示すRDエリアの自動増分契機になると,RDエリアを自動増分します。

自動増分契機は,pd_rdarea_extension_timingオペランドで指定できます。詳細については,マニュアル「HiRDB システム定義」を参照してください。

自動増分契機を判断するために空きセグメント数を算出する範囲を次の図に示します。

図15‒4 空きセグメント数を算出する範囲

[図データ]

(3) RDエリアの自動増分方式の選択基準

RDエリアの自動増分を適用する場合,基本的には方式1をお勧めします。方式1では,HiRDBファイルの最大サイズ(64ギガバイト)まで自動的にHiRDBファイルシステム領域を拡張するため,領域の見積もりやデータベースの拡張が容易になります。

ただし,方式1には次の制限事項があるため,適用できないシステムの場合は,方式2を選択してください。

(4) 自動増分の対象ファイルの選択基準

次に示す運用をする場合,pd_rdarea_extension_fileにallを指定してください。

allを指定した場合,最大1テラバイト(64ギガバイト[構成ファイルの上限サイズ]×16[最大構成ファイル数])までRDエリアを自動的に拡張できます。

ただし,all指定には次の制限事項があるため,適用できないシステムの場合は,lastを指定してください。

(5) RDエリアの自動増分を適用する場合の運用

(a) 容量監視

RDエリアの自動増分を適用する場合,次に示す容量を監視するようにしてください。

  • HiRDBファイルシステム領域の容量

  • HiRDBファイルシステム領域を作成したディスクの空き容量

特に方式1の場合,ディスク使用量の上限を設定できないため,空き容量の監視が必要です。

また,RDエリア及びHiRDBファイルシステム領域のサイズがむだに大きくならないように,必要に応じてRDエリア内の表及びインデクスを再編成するようにしてください。なお,pd_rdarea_warning_pointオペランドの指定で,HiRDBファイルの使用率やエクステント数を監視して,警告メッセージを出力できます。これによって,自動増分できなくなる前に対処できます。pd_rdarea_warning_pointオペランドについては,マニュアル「HiRDB システム定義」を参照してください。

容量を監視する運用ができない場合

容量を監視する運用にできない場合,HiRDBファイルシステム領域やディスクの容量不足などによって,RDエリアの自動増分時に容量不足が発生すると障害閉塞になるおそれがあります。そのため,RDエリアの自動増分を適用しないか,次に示す条件に該当する場合は,自動拡張時に拡張する領域を初期化する設定をしてください。

  • HiRDBファイルシステム領域を自動的に拡張する方式を適用する

  • RDエリアのHiRDBファイルシステム領域を通常ファイル上に作成する

自動拡張時の領域の初期化については,「自動増分時に拡張するHiRDBファイルシステム領域の初期化」を参照してください。

(b) 自動増分対象ファイルの運用

自動増分対象のRDエリアの構成ファイルは,pd_rdarea_extension_fileの指定値によって次のように運用してください。

  1. pd_rdarea_extension_file=lastの場合

    1つのHiRDBファイルの構成でRDエリアを作成してください。HiRDBファイルの容量を監視し,格納ディスクの使用できる容量がなくなる前に,RDエリア拡張(expand rdarea)でHiRDBファイルを追加します。以降,追加したファイルが増分対象(最終ファイル)となるため,該当ファイルに対し同じ運用をします。

    この機能を適用した自動増分の流れを次の図に示します。

    図15‒5 pd_rdarea_extension_file=lastを選択した運用例

    [図データ]

  2. pd_rdarea_extension_file=allの場合

    構成ファイルすべてを最小ファイルサイズで構成したRDエリアを作成します。なお,構成ファイル数を16未満にした場合,RDエリア拡張(expand rdarea)によってHiRDBファイルを追加することで,後からRDエリアの最大サイズを拡張できます。

    データ追加によって自動増分契機に達すると先頭のHiRDBファイルから増分を開始し,ファイルが増分できる上限になると,次の構成ファイルの増分を開始します。

    このため,HiRDBファイルの容量監視,RDエリア拡張(expand rdarea)を行わなくても先頭ファイルから最終ファイルまで自動増分します。

    この機能を適用した自動増分の流れを次の図に示します。

    図15‒6 pd_rdarea_extension_file=allを選択した運用例

    [図データ]

<注意事項>

pd_rdarea_warning_pointオペランドを指定している場合は,自動増分するHiRDBファイルの領域使用率通知メッセージ(KFPH22037-W),および使用エクステント数の通知メッセージ(KFPH22038-W)が,RDエリアを構成する各HiRDBファイルがしきい値を超えるごとに出力されます。対象ファイルが最終ファイルの場合,このメッセージの対処を行ってください。

参考

RDエリアとエクステントの関係

エクステントとは,HiRDBファイルシステム領域内の連続した領域の固まりのことです。エクステントを次の図に示します。

[図データ]

1HiRDBファイルが保持できるエクステント数の上限は24です。自動増分の際に,対象となるHiRDBファイルの最終割り当てエクステントに連続する空きが確保できた場合にはエクステント数の増加はありませんが,不連続な空きが割り当てられた場合にはエクステント数が増加します。例えば,上図では,HiRDBファイルAのエクステント数は2になります。エクステントの情報については,pdflsコマンドで調べられます。

なお,RDエリアの削除・再初期化(割り当てサイズ縮小又はwith reconstruction付き)・統合では,割り当て済みエクステントの削除やサイズ縮小が発生するため,HiRDBファイルシステム領域内に断片化した空きが発生します。この状態でRDエリアの追加・拡張・再初期化を行うと,自動増分をしていなくても1HiRDBファイルに,複数のエクステントが割り当てられることがあるので注意してください。