8.1.1 系切り替え機能とは
業務処理中のHiRDBに障害が発生した場合,待機用のHiRDBに業務処理を自動的に切り替えて運用できます。これを系切り替え機能といいます。業務処理が中断するのは障害発生時から待機用のHiRDBに処理が切り替わるまでです。障害発生時のシステム停止時間をなるべく短くしたい場合に系切り替え機能を使用します。
系切り替え機能には,スタンバイ型系切り替え機能とスタンバイレス型系切り替え機能があります。また,系切り替え機能は,監視対象とする障害によってモニタモード又はサーバモードで運用します。系切り替え機能と運用方法の組み合わせを,次の表に示します。
系切り替え機能の種類 |
運用方法 |
||
---|---|---|---|
モニタモード |
サーバモード |
||
スタンバイ型系切り替え機能 |
通常の系切り替え |
○ |
○ |
ユーザサーバホットスタンバイ |
× |
○ |
|
高速系切り替え |
× |
○ |
|
スタンバイレス型系切り替え機能※ |
1:1スタンバイレス型系切り替え |
× |
○ |
影響分散スタンバイレス型系切り替え |
× |
○ |
- (凡例)
-
○:運用できます。
×:運用できません。
- 注※
-
スタンバイレス型系切り替え機能を使用する場合は,HiRDB Advanced High Availabilityが必要です。
(1) スタンバイ型系切り替え機能とは
業務処理中のHiRDBのほかに待機用のHiRDBを準備して,業務処理中のHiRDBに障害が発生した場合,待機用のHiRDBに業務処理を自動的に切り替えます。これをスタンバイ型系切り替え機能といいます。
スタンバイ型系切り替え機能は複数のサーバマシンを使用したクラスタシステムの構成で実現します。HiRDB/シングルサーバの場合はシステム単位で系を切り替えます。ただし,ユティリティ専用ユニット(UNIX版限定)は系切り替えできません。HiRDB/パラレルサーバの場合はユニット単位で系を切り替えます。なお,ユーザサーバホットスタンバイ,又は高速系切り替え機能を使用すると,系切り替えに掛かる時間が短縮できます。ユーザサーバホットスタンバイ,高速系切り替え機能については,マニュアル「HiRDB システム運用ガイド」の「系の切り替え時間の短縮(ユーザサーバホットスタンバイ,高速系切り替え機能)」を参照してください。
なお,業務処理中の系を実行系,待機中の系を待機系といい,系の切り替えが発生するたびに実行系と待機系が入れ替わります。また,システム構築時や環境設定時に二つの系を区別するため,最初に実行系として起動する系を現用系,待機系として起動する系を予備系といいます。系が切り替わると実行系と待機系は変わりますが,現用系と予備系は変わりません。系切り替え機能(スタンバイ型系切り替え機能)の概要を次の図に示します。
- 注※1
-
系切り替えを実行する製品をこのマニュアルではクラスタソフトウェアといいます。HiRDBがサポートしているクラスタソフトウェアについては,「HiRDBがサポートしているクラスタソフトウェア」を参照してください。
- 注※2
-
共有ディスク装置については,「共有ディスク装置」を参照してください。
- 〔説明〕
-
業務処理中の実行系に障害が発生すると,待機系に障害の発生が通知されて系が切り替わり,待機系が実行系になって業務処理を続行します。
(2) スタンバイレス型系切り替え機能とは
業務処理中のHiRDBに障害が発生した場合,ほかのユニットに系を切り替えて稼働中のバックエンドサーバに処理を代行させます。これをスタンバイレス型系切り替え機能といいます。スタンバイレス型系切り替え機能ではスタンバイ型系切り替え機能とは異なり,待機系ユニットを準備する必要がありません。
スタンバイレス型系切り替え機能には,次の二つの機能があります。
-
1:1スタンバイレス型系切り替え機能
-
影響分散スタンバイレス型系切り替え機能
スタンバイレス型系切り替え機能はHiRDB/パラレルサーバのバックエンドサーバユニットに対して適用できます。ユニット内にバックエンドサーバ以外のサーバがある場合はそのユニットにスタンバイレス型系切り替え機能を適用できません。
(a) 1:1スタンバイレス型系切り替え機能
1:1スタンバイレス型系切り替え機能では,障害が発生したユニットを1:1に切り替えて別のバックエンドサーバに処理を代行させることができます。
なお,障害発生時に処理を代行してもらうバックエンドサーバを正規BESといい,処理を代行するバックエンドサーバを代替BESといいます。また,正規BESのユニットを正規BESユニットといい,代替BESのユニットを代替BESユニットといいます。1:1スタンバイレス型系切り替え機能の概要を次の図に示します。
- 〔説明〕
- 備考
-
スタンバイ型系切り替え機能にある現用系などの概念と比較すると,1:1スタンバイレス型系切り替え機能では次のようになります。
-
現用系が正規BESユニット,予備系が代替BESユニットと考えてください。
-
正常時は正規BESユニットが実行系で,代替部が待機系と考えてください。代替中は代替部が実行系で,正規BESユニットが待機系と考えてください。
-
- 前提条件
-
1:1スタンバイレス型系切り替え機能を使用する場合は次に示す前提条件をすべて満たす必要があります。
-
HiRDB Advanced High Availabilityを導入している
-
Hitachi HA Toolkit Extensionを導入している(クラスタソフトウェアがHAモニタの場合は必要ありません)
-
系切り替え機能をサーバモードで運用している
-
- スタンバイ型系切り替え機能と比較して優れている点
-
1:1スタンバイレス型系切り替え機能はスタンバイ型系切り替え機能に比べて次に示す点が優れています。
-
待機系ユニットを準備する必要がないため,システムリソースを効率的に使用できます。ただし,系が切り替わると処理を代行するバックエンドサーバではその分の負荷が大きくなるため,処理性能に影響を与えることがあります。
-
サーバプロセスをあらかじめ起動しておくため,系の切り替え時間を高速系切り替え機能使用時と同じくらいに短縮できます。高速系切り替え機能については,「系の切り替え時間を短縮する機能(ユーザサーバホットスタンバイ,高速系切り替え機能)」を参照してください。
-
(b) 影響分散スタンバイレス型系切り替え機能
障害発生時に障害ユニット内のバックエンドサーバへの処理要求を,複数の稼働中ユニットに分散して実行させる機能を影響分散スタンバイレス型系切り替え機能といいます。影響分散スタンバイレス型系切り替え機能では,待機用サーバマシン,又は待機ユニットを準備する必要はなく,システムリソースを効率的に利用できます。障害発生後,障害ノードのサーバ処理を代行するユニットでは処理負荷が増えるため,トランザクション処理性能に影響を及ぼすことがあります。ただし,複数のユニットが障害ユニット内サーバへの処理要求を分担して実行することで,ユニット当たりの負荷上昇を抑え,システムの性能劣化を軽減します。
また,影響分散スタンバイレス型系切り替え機能では,バックエンドサーバを分散して切り替えられます。切り替え先を複数のユニットに分散させることもできます。さらに,障害発生によって切り替えた先のユニットで更に障害が発生しても,別の稼働中ユニットに更に切り替わることで処理を継続できます(以降,多段系切り替えといいます)。なお,1:1スタンバイレス型系切り替えの場合は多段系切り替えができないため,切り替え先で障害が発生すると障害ユニットの代行処理は継続できなくなります。
影響分散スタンバイレス型系切り替え機能は,通常時からシステムリソースを有効に利用することを重視し,しかも,障害発生時の性能劣化を最小限に抑える必要があるシステムに対して適用してください。
なお,影響分散スタンバイレス型系切り替え機能では,障害発生時に処理を代行させるバックエンドサーバをホストBESといい,処理を代行するバックエンドサーバをゲストBESといいます。ホストBESのユニットを正規ユニットといい,ゲストBESのユニットを受け入れユニットといいます。受け入れユニットのすべては,HAグループとして定義しておく必要があります。また,ゲストBESに対応付けられるバックエンドサーバ用のリソースをゲスト用領域といいます。
影響分散スタンバイレス型系切り替え機能の概要(分散代行,多段系切り替え)を次の図に示します。
- 前提条件
-
影響分散スタンバイレス型系切り替え機能を使用する場合は次に示す前提条件をすべて満たす必要があります。
-
HiRDB Advanced High Availabilityを導入していることが必要です。
-
影響分散スタンバイレス型系切り替え機能は,バックエンドサーバだけから構成されるバックエンドサーバ専用ユニットだけを対象としています。
-
影響分散スタンバイレス型系切り替え機能を適用するユニットは,一つ以上の現用系のバックエンドサーバから構成される必要があります。受け入れ専用のユニットには適用できません。
-
(3) HiRDBがサポートしているクラスタソフトウェア
HiRDBがサポートしているクラスタソフトウェアを次の表に示します。
HiRDBがサポートして いるクラスタソフトウェア |
OSの種類 |
||
---|---|---|---|
AIX |
Linux |
Windows |
|
○ |
○ |
× |
|
○ |
× |
× |
|
× |
○ |
× |
|
× |
× |
○ |
|
× |
○ |
○ |
- (凡例)
-
○:サポートしています。
×:サポートしていません。
- 注
-
-
HAモニタについては,マニュアル「高信頼化システム監視機能 HAモニタ」を参照してください。そのほかのクラスタソフトウェアについては,各製品のマニュアルを参照してください。
-
クラスタソフトウェアの種類によってサポートする機能が異なります。各クラスタソフトウェアがサポートする機能については,表「モニタモードとサーバモードが監視対象とする障害」及び表「クラスタソフトウェアと,モニタモード及びサーバモードでの運用可否」を参照してください。
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(4) 共有ディスク装置
現用系と予備系とで共有する外付けハードディスク(UNIX版の場合はキャラクタ型スペシャルファイル)が必要になります。このハードディスクを共有ディスク装置といいます。共有ディスク装置は系切り替えが発生したときに,実行系から待機系に情報を引き継ぐために使用されます。共有ディスク装置には次に示すHiRDBファイルシステム領域を作成します。
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RDエリア用のHiRDBファイルシステム領域
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システムファイル用のHiRDBファイルシステム領域
-
バックアップファイル用のHiRDBファイルシステム領域
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アンロードログファイル用のHiRDBファイルシステム領域
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監査証跡ファイル用のHiRDBファイルシステム領域(セキュリティ監査機能を使用する場合)