JP1/Automatic Job Management System 2 設計・運用ガイド
JP1/AJS2のスループットを考える場合には,JP1/AJS2の処理性能とJP1/AJS2から起動したジョブの実行時間を分けて考える必要があります。JP1/AJS2がジョブを起動すると,実際にジョブが終了するまでの間はジョブそのものの実行時間になります。そのため,JP1/AJS2の処理性能とジョブの実行時間を考慮して,単位時間当たりに実行するジョブ量を見積もる必要があります。なお,大量に標準エラー出力に出力した場合や,大容量の転送ファイルを転送する場合には,別途その転送時間も考慮する必要があります。
- <この項の構成>
- (1) ジョブの処理性能
- (2) スケジューラーサービスの多重起動
- (3) ジョブ実行エージェントの分散
(1) ジョブの処理性能
JP1/AJS2の処理能力は,単位時間当たりのジョブ実行数で見積もりできます。負荷の軽い状態で「何もしないジョブ」を多く実行させる場合が,JP1/AJS2のピーク性能と考えることができます。実際に業務を実行するジョブの数が,ピーク性能を十分に下回っていることを確認してください。
一般に,ジョブは特定の時間帯に集中して実行することが多いので,安定した性能見積もりのためには,最もジョブが集中する時間帯で,ピーク性能を超えないように考慮する必要があります。
また,業務を運用中にジョブがエラーとなり,リカバリーを行うことを考慮して余裕を持った値にしてください。
簡易的に,ジョブの実行が最も集中する時間帯には平均の10倍のジョブが実行されると仮定し,一日のジョブ総量はピーク性能の10分の1程度の範囲で利用するように見積もって運用することを推奨します。一日のジョブ運用時間を12時間とした場合の見積もり例を次の表に示します。
なお,ピーク性能は,使用しているハードウェアなどによって変わります。
表4-1 JP1/AJS2のジョブのスループットの見積もり例
ピーク性能
(1秒当たりのジョブ実行数)ピーク性能
(1時間当たりの
ジョブ実行数)運用時間を12時間とした場合の
1日当たりの
推奨ジョブ実行数0.5 1,800 2,160 1.0 3,600 4,320 2.0 7,200※2 8,640 3.0※1 10,800※2 12,960 4.0※1 14,400※2 17,280 5.0※1 18,000※2 21,600
- 注※1
- キューレスジョブを使用した場合です。
- 注※2
- 実際の運用時は,5,000ジョブを下回るようにジョブの起動数を制限することを推奨します。
- (例)ピーク時の1秒当たりのジョブ実行数が0.5件の場合の,1日当たりの推奨ジョブ実行数
- ピーク時の1時間当たりのジョブ実行数は,次の式で計算できます。
- 0.5件*3,600秒 = 1,800件
- ピーク時の性能で運用が12時間続いた場合を仮定すると,1日のジョブ実行数は次の式で計算できます。
- 1,800件*12時間 = 21,600件
- そのため,1日当たりの推奨ジョブ実行数は,次のようになります。
- 21,600件 / 10 = 2,160件
(2) スケジューラーサービスの多重起動
JP1/AJS2 - Managerホストに複数のCPUが搭載されている場合,一つのスケジューラーサービスによる運用では資源の活用に限界があるため,多重起動する運用を推奨します。スケジューラーサービスの多重起動については,「5.3.6 スケジューラーサービスの多重起動について検討する」を参照してください。
なお,CPUが一つしか搭載されていないマシンの場合でも,CPU処理能力の範囲でスケジューラーサービスの多重起動が有効と考えられるケースがあるので,上記のシステム構成の検討を推奨します。
(3) ジョブ実行エージェントの分散
JP1/AJS2 - Managerホストでの処理能力を最大限に生かすために,ジョブの実行先を複数のJP1/AJS2 - Agentに分散させる構成を推奨します。これによって,マネージャーホストの負荷を軽減できます。
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