8.6.3 アラームの評価に関する注意事項
- この項の構成
- (1) アラームの評価数の制限について
- (2) アラーム評価の間隔について
- (3) 監視時刻範囲と発生頻度を指定した場合のアラーム評価について
- (4) アラーム条件の組み合わせによるアラーム評価の違いについて
- (5) 発生頻度の設定によるアラーム評価の違いについて
- (6) アラーム評価時の文字コード種別について
- (7) エージェントが停止した場合のアラーム評価について
(1) アラームの評価数の制限について
エージェントで複数インスタンスレコードを収集する場合,1回の収集で扱えるインスタンス数は32,767個までです。エージェントにアラームをバインドしている場合,32,767個までのインスタンスが評価されます。32,768個目以降のインスタンスは評価されません。
(2) アラーム評価の間隔について
アラームの評価は一定間隔で実施されます。この間隔はエージェントごとのレコードの収集間隔となります。各レコードの収集間隔については,各PFM - Agentのマニュアルの,レコードについて説明している章(各レコードの説明)を参照してください。
レコードの収集間隔を変更したい場合は,次のように操作してください。
- Performance Reporterの[メイン]画面のタブフレームで[サービス階層]タブを選択する。
- アラームがバインドされているエージェントを選択する。
- メソッドフレームで[プロパティの表示]メソッドを選択する。
- [Detail Records]フォルダまたは[Interval Records]フォルダを展開する。
- [Collection Interval]プロパティの値を変更する。
- レコード(パフォーマンスデータ)の収集間隔が設定した値に変更されます。
なお,アラームに複数のレコードの監視条件を設定している場合は,「8.6.1 アラーム作成時の注意事項」の「(1) アラームの評価時刻について」も参照してください。
(3) 監視時刻範囲と発生頻度を指定した場合のアラーム評価について
監視時刻範囲を指定している場合,監視終了時刻になると,アラーム評価時間外となったことを示す正常アラームが発行されます。しかし,アラーム発生頻度の集計対象には,前回の監視時刻範囲の情報が含まれます。監視時刻範囲を指定している場合のアラーム評価の事例を次に示します。
前提条件
- 監視時刻範囲:9:00~21:00
- 発生頻度:3インターバル中2回超過
- [常にアラーム通知する]:チェックしない
- [すべてのデータを評価する]:チェックしない
- エージェントのデータ収集間隔(Collection Interval):60(秒)
- 参考
- 発生頻度の「3インターバル中2回超過」とは,「3回アラームを評価する間に2回しきい値を超えた場合」を示し,アラームを評価する間隔は,エージェントごとのレコード(パフォーマンスデータ)を収集する間隔となります。
- アラーム評価については,「(2) アラーム評価の間隔について」の説明を,パフォーマンスデータの収集方法については,マニュアル「JP1/Performance Management設計・構築ガイド」の,Performance Managementの機能について説明している章を参照してく ださい。
監視時刻範囲内にしきい値の超過が2回発生している場合,アラームは異常または警告状態になります。この状態で監視時刻が終了すると,アラームはいったん正常状態に変化します。翌日の監視の開始時刻には,前日の終了時刻時点を含めた2インターバル分の監視エージェントの状態(この場合は異常または警告)が引き継がれます。このため,翌日の初回のインターバルでしきい値の超過が発生すると,3インターバル中に2回しきい値を超過する条件を満たすことになるため,異常または警告アラームが発行されます。
この場合,次の表に示すようにアラームが発行されます。
表8-9 監視時刻範囲を指定している場合のアラームの発行例
日付 | 時刻 | 監視エージェントの状態 | 発行アラーム | 2日目9:00時点の判断対象 |
---|
1日目 (前日) | 20:58 | 監視時刻範囲内 | 正常 | - | × |
20:59 | 異常 | - | ○ |
21:00 | 異常 | 異常アラーム※1 | ○ |
21:01 | 監視時刻範囲外 | 評価されない | 正常アラーム※2 | × |
21:02 | 評価されない | - | × |
: |
2日目 | 8:59 | 監視時刻範囲外 | 評価されない | - | × |
9:00 | 監視時刻範囲内 | 異常 | 異常アラーム※3 | ○ |
- (凡例)
- -:アラーム発行なし
- ×:判断対象外
- ○:判断対象
- 注※1
- 「3インターバル中に2回しきい値を超過」の条件を満たしたため,異常アラームが発行されます。
- 注※2
- 監視終了時刻になったため,正常アラーム(Alarm expired)が発行されます。
- 注※3
- 前日の監視エージェントの状態を終了時刻時点を含めた2インターバル分引き継ぐため,「3インターバル中に2回しきい値を超過」の条件を満たすことになり,異常アラームが発行されます。
つまり,監視時刻範囲外の時間をまたがった場合でも,過去(m-1)回分+今回分(発生頻度n/mのとき)の監視エージェントの状態で,条件を満たしているかどうか判断されます。
(4) アラーム条件の組み合わせによるアラーム評価の違いについて
アラーム評価の方法は,アラーム条件とアラーム評価の対象となるレコードタイプによって異なります。アラーム条件の組み合わせによるアラーム評価の違いを次の表に示します。
表8-10 アラーム条件によるアラーム評価の違い
条件式 | レコードタイプ | [常に] | [すべての] | アラーム評価(通知) |
---|
[値の存在を監視するアラームとする]にチェックがない場合 | 単一行のレコード※1 | × | × | - 異常条件を満たしていて,かつ以前に通知されたアラームが異常以外の場合,異常アラームが通知される。
- 異常条件ではなく警告条件を満たしていて,かつ以前に通知されたアラームが警告以外の場合,警告アラームが通知される。
- 上記どちらの条件も満たさないで,かつ以前に通知されたアラームが異常,または警告の場合,正常アラームが通知される。
|
× | ○ |
○ | × | 異常,または警告のどちらかの条件を満たしている場合,以前のアラーム通知の有無に関係なく,異常(または警告)である旨のアラームが通知される。 |
○ | ○ |
複数行のレコード※2 | × | × | - 異常条件を満たしているデータが1つ見つかり,かつ以前に通知されたアラームが異常以外の場合,そのデータについて異常アラームが通知される。
- 異常条件を満たしているデータはないが警告条件を満たしているデータが1つ見つかり,かつ以前に通知されたアラームが警告以外の場合,そのデータについて警告アラームが通知される。
- 収集されたすべてのデータが上記のどちらの条件も満たしていないで,かつ以前に通知されたアラームが異常または警告の場合,正常アラームが通知される。
注意:条件を満たしているデータが見つかった時点でアラーム評価が終了するため,収集されたすべてのデータが評価されるとは限らない。 |
× | ○ | - 収集されたすべてのデータを評価した結果,異常条件を満たしているデータが1つ以上あり,かつ以前に通知されたアラームが異常以外の場合,それらの個々のデータについて異常アラームが通知される。
- 収集されたすべてのデータを評価した結果,異常条件を満たしているデータはないが,警告条件を満たしているデータが1つ以上あり,かつ以前に通知されたアラームが警告以外の場合,それらの個々のデータについて警告アラームが通知される。
- 収集されたすべてのデータが上記どちらの条件も満たしていないで,かつ以前に通知されたアラームが異常または警告の場合,正常アラームが通知される。
注意:すべてのデータが評価されるので,1インターバルで複数のアラーム通知がされることがある。 |
○ | × | - 異常条件を満たすデータが1つ見つかった時点で,以前のアラーム通知の有無に関係なく,そのデータを基に異常である旨のアラームが通知される。
- 異常条件を満たしているデータはないが警告条件を満たしているデータが1つ見つかった時点で,以前のアラーム通知の有無に関係なく,そのデータを基に警告である旨のアラームが通知される。
注意:条件を満たしているデータが見つかった時点でアラーム評価が終了するため,収集されたすべてのデータが評価されるとは限らない。 |
○ | ○ | 異常,または警告のどちらかの条件を満たしているすべてのデータ一つ一つについて異常(または警告)である旨のアラームが通知される。 注意:すべてのデータが評価されるので,1インターバルで複数のアラーム通知がされることがある。 |
[値の存在を監視するアラームとする]にチェックがある場合 | 複数行のレコード※2 | × | × | 収集されたすべてのデータを基に,条件式である[アラームウィザード - 存在を監視する値]で指定した値の有無を判断し,値がない(つまり,条件を満たしていない)場合,異常のアラームが通知される。 注意:アラーム通知は稼働していない旨を1回だけ通知する。 収集されるデータが一つもない場合,アラームの評価はされない。 |
× | ○ |
○ | × | 収集されたすべてのデータを基に,条件式である[アラームウィザード - 存在を監視する値]で指定した値の有無を判断し,値がない(つまり,条件を満たしていない)場合,異常のアラームが通知される。 注意:アラーム通知は,毎回通知する。 収集されるデータが一つもない場合,アラームの評価はされない。 |
○ | ○ |
- (凡例)
- [常に]:[常にアラーム通知する]のチェックの状態
- [すべての]:[すべてのデータを評価する]のチェックの状態
- ○:使用(チェックあり)
- ×:未使用(チェックなし)
- 注※1
- 単一行のレコードとは,単数インスタンスレコードのことです。
- 注※2
- 複数行のレコードとは,複数インスタンスレコードのことです。
アラーム評価方法を,アラーム通知の条件ごとに説明します。
- 存在を監視する値を設定した場合
- 存在を監視する値を設定した場合,指定されたPDレコードタイプおよびPIレコードタイプのレコードの,すべてのフィールドについて,指定した値があるかどうかが評価されます。値がない場合,1インターバルでは1回だけアラーム通知されます。
- アラーム条件式を設定した場合
- アラーム条件式を設定した場合,アラーム評価の対象となるレコードのタイプがPDレコードタイプであれば,1インターバルで複数レコードが収集されます。デフォルトでは,アラームの評価は,条件式を満たしているデータが最初に見つかった時点でアラームを通知して終了します。そのため,すべてのパフォーマンスデータが評価されるとは限りません。PDレコードタイプのパフォーマンスデータをアラーム評価の対象としたい場合は,[アラームウィザード - 基本情報]の[高度な設定]で[すべてのデータを評価する]をチェックします。
(5) 発生頻度の設定によるアラーム評価の違いについて
「アラーム条件の組み合わせによるアラーム評価の違い」の説明に加えて,「発生頻度」を設定した場合には,さらにアラームの評価が異なります。発生頻度を設定した場合の,アラームの条件によるアラームの評価の違いを次の表に示します。
表8-11 発生頻度を設定した場合のアラーム評価の違い
[発生頻度] | [常に] | [すべての] | アラーム評価(通知) |
---|
○ | × | × | - アラームの状態が以前通知した状態から変化があった場合だけ,アラームが通知される。
- アラーム通知時点で収集された最も重大度の高い条件を満たすデータを基に,アラームの状態が通知される。
注意:アラームの状態は発生頻度を評価した結果の状態のため,アラームの状態と通知されるデータのしきい値が異なることがある。 |
○ | × | ○ | - アラームの状態が以前通知した状態から変化があった場合だけ,アラームが通知される。
- アラーム状態が警告または異常の場合,アラーム通知時点でアラーム状態の条件を満たすすべてのデータを基にアラームの状態が通知される。
注意:アラームの状態は発生頻度を評価した結果の状態のため,アラームの状態と通知されるデータのしきい値が異なることがある。 |
○ | ○ | × | - アラーム通知時点で収集された最も重大度の高い条件を満たすデータが通知される。
|
○ | ○ | ○ | - アラーム通知時点で警告または異常条件を満たすすべてのデータが通知される。
|
- (凡例)
- [常に]:[常にアラーム通知する]のチェックの状態
- [すべての]:[すべてのデータを評価する]のチェックの状態
- ○:使用(チェックあり)
- ×:未使用(チェックなし)
また,アラーム通知のタイミングが次の表のように変わります。
表8-12 アラーム通知のタイミング
発生頻度 | アラーム通知のタイミング |
---|
n/m | mインターバル中n回しきい値を超えた場合にアラームが通知されます。以降m回アラームを評価する間にn回しきい値を超えるごとにアラームが通知されます。 |
n/n※ | しきい値を一度超えるとアラームが通知され,以降しきい値を超え続けている間,n回ごとにアラームを通知します。 しきい値を超えたときに連続してアラーム通知しない場合などに使用します。 |
注※ [常にアラーム通知する]がチェックされている場合は,収集開始から1回目の収集でしきい値を満たしている場合はインターバルに関係なくアラームが発行されます。
(6) アラーム評価時の文字コード種別について
アラームの定義に日本語を使用している場合,Tuning Manager serverとアラームテーブルをバインドするエージェントは日本語の文字コード種別で動作している必要があります。文字コード種別が英語の場合,次のような現象が発生します。
- イベントモニターに表示される文字列が文字化けする
- アクション実行時のメッセージが文字化けする
- アラーム定義の状態が異常または警告になっても,Performance Reporter上の表示が正常のままとなる
- アラーム定義の状態が異常または警告から正常に戻っても,Performance Reporter上の表示が正常に変わらない
なお,Tuning Manager serverのサービスが使用する文字コード種別は次のように決定されます。
- コマンドから起動する場合
jpcspm start(jpcstart)コマンドを実行した環境の文字コード種別が適用されます。
- OS再起動時の自動起動で起動する場合
OSが起動する際に設定される文字コード種別が適用されます。
(7) エージェントが停止した場合のアラーム評価について
エージェントの状態が異常または警告の状態でサービスを停止すると,エージェントがバインドしているアラームテーブル内のアラームはすべて正常状態に変更されます。また,エージェントを再起動すると,前回起動時の状態を引き継がず,再度正常状態から評価を開始します。