4.3 システムの構築・運用作業の概要

ここでは,仮想化システムを構築・運用する場合に実施する作業の概要について説明します。システム構成パターンによって,実施する作業は異なります。各システム構成パターンで実施する作業については,「4.2 システムの構築・運用作業の流れ」を参照してください。

<この節の構成>
(1) 前提となる環境の準備
(2) システム構築
(3) システム運用
(4) システム障害時の復旧

(1) 前提となる環境の準備

仮想化システムで前提となる環境を設定します。

●仮想化システムで使用する環境の準備

性能と信頼性の概算見積もりを実施して,仮想化システム全体の構成を決定します。また,構築する仮想化システムで必要な物理マシンを決定し,ハードウェアの配置やネットワーク構成などを決定します。

●ハイパーバイザと関連する環境の構築

ハイパーバイザと関連する環境を構築します。操作端末,ハイパーバイザ管理ホスト,管理対象マシン,および仮想サーバイメージ管理ホストに,必要な製品をインストールし,初期設定をします。

●仮想サーバマネージャの構築

仮想サーバ運用管理ホストに仮想サーバマネージャのセットアップと初期設定をします。また,仮想サーバマネージャで運用・管理する管理対象マシン情報を登録します。

●JP1と連携するための環境の構築

仮想化システムをJP1と連携して運用するための環境を構築します。

(2) システム構築

仮想化システムで業務を実行する環境(アプリケーションサーバ)を構築します。

●業務を実行する環境の準備

業務のサイジングを実施して,業務を実行するために必要な環境(仮想サーバの台数やリソース量)を見積もります。見積もった内容を用意したシステム構成に当てはめて,実際の仮想サーバや物理サーバの配置を決定します。また,仮想サーバで使用するネットワークや機器の設定をします。

●マスタ仮想サーバの構築

仮想サーバイメージ管理ホスト上の仮想マシンに,アプリケーションサーバの動作に必要なOS,Application Server Enterprise,連携する製品などをインストールし,初期設定をして,マスタ仮想サーバを構築します。マスタ仮想サーバを構築すると,マスタ仮想サーバのイメージが作成できます。

●アプリケーションサーバで使用する定義ファイルの作成

仮想サーバ上のアプリケーションサーバの構成を定義するファイルを作成します。また,データベースとの接続や,負荷分散機などを設定する定義ファイルも編集します。

●アプリケーションサーバ情報ディレクトリへの定義ファイルの配置

作成した定義ファイルを,J2EEアプリケーションとともにアプリケーションサーバ情報ディレクトリに配置します。

●仮想サーバ起動時ユーザスクリプトファイルの作成

管理ユニットのデプロイ時や,仮想サーバの起動時などに,仮想サーバで実行するファイル(ゲストOSがWindowsの場合はバッチファイル,Linuxの場合はシェルスクリプト)を作成します。連携するほかのプログラムのコマンドを実行する処理など,ユーザ任意の処理を設定できます。

●管理ユニット運用ルールの作成

業務(管理ユニット)ごとに決めた運用ルールを管理ユニット運用ルールに設定します。設定できる運用ルールには,管理ユニットで使用する管理対象マシン,デプロイや一括起動する仮想サーバの数などがあります。

●管理ユニットの作成

マスタ仮想サーバ,アプリケーションサーバ情報ディレクトリ,管理ユニット運用ルール,および仮想サーバ起動時ユーザスクリプトファイルから,コマンドを使用して管理ユニットを作成します。管理ユニットを作成すると,仮想アプリケーションサーバイメージが作成されます。管理ユニットの作成には,コマンドを使用します。

●管理ユニットのデプロイ

管理ユニット運用ルールに従って,管理対象マシンに管理ユニットをデプロイします。管理ユニットをデプロイすると,仮想アプリケーションサーバイメージ(停止状態の仮想サーバ)がインスタンスプールに保持されます。管理ユニットのデプロイには,コマンドを使用します。

●仮想サーバへの業務実行環境の構築

各仮想サーバに対して,Management Serverやアプリケーションサーバを使用して,業務実行環境を構築します。

●負荷分散機でのリクエスト振り分けの設定

負荷分散機の管理・運用ツールを使用して,負荷分散機のリクエスト振り分けを設定します。

●バックアップの取得およびログのアーカイブ

障害に備えて,仮想マシン,仮想サーバマネージャとVMware vCenter Serverの設定情報などのバックアップを取得します。また,仮想サーバの停止時のログをアーカイブします。

●JP1と連携した仮想化システムを運用するための環境設定

JP1製品の機能を利用するための設定をします。

(3) システム運用

構築した仮想化システムを運用します。

●システムの開始と停止

構築した仮想化システムを開始します。また,仮想化システムを停止します。

●障害監視

VMware vCenter Serverを使用して[アラーム]や[イベント]を監視したり,JP1/IMを使用して仮想サーバマネージャや仮想サーバ上のアプリケーションサーバの障害を監視したりします。また,仮想サーバマネージャによる障害監視を使用する場合は,仮想サーバマネージャGUIで仮想サーバの稼働状況を監視します。

●負荷監視

VMware vCenter Serverを使用してパフォーマンスやリソースを監視したり,JP1/IMを使用して仮想サーバのアプリケーションサーバの負荷情報を監視したりします。

●仮想サーバのスケールアウトとスケールイン

管理対象マシンの性能レポートから,業務に対するトラフィックが増加して,仮想サーバの増加が必要になったらスケールアウトを実施します。また,リクエストに対して仮想サーバが多過ぎて,仮想サーバの減少が必要になったらスケールインを実施します。

●仮想サーバの更新

OSの更新プログラムを適用したり,アプリケーションを変更したりする場合などに,稼働中の仮想サーバを更新します。

●仮想サーバのログ情報の取得

仮想サーバの停止時に,その仮想サーバのログを取得します。仮想サーバのログを取得する場合,システム構築時に設定が必要です。

(4) システム障害時の復旧

仮想化システムの運用中に障害が発生した場合,発生した障害ごとに復旧作業を実施します。

●管理対象マシンのハードウェアの障害

管理対象マシンのハードウェアで発生した障害を復旧します。

●仮想サーバを格納したディスクの障害

仮想サーバを格納した業務用データストアのディスクや,管理対象マシンのローカルディスクで発生した障害を復旧します。

●運用用物理マシンの障害

運用用物理マシン(仮想サーバ運用管理ホスト,ハイパーバイザ管理ホストなど)で発生した障害を復旧します。

●仮想サーバ上のアプリケーションサーバの障害

仮想サーバ上のアプリケーションサーバで発生した障害を復旧します。

●仮想サーバマネージャの障害

仮想サーバ運用管理ホスト上の仮想サーバマネージャで発生した障害を復旧します。

●VMware vCenter Serverの障害

VMware vCenter Serverとのコネクション障害や,タイムアウトの発生などの,VMware vCenter Serverで発生した障害を復旧します。