変換対象MIB定義ファイルは,SNMPのデータ部のNAT変換で使用する定義ファイルです。SNMPメッセージ中のVarBind中のオブジェクトIDに,インスタンス識別子として含まれるIPアドレスのNAT変換をするために,テーブル型のMIBオブジェクトを定義します。
標準提供される変換対象MIB定義ファイルでは,標準MIB-IIや日立企業固有MIB,NNMiおよびNNMがMIB定義として標準提供している範囲のMIBオブジェクトが,あらかじめ定義されています。このため,通常は定義を変更する必要はありません。例えば,ユーザ拡張MIBや他社企業固有MIBなどデフォルトの定義で網羅されていないMIBオブジェクトに,インスタンス識別子としてIPアドレスが含まれている場合,そのIPアドレスを変換するためには定義の追加が必要です。MIBオブジェクトが変換対象MIB定義ファイルに定義する必要があるオブジェクトかどうかの判定については,「付録E 変換対象MIB定義ファイルの定義について」を参照してください。
(1) 書式
インスタンス識別子の中の,IPアドレスの位置を指定する方法として,次の二つの指定方法があります。どちらの指定方法にするかは,オブジェクトIDごとに選択できます。
オブジェクトID:INDEX種別,INDEX種別,・・・
オブジェクトID:INDEX位置,INDEX位置,・・・
(2) 定義内容
表7-3 変換対象MIB定義ファイルのINDEX種別
INDEX種別 | インスタンス識別子へのマッピング方法 | 対応するANS.1上のSYNTAX |
---|---|---|
ipaddr | IPアドレスがそのままインスタンス識別子の4個のサブIDにマッピングされる場合。MIBのASN.1定義でNetworkAddress型となっていても,実装としてIPアドレス4けただけでインスタンス識別子が成り立っている場合は,こちらのipaddrを指定する。 | IpAddress |
netaddr | 最初のサブIDに固定の値1が付加され,続いてIPアドレスを表す4個のサブIDから成るインスタンス識別子の場合。MIBのASN.1定義でNetworkAddress型となっていても,実装としてIPアドレス4けただけでインスタンス識別子が成り立っている場合は,ipaddrの方を指定する。NetworkAddressは,一般にはあまり使用されていない。 | NetworkAddress |
integer | 整数値 MIBオブジェクトの値がそのままインスタンス識別子の一つのサブIDにマッピングされる場合。 | INTEGER,Integer32,Counter,Counter32,Gauge,Gauge32,Unsigned32,TimeTicksなど整数を表すもの |
fixoctet(n) | 固定長の文字列 固定長の文字列またはOCTETデータの値をとるMIBオブジェクトがインスタンス識別子にマッピングされている場合。括弧中のnにはその長さを指定する。インスタンス識別子に使用されるMIBオブジェクトがOCTET STRINGまたはDisplayStringで定義されていて,MIB定義上でその長さが固定長で定義されている場合。PhysAddressは,fixoctet(6)として指定する。 | OCTET STRING,DisplayString,PhysAddress,MacAddress |
varoctet | 可変長の文字列 可変長の文字列またはOCTETデータの値をとるMIBオブジェクトがインスタンス識別子にマッピングされている場合。インスタンス識別子としては最初のサブIDにその文字列の長さがマッピングされ,続いてその文字列中の文字(またはオクテット)をサブIDにマッピングしたものになる。 | OCTET STRING,DisplayString |
objectid | オブジェクトID オブジェクトIDを値とするMIBオブジェクトがインスタンス識別子にマッピングされている場合。 | OBJECT IDENTIFIER |