6.1.1 リソースグループごとの予約状況を分析して,過不足が予想されるITリソースの中長期的な導入,削減予定を検討する

リソースグループごとに収集したITリソースの予約状況を分析して,今後の予約傾向を予測します。その結果から,過不足が予想されるITリソースを判断して,リソースグループ内の中長期的な導入や削減の予定を検討します。

ここでは,リソースグループ内のメモリの予約状況を調査した結果,将来的にメモリの増設が必要だと判明する例を説明します。

<この項の構成>
(1) 分析方法
(2) 各種レポートの利用方法

(1) 分析方法

  1. リソースグループ内のすべてのメモリの予約状況と,使用できるすべてのメモリリソース量を確認する。その結果から,トレンドラインを設定して,予約されたメモリリソース量が,使用できるすべてのメモリリソース量に達する時期を予想する。
    この結果をグラフにすると,次のとおりになるとします。

    [図データ]

    このグラフから,これまでの実績と同じ割合でメモリの予約が増加すると仮定すると,来年の10月までには使用できるすべてのメモリリソース量を使い切ってしまうことがわかります。ただし,リソース種別をさらに細分化して予約実績を調査すると,来年の10月より前にメモリリソースが不足するおそれがあります。例えば,同じリソースグループ内に,VMwareとHyper-Vが含まれていて,それぞれのメモリの予約状況に偏りがある場合が該当します。そこで,次に同じリソースグループ内のメモリの予約状況を,仮想化ソフトウェアごとに調査します。
  2. 同じリソースグループ内のメモリの予約状況を,仮想化ソフトウェアごとに確認する。
    この結果をグラフにすると,次のとおりになるとします。

    [図データ]

    このグラフから,Hyper-Vの予約されたメモリリソース量は比較的安定していますが,VMwareの予約されたメモリリソース量が定期的に増加している傾向にあることがわかります。このことから,このリソースグループ全体の予約されたメモリリソース量が増加しているのは,VMwareの予約されたメモリリソース量が原因であることがわかります。そこで,次に,使用できるすべてのメモリリソース量のうち,VMwareで使用できるメモリリソース量を把握し,いつごろまでにVMwareで使用できるメモリリソース量を使い切ってしまうかを調査します。
  3. 同じリソースグループ内のVMwareで使用できるメモリリソース量を確認して,VMwareの予約されたメモリリソース量と比較する。さらに,その結果から,VMwareの予約リソース量が,VMwareで使用できるメモリリソース量に達する時期を予想する。
    手順2で確認したVMwareの予約されたメモリリソース量と,VMwareで使用できるメモリリソース量を組み合わせます。その結果をグラフにすると,次のとおりになるとします。

    [図データ]

    このグラフから,これまでの実績と同じ割合でVMwareの予約されたメモリリソース量が増加すると仮定すると,来年の2月にVMwareで使用できるメモリリソース量を使い切ってしまうことが予想されます。この結果から,まずは来年の2月までにVMwareで使用できるメモリリソース量を増加する必要があることが判明します。

このように,リソースグループ全体のレポートから将来的なリソース不足の可能性を予測するだけではなく,リソースグループの内訳(メモリ,CPU,プール,仮想化ソフトウェア,業務グループなど)で,分析の切り口を変えてデータを加工し,中長期のITリソース導入・削減計画の指標に活用することができます。

(2) 各種レポートの利用方法

●手順1で使用する,リソースグループ内のすべてのメモリの予約状況と使用できるすべてのメモリリソース量のグラフを作成する

jirmreportコマンドを実行して出力される,仮想化ソフトウェア割り当て実績レポートを利用します。ここでは,現在(2011年5月10日)から過去1年間を対象にしたリソースグループAのメモリの予約状況を出力することとします。

<実行例>

jirmreport -alloc hvhis -rg リソースグループA -metric memory -date 20100510 -range year -f 出力先ファイル名

<出力例(仮想化ソフトウェア割り当て実績レポート)>

DATE,TOTALPERF,ALLOCATEDPERF,UTIL(%)
2010/05/10,300,100,60
2010/05/11,300,100,60
2010/05/12,300,100,65
2010/05/13,300,100,75
2010/05/14,300,100,85
2010/05/15,300,200,55
2010/05/16,300,200,60
2010/05/17,300,200,79
2010/05/18,300,200,70
2010/05/19,300,300,50
     ・
     ・
     ・

ここでは,次のデータを使用します。
  • 1項目目:DATE(日付)
  • 2項目目:TOTALPERF(リソースグループ内のすべてのメモリリソース量(総性能))
  • 3項目目:ALLOCATEDPERF(メモリの予約リソース量(割り当て性能))
<グラフの作成方法>
2項目目のTOTALPERF(リソースグループ内のすべてのメモリリソース量(総性能))と3項目目のALLOCATEDPERF(予約されたメモリリソース量(割り当て性能))を日付ごとにプロットして,表計算ソフトなどでグラフにしてください。
●手順2で使用する,仮想化ソフトウェアごとのメモリの予約状況(割り当て状況)のグラフを作成する

jirmreportコマンドを実行して出力される,予約状況・予約実績一覧レポートを利用します。ここでは,現在(2011年5月10日)から過去1年間を対象にしたリソースグループAのすべてのITリソースの予約状況・予約実績を出力することとします。

<実行例>

jirmreport -resv -rg リソースグループA -date 20110510 -range year -f 出力先ファイル名

<出力例(予約状況・予約実績一覧レポート)>

RESERVATIONID,RESERVATIONNAME,...,HVHOSTNAME,...,RESOURCESTART,RESOURCEEND,...,RESERVEDCPUCLOCK(MHz),RESERVEDNUMOFCPUCORE,RESERVEDMEMORY(MB),...
1,ESX予約1,...,ESXHOST,...,2010/05/10 00:00,2010/09/30 00:00,...,999,1,1024,...
2,ESX予約2,...,ESXHOST,...,2010/10/01 00:00,2011/03/31 00:00,...,1998,2,2048,...
3,ESX予約3,...,ESXHOST,...,2011/04/01 00:00,2011/05/09 00:00,...,2997,2,4096,...
4,ESX予約4,...,ESXHOST,...,2011/05/01 00:00,2011/05/09 00:00,...,2997,1,2048,...
                         ・
                         ・
                         ・
10,Hyper-V予約1,...,HYPERVHOST,...,2010/05/10 00:00,2010/09/30 00:00,...,2997,2,4096,...
11,Hyper-V予約2,...,HYPERVHOST,...,2010/05/10 00:00,2010/08/31 00:00,...,1998,1,2048,...
12,Hyper-V予約3,...,HYPERVHOST,...,2010/10/01 00:00,2011/03/31 00:00,...,1998,1,2048,...
13,Hyper-V予約4,...,HYPERVHOST,...,2011/04/01 00:00,2011/05/09 00:00,...,999,1,1024,...
                         ・
                         ・
                         ・

ここでは,次のデータを使用します。
  • 1項目目:RESERVATIONID(予約ID)
  • 2項目目:RESERVATIONNAME(予約名)
  • 19項目目:HVHOSTNAME(仮想化ソフトウェアのホスト名)
  • 22項目目:RESOURCESTART(リソース予約開始日時)
  • 23項目目:RESOURCEEND(リソース予約終了日時)
  • 26項目目:RESERVEDMEMORY (MB)(予約メモリ量)
なお,CPUの使用状況を調査する場合は,24項目目のRESERVEDCPUCLOCK (MHz)(予約CPUクロック数),および25項目目のRESERVEDNUMOFCPUCORE(予約CPUコア数)を使用してください。
<グラフの作成方法>
  1. 19項目目のHVHOSTNAME(仮想化ソフトウェアのホスト名)を,「ESXHOST」でフィルタリングして,VMwareを対象にしたデータを特定する。
  2. 26項目目のRESERVEDMEMORY (MB)(予約メモリ量)を,日付ごとに合計する。
    例えば,予約IDが3と4の項目は2011/05/01から2011/05/09の間で予約期間が重複するため,この期間の予約メモリは,3と4の値を日付ごとに合計してください。これで,VMwareのメモリの予約リソース量が算出されます。
  3. 19項目目のHVHOSTNAME(仮想化ソフトウェアのホスト名)を,「HYPERVHOST」でフィルタリングして,Hyper-Vを対象にしたデータを特定する。
  4. 手順2と同様に,26項目目のRESERVEDMEMORY (MB)(予約メモリ量)を,日付ごとに合計する。
    これで,Hyper-Vのメモリの予約リソース量が算出されます。
  5. 手順2と手順4で算出した仮想化ソフトウェアごとのメモリの予約リソース量を日付ごとにプロットして,表計算ソフトなどでグラフにしてください。
注※
HVHOSTNAME(仮想化ソフトウェアのホスト名)は,実際の環境に応じて指定してください。
●手順3で使用する,特定の仮想化ソフトウェアのメモリの総量と予約状況(割り当て状況)のグラフを作成する

jirminfolistコマンドを実行して出力される,各リソースのスペック情報を利用します。ここでは,リソースグループAのすべてのITリソースの構成情報を出力することとします。

<実行例>

jirminfolist -rg リソースグループA -f 出力先ファイル名 -d

<出力例>

DEVICE,TYPE,RESOURCENAME,HOSTNAME,...,CPUCLOCK(MHz),NUMOFCPUCORE,CPUSMT,CPUOCCUPATIONTYPE,MEMORY(MB),...
サーバ,仮想,VMSERVER1,VMHOST1,...,2133,2,無効,,2048,...
ドライブ情報,,VMSERVER1,,,,XX.XX.XX.67,,,,,,,,,,,...
ネットワーク情報,,VMSERVER1,,,,XX.XX.XX.67,,,,,,,,,,,...
                         ・
                         ・
                         ・
仮想化ソフトウェア,物理,ESXSERVER,ESXHOST,2129,16,有効,,16375,...
ドライブ情報,,ESXSERVER,,,,XX.XX.XX.67,,,,,,,,,,,...
ネットワーク情報,,ESXSERVER,,,,XX.XX.XX.67,,,,,,,,,,,...
                         ・
                         ・
                         ・
仮想化ソフトウェア,物理,HYPERVSERVER,HYPERVHOST,2129,16,有効,,32750,...
ドライブ情報,,SATOSERVER,,,,XX.XX.XX.101,,,,,,,,,,,...
                         ・
                         ・
                         ・

ここでは,次のデータを使用します。
  • 1項目目:DEVICE(デバイスカテゴリ)
  • 4項目目:HOSTNAME(ホスト名)
  • 29項目目:MEMORY(MB)(メモリ)
<グラフの作成方法>
1項目目のDEVICE(デバイスカテゴリ)が「仮想化ソフトウェア」で,かつ4項目目のHOSTNAME(ホスト名)が「ESXHOST」であるデータの29項目目のMEMORY(MB)(メモリ)の値をVMwareで使用できるメモリリソース量としてグラフを作成します。VMwareのメモリの予約リソース量は,手順2で作成したデータを使用してください。
注※
HOSTNAME(ホスト名)は,実際の環境に応じて指定してください。
参考
  • ここでは,リソースグループに対して仮想化ソフトウェアごとの予約状況の内訳を詳細化するアプローチを挙げました。さらに,リソースグループを共有している業務グループごとの予約状況の内訳を見ることによって,どの業務形態に用いられるリソースを,どのタイミングで投入すればよいかという分析もできます。
  • 手順1で作成したグラフをリソースグループごとに作成して,それぞれのリソースグループのトレンド線や近似線の傾きを比較することで,急速に需要が増えている,または減っているリソースグループを把握できます。これによって,需要が高いリソースの組み合わせや需要が伸びている業務形態などを分析できます。
  • ここでは,現時点までの予約状況を対象として説明しましたが,現時点で見積もられている予約もレポートとして出力し,同様の方法でグラフにできます。近い将来の予約の出力方法については,マニュアル「JP1/IT Resource Management - Manager リファレンス」のjirmreportコマンドの割り当て予約レポートについての説明を参照してください。