6.2.3 負荷が低い仮想化ソフトウェア上の仮想ホストをまとめ,仮想化ソフトウェアのリソースに空きを作る

jirmreportコマンドを利用して,リソース量の実績値を求めます。実績値を基に,負荷が低い仮想化ソフトウェアを特定し,その仮想化ソフトウェア上の仮想ホストを別の仮想化ソフトウェアにまとめることで,仮想化ソフトウェアに空きを作ります。

これには,次の利点があります。

<この項の構成>
(1) リソース使用量(時間推移)レポートを出力する
(2) 負荷が低い仮想化ソフトウェアを特定する(マイグレーション元仮想化ソフトウェアの特定)
(3) 特定した仮想化ソフトウェアに属する仮想ホストの一覧を表示する
(4) 負荷が低い仮想化ソフトウェアを特定する(マイグレーション先仮想化ソフトウェアの特定)
(5) 仮想ホストをマイグレーションする

(1) リソース使用量(時間推移)レポートを出力する

ここでは,すべてのリソースグループに属するITリソースの使用量を把握するため,リソース使用量(時間推移)レポートを出力します。

  1. jirmreportコマンドでリソース使用量(時間推移)レポートを出力する。
    <実行例>

    jirmreport -perfh -all rg -f 出力先ファイル名

    <出力例>
    DEVICETYPE,DETAILTYPE,RESOURCENAME,HVRESOURCENAME,METRIC,...,WARNINGTHRESHOLD,...,PERFVALUE,2011/01/01 01:30,...,2011/01/01 07:30,...
    HV,VMware,HV1,HV1,CPU使用量(GHz),...,9.00, ,...,5.00,...,4.00,...
    HV,VMware,HV2,HV2,CPU使用量(GHz),...,9.00, ,...,1.50,...,7.50,...
    HV,HVM,HV3,HV3,CPU使用量(GHz),...,8.00, ,...,3.50,...,4.76,...
    HV,Hyper-V,HV4,HV4,CPU使用量(GHz),...,8.00, ,...,2.00,...,4.52,...

    以降では,次のデータを使用します。
    • RESOURCETYPE(リソース名)
    • DETAILTYPE(詳細種別)
    • RESOURCENAME(リソース名)
    • METRIC(測定項目)
    • WARNINGTHRESHOLD(しきい値(警告))

(2) 負荷が低い仮想化ソフトウェアを特定する(マイグレーション元仮想化ソフトウェアの特定)

ここでは,リソース使用量(時間推移)レポートの出力結果から,負荷が低い仮想化ソフトウェアを特定します。

  1. DEVICETYPE(デバイス種別)を,仮想化ソフトウェアを表す「HV」でフィルタリングする。
  2. METRIC(測定項目)を,CPU使用量を表す「CPU使用量(GHz)」でフィルタリングする。
  3. PERFVALUEよりあとの値(データ取得日時の性能値)のうち,最も大きくなる値(ピーク値)を求める。
  4. 次の式でリソース容量の余力を算出する。
    • リソース容量の余力=WARNINGTHRESHOLD(しきい値(警告))-ピーク値(手順3で求めた値)
    ここで最も余力の値が大きい仮想化ソフトウェアが,負荷が低い仮想化ソフトウェアです。
     
    <出力例を基にしたここまでの操作結果>
    ここまでの手順を実行した結果を次に示します(一部抜粋)。
    DEVICETYPERESOURCENAMEDETAILTYPEMETRICWARNINGTHRESHOLD2011/01/01 01:30ピーク値リソース容量の余力
    HVHV1VMwareCPU使用量(GHz)9.005.005.004.00
    HVHV2VMwareCPU使用量(GHz)9.001.501.507.50
    HVHV3Hyper-VCPU使用量(GHz)8.003.503.504.50
    HVHV4HVMCPU使用量(GHz)8.002.005.003.00
    この出力例では,仮想化ソフトウェア(HV2)が最も負荷が低い仮想化ソフトウェア(マイグレーション元仮想化ソフトウェア)だと特定できます。

(3) 特定した仮想化ソフトウェアに属する仮想ホストの一覧を表示する

ここでは,リソース使用量(時間推移)レポートの出力結果から,特定した仮想化ソフトウェアに属する仮想ホストの一覧を表示します。

  1. HVRESOURCENAME(仮想化ソフトウェアのリソース名)を「(2) 負荷が低い仮想化ソフトウェアを特定する(マイグレーション元仮想化ソフトウェアの特定)」で特定した仮想化ソフトウェアでフィルタリングする。
    この例では,「HV2」でフィルタリングします。
    DEVICETYPEがフィルタリングされている場合,フィルタリングをあらかじめ解除しておいてください。
  2. リソース使用量(時間推移)レポートのMETRIC(測定項目)をCPU使用量を表す「CPU使用量(GHz)」でフィルタリングする。
     
    <出力例を基にしたここまでの操作結果>
    ここまでの手順を実行した結果を次に示します(一部抜粋)。
    DEVICETYPERESOURCENAMEHVRESOURCENAMEMETRICWARNINGTHRESHOLD2011/01/01 01:30
    HVHV2HV2CPU使用量(GHz)9.005.00
    VMVM3HV2CPU使用量(GHz)空白1.50
  3. リソース使用量(時間推移)レポートのDEVICETYPE(デバイス種別)を仮想ホストを表す「VM」でフィルタリングする。
    これで,「(2) 負荷が低い仮想化ソフトウェアを特定する(マイグレーション元仮想化ソフトウェアの特定)」で求めた仮想化ソフトウェアに属する仮想ホストの一覧が表示されます。
     
    <出力例を基にしたここまでの操作結果>
    ここまでの手順を実行した結果を次に示します(一部抜粋)。
    DEVICETYPERESOURCENAMEHVRESOURCENAMEMETRICWARNINGTHRESHOLD2011/01/01 01:30
    VMVM3HV2CPU使用量(GHz)空白1.50
    この出力例では,仮想ホスト(VM3)の情報が一覧として表示されます。

(4) 負荷が低い仮想化ソフトウェアを特定する(マイグレーション先仮想化ソフトウェアの特定)

ここでは,リソース使用量(時間推移)レポートの出力結果から,負荷が低い仮想化ソフトウェアを特定します。

  1. DETAILTYPE(詳細種別)を「(2) 負荷が低い仮想化ソフトウェアを特定する(マイグレーション元仮想化ソフトウェアの特定)」で特定した仮想化ソフトウェアの詳細種別でフィルタリングする。
    この例では,「VMware」でフィルタリングします。
  2. METRIC(測定項目)を,CPU使用量を表す「CPU使用量(GHz)」でフィルタリングする。
  3. DEVICETYPE(デバイス種別)を仮想化ソフトウェアを表す「HV」でフィルタリングする。
    <出力例を基にしたここまでの操作結果>
    ここまでの手順を実行した結果を次に示します(一部抜粋)。
    DEVICETYPERESOURCENAMEDETAILTYPEMETRICWARNINGTHRESHOLD2011/01/01 01:30
    HVHV1VMwareCPU使用量(GHz)9.007.12
    HVHV2VMwareCPU使用量(GHz)9.006.88
  4. (3) 特定した仮想化ソフトウェアに属する仮想ホストの一覧を表示する」で求めた仮想ホストのPERFVALUEよりあとの値(データ取得日時の性能値)のうち,最も大きくなる値(ピーク値)を求める。
    <出力例を基にしたここまでの操作結果>
    ここまでの手順を実行した結果を次に示します(一部抜粋)。
    DEVICETYPERESOURCENAMEHVRESOURCENAMEMETRICWARNINGTHRESHOLD2011/01/01 01:30ピーク値
    VMVM3HV2CPU使用量(GHz)9.001.501.50
  5. ピーク値と「(2) 負荷が低い仮想化ソフトウェアを特定する(マイグレーション元仮想化ソフトウェアの特定)」で特定した仮想化ソフトウェア以外の仮想化ソフトウェアのリソース容量の余力を比較し,リソース容量の余力の方が大きいことを確認する。
    (3) 特定した仮想化ソフトウェアに属する仮想ホストの一覧を表示する」で求めたすべての仮想ホストに対して,この手順を実施してください。
    ここで大きさに問題がない仮想化ソフトウェアが,マイグレーション先仮想化ソフトウェアとなります。条件を満たす仮想化ソフトウェアがない場合,仮想化ソフトウェアのリソースに空きを作れません。
    この例では,次の値を比較します。
    • 仮想ホスト(VM3)のCPU使用量のピーク値:1.50
    • 仮想化ソフトウェア(HV1)のCPUのリソース容量の余力:4.00
    仮想化ソフトウェア(HV1)のCPUのリソース容量の余力の方が仮想ホスト(VM3)のCPU使用量のピーク値より大きいことがわかります。
    参考
    マイグレーションの対象となる仮想ホストのjirminfolistコマンドの実行結果であるVMNUMOFCPUCORE(CPUコア数)がマイグレーション先仮想化ソフトウェアのCPUコア数より小さい必要があります。マイグレーション先仮想化ソフトウェアのCPUコア数が仮想ホストのCPUコア数未満の場合,「(2) 負荷が低い仮想化ソフトウェアを特定する(マイグレーション元仮想化ソフトウェアの特定)」の手順4に戻り,次の候補となる仮想化ソフトウェアを選出してください。
  6. jirminfolistコマンドでJP1/ITRMが管理するすべてのITリソースの構成情報を出力する。
    <実行例>

    jirminfolist -all -d -f 出力先ファイル名

    <出力例>

    ...,RESOURCENAME,...,VMNUMOFCPUCORE,VMMTREEPATH,...
    ...,HV1,...,6,Vcenter1/DC1/VMcluster1/HV1,...
    ...,VM3,...,2,...,...
    ...,HV2,...,6,Vcenter1/DC1/VMcluster2/HV2,...

    以降では,次のデータを使用します。
    • RESOURCENAME(リソース名)
    • VMNUMOFCPUCORE(CPUコア数)
    • VMMTREEPATH(仮想化構成ツリーパス)
  7. ホットマイグレーションする場合,「(2) 負荷が低い仮想化ソフトウェアを特定する(マイグレーション元仮想化ソフトウェアの特定)」で特定した仮想化ソフトウェアと手順5で特定した仮想化ソフトウェアをRESOURCENAME(リソース名)でフィルタリングする。
    コールドマイグレーションする場合は,この手順は必要ありません。「(5) 仮想ホストをマイグレーションする」の手順に進んでください。
    この例では,「HV1」と「HV2」でフィルタリングします。
  8. 手順7でフィルタリングした結果を比較する。
    次の項目を比較してください。
    • VMwareの場合
      VMMTREEPATH(仮想化構成ツリーパス)を比較し,マイグレーション元仮想化ソフトウェアとマイグレーション先仮想化ソフトウェアが同じデータセンターかどうか
    • SCVMMの場合
      VMMTREEPATH(仮想化構成ツリーパス)を比較し,マイグレーション元仮想化ソフトウェアとマイグレーション先仮想化ソフトウェアが同じVMクラスタかどうか
    同じ場合,手順5で特定した仮想化ソフトウェアがマイグレーション先仮想化ソフトウェアの候補となります。
    異なる場合,手順5でリストアップした仮想化ソフトウェアの中から,次の候補となる仮想化ソフトウェアを選出して,再度比較します。同じデータセンターまたはVMクラスタとなるまで繰り返して比較します。同じデータセンターまたはVMクラスタが存在しない場合,ホットマイグレーションできません。
    <出力例を基にしたここまでの操作結果>
    ここまでの手順を実行した結果,仮想化ソフトウェア(HV1)と仮想化ソフトウェア(HV2)は同じデータセンターの仮想化ソフトウェアであるということがわかります。
    この結果,仮想化ソフトウェア(HV1)が,負荷が低い仮想化ソフトウェア(マイグレーション先仮想化ソフトウェア)だと特定されます。

(5) 仮想ホストをマイグレーションする

ここでは,jirmvmmigrateコマンドを利用して,仮想ホストをマイグレーションします。

  1. (3) 特定した仮想化ソフトウェアに属する仮想ホストの一覧を表示する」で求めたすべての仮想ホストを「(4) 負荷が低い仮想化ソフトウェアを特定する(マイグレーション先仮想化ソフトウェアの特定)」で求めた仮想化ソフトウェアにマイグレーションする。
    この例では,仮想ホスト(VM3)を仮想化ソフトウェア(HV1)にマイグレーションします。
    • ホットマイグレーションの場合
      jirmvmmigrate -type hot -res VM3 -desthv Vcenter1/DC1/VMcluster2/HV1
    • コールドマイグレーションの場合
      jirmvmmigrate -type cold -res VM3 -desthv Vcenter1/DC1/VMcluster2/HV1 -i ネットワーク定義ファイル
    -desthvには,jirminfolistコマンドの実行結果であるVMMTREEPATHに表示される仮想化構成ツリーパスを指定します。
    jirmvmmigrateコマンドの詳細については,マニュアル「JP1/IT Resource Management - Manager リファレンス」を参照してください。