6.2.1 予約時と実績時のリソース量の値がかけ離れている仮想ホストの利用者に,予約の見直しを促す

jirmreportコマンドを利用して,仮想ホストごとの予約時と実績時のリソース量を比較します。比較した結果を基に,予約時と実績時のリソース量の値がかけ離れている仮想ホストおよび仮想ホストの業務グループを特定し,ITリソース利用者に適切な予約の見直しを促せます。

予約の見直しには,次の利点があります。

<この項の構成>
(1) 予約時と実績時のリソース量の値がかけ離れている仮想ホストを特定する
(2) 特定した仮想ホストを基に,ITリソースの構成情報の一覧から仮想ホストが属する業務グループを特定する

(1) 予約時と実績時のリソース量の値がかけ離れている仮想ホストを特定する

ここでは,すべてのリソースグループに属するITリソースの実績値を把握するためにリソース使用量(時間推移)レポートを出力し,予約時の値からかけ離れている仮想ホストを特定します。

  1. jirmreportコマンドでリソース使用量(時間推移)レポートを出力する。
    <実行例>

    jirmreport -perfh -all rg -f 出力先ファイル名

    <出力例>

    DEVICETYPE,...,RESOURCENAME,HVRESOURCENAME,METRIC,...,USABLEVALUE,PERFVALUE,2011/01/01 01:30,...,2011/01/01 07:30,...
    HV,...,HV1,HV1,CPU使用量(GHz),...,10.00, ,7.10,...,9.50,...
    VM,...,VM1,HV1,CPU使用量(GHz),...,3.00, ,2.93,...,3.00,...
    VM,...,VM2,HV1,CPU使用量(GHz),...,3.00, ,1.50,...,2.00,...
    VM,...,VM3,HV1,CPU使用量(GHz),...,3.70, ,2.80,...,3.50,...

    以降では,次のデータを使用します。
    • DEVICETYPE(デバイス種別)
    • METRIC(測定項目)
    • USABLEVALUE(使用可能値)
    • PERFVALUEよりあとの値(データ取得日時の性能値)
  2. DEVICETYPE(デバイス種別)を,仮想ホストを表す「VM」でフィルタリングする。
  3. METRIC(測定項目)を,CPU使用量を表す「CPU使用量(GHz)」でフィルタリングする。
     
    <出力例を基にしたここまでの操作結果>
    ここまでの手順を実行した結果を次に示します(一部抜粋)。
    DEVICETYPERESOURCENAMEHVRESOURCENAMEMETRICUSABLEVALUE2011/01/01 01:30
    VMVM1HV1CPU使用量(GHz)3.002.93
    VMVM2HV1CPU使用量(GHz)3.001.50
    VMVM3HV1CPU使用量(GHz)3.702.80
  4. どの仮想ホストを特定したいかによって,実績の平均値やピーク値などを算出する。
    特定したい仮想ホストによって,算出方法が異なります。
    <予約時の値ではリソース不足に陥ってしまう仮想ホストを特定したい場合>
    次の式で各仮想ホストのCPU使用量の平均値およびCPUの平均使用率を算出します。
    ・各仮想ホストのCPU使用量の平均値=PERFVALUEよりあとの値(データ取得日時の性能値)のデータの合計値/PERFVALUEよりあとの値(データ取得日時の性能値)のデータの個数
    ・各仮想ホストのCPUの平均使用率=CPU使用量の平均値/USABLEVALUE(使用可能値)×100
     
    <出力例を基にしたここまでの操作結果>
    ここまでの手順を実行した結果を次に示します(一部抜粋)。
    DEVICETYPERESOURCENAMEHVRESOURCENAMEMETRICUSABLEVALUE2011/01/01 01:30CPU使用量の平均値CPUの平均使用率
    VMVM1HV1CPU使用量(GHz)3.002.932.9598%
    VMVM2HV1CPU使用量(GHz)3.001.502.0067%
    VMVM3HV1CPU使用量(GHz)3.702.803.0081%
    この表から仮想ホスト(VM1)の平均CPU使用率が98%あり,頻繁にCPU使用率が100%に達していると考えられます。仮想ホスト(VM1)に割り当てているCPUが,実際に使用しているCPUより低く設定されていることが原因です。
    <予約時の値ではリソースが余ってしまう仮想ホストを特定したい場合>
    ここでは,USABLEVALUE(使用可能値)の80%の値よりも,ピーク値の方が小さいリソースがある仮想ホストを,予約時の値ではリソースが余ってしまう仮想ホストとします。
    割合をどの程度にするかは,ユーザーの環境に応じて設定してください。USABLEVALUE(使用可能値)の80%の値をユーザー設定値として,次の手順で仮想ホストを特定します。
    1. 次の式で各仮想ホストのCPU使用量のユーザー設定値を算出する。
    ・CPU使用量のユーザー設定値=USABLEVALUE(使用可能値)×ユーザーが設定した割合
    <計算例(ユーザーが設定した割合を80%とした場合,0.8をかける)>

    3.00×0.8・・・2.4
    3.00×0.8・・・2.4
    3.70×0.8・・・2.96

    2. PERFVALUEよりあとの値(データ取得日時の性能値)のうち,最も大きくなる値(ピーク値)を求める。
    3. ピーク値とユーザー設定値を比較し,ピーク値の方がユーザー設定値より小さいものを求める。
     
    <出力例を基にしたここまでの操作結果>
    ここまでの手順を実行した結果を次に示します(一部抜粋)。
    DEVICETYPERESOURCENAMEHVRESOURCENAMEMETRICUSABLEVALUE2011/01/01 01:30ピーク値CPU使用量のユーザー設定値比較
    VMVM1HV1CPU使用量(GHz)3.002.933.002.40×
    VMVM2HV1CPU使用量(GHz)3.001.502.002.40
    VMVM3HV1CPU使用量(GHz)3.702.803.502.96×
    (凡例)
    ○:ユーザー設定値よりピーク値の方が小さい。
    ×:ユーザー設定値よりピーク値の方が大きい。

     
    この表から仮想ホスト(VM2)のピーク値が,ユーザー設定値より小さいことがわかります。仮想ホスト(VM2)に割り当てているCPUの量が,実際に使用しているCPUの量より高く設定されていることが原因です。
    ここで特定した仮想ホストが実績時のリソース量の値からかけ離れている仮想ホストです。

(2) 特定した仮想ホストを基に,ITリソースの構成情報の一覧から仮想ホストが属する業務グループを特定する

(1) 予約時と実績時のリソース量の値がかけ離れている仮想ホストを特定する」で特定した仮想ホストの割り当て量を変更してもらうように,ITリソース管理者はITリソース利用者に連絡する必要があります。そのため,仮想ホストがどの業務グループに割り当たっているか,調査する必要があります。

ここでは,JP1/ITRMが管理するすべてのITリソースの構成情報を出力し,業務グループと仮想ホストの対応を求めます。

  1. jirminfolistコマンドでITリソースの構成情報を出力する。
    <実行例>

    jirminfolist -all -d -f 出力先ファイル名

    <出力例>

    ...,RESOURCENAME,...,BUSINESSGROUP,...
    ...,HV1,..., ,...
    ...,VM1,...,BG1,...
    ...,VM2,...,BG2,...
    ...,VM3,...,BG3,...
    :
    :

    以降では,次のデータを使用します。
    • RESOURCENAME(リソース名)
    • BUSINESSGROUP(業務グループ)
  2. (1) 予約時と実績時のリソース量の値がかけ離れている仮想ホストを特定する」で求めた仮想ホストを,RESOURCENAME(リソース名)から探す。
  3. 求めた仮想ホストがある行とBUSINESSGROUP(業務グループ)が交わる個所を確認する。
    ここで交わった個所が,仮想ホストが所属する業務グループです。
    ITリソース管理者は,ITリソース利用者の連絡先を業務グループに対する予約履歴などから特定し,求めた仮想ホストの予約見直しを要求できます。
     
    <出力例を基にしたここまでの操作結果>
    この出力例の結果から,特定した仮想ホスト(VM1)は業務グループ(BG1)に,仮想ホスト(VM2)は業務グループ(BG2)に所属していると判明します。