8.1.2 クラスタ運用の前提条件

JP1/ITRMは,クラスタシステムでは論理ホスト環境で動作し,フェールオーバーに対応します。論理ホスト環境で実行する場合のJP1/ITRMの前提条件は,共有ディスクや論理IPアドレスの割り当て,削除,および動作監視が,WSFCによって正常に制御されていることです。

注意事項
JP1/ITRMに対応しているWSFCの場合でも,システム構成や環境設定によって,ここで説明する前提条件に満たないことがあります。前提条件を満たすようにシステム構成や環境設定を検討してください。
<この項の構成>
(1) 論理ホスト環境の前提条件
(2) 物理ホスト環境の前提条件
(3) JP1/ITRMがサポートする範囲

(1) 論理ホスト環境の前提条件

JP1/ITRMを論理ホスト環境で実行する場合,共有ディスクと論理IPアドレスについて,次の表に示す前提条件があります。

表8-1 論理ホスト環境の前提条件

論理ホストの構成要素前提条件
共有ディスク
  • 実行系サーバから待機系サーバへ引き継げる共有ディスクが使用できること。
  • JP1/ITRMの起動前に,共有ディスクが割り当てられること。
  • JP1/ITRMの実行中に,共有ディスクの割り当てが解除されないこと。
  • JP1/ITRMの停止後に,共有ディスクの割り当てが解除されること。
  • 共有ディスクが,不当に複数のノードから使用されないよう制御されていること。
  • システムダウンなどでファイルが消えないように,ジャーナル機能を持つファイルシステムなどでファイルを保護すること。
  • フェールオーバーしても,ファイルに書き込んだ内容が保証されて引き継がれること。
  • フェールオーバー時に共有ディスクを使用中のプロセスがあっても,強制的にフェールオーバーできること。
  • 共有ディスクの障害を検知した場合の回復処置は,WSFCが制御し,回復処置をJP1/ITRMが意識する必要がないこと。また,回復処置の延長でJP1/ITRMの起動や停止が必要なときは,WSFCからJP1/ITRMに起動や停止の実行を要求すること。
論理IPアドレス
  • 引き継げる論理IPアドレスを使って通信できること。
  • 論理ホスト名から論理IPアドレスが一意に求められること。
  • JP1/ITRMの起動前に,論理IPアドレスが割り当てられること。
  • JP1/ITRMの実行中に,論理IPアドレスが削除されないこと。
  • JP1/ITRMの実行中に,論理ホスト名と論理IPアドレスの対応が変更されないこと。
  • JP1/ITRMの停止後に,論理IPアドレスが削除されること。
  • ネットワーク障害を検知した場合の回復処置は,WSFCが制御し,JP1/ITRMが回復処理を意識する必要がないこと。また,回復処置の延長でJP1/ITRMの起動や停止が必要なときは,WSFCからJP1/ITRMに起動や停止の実行要求をすること。

この前提条件を満たしていない場合,JP1/ITRMの動作に問題が起きることがあります。例えば,次に示す問題などが発生します。

(2) 物理ホスト環境の前提条件

JP1/ITRMを論理ホストで運用するクラスタシステムでは,各サーバの物理ホスト環境が,次の表に示す前提条件を満たしている必要があります。

表8-2 物理ホスト環境の前提条件

物理ホストの構成要素前提条件
サーバ本体
  • 2台のサーバ機によるクラスタ構成になっていること。
  • 実行する処理に対応したCPU性能があること。
    例えば,論理ホストを多重起動する場合,対応できるCPU性能がある。
  • 実行する処理に対応した実メモリ容量があること。
    例えば,論理ホストを多重起動する場合,対応できる実メモリ容量がある。
ディスクシステムダウンなどでファイルが消えないように,ジャーナル機能を持つファイルシステムなどでファイルを保護すること。
ネットワーク
  • 物理ホスト名(hostnameコマンドの結果)に対応するIPアドレスで通信できること(WSFCによって通信できない状態に変更されないこと)。
  • JP1/ITRMの動作中に,ホスト名とIPアドレスの対応が変更されないこと(WSFCやネームサーバなどによって変更されないこと)。
  • ホスト名に対応したLANボードが,ネットワークのバインド設定で最優先になっていること(ハートビート用などほかのLANボードが優先になっていないこと)。
OS,WSFC
  • JP1/ITRMおよびWSFCが前提とするパッチやサービスパックが適用済みであること。
  • フェールオーバーしても同じ処理ができるように各サーバの環境が適切に設定されていること。

(3) JP1/ITRMがサポートする範囲

クラスタシステムで論理ホストのJP1/ITRMを運用する場合,JP1/ITRMが制御する範囲は,JP1/ITRM自身の動作だけです。論理ホスト環境(共有ディスクおよび論理IPアドレス)の制御,およびJP1/ITRMの起動や停止の契機は,WSFCの制御に依存します。

前述の論理ホスト環境および物理ホスト環境の前提条件が満たされていないときや,論理ホスト環境の制御に問題があるときは,JP1/ITRMの動作に発生した問題であっても,サポートの対象外となります。このときは,論理ホスト環境を制御しているWSFCやOSで問題を対処してください。