6.2.10 ネットワークデバイスの設定

ここでは,ネットワークデバイスを管理対象とする場合の設定について説明します。JP1/ITRMで管理できるネットワークデバイスの種類は,IPスイッチおよびFCスイッチの2つです。

<この項の構成>
(1) IPスイッチの設定
(2) FCスイッチの設定

(1) IPスイッチの設定

IPスイッチを管理対象にする場合の設定について説明します。

(a) IPスイッチを使用する場合のリソース管理サーバの設定

トラップ受信機能を使用する場合,トラップ待ち受けで使用するポート(デフォルトは162)をほかのプログラムで使用しないよう設定してください。

トラップ待ち受けで使用するポートは,ユーザー設定プロパティファイル(jp1itrm.properties)の「AD.SnmpController.receiveTrapPort」で変更できます。

注意事項
SNMPトラップを用いて状態監視をする他製品とJP1/ITRMを同じサーバにインストールした環境では,トラップ待ち受けで使用するポートが競合するおそれがあります。送信先ポートを1つだけ設定できるIPスイッチを使用している場合は,どちらか一方の製品でだけトラップ受信をするように,ポート番号の競合を回避してください。
なお,送信先ポートを1つだけ設定できるIPスイッチを使用して,他製品でSNMPトラップを受信する場合は,JP1/ITRMのトラップ待ち受けで使用するポートを変更してください。ポートの変更によって,JP1/ITRMではトラップ受信を契機とした状態監視ができなくなりますが,SNMPリクエストおよびSNMPレスポンスを用いて,構成情報の収集と定期的な状態監視は続行できます。
(b) 管理対象とするIPスイッチの設定

JP1/ITRMでは,次の表に示す条件をすべて満たすIPスイッチを管理対象とします。

表6-18 管理対象とするIPスイッチの条件

条件説明
SNMPv1SNMPのバージョン1を実装して,SNMPが動作状態であることを示します。
MIB-IIRFC1213で定義されるsystem,interfacesなどのMIB情報を実装して,JP1/ITRMで設定するコミュニティにRead権限があることを示します。
Bridge MIBRFC1493で定義されるMIB情報を実装して,JP1/ITRMで設定するコミュニティにRead権限があることを示します。
ポート数3以上ifTypeがethernet-csmacd(6),iso88023-csmacd(7),propVirtual(53)のどれかであるifEntryの数が3つ以上あることを示します。

これらの条件を満たせば,IPスイッチ以外のITリソースもIPスイッチと判定され,管理対象となります。

また,トラップ受信機能を使用する場合,次に示す条件を満たすように設定してください。

(c) ノードの接続情報

IPスイッチを管理対象とする場合,次のノード情報が必要です。

(2) FCスイッチの設定

FCスイッチを管理対象にする場合の設定について説明します。

(a) 対応するSMI-Sのバージョンおよび機能

SMI-Sのバージョンおよび使用する機能について,次の表に示します。

表6-19 SMI-Sのバージョンおよび使用する機能

項目説明
SMI-Sのバージョン1.0以降
使用する機能
オブジェクト操作機能
CIMデータモデルを操作したり,参照したりする機能です。
(b) 管理対象にするためのネットワーク構成

FCスイッチを管理対象にするためのネットワーク構成について,次の図に示します。

図6-3 FCスイッチを管理対象にするためのネットワーク構成

[図データ]

SMI-Sは,CIMサーバおよびCIMクライアントで構成されます。JP1/ITRMはCIMクライアントとなり,クライアントAPIを利用して,CIMサーバからノードの情報を取得します。このため,事前にCIMサーバの環境構築が必要になります。

それぞれのFCスイッチに必要な設定について説明します。
Embeddedモデル
CIMサーバそのものが標準で組み込まれているFCスイッチです。SMI-Sインターフェースのプログラムが組み込まれているため,ハードウェアから直接情報を取得できます。
ベンダ専用のAPIを利用して,CIMサーバの起動および接続方法(HTTP,HTTPSのどちらで接続するかなど)を設定してください。
Proxyモデルに該当するFCスイッチ
SMI-SプロバイダーをインストールしたCIMサーバで管理することで,情報を取得できるFCスイッチです。SMI-Sプロバイダーは,SMI-Sに対応した機器のベンダが提供します。
Proxyモデルでは,複数のノードを管理できるCIMOMおよび単一のノードを管理できるAgentと呼ばれる2種類の構成があります。これらの区別は特になく,SMI-Sプロバイダーと呼ばれています。
それぞれのベンダは,SMI-S対応機種のSMI-Sプロバイダーおよびインストール手順を用意しています。ベンダのホームページを参照したり,直接ベンダに問い合わせたりして,SMI-Sプロバイダーの入手,インストール,および設定を実施してください。
Brocade FCスイッチを管理する場合
SMI-Sプロバイダーの設定を次の手順に従って実施します。詳細については,Brocade SMI Agentのドキュメントを参照してください。
  1. BrocadeのWebサイトからBrocade SMI Agentをダウンロードする。
  2. Brocade SMI Agentを任意のサーバにインストールする。
  3. Brocade SMI Agent に,FCスイッチを登録する。
  4. Proxyの設定画面でIPアドレス,ユーザーID,およびFCスイッチのパスワードを登録する。
注意事項
SMI-Sで接続するTCPポート番号は,デフォルトで5988または5989が設定されています。同じホスト上に別々のノードを管理するSMI-Sプロバイダーをインストールする場合,一方のSMI-Sプロバイダーはデフォルトのポート番号で問題ありませんが,もう一方のSMI-Sプロバイダーはほかのポート番号を指定する必要があります。
(c) ノードの接続情報

FCスイッチを管理対象とする場合に必要なノード接続情報を指定します。指定する内容について,次の表に示します。なお,ノード接続情報で接続するノードは,FCスイッチのノードそのもの,またはFCスイッチを管理するCIMサーバをまとめてCIMサーバと定義しています。

表6-20 FCスイッチを管理対象にする場合に必要なノード接続情報

必要な情報説明指定の要否
IPアドレスCIMサーバに接続するIPアドレス(IPv4)を指定します。
例えば,BrocadeのFCスイッチを管理する場合は,Brocade SMI AgentがインストールされているサーバのIPアドレスを指定します。
ネームスペースCIMサーバに接続するために必要なネームスペースを指定します。ネームスペースとは,CIMクラスおよびインスタンス(オブジェクト)を分類するユニットです。
同じ名前のCIMクラスが,異なるネームスペースにある場合,それぞれ別のCIMクラスとして管理されます。ベンダおよびモデルから,適切なネームスペースを指定してください。
ネームスペースは,SMI-Sプロバイダーを入手したときに同梱されているドキュメントに記載されているものを指定してください。
例えば,BrocadeのFCスイッチを管理する場合は,固定で「root/brocade1」を指定します。
SSL有無CIMサーバとの接続方法をtrueまたはfalseで指定します。
  • trueを指定した場合
    SSL通信となります。接続形式を次に示します。
    https://IPアドレス/ネームスペース:ポート番号
  • falseを指定した場合
    非SSL通信となります。接続形式を次に示します。
    http://IPアドレス/ネームスペース:ポート番号
ポート番号CIMサーバがCIMクライアントを待ち受けるときのTCPポート番号を指定します。
省略した場合,SSL有無で指定した内容に応じて,次に示すデフォルトのTCPポート番号を使用します。
  • trueを指定した場合
    5989
  • falseを指定した場合
    5988
ユーザーIDCIMサーバに接続するためのアカウントを指定します。
アカウントには,FCスイッチの管理API,またはSMI-Sプロバイダーで設定したユーザーIDが該当します。
パスワードユーザーIDを指定した場合に指定します。
(凡例)
○:必ず指定する。
△:必要に応じて指定する。
注※
SMI-Sプロバイダーによっては,アカウントが不要になるため,省略できる場合があります。