2.8.8 JP1/ITRMと仮想化ソフトウェアでのスペック値の計算方法

ここでは,JP1/ITRMおよび仮想化ソフトウェアがそれぞれ管理する仮想ホストのCPUおよびメモリの性能を,相互にどのように計算して扱うかについて説明します。構築する仮想ホストの性能を事前に計算する場合などの参考にしてください。

<この項の構成>
(1) 仮想化ソフトウェアが管理するスペック値の扱い
(2) JP1/ITRMが管理するスペック値の扱い

(1) 仮想化ソフトウェアが管理するスペック値の扱い

JP1/ITRMで構築した仮想ホストについて,仮想化ソフトウェアが管理するスペック値について説明します。

(a) CPUの性能

表2-25 仮想化ソフトウェアが管理する仮想ホストのCPUの性能

仮想化ソフトウェアJP1/ITRMで設定した割り当て種別仮想化ソフトウェアへ設定する仮想ホストのCPUの性能
設定項目設定値および計算方法
VMware占有シェア仮想CPU数※1×仮想CPUのクロック数※2
予約仮想CPU数※1×仮想CPUのクロック数※2
制限(上限)仮想CPU数※1×仮想CPUのクロック数※2
共有シェア仮想CPU数※1×仮想CPUのクロック数※2÷1コア当たりの物理CPUのクロック数×2,000
予約0
制限(上限)制限なし※3
Hyper-V占有重み仮想CPUのクロック数※2÷1コア当たりの物理CPUのクロック数×100
予約仮想CPUのクロック数※2÷1コア当たりの物理CPUのクロック数×100
限度(上限)仮想CPUのクロック数※2÷1コア当たりの物理CPUのクロック数×100
共有重み仮想CPUのクロック数※2÷1コア当たりの物理CPUのクロック数×200
予約0
限度(上限)100※3
HVM占有サービス率
プロセッサキャッピング(上限)
共有サービス率仮想CPUのクロック数※2÷1コア当たりの物理CPUのクロック数×200
プロセッサキャッピング(上限)No※3
(凡例)
-:該当しない。
注※1
JP1/ITRMで設定した仮想ホストのCPU数を示します。
注※2
JP1/ITRMで設定した仮想ホストのCPUのクロック数(メガヘルツ)を示します。
注※3
JP1/ITRMで仮想ホストのCPUの割り当て種別を共有に設定すると,CPUの性能上限値には,上限なしまたは最大値が設定されます。上限値の設定を変更する場合は,JP1/ITRMで仮想ホストの設定を変更したあと,仮想化ソフトウェアでも仮想ホストの設定を変更してください。

仮想マルチコアCPUの扱い
JP1/ITRMから仮想CPU数を設定した場合,仮想ホストに割り当てられる仮想ソケット数とソケット当たりのコア数は,仮想化ソフトウェアごとに異なります。仮想ホストに割り当てられるCPUの仮想ソケット数とソケット当たりのコア数を次に示します。

表2-26 仮想ホストに割り当てられるCPUの仮想ソケット数とソケット当たりのコア数

仮想化ソフトウェア仮想ソケット数ソケット当たりのコア数
VMware指定した仮想CPU数1
Hyper-V1指定した仮想CPU数
HVM
(b) メモリの性能

表2-27 仮想化ソフトウェアが管理する仮想ホストのメモリの性能

仮想化ソフトウェア仮想化ソフトウェアへ設定する仮想ホストのメモリの性能
VMwareメモリサイズJP1/ITRMで設定したメモリサイズが適用されます。
予約0
制限(上限)制限なし
Hyper-Vダイナミックメモリの有効・無効および操作(デプロイまたは設定変更)によって,Hyper-Vが管理するメモリ性能が異なります。
Hyper-Vが管理するメモリ性能については,表2-28を参照してください。
HVMメモリサイズJP1/ITRMで設定したメモリサイズが適用されます。
(凡例)
-:指定できない。

表2-28 Hyper-Vが管理する仮想ホストのメモリ性能

前提条件ダイナミックメモリの有効・無効Hyper-Vが管理する仮想ホストのメモリの性能
(メモリサイズ,スタートアップRAM※2,最大RAM※3,メモリ優先度,メモリバッファ)
ダイナミックメモリの対応状況仮想ホストのダイナミックメモリの設定※1操作
SCVMMまたはHyper-Vが非対応無効
  • デプロイ
  • 設定変更
無効
メモリサイズ
JP1/ITRMで設定したメモリサイズ(予約,上限は設定できない)
スタートアップRAM,最大RAM,メモリ優先度,メモリバッファ
該当しない
有効デプロイ
メモリサイズ
JP1/ITRMで設定したメモリサイズ
スタートアップRAM,最大RAM,メモリ優先度,メモリバッファ
該当しない
設定変更有効
メモリサイズ
該当しない
スタートアップRAM,最大RAM
JP1/ITRMで設定したメモリサイズ※4
メモリ優先度,メモリバッファ
変更しない
SCVMMおよびHyper-Vが対応無効
  • デプロイ
  • 設定変更
無効
メモリサイズ
JP1/ITRMで設定したメモリサイズ(予約,上限は設定できない)
スタートアップRAM,最大RAM,メモリ優先度,メモリバッファ
該当しない
有効デプロイ有効
メモリサイズ
該当しない
スタートアップRAM
JP1/ITRMで設定したメモリサイズ※4
最大RAM※5,メモリ優先度,メモリバッファ
テンプレートの設定値
設定変更
メモリサイズ
該当しない
スタートアップRAM
JP1/ITRMで設定したメモリサイズ※4
最大RAM※5,メモリ優先度,メモリバッファ
変更しない※6
注※1
デプロイの場合は,仮想イメージテンプレートにする仮想ホストのダイナミックメモリの設定になります。
注※2
JP1/IITRMでは,VMwareのメモリサイズおよび予約に対応づけます。
注※3
JP1/IITRMでは,VMwareの限度(上限)に対応づけます。
注※4
メモリサイズの項目には,起動できる最低限のメモリサイズではなく,仮想ホスト内で動作するアプリケーションも含めて,システムを運用するのに十分なメモリ容量を指定してください。
注※5
JP1/ITRMで設定したメモリサイズが最大RAM以上の値だった場合,最大RAMをスタートアップRAMと同じ値に変更します。また,AdapterMessage.logにメッセージKNAR55498-Iを出力します。なお,JP1/ITRMの画面上からは,最大RAMを変更できません。最大RAMの設定を元に戻したい場合は,SCVMMの管理コンソールから設定してください。Hyper-Vからは設定を変更しないでください。
注※6
JP1/ITRM以外の操作で最大RAM,メモリ優先度,またはメモリバッファを設定していた場合,JP1/ITRMから仮想ホストの設定変更でメモリサイズを変更してもこれらの値は変更されません。

(2) JP1/ITRMが管理するスペック値の扱い

すでに仮想化ソフトウェアで構築されている仮想ホストについて,JP1/ITRMが管理するスペック値について説明します。

(a) CPUの性能

表2-29 JP1/ITRMが管理する仮想ホストのCPUの性能

仮想化ソフトウェア仮想化ソフトウェアで設定された仮想ホストのCPUの性能JP1/ITRMが管理する仮想ホストのCPUの性能の扱い
割り当て種別仮想ホストのCPU当たりのクロック数(メガヘルツ)
VMware予約=0以外占有予約(メガヘルツ)÷仮想CPU数
予約=0
制限=「制限なし」を指定しない
共有制限(メガヘルツ)÷仮想CPU数
予約=0
制限=「制限なし」を指定する
共有min(シェア÷(2,000×仮想CPU数),1)×1コア当たりの物理CPUのクロック数
Hyper-V予約=0以外占有予約×1コア当たりの物理CPUのクロック数÷100
予約=0
限度=100以外
共有限度×1コア当たりの物理CPUのクロック数÷100
予約=0
限度=100
共有min(重み÷200,1)×1コア当たりの物理CPUのクロック数
HVM占有占有1コア当たりの物理CPUのクロック数と同じ
共有
プロセッサキャッピング=YesまたはNo
共有min(サービス率÷200,1)×1コア当たりの物理CPUのクロック数
仮想マルチコアCPUの扱い
JP1/ITRMから仮想ホストを参照した場合のCPU数は,該当の仮想ホスト全体のコア数になります。仮想ホスト全体のコア数は,次のように求めます。
仮想ホスト全体のコア数仮想ソケット数×ソケット当たりのコア数
仮想ソケット数およびソケット当たりのコア数は,仮想化ソフトウェアごとに,次のように割り当てられます。

表2-30 仮想化ソフトウェアごとの仮想ソケット数およびソケット当たりのコア数の割り当て

仮想化ソフトウェア仮想ソケット数ソケット当たりのコア数
VMware(バージョン4.0以前)仮想プロセッサ数1
VMware(バージョン4.1以降)仮想ソケット数ソケット当たりのコア数
Hyper-V1CPU数
HVM
(b) メモリの性能

表2-31 JP1/ITRMが管理するメモリの性能

仮想化ソフトウェア仮想化ソフトウェアで設定された仮想ホストのメモリの性能JP1/ITRMで仮想化ソフトウェアから取得するメモリ量(メガバイト)
VMware予約=0以外仮想ホストのメモリサイズ
予約=0
制限=「制限なし」を指定しない
仮想ホストのメモリサイズ
予約=0
制限=「制限なし」を指定する
仮想ホストのメモリサイズ
Hyper-V仮想ホストのダイナミックメモリが無効になっている場合仮想ホストのメモリサイズ
仮想ホストのダイナミックメモリが有効になっている場合仮想ホストのスタートアップRAM
HVMLPARのメモリサイズ
(凡例)
-:該当しない。