2.2.1 JP1/AJS3 for EAP(ジョブ制御)の動作環境を設定する

JP1/AJS3 for EAP(ジョブ制御)の動作環境は,ジョブ制御用の環境設定ファイルを編集することで変更できます。

ジョブ制御用の環境設定ファイル(confファイル)は,以下に示すパスにあります。インストール時に環境設定ファイルが存在しなかった場合は,同じディレクトリ下にあるモデルファイルと同じものが,環境設定ファイルとしてインストール時に自動的に作成されます。

インストール時に作成される環境設定ファイルの基になるモデルファイルの内容を次の図に示します。

OSがWindowsで,ファイルシステムにNTFS形式を使用している場合,環境設定ファイルの情報の改ざんを防ぐために,環境設定ファイルに対して,Administrators権限を持つ管理者だけが環境設定ファイルを編集できるようなアクセス権を設定しておくことをお勧めします。

なお,環境設定ファイルを再編集する場合は,JP1/AJS3 for EAPのコマンドが実行されていないことを確認してください。

環境設定ファイルでの文法は,次のとおりです。

[section]
key=string

次の場合,JP1/AJS3 for EAPは項目のデフォルトを使用して動作します。

次に,環境設定ファイルに指定できるkeyをセクションごとに説明します。

トレースセクションでは,トレースレベル,トレースファイルサイズ,およびトレース情報を格納するトレースファイル名を指定します。

traceに指定できるkeyを次の表に示します。

表2-1 traceに指定できるkey

keystringに指定できる値説明
Level
0
採取しない
1
標準レベル
2
詳細レベル
3
デバッグレベル
トレースレベルを指定します。
このkeyの指定を省略した場合のトレースレベルは,「1」です。
各トレースレベルでの1コマンド当たりのトレース量は,次のとおりです。
  • ジョブの終了監視をする場合
    1(標準レベル):2.0 KB
    2(詳細レベル):3.8 KB +(ジョブ実行時間/終了監視間隔)×0.2 KB
    3(デバッグレベル):32.0 KB +(ジョブ実行時間/終了監視間隔)×0.8 KB
  • ジョブの終了監視をしない場合
    1(標準レベル):2.0 KB
    2(詳細レベル):3.8 KB
    3(デバッグレベル):32.0 KB
通常は,「標準レベル」を指定してください。トラブルが発生した場合にだけ,「詳細レベル」または「デバッグレベル」を指定します。なお,「採取しない」を指定すると,JP1/AJS3 for EAPの使用時の情報を採取できないので注意してください。
Size0,または1~65,535(単位:キロバイト)トレースファイルのサイズを指定します。
0を指定した場合,トレースファイルのサイズは,2ギガバイトになります。
このkeyの指定を省略した場合,トレースファイルのサイズは,12,288キロバイト※1になります。
なお,トレースファイルのサイズを小さくする場合には,作成されているトレースファイルを削除してから変更してください。
TargetDirWindowsの場合:
"(ドライブ名):¥"で始まる文字列,またはUNC形式で表されるリモート資源名2
UNIX系OSの場合:
"/"で始まる文字列
トレース情報を格納するトレースファイル名のディレクトリを指定します。このkeyの指定を省略した場合は,トレースファイルが標準で格納されるディレクトリ※3に,アプリケーション単位のトレースファイルが作成されます。
注意
TargetFileを指定した場合は,このkeyの指定は無視されます。
TargetFileWindowsの場合:
"(ドライブ名):¥"で始まる文字列,またはUNC形式で表されるリモート資源名2
UNIX系OSの場合:
"/"で始まる文字列
指定したファイルに,すべてのアプリケーションのトレース情報を取得します。
注意
このkeyを指定した場合は,TargetDirの指定は無視されます。

注※1 トレースファイルサイズを12,288キロバイトに設定した場合,トレースレベル1(デフォルト)で100件/時間のジョブを実行したときに,少なくとも2日間分のトレースデータを記録できます。

注※2 UNC形式で表されるリモート資源名とは,Microsoft社が提供しているネットワーク上のフォルダおよびファイル名を指定する,「¥¥コンピュータ名¥共有名」を指しています。

注※3 トレースファイルが標準で格納されるディレクトリについては,「付録A ディレクトリ名一覧」を参照してください。


Windowsの場合,eventイベントセクション)では,Windowsのアプリケーションログで使用されるイベントを生成するかどうかを指定します。

UNIX系OSの場合,event(イベントセクション)では,syslogメッセージを生成するかどうかを指定します。eventに指定できるkeyを次の表に示します。

表2-2 eventに指定できるkey

Keystringに指定できる値説明
nteventYESまたはNOWindowsの場合に指定できます。Windowsのイベントを生成するかどうかを指定します。
このkeyの指定を省略した場合のイベント生成条件は,「YES」です。
SyslogYESまたはNOUNIX系OSの場合に指定できます。syslogメッセージを生成するかどうかを指定します。
このkeyの指定を省略した場合,syslogメッセージの生成条件は,「YES」です。

commandコマンドセクション)では,JP1/AJS3 for EAPの作業ディレクトリ,ジョブの終了監視時間間隔,指定したR/3オブジェクトの妥当性をチェックするかどうか,通信エラーが発生したときの接続回復を試みる時間・時間間隔,およびR/3ジョブログを標準エラー出力ファイルにも出力するかどうかを指定します。また,接続先のUnicode版 SAPシステムで,文字コードの変換時に使用するコードページ番号も指定します。commandに指定できるkeyを次の表に示します。

表2-3 commandに指定できるkey

Keystringに指定できる値説明
WorkDirWindowsの場合:
"(ドライブ名):¥"で始まる文字列,またはUNC形式で表されるリモート資源名
UNIX系OSの場合:
"/"で始まる文字列
コマンドの作業ディレクトリを絶対パスで指定します。コマンドを実行するときに,この作業ディレクトリが設定されます。
なお,このkeyの指定を省略した場合,各コマンドの実行時のカレントディレクトリが使用されます(JP1/AJSを使用した場合は,JP1/AJSのジョブ実行時のワークパス※1が使用されます)。
MonitorInterval1~65,535(単位:秒)ジョブの終了監視時間間隔を指定します。この値は,JP1/AJS3 for EAPのjr3bjsubまたはjr3bjrelのコマンドラインでジョブの終了監視時間間隔の指定を省略した場合に使用されます。
このkeyの指定を省略した場合のジョブの終了監視時間間隔は,5秒です。
CheckLevel
0
指定値の妥当性をR/3システムに問い合わせない
1
ジョブを登録する前に,指定値の妥当性として次の項目をR/3システムに問い合わせる※2
・指定したABAPプログラムの有無
・指定したABAPプログラムに対するバリアントの必要性
・指定したバリアントの有無
2
ジョブを登録する前に,指定値の妥当性として次の項目をR/3システムに問い合わせる※2
・指定したABAPプログラムの有無
・指定したバリアントの有無
ジョブの登録時(jr3bjsubコマンドの実行時)に,ジョブステップ情報に指定したR/3オブジェクト(ABAPプログラム,バリアント)の妥当性をR/3システムに問い合わせるかどうかのレベルを指定します。
このkeyの指定を省略した場合のレベルは,2です。
RetryTime0~65,535(単位:分)R/3システムとの通信中に通信エラーが発生したとき,R/3システムとの接続回復を試みる時間を指定します。エラーが発生してから,ここで指定した時間が過ぎるまで,接続回復を試みます。
0を指定した場合,またはこのkeyの指定を省略した場合には,接続回復を試みないですぐにエラーを報告します。
RetryCountキーと同時に指定した場合,このキーの指定は無視されます。RetryTimeキーもRetryCountキーも指定していない場合,RetryCountキーの指定が有効になります※3
接続回復を試みる時間間隔は,RetryIntervalキーで指定できます。
RetryCount0~65,535(単位:回)R/3システムとの通信中に通信エラーが発生したとき,R/3システムとの接続回復を試みる回数を指定します。
0を指定した場合には,接続回復を試みないですぐにエラーを報告します。
このkeyの指定を省略した場合の回数は,3回です。
RetryTimeキーと同時に指定した場合,RetryTimeキーの指定は無視されます。RetryCountキーもRetryTimeキーも指定していない場合,RetryCountキーの指定が有効になります※3
接続回復を試みる時間間隔はRetryIntervalキーで指定できます。
RetryInterval1~65,535(単位:秒)R/3システムとの通信中に通信エラーが発生したとき,R/3システムとの接続回復を試みる時間間隔を指定します。RetryTimeに指定した時間よりも長い時間は指定できません。
このkeyの指定を省略した場合,時間間隔は180秒となります。
RetryTimeを省略した場合,またはRetryTimeに0を指定した場合には,このkeyの指定は無効となります。
JoblogAddToStderrYES または NOR/3ジョブログをファイルに出力する場合に,指定した出力先と同時に標準エラー出力ファイルに出力するかどうかを設定します。
このkeyの指定を省略した場合,R/3ジョブログの標準エラー出力ファイルへの出力条件は「NO」です。
Codepage0~9999(単位:コードページ番号)接続先のUnicode版 SAPシステムで,文字コードの変換時に使用するコードページ番号を指定します。
Unicode版 SAPシステムと日本語の文字データを送受信する場合は,シフトJISのコードページとして「8000」を指定してください。日本語の文字データを送受信しない場合は,このkeyの指定は不要です。

注※1 JP1/AJSのジョブ実行時のワークパスについては,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 設計ガイド(システム構築編)」を参照してください。

注※2 checklevelに「0」を指定した場合に比べて,ネットワークに掛かる負荷が大きくなります。また,コマンドの実行時間も長くなります。

注※3 RetryCountキーまたはRetryTimeキーを指定する場合は,互いに他方のキーを指定するかどうかによって,有効となるキーが次の表に示すように異なります。


キーの指定有効になるキー
RetryCountキーRetryTimeキーRetryCountキーRetryTimeキー

(凡例)

 ○:キーの指定あり,または有効になるキー

 -:キーの指定なし,または無効になるキー


XMIXMIセクション)では,XMIインターフェースセッションの監査レベルを指定します。XMIに指定できるkeyを次の表に示します。

表2-4 XMIに指定できるkey

Keystringに指定できる値説明
AuditLevel
0
データの書き込み(変更)を記録する
1
データの読み込み時のエラーを記録する
2
データの読み込みを記録する
3
外部管理システムへのアクセスを記録する
XMIインターフェースセッションの監査レベルを指定します。
このkeyの指定を省略した場合,既存のXMIインターフェースセッションの監査レベルは変更されません。

optionオプションセクション)では,接続先のR/3システムにSAPノート609462または710098を適用しているかどうかを指定します。optionに指定できるkeyを次の表に示します。

表2-5 optionに指定できるkey

Keystringに指定できる値説明
Note609462YESまたはNO接続先R/3システムに,SAPノート609462または710098の修正を含む以下のサポートパッケージを適用しているかどうかを指定します。
  • R/3システムのリリースが6.20の場合:
    SAPKB62029
「YES」を指定した場合,SAPノート609462または710098が適用されている環境でも,印刷パラメーター(-dp,-ip,-sapcvrオプション)を正しく動作させることができます。
このkeyの指定を省略した場合のサポートパッケージ適用条件は,「YES」です。

注※ SAPノート609462または710098によってJP1/AJS3 for EAPが使用しているSAP社の外部管理インターフェースの仕様が変更されました。これに伴い,これらのSAPノートを適用した環境では,以下に示すように,jr3bjsubコマンドの一部の印刷オプションを指定した場合の動作が不正となることがあります。