3.2.2 JP1/AJS3 - Managerでのルートジョブネットの設定を検討する

Clientユーザーに公開ジョブネットを操作させる場合に,JP1/AJS3 - Managerでのルートジョブネットの設定がClientでの操作に影響することがあります。

また,JP1/AJS3 - User Job Operationの運用でマネージャーホストに掛かる負荷を分散するために,JP1/AJS3 - Managerの設定をあらかじめ変更しておくことも必要です。

ここでは,JP1/AJS3 - User Job Operationの動作に影響するJP1/AJS3 - Managerの設定について説明します。

<この項の構成>
(1) スケジューラーサービス
(2) ジョブ実行多重度
(3) 基準時刻
(4) 多重起動
(5) スケジュールルール
(6) 起動条件
(7) 実行登録
(8) 保存世代数
(9) 結果ファイルの出力先
(10) JP1/Baseの認証圏
(11) JP1資源グループ

(1) スケジューラーサービス

Serverは,次に挙げる処理のために定期的にJP1/AJS3 - Managerのスケジューラーサービスと通信しています。

Serverとスケジューラーサービス間の通信量が増加すると,JP1/AJS3環境で運用している業務に影響を及ぼすおそれがあります。そのため,運用中の業務に影響を及ぼさないように,JP1/AJS3 - User Job Operation用のスケジューラーサービスを新しく作成して,JP1/AJS3 - User Job Operationで運用するルートジョブネットをまとめておくことを推奨します。

注意事項
Serverの通信先に設定するスケジューラーサービスの文字コードおよびマネージャーホストのLANG環境変数は,シフトJIS,EUC,またはUTF-8にしてください。それ以外の文字コードの場合,Serverとスケジューラーサービスは通信できません。

(2) ジョブ実行多重度

ルートジョブネットの実行エージェントにジョブ実行多重度を設定している場合,Clientで実行してもジョブ実行多重度は有効になります。

複数のジョブが同時に実行するようなルートジョブネットでは,同時に実行するジョブの数がジョブ実行多重度を超えるとジョブが「キューイング」状態になり,予想以上にジョブの実行時間が長く掛かってしまいます。ジョブの実行時間,単位時間当たりのジョブ実行数を考慮してジョブ実行多重度を設定するようにしてください。

(3) 基準時刻

Clientには基準時刻は設定できません。そのため,JP1/AJS3 - Managerで基準時刻を設定している場合,Clientに表示される時刻(絶対時刻)とJP1/AJS3 - Viewに表示される時刻(基準時刻を考慮した時刻)は異なります。JP1/AJS3 - Managerで基準時刻を設定している場合は,表示される日時に注意してください。

(4) 多重起動

多重起動を設定しているルートジョブネットは,公開ジョブネットとして実行しても多重起動が有効になります。

多重起動を設定しているルートジョブネットが複数のClientユーザーに同時に実行されると,実行したClientユーザーの数だけ多重起動します。

一方,多重起動を設定していないルートジョブネットの場合は,複数のClientユーザーに同時に実行されると,最初に実行された世代だけが「実行中」状態になり,あとから実行された世代は,ルートジョブネットの設定によって「開始時刻待ち」または「繰り越し未実行」状態になります。「開始時刻待ち」となった場合,前の世代の実行が終了するまで滞留します。そのため,あとから実行された世代は実行されるまで予想以上に時間が掛かってしまいます。

多重起動の設定は,多重起動の必要性や公開ジョブネットに対して同時に実行する最大のClientユーザーの数を考慮して検討してください。

(5) スケジュールルール

スケジュールルールを設定しているルートジョブネットを公開ジョブネットとして実行しても,スケジュールルールは有効になりません。

例えば,JP1/AJS3 - Managerで休業日の振り替えを設定しているルートジョブネットを公開ジョブネットとして登録した場合,Clientで休業日に実行予定を予約すると,実行予定は営業日に振り替えられないで予約した日時(休業日)に実行されます。

(6) 起動条件

起動条件付きルートジョブネットを公開ジョブネットとして実行しても,起動条件は有効になりません。起動条件付きジョブネットをClientで実行すると,起動条件は無視されてルートジョブネットだけが実行されます。

(7) 実行登録

公開ジョブネットとして登録したルートジョブネットの,JP1/AJS3での実行登録方法によって,公開ジョブネットに対してClientでできる操作が異なります。

JP1/AJS3での実行登録方法とClientでできる操作との関係を次に示します。

表3-2 JP1/AJS3での実行登録方法とClientでできる操作

項番JP1/AJS3での実行登録方法Clientの操作
実行(すぐに実行またはあとで実行)監視
1未登録
2確定実行登録
3計画実行登録×
4即時実行登録
(凡例)
○:操作できる
×:操作できない
補足事項
Clientで公開ジョブネットを実行した場合,公開ジョブネットとして登録したルートジョブネットは,JP1/AJS3で確定実行登録されます。その際のルートジョブネットの開始予定時間は,「すぐに実行」と「あとで実行」の場合で異なります。
「すぐに実行」の場合
操作時のServerのシステム時刻
「あとで実行」の場合
Clientユーザーが指定した日時

(8) 保存世代数

Serverは,Clientで実行した公開ジョブネットの実行状態や終了状態を確認するために,定期的にJP1/AJS3 - Managerと通信して状態を取得します。このとき取得する状態は,JP1/AJS3 - Managerの保存世代の実行状態です。そのため,一つの公開ジョブネットを複数のClientユーザーに実行させるような運用の場合,Clientユーザーが公開ジョブネットを実行するたびにJP1/AJS3側で保存世代数管理が行われて,古い世代が削除されます。

一つの公開ジョブネットを複数のClientユーザーに実行させる例を,次の図に示します。

図3-4 一つの公開ジョブネットを複数のClientユーザーに実行させる例

[図データ]

  1. 世代1が正常終了しているときに,ClientユーザーAが公開ジョブネットを実行すると,世代2が生成されます。保存世代数は2であるため,世代1と世代2が保存世代として保存されます。
  2. ClientユーザーBによって公開ジョブネットが実行されると,世代3が生成されます。保存世代数は2であるため,保存世代数管理によって世代1が削除されます。
注意事項
保存世代数管理によって世代が削除されると,公開ジョブネットの終了状態の取得間隔によっては,終了状態を正しく取得できないことがあります。
終了状態を正しく取得できない場合の例を次に示します。

図3-5 終了状態を正しく取得できない場合の例

[図データ]
  1. 世代1の実行中にClientユーザーAが公開ジョブネットを実行すると,世代2が新しく生成されます。
  2. 世代1が正常終了したとします。
  3. ClientユーザーAの画面に世代1の状態が反映される前にClientユーザーBが公開ジョブネットを実行すると,新しく世代3が生成されます。保存世代数は2であるため,世代1は削除されます。世代1が削除されたあとに終了状態が取得されると,ClientユーザーAの画面で世代1の状態は不明と表示されます。
世代1を保存世代数管理で削除されないようにするには,保存世代数を3以上に設定してください。
JP1/AJS3 - User Job Operationで業務を運用する場合,公開ジョブネットの運用方法や終了状態の取得間隔を考慮して保存世代数を検討してください。

(9) 結果ファイルの出力先

公開ジョブネットとして登録するルートジョブネットの実行結果としてファイルが生成される場合,そのファイルをClientでダウンロードできるように設定できます。ダウンロードする場合,結果ファイルはClientをインストールしたホストとルートジョブネットの実行ホストの共有フォルダなど,両ホストがアクセスできる場所に出力される必要があります。

結果ファイルをダウンロードする場合のシステム構成の検討については,「3.4.2 共有フォルダについて検討する」を参照してください。

なお,結果ファイルが生成されてからClientユーザーがダウンロードするまでの間に結果ファイルが上書きされると,古い結果ファイルの内容はダウンロードできなくなります。複数のClientユーザーによって結果ファイルが生成されるような場合は,変数を使用してファイル名にClientユーザー名を付けて結果ファイルが生成されるようにするなどして,ルートジョブネットの実行ごとに結果ファイル名が重複しないようにしてください。

変数を使用して結果ファイルを生成する例については,「2.2.1(5)(e) 結果ファイル」の補足事項を参照してください。

注意事項
ファイルサイズが2ギガバイトを超える結果ファイルはClientでダウンロードできません。結果ファイルのサイズが2ギガバイトを超えてしまう場合は,一つの結果ファイルに出力していた実行結果を複数のファイルに分散して出力するように,ジョブの定義を変更してください。

(10) JP1/Baseの認証

Serverが異なる認証圏のJP1/AJS3 - Managerに接続する必要がある場合,Serverを各認証圏に対して一つずつ設置することを推奨します。1台のServerで異なる認証圏のJP1/AJS3 - Managerに接続するには,Serverの前提であるJP1/Baseに設定してある認証サーバ名を,異なる認証圏に接続するたびに変更する必要があります。

複数のServerで運用する場合のシステム構成については,「3.4.1(4) 複数のServerで運用する場合の構成」を参照してください。

(11) JP1資源グループ

公開ジョブネットに登録するルートジョブネットをJP1権限レベルによる操作権限で管理したい場合は,ルートジョブネットにJP1資源グループを設定しておいてください。JP1資源グループの検討項目および設定方法は,JP1/AJS3と同様です。

JP1資源グループは,JP1/AJS3接続用JP1ユーザーおよびDefinerユーザーに設定するJP1権限レベルとあわせて検討してください。JP1権限レベルについての検討は,「3.3ユーザーの検討」を参照してください。