2.2.4 ジョブネットコネクタを使用したルートジョブネットの実行順序制御

ルートジョブネットは,ジョブやネストジョブネットのようにユニットを並べて実行づけすることはできませんが,ジョブネットコネクタというユニットを使用することで,ルートジョブネット同士の実行順序を制御できます。

<この項の構成>
(1) ジョブネットコネクタを使ったルートジョブネット実行順序制御の概要
(2) ジョブネットコネクタと接続先のジョブネットの接続ルール
(3) ルートジョブネットの実行順序制御方式
(4) ジョブネットコネクタおよび接続先のジョブネットの状態遷移
(5) ジョブネットコネクタ・接続先のジョブネットの再実行
(6) ジョブネットコネクタのポーリング

(1) ジョブネットコネクタを使ったルートジョブネット実行順序制御の概要

ジョブネットコネクタは,実行順序を制御するルートジョブネットと接続関係を持つことで,ルートジョブネットの終了を待ち合わせたり,ルートジョブネットの開始を同期させたりして,実行のタイミングや順序を制御できます。

ジョブネットコネクタと実行順序を制御するルートジョブネットの関係を,次の図に示します。

図2-14 ジョブネットコネクタと実行順序を制御するルートジョブネットの関係

[図データ]

ジョブネットコネクタは,ジョブネット配下にユニットの一つとして定義できます。

ジョブネットコネクタを使って実行順序を制御できる対象は,ルートジョブネットまたはプランニンググループ直下のルートジョブネットです。異なるスケジューラーサービス間でもルートジョブネットの実行順序を制御できます。異なるスケジューラーサービス間のルートジョブネットの実行順序制御について,次の図に示します。

図2-15 異なるスケジューラーサービス間のルートジョブネットの実行順序制御

[図データ]

なお,ジョブネットコネクタと接続関係を持つルートジョブネットを接続先のジョブネットといいます。

ジョブネットコネクタを使ったルートジョブネットの実行順序制御は,次の流れで行います。

  1. ジョブネットを作成し,ジョブネットコネクタを定義する。
  2. ジョブネットコネクタと実行順序制御の対象との接続関係を定義する。
    ジョブネットコネクタ側に,接続先のジョブネット名を指定します。実行順序制御の対象がルートジョブネットの場合はルートジョブネット名を,プランニンググループ直下のルートジョブネットの場合はプランニンググループ名を指定します。
    接続先のジョブネット側には,対応するジョブネットコネクタ名を指定します。
    補足事項
    JP1/AJS3 - Viewのメニューコマンド[ジョブネットコネクタとして記憶][ジョブネットコネクタの自動生成]を使用すると,定義を手入力する手間が省けます。ただし,異なるスケジューラーサービス間で実行順序制御をする場合は使用できません。この場合は手入力で定義してください。
  3. それぞれのジョブネットを実行登録する。

ジョブネットおよびジョブネットコネクタの定義方法については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 操作ガイド 5. ジョブネットの定義」を参照してください。ジョブネットの実行登録方法については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 操作ガイド 7. ジョブネットの実行」を参照してください。

注意事項
  • JP1/AJS - Viewおよび接続先のJP1/AJS - Managerが08-10より前のバージョンでは,ジョブネットコネクタを使用できません。
  • JP1/AJS - Viewおよび接続先のJP1/AJS - Managerのバージョンが08-10のジョブネットコネクタでは,異なるスケジューラーサービス間のルートジョブネットの実行順序を制御できません。異なるスケジューラーサービス間でジョブネットコネクタを使用できるのは,08-50以降のJP1/AJS - ViewおよびJP1/AJS - Managerです。
  • ジョブネットコネクタは,ルートジョブネットおよびネストジョブネット以外のユニット配下に定義できません。
  • ジョブネットコネクタの接続先のジョブネットとして,ルートジョブネットおよびプランニンググループ以外のユニット種別を指定できません。
  • オペレーションネット用スケジューラーサービス配下(JP1/IM - Planning Operationで管理しているユニット)には,ジョブネットコネクタを定義できません。また,ジョブネットコネクタの接続先のジョブネットとして指定することもできません。
  • 接続先のジョブネット配下には,ジョブネットコネクタを定義しないでください。接続先のジョブネット配下にジョブネットコネクタを定義した場合,ジョブネットの実行登録時にエラーになります。
  • ジョブネットコネクタを定義するジョブネットおよび接続先のジョブネットには,起動条件を設定しないでください。ジョブネットコネクタを定義したジョブネットおよび接続先のジョブネットに起動条件を設定した場合,ジョブネットの実行登録時にエラーになります。
  • ジョブネットコネクタは,従属ユニットおよびリカバリーユニットとしては定義できません。
  • ジョブネットコネクタは,従属ジョブネットおよびリカバリージョブネット配下に定義できますが,接続関係が複雑になるため,これらの配下には定義しないことを推奨します。
  • サスペンド中は,ジョブネットコネクタを新規作成および削除できません。

(2) ジョブネットコネクタと接続先のジョブネットの接続ルール

ジョブネットコネクタが定義されたジョブネットと接続先のジョブネットは,それぞれの実行登録後,同じ実行日の世代同士が接続関係を結びます。接続関係を結んだ世代間でルートジョブネットの終了を待ち合わせたり,ルートジョブネットの開始を同期させたりできます。

(a) 接続ルール

ジョブネットコネクタが定義されたジョブネットと接続先のジョブネットの世代について,次の条件が重なる場合に接続関係が成立します。

注※
ジョブネットコネクタが定義されたジョブネットと接続先のジョブネットとの接続関係は,どちらか一方がまだ実行を開始していないときには確定していません。両方が実行を開始したとき,または繰り越し未実行など実行しないで終了したときに確定します。

実行予定が1日に複数回ある場合は,これらの条件を満たす世代のうち開始予定日時が最も早い世代同士で接続関係が成立します。ただし,擬似予定の段階では接続関係は成立しません。

ジョブネットコネクタを定義したルートジョブネット(jobnetS)と接続先のジョブネット(jobnetA)を実行登録した場合の接続例を,次の図に示します。

図2-16 ジョブネットコネクタと接続先のジョブネットの接続例

[図データ]

jobnetSの世代「@A103」とjobnetAの世代「@A101」は,同一実行日の世代であるため接続関係が成立します。jobnetSの世代「@A104」およびjobnetAの世代「@A102」は,ともに同一実行日に対応する世代がないため接続されません。4/20(金)にはjobnetSおよびjobnetAともに擬似予定がありますが,擬似予定の段階では接続関係は成立しません。

(b) 48時間制の場合

48時間制を採用している場合でも,同一実行日の世代であれば接続関係が成立します。

48時間制の場合の接続例を,次の図に示します。

図2-17 ジョブネットコネクタと接続先のジョブネットの接続例(48時間制の場合)

[図データ]

jobnetSの世代「@A103」とjobnetAの世代「@A102」は,暦日では実行日が異なりますが,48時間制の場合は同一実行日となるため,接続関係が成立します。

(c) 基準時刻が異なる場合

ジョブネットコネクタを定義したルートジョブネットと接続先のジョブネットの基準時刻が異なる場合でも,同一実行日の世代であれば接続関係が成立します。

ジョブネットコネクタを定義したルートジョブネットと接続先のジョブネットの基準時刻が異なる場合の接続例を,次の図に示します。

図2-18 ジョブネットコネクタと接続先のジョブネットの接続例(基準時刻が異なる場合)

[図データ]

jobnetSの世代「@A103」とjobnetAの世代「@A101」は,暦日では実行日が異なりますが,それぞれの基準時刻で見るとどちらも同じ4/17であるため,接続関係が成立します。ただし,基準時刻が異なるルートジョブネットの実行順序を制御しようとした場合,この例のように暦日では実行日が異なる世代が接続されることがあるため,ジョブネットコネクタと接続先のジョブネットでは,基準時刻を合わせて運用してください。

(d) 世代の実行日を変更した場合

世代が接続されても,ジョブネットコネクタを定義したルートジョブネット,または接続先のジョブネットの世代が実行される前に,どちらかの世代を登録解除または実行中止した場合,接続関係が成立しなくなります。

また,計画一時変更やスケジュール定義変更によって世代の実行日が変わった場合は,接続関係も変わります。実行予定日を変更した場合の接続関係を,次の図に示します。

図2-19 実行予定日を変更した場合の接続関係

[図データ]

このように,同一実行日で接続関係にあるjobnetSの世代「@A103」とjobnetAの世代「@A101」を,計画一時変更によって「@A101」の実行予定を翌日の4/18にずらした場合,「@A103」との接続関係はなくなり,4/18にある世代「@A104」と接続されます。

(e) 実行予定が1日に複数回ある場合

1日に実行予定が複数回ある場合でも,同一実行日の世代であれば接続関係が成立します。計画一時変更や実行中止などによって実行予定が変更されたときなどに接続関係が複雑になるため,ジョブネットコネクタを定義したジョブネットおよび接続先のジョブネットの実行は1日1回とすることを推奨します。

注意事項
実行予定が1日に複数回あり,かつ実行順序制御方式を「同期」に設定している場合,ジョブネットコネクタを定義したジョブネットの実行が遅延することで,接続先ジョブネットの次回実行予定の世代が生成されないことがあります。この場合,遅延後の接続関係が複雑になってしまうため,ジョブネットコネクタを定義したジョブネットの実行は1日1回とすることを推奨します。詳細については,「(3)(b) 同期実行」を参照してください。

1日に実行予定が複数回ある場合に実行予定を計画一時変更した例を,次の図に示します。

図2-20 1日に実行予定が複数回ある場合に実行予定を計画一時変更した例

[図データ]

1日に実行予定が複数回ある場合は,同一実行日の世代のうち,開始予定日時の早い順に接続関係が成立するため,jobnetSの世代「@A103」はjobnetAの世代「@A101」と接続関係を結びます。ここで,jobnetSの世代「@A103」の実行予定を4/19(木)に計画一時変更した場合,jobnetSの世代「@A103」とjobnetAの世代「@A101」の接続関係はなくなり,jobnetAの世代「@A101」はjobnetSの世代「@A104」と接続関係を結びます。

また,1日に実行予定が複数回ある場合にJP1/AJS3 - Viewやajsshowコマンドで接続関係をシミュレーションすると,まだ実行されていない世代に複数の世代が接続するように見えます。

1日に実行予定が複数回ある場合に接続関係をシミュレーションした例を,次の図に示します。なお,すべての世代が開始時刻待ちの状態であるとします。

図2-21 1日に実行予定が複数回ある場合に接続関係をシミュレーションした例

[図データ]

まず,jobnetSの世代「@A103」は,同一実行日でjobnetAの世代のうち開始予定日時が最も早い「@A101」と接続関係がシミュレーションされます。ただし,jobnetSの世代「@A103」とjobnetAの世代「@A101」との接続関係は確定していないため,jobnetSの世代「@A104」もjobnetAの世代「@A101」と接続関係がシミュレーションされます。同様に,jobnetAの世代「@A101」はjobnetSの世代「@A103」と,jobnetAの世代「@A102」もjobnetSの世代「@A103」と接続関係がシミュレーションされます。

(f) タイムゾーンが異なる場合

ジョブネットコネクタを定義したルートジョブネットと接続先のジョブネットのタイムゾーンが異なる場合でも,実行日が同一であれば世代間の接続関係が成立します。ただし,運用が困難になるため,ジョブネットコネクタと接続先のジョブネットのタイムゾーンを統一して運用してください。

(g) スケジューラーサービスのローカル日時が異なる場合

ジョブネットコネクタを定義したルートジョブネットと接続先のジョブネットの,スケジューラーサービスのローカル日時が異なる場合でも,同一実行日の世代であれば接続関係が成立します。

ジョブネットコネクタを定義したルートジョブネットと接続先のジョブネットの,スケジューラーサービスのローカル日時が異なる場合の接続例を,次の図に示します。

図2-22 ジョブネットコネクタと接続先のジョブネットの接続例(スケジューラーサービスのローカル日時が異なる場合)

[図データ]

jobnetSの世代「@A103」とjobnetAの世代「@A101」は,暦日では実行日が異なりますが,それぞれのスケジューラーサービスのローカル日時はどちらも同じ4/17であるため,接続関係が成立します。ただし,スケジューラーサービスのローカル日時が異なるルートジョブネットの実行順序を制御しようとした場合,この例のように暦日では実行日が異なる世代が接続されることがあるため,ジョブネットコネクタと接続先のジョブネットでは,スケジューラーサービスのローカル日時を合わせて運用してください。

(3) ルートジョブネットの実行順序制御方式

ルートジョブネットの実行開始をジョブネットコネクタと同期して実行させるか,非同期実行させるかをルートジョブネットの実行順序制御方式といいます。実行順序制御方式は,接続先のジョブネット側に設定します。デフォルトは「非同期」です。

それぞれを設定した場合のルートジョブネット実行開始時の動作について説明します。

(a) 非同期実行

実行順序制御方式を「非同期」と設定した場合,接続先のジョブネットは接続関係の有無やジョブネットコネクタの状態にかかわらず,自身のスケジュールで実行を開始します。

ジョブネットコネクタが定義されているジョブネットを「jobnetS」,接続先のジョブネットを「jobnetA」とした,実行順序制御方式が「非同期」の場合の動作を,次の図に示します。

図2-23 実行順序制御方式が「非同期」の場合の動作

[図データ]

注意事項
スケジューリング方式に多重スケジュールを設定していても,前回の実行予定が実行を開始していない場合は,次回実行予定が開始予定時刻になっても実行を開始しません。ジョブネットコネクタを定義したルートジョブネットおよび接続先のジョブネットで,それぞれ多重スケジュールを設定している場合は,次回実行予定の開始予定時刻になる前に,前回の実行予定が実行を開始するように運用してください。

(b) 同期実行

実行順序制御方式を「同期」と設定した場合,接続関係が成立している世代はジョブネットコネクタが実行開始するまで開始を待ち合わせます。同一実行日に対応する世代がない場合は,自身のスケジュールで実行を開始します。

ジョブネットコネクタが定義されているジョブネットを「jobnetS」,接続先のジョブネットを「jobnetA」とした,実行順序制御方式が「同期」の場合の動作を,次の図に示します。

図2-24 実行順序制御方式が「同期」の場合の動作

[図データ]

この場合,jobnetS自身の開始予定時刻は「6:00」,jobnetAの開始予定時刻は「5:00」ですが,4/16(月),4/18(水)の世代は接続関係が成立しているため,jobnetAは5:00には開始しないで,ジョブネットコネクタの実行と同期して開始します。接続関係を持たない4/17(火)の世代は,自身のスケジュールに従って5:00に実行を開始します。

同期実行の設定は,一度同期して実行したあとに再実行する場合には適用されません。再実行時にも同期させる場合は,実行順序制御方式の一時変更機能で一時変更してください。

注意事項
  • スケジューリング方式に多重スケジュールを設定していても,前回の実行予定が実行を開始していない場合は,次回実行予定が開始予定時刻になっても実行を開始しません。ジョブネットコネクタを定義したルートジョブネットおよび接続先のジョブネットで,それぞれ多重スケジュールを設定している場合は,次回実行予定の開始予定時刻になる前に,前回の実行予定が実行を開始するように運用してください。
  • 実行順序制御方式を「同期」に設定して1日に複数回実行予定がある場合,ジョブネットコネクタを定義したジョブネットの実行が遅延することで,接続先ジョブネットの次回実行予定の世代が生成されないことがあります。この場合,遅延後の接続関係が複雑になってしまうため,ジョブネットコネクタを定義したジョブネットの実行は1日1回とすることを推奨します。
実行順序制御方式を「同期」に設定して1日に複数回実行する例を次の図に示します。

図2-25 実行順序制御方式を「同期」に設定して1日に複数回実行する例

[図データ]
この例では,ジョブネットコネクタを定義したルートジョブネット(jobnetS)および接続先のジョブネット(jobnetA)の実行開始予定を,6:00,12:00,18:00としています。また,スケジューリング方式にはスケジュールスキップを設定しています。実行登録方法は計画実行登録としています。
jobnetSの6:00に開始した世代「@A104」で,ジョブネットコネクタの先行ジョブ「ジョブ1」がjobnetSの次の実行予定時間12:00を過ぎても終了しなかった場合,jobnetSおよびjobnetAは次のように動作します。
  1. jobnetSの12:00実行予定の世代「@A105」が「繰り越し未実行」状態になる。
    jobnetSにはスケジュールスキップを設定しているため,実行予定時間が前の実行分の処理と重なっている世代は「繰り越し未実行」状態になり実行がスキップされます。
    また,jobnetAの12:00実行予定の世代は,世代「@A101」の実行が開始していないため,擬似予定のまま世代が生成されません。
  2. ジョブ1の実行終了後,jobnetSの世代「@A104」のジョブネットコネクタが実行される。
    同期実行を設定しているjobnetAの世代「@A101」も実行されます。同時に,jobnetAの次回実行予定である18:00実行予定の世代が「開始時刻待ち」状態で生成されます(実行ID「@A103」)。すると,「繰り越し未実行」状態のjobnetSの世代「@A105」とjobnetAの世代「@A103」との接続関係が成立します。jobnetAの世代「@A103」は「繰り越し未実行」状態のジョブネットと接続しているため,「開始時刻待ち」状態のまま実行されません。ジョブネットコネクタおよび接続先ジョブネットの状態遷移については,「(4) ジョブネットコネクタおよび接続先のジョブネットの状態遷移」を参照してください。
  3. 時刻が18:00になると,jobnetSの18:00実行予定の世代「@A106」が実行される。
    jobnetSの世代「@A106」には接続する世代が存在しません。そのため,jobnetAに接続先の世代が生成されるかどうかを待つために,jobnetSの世代「@A106」はjobnetAの世代「@A103」が終了するまで「実行中」状態のまま待ち続けます。
    なお,実行順序制御方式を一時変更機能で「非同期」にすると,jobnetSの世代「@A106」は接続先の世代の有無に関係なく実行されます。実行順序制御方式の一時変更機能については,「(c) 実行順序制御方式の一時変更機能」を参照してください。
     
なお,時刻が18:00になる前であれば,「繰り越し未実行」状態になったjobnetSの世代「@A105」を再実行することで,接続関係が成立しているjobnetAの世代「@A103」も実行されます。jobnetAの世代「@A103」の終了後,新しく世代が生成される場合は,jobnetSの世代「@A106」と接続関係が成立してjobnetSの世代「@A106」が実行されます。新しく世代が生成されない場合は,jobnetSの世代「@A106」のジョブネットコネクタはジョブネットと接続できないため,「計画未実行」状態になりジョブネットの実行が終了します。

(c) 実行順序制御方式の一時変更機能

再起動時に接続先のジョブネットをジョブネットコネクタと同期して実行させる場合や,ある世代に対して設定を一時的に変更する場合には,実行順序制御方式の一時変更機能を使用できます。

実行順序制御方式の一時変更機能は,次のウィンドウの[操作]-[実行順序制御方式の一時変更]で実行できます。

補足事項
擬似予定に対しては,実行順序制御方式を一時変更できません。

(4) ジョブネットコネクタおよび接続先のジョブネットの状態遷移

ジョブネットコネクタおよび接続先のジョブネットの状態遷移について説明します。なお,ジョブネットコネクタおよび接続先のジョブネットが持つ状態については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 導入ガイド 6.1.1 ジョブネット・ジョブ・ジョブネットコネクタの状態」を参照してください。

(a) ジョブネットコネクタの状態遷移

ジョブネットコネクタを定義したジョブネットを実行登録すると,ジョブネットコネクタを定義したルートジョブネットが実行開始します。ジョブネットコネクタの状態は先行ユニットがすべて終了した時点で,接続する世代の状態に応じて遷移します。

ジョブネットコネクタの状態遷移を次の表に示します。

表2-6 ジョブネットコネクタの状態遷移

接続先のジョブネットの状態ジョブネットコネクタの状態
未登録異常検出実行中
未計画計画未実行
開始時刻待ち実行中
保留中実行中
繰り越し未実行異常検出実行中
正常終了正常終了
警告検出終了警告検出終了
異常検出終了異常検出実行中
中断異常検出実行中
強制終了異常検出実行中
閉塞異常検出実行中
順序不正異常検出実行中
実行中実行中
警告検出実行中警告検出実行中
異常検出実行中異常検出実行中

なお,次のようにジョブネットコネクタの定義が不正だった場合は,すぐに異常検出終了になります。

(b) 接続先のジョブネットの状態遷移

接続先のジョブネットを実行登録すると,接続する世代の状態に応じて,実行順序制御方式(同期・非同期)ごとに実行開始時の動作が変わります。

接続先のジョブネットの状態遷移を次の表に示します。

表2-7 接続先のジョブネットの状態遷移

ジョブネットコネクタの状態
 
接続先のジョブネットの状態
同期非同期
未登録開始時刻待ち実行中
未計画(実行予定なし)開始時刻待ち実行中
先行終了待ち開始時刻待ち実行中
未実行終了開始時刻待ち実行中
計画未実行実行中実行中
実行中実行中実行中
正常終了開始時刻待ち実行中
警告検出終了開始時刻待ち実行中
異常検出終了開始時刻待ち実行中
強制終了開始時刻待ち実行中
閉塞開始時刻待ち実行中
終了状態不明開始時刻待ち実行中
注※
接続先のジョブネットの実行開始時に,状態変更操作などですでにジョブネットコネクタが終了状態の場合,接続先のジョブネットはジョブネットコネクタが実行中になるまで「開始時刻待ち」の状態になります。この場合,ジョブネットコネクタを再実行するか,または接続先のジョブネットの実行順序制御方式を「非同期」に一時変更します。

なお,次のように接続先のジョブネットの定義が不正だった場合は,すぐに異常検出終了になります。ただし,接続範囲に「別サービス」を指定していて,実行順序制御方式が「非同期」の場合は,定義不正であっても異常検出終了にはならないで,実行を開始します。そのため,実行登録する前に定義内容の事前チェック機能を使用して定義を確認することを推奨します。

(c) 異なるスケジューラーサービス間の通信処理に失敗した場合の状態

異なるスケジューラーサービス間のルートジョブネットの実行順序制御では,次のときに通信処理を行います。

このときに通信エラーが発生した場合の,ジョブネットコネクタおよび接続先のジョブネットの状態について次に示します。なお,エラーが発生した場合の対処については,マニュアル「JP1/Automatic Job Management System 3 トラブルシューティング 2.7.5 ジョブネットコネクタのトラブルへの対処」を参照してください。

●ジョブネットコネクタの実行開始時に通信エラーとなった場合

ジョブネットコネクタが実行開始するときに,接続先のジョブネットと世代の接続を行います。世代の接続については,「(2) ジョブネットコネクタと接続先のジョブネットの接続ルール」を参照してください。

この,世代の接続の際に通信エラーが発生した場合,ジョブネットコネクタは「異常検出終了」となります。接続先のジョブネットの状態は遷移しません。

●接続先のジョブネットの実行開始時に通信エラーとなった場合

接続先のジョブネットの実行順序制御方式が「同期」の場合,実行開始するときにジョブネットコネクタと世代の接続を行います。世代の接続については,「(2) ジョブネットコネクタと接続先のジョブネットの接続ルール」を参照してください。

この,世代の接続の際に通信エラーが発生した場合,接続先のジョブネットは「異常検出終了」となります。ジョブネットコネクタの状態は遷移しません。

●接続先のジョブネットの状態遷移時に通信エラーとなった場合

接続先のジョブネットが状態遷移しても,ジョブネットコネクタが接続先のジョブネットの状態を確認できないため,ジョブネットコネクタの状態は遷移しません。

(5) ジョブネットコネクタ・接続先のジョブネットの再実行

ジョブネットコネクタおよび接続先のジョブネットの再実行について説明します。

(a) ジョブネットコネクタの再実行

ジョブネットコネクタは,ジョブと同様に終了状態の場合だけ再実行できます。ただし,ジョブネットコネクタは保留属性を持たないため,再実行時に保留状態にできません。

(b) 接続先のジョブネットの再実行

接続先のジョブネットは,通常のジョブネットと同様に再実行できます。ただし,実行順序制御方式を「同期」と設定していて,一度ジョブネットコネクタと同期して実行した場合,実行順序制御方式は「非同期」となり再実行時にジョブネットコネクタと同期しません。再実行時にもジョブネットコネクタと同期して実行させる場合は,実行順序制御方式の一時変更機能で「同期」に変更してください。

(c) 接続関係が途切れた場合の再実行時の動作

登録解除や実行中止,保存世代数管理などによって,一度接続関係が成立した世代のどちらか片方が削除された場合,接続関係が途切れた状態になり,もう一方の世代を再実行できません。どちらか一方の世代が削除された場合に再実行したときの動作とその対処方法を次の表に示します。

表2-8 接続関係が途切れた場合の再実行時の動作と対処方法

世代再実行時の動作対処方法
ジョブネットコネクタ側の世代が残っている場合ジョブネットコネクタを再実行すると,ジョブネットコネクタが「異常検出終了」となる。ジョブネットコネクタの次のユニットから再実行する。
接続先のジョブネットの世代が残っている場合実行順序制御方式を「同期」にして接続先のジョブネットを再実行すると,接続先のジョブネットが「異常検出終了」となる。実行順序制御方式を「非同期」に一時変更して再実行する。
注※
終了したあとに再実行した場合は異常検出終了となりますが,実行状態で再実行した場合は,異常検出終了にならないで再実行できます。

(6) ジョブネットコネクタのポーリング

異なるスケジューラーサービス間のルートジョブネットの実行順序を制御する場合,ジョブネットコネクタおよび実行順序制御方式に「同期」を設定した接続先のジョブネットは,次の間ポーリングし,定期的に接続相手となるユニットの状態を確認します。

スケジューラーサービスの停止や通信障害によって,ポーリングによる接続相手の状態取得ができない場合,ジョブネットコネクタ,または接続先のジョブネットは異常検出終了します。